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運命の悪戯8 sideR
凛太朗は、天音に事細かく犯人の特徴を聞いた。もちろん顔は見てはいなかったが、彼女の感性は鋭かった。
まず、バッグを引っ張る強さからして大人の男性の可能性が高いということ。次に、足音は、靴が擦れるような重々しいものであったということ。そして、最大の特徴的は、独特な匂いがしたということだ。その匂いは、煙草と甘い香水が交じり合った人を不快にさせるものだったらしい。
「あの甘い香り……お菓子みたいだったんだよね。焼き菓子とかじゃなくさ、人工甘味料いっぱい使ってるような。……そうだ、何年か前に食べた気がするんだけどな、私、凜ちゃん覚えてない?。」
そんなことを言い天音は、頭を捻る。
「思い当たることが多すぎて。天音さん、時々、想定外のもの持ってきたりしてたよね。」
「それは、凜ちゃんも一緒だよ。」
彼女は、安心からか、再び訪れる脅威から気を逸らすためか、マンションの下に到着するまで、話し続けた。そのどれもが、2人の過去を彩る思い出話だった。当時の天音の目には、凛太朗は、“危なっかしい男の子”に見えていたらしい。それを聞き、凛太朗は、苦笑いをした。
「お互い、相手に抱く感情は同じってことだよな。」
本心で話し合えることができて、この何気ない一時が、ずっと続けばいいのにと、凛太朗は思った。
天音の住むマンションに到着する頃は、まだ日は高く、普段なら学校に残っている時刻だった。学校帰りの学生も目立ち、大っぴらに犯行などできない程には人の通りがあった。
「毎日この時間に帰ったら、平気だな。」
「でも、勉強が……。」
「天音さん、言ってたじゃん。やろうと思えば、どこでだってできるって。忘れたの?」
「ううん、そんなことはないけど。私、学校のあの環境が気に入っていたの。」
「……しばらくの我慢だよ。辛いことは、いつまでも続かない。嫌なことがあったって、いつか忘れるのと一緒だよ。」
「うん、わかった。凜ちゃん、ごめんね、ありがと。じゃ、また明日。」
気を付けて帰ってね、そう付け加え天音は、不安げな表情をしていた。凛太朗は、彼女がエントランスに入るまで見届ける。
そこに入るためには、個別に与えられた暗証番号と顔認証システムを使用する。そして、そのシステムを使用する箇所が2度あるそうだ。これだけのセキュリティがあれば、きっと家にまで犯人が訪れることは、まず不可能だろう。しかし、計画的な犯行であるならば、彼女の住んでいるマンションの場所は、知られているであろう。彼女が襲われたという場所は、マンションから目と鼻の先にある路上だった。天音が狙われたのは、偶然で、不運な事故であることを願った。警察や周辺の大人に相談できない分、完全な安全は保障されないことにやはり不安があった。四六時中、天音を守ることは不可能な環境で、凛太朗ができることには限りがあった。
凛太朗は、ぽつりと呟く。「もし僕が大人だったら、天音さんのことを守れたのだろうな。」と。
まず、バッグを引っ張る強さからして大人の男性の可能性が高いということ。次に、足音は、靴が擦れるような重々しいものであったということ。そして、最大の特徴的は、独特な匂いがしたということだ。その匂いは、煙草と甘い香水が交じり合った人を不快にさせるものだったらしい。
「あの甘い香り……お菓子みたいだったんだよね。焼き菓子とかじゃなくさ、人工甘味料いっぱい使ってるような。……そうだ、何年か前に食べた気がするんだけどな、私、凜ちゃん覚えてない?。」
そんなことを言い天音は、頭を捻る。
「思い当たることが多すぎて。天音さん、時々、想定外のもの持ってきたりしてたよね。」
「それは、凜ちゃんも一緒だよ。」
彼女は、安心からか、再び訪れる脅威から気を逸らすためか、マンションの下に到着するまで、話し続けた。そのどれもが、2人の過去を彩る思い出話だった。当時の天音の目には、凛太朗は、“危なっかしい男の子”に見えていたらしい。それを聞き、凛太朗は、苦笑いをした。
「お互い、相手に抱く感情は同じってことだよな。」
本心で話し合えることができて、この何気ない一時が、ずっと続けばいいのにと、凛太朗は思った。
天音の住むマンションに到着する頃は、まだ日は高く、普段なら学校に残っている時刻だった。学校帰りの学生も目立ち、大っぴらに犯行などできない程には人の通りがあった。
「毎日この時間に帰ったら、平気だな。」
「でも、勉強が……。」
「天音さん、言ってたじゃん。やろうと思えば、どこでだってできるって。忘れたの?」
「ううん、そんなことはないけど。私、学校のあの環境が気に入っていたの。」
「……しばらくの我慢だよ。辛いことは、いつまでも続かない。嫌なことがあったって、いつか忘れるのと一緒だよ。」
「うん、わかった。凜ちゃん、ごめんね、ありがと。じゃ、また明日。」
気を付けて帰ってね、そう付け加え天音は、不安げな表情をしていた。凛太朗は、彼女がエントランスに入るまで見届ける。
そこに入るためには、個別に与えられた暗証番号と顔認証システムを使用する。そして、そのシステムを使用する箇所が2度あるそうだ。これだけのセキュリティがあれば、きっと家にまで犯人が訪れることは、まず不可能だろう。しかし、計画的な犯行であるならば、彼女の住んでいるマンションの場所は、知られているであろう。彼女が襲われたという場所は、マンションから目と鼻の先にある路上だった。天音が狙われたのは、偶然で、不運な事故であることを願った。警察や周辺の大人に相談できない分、完全な安全は保障されないことにやはり不安があった。四六時中、天音を守ることは不可能な環境で、凛太朗ができることには限りがあった。
凛太朗は、ぽつりと呟く。「もし僕が大人だったら、天音さんのことを守れたのだろうな。」と。
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