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運命の悪戯4
高校生になり、凛太朗と天音は、学校から駅までの登下校は2人でというのを日課としていた。夏休み前のテストが近いその日は、教室で長々と勉強をしていたので、帰る頃には、陽は沈んでおり、辺りは薄暗かった。勉強の話をしている最中、唐突に凛太朗が話題を変える。
「なぁ、天音さん、もしかして彼氏できた?」
凛太朗は、天音のことを“さん”付けで呼ぶ。これは、中学生になった頃のある1件が関係している。決して、距離があるわけではなく、むしろ、親しみを込めて呼んでいるのに近い。小学生の頃に出会い、中学生活を共に過ごし、今に至るわけだが、2人は、恋人ではなく、限りなく恋人に近い友達という関係が続いていた。
「えっ、そんなのいないよ。」
凛太朗とずっといて、そんな言葉を言われたことがない。恋話や彼氏彼女と言った浮いた話は、いつも天音から振るのが常だった。
「そっか、違うんだ。」
「うん。もしかしてさ……昴とか、翼のこと?2人は親戚だから、そんなんじゃないよ。」
平然と笑って答える天音に対し、凛太朗は、腑に落ちない表情を保っていた。
「僕は……いや、なんでもない。帰ってからもテスト勉強サボんなよ。」
「わかってるよ。終わったら、一緒にパンケーキだからね。じゃ、また明日。」
そう言って駅の構内に消えていく凛太朗にいつも通り別れを告げる。
天音の今住んでいる諏訪家は、学校の最寄り駅から徒歩10分圏内のマンションに住んでいた。天音は、凛太朗を見送った後、耳にイヤホンを装着する。
夕暮れ時に好きなクラシックを聴くことも習慣になっていた。先ほどの凛太朗の一言や言いかけた言葉が気になったものの、それらは彼の思い違いから出た言葉で深い意味はなかったのだと聴こえるメロディーに上書きされていく。
一方、凛太朗は、天音とは違い、心にわだかまりを抱えたままだった。中学生活を天音と一緒に過ごし、天音と同じ高校を受験した。凛太朗が天音と過ごすことが、ごく自然な習慣になったのはいつからだっただろうか。彼は、高校生になり、中学生の頃よりもずっと可愛くなっていく天音に、不安を抱いていた。彼女がそういった意識に一生懸命になる理由は何であろうか、と。彼自身、天音はきっと自分を好いていてくれると思っていた節があった。
もちろん、彼は、ずっと前から自身の気持ちに気付いてはいたが、そういった感情を他人に知られるような素振りは見せていないつもりだった。天音と過ごしているだけで、思春期の周りの同級生たちが騒ぎ立てた。凛太朗は、その度に反発をした。だからと言って、天音を突き放すことなど決してしなかったが、彼は、この何もない、ただただ一緒にいる関係を平和であると捉え、守り続けていきたかった。そして、いつかは自然となるようになるものだと、思い込んでいた。
しかし、高校生活が始まり、少し経った頃から、この均衡は、少しずつ崩れていくのが目に見えてわかっていた。天音が諏訪家に預けられてからは、感情も距離も凛太朗から離れていったように感じていた。実際は、昴や翼との時間も増えたため、凛太朗との時間が物理的に減っただけなのだが、そういうことは、凛太朗は知る由もなかった、否、そこまで考える余裕がなかった。
時が経つにつれ、凛太朗の負の感情は、膨らみ、やがて、天音にも伝染するかのように、お互いを蝕んでいった。
そんな時、ある決定的な事件が起きた。天音と凛太朗、高校2年の生活が始まった春の出来事だった。
「なぁ、天音さん、もしかして彼氏できた?」
凛太朗は、天音のことを“さん”付けで呼ぶ。これは、中学生になった頃のある1件が関係している。決して、距離があるわけではなく、むしろ、親しみを込めて呼んでいるのに近い。小学生の頃に出会い、中学生活を共に過ごし、今に至るわけだが、2人は、恋人ではなく、限りなく恋人に近い友達という関係が続いていた。
「えっ、そんなのいないよ。」
凛太朗とずっといて、そんな言葉を言われたことがない。恋話や彼氏彼女と言った浮いた話は、いつも天音から振るのが常だった。
「そっか、違うんだ。」
「うん。もしかしてさ……昴とか、翼のこと?2人は親戚だから、そんなんじゃないよ。」
平然と笑って答える天音に対し、凛太朗は、腑に落ちない表情を保っていた。
「僕は……いや、なんでもない。帰ってからもテスト勉強サボんなよ。」
「わかってるよ。終わったら、一緒にパンケーキだからね。じゃ、また明日。」
そう言って駅の構内に消えていく凛太朗にいつも通り別れを告げる。
天音の今住んでいる諏訪家は、学校の最寄り駅から徒歩10分圏内のマンションに住んでいた。天音は、凛太朗を見送った後、耳にイヤホンを装着する。
夕暮れ時に好きなクラシックを聴くことも習慣になっていた。先ほどの凛太朗の一言や言いかけた言葉が気になったものの、それらは彼の思い違いから出た言葉で深い意味はなかったのだと聴こえるメロディーに上書きされていく。
一方、凛太朗は、天音とは違い、心にわだかまりを抱えたままだった。中学生活を天音と一緒に過ごし、天音と同じ高校を受験した。凛太朗が天音と過ごすことが、ごく自然な習慣になったのはいつからだっただろうか。彼は、高校生になり、中学生の頃よりもずっと可愛くなっていく天音に、不安を抱いていた。彼女がそういった意識に一生懸命になる理由は何であろうか、と。彼自身、天音はきっと自分を好いていてくれると思っていた節があった。
もちろん、彼は、ずっと前から自身の気持ちに気付いてはいたが、そういった感情を他人に知られるような素振りは見せていないつもりだった。天音と過ごしているだけで、思春期の周りの同級生たちが騒ぎ立てた。凛太朗は、その度に反発をした。だからと言って、天音を突き放すことなど決してしなかったが、彼は、この何もない、ただただ一緒にいる関係を平和であると捉え、守り続けていきたかった。そして、いつかは自然となるようになるものだと、思い込んでいた。
しかし、高校生活が始まり、少し経った頃から、この均衡は、少しずつ崩れていくのが目に見えてわかっていた。天音が諏訪家に預けられてからは、感情も距離も凛太朗から離れていったように感じていた。実際は、昴や翼との時間も増えたため、凛太朗との時間が物理的に減っただけなのだが、そういうことは、凛太朗は知る由もなかった、否、そこまで考える余裕がなかった。
時が経つにつれ、凛太朗の負の感情は、膨らみ、やがて、天音にも伝染するかのように、お互いを蝕んでいった。
そんな時、ある決定的な事件が起きた。天音と凛太朗、高校2年の生活が始まった春の出来事だった。
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