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運命の悪戯10
その日、行き帰りにただ歩くだけじゃ面白くないから少しくらい息抜きがしたいと天音は、凛太朗に提案した。天音が危険な目に合ってからというもの、行き帰りは凛太朗が事務的に行っていたのが原因だった。学校近くのコンビニでお菓子と飲料を購入した後、下校途中にある大きな公園へと足を運んだ。桜は、盛りがとうに過ぎ、枝からは若葉が生え始めようとしていた。
「本当はさ、お花見したかったんだけどね。色々あったし、満開になってからは、雨が降ったりで、今年は散るの早かったな。凜ちゃん、ニューヨークにいた頃はお花見とかしてたの?」
「僕は、通った時に見上る程度。そこまで真剣に花を見た記憶はない。お花見に行く人もいるようだけど。」
「そうなんだ。そんな日本みたいな文化あったんだね。私、ニューヨークには行ったことないからなぁ。海外って、四季がないって言うじゃん。」
「うん。でも、ニューヨークはあったよ。日本みたいにはっきりとしたものじゃなかったけど。」
「へぇ。知らなかった。流石、住んでいただけのことはあるね。」
「まぁ、漠然としてたから薄い記憶しかないけど。……天音さん、あれから変わったことある。」
唐突に凛太朗に聞かれ、ドキリとする。きっと彼が聞いているのは、あれから不審な人物に会っていないか、ということだろう。
「ううん。休みの日に1人で出かけることはあったけど、特に何も。すごく周りを見るようにしてたけど。」
「そっか。ちなみに思い返しても、心当たりはない。男の人で、煙草も吸っているような。……例えばさ、天音さんの同居人の知り合いとか。」
「もしかして、凜ちゃんは、昴や翼が原因じゃないかって、言いたいの?」
天音は、凛太朗をじっと見つめる。
「可能性の1つとして、だよ。」
「翼は、わかんないけど、昴の素行は、悪い時もあった。でも、それに私って関係ある?凜ちゃん、比べられるのとか、嫌だったじゃん。それと一緒だよ。私だって疑いたくないし、2人のことをそんな目で見ないでほしい。」
「天音さんに危害が加わったんだから、誰であろうと僕は、疑う。怪我で今回は済んだけど、それ以上の被害があったかもしれないって、考えたことある?……相手は、男だ。いろんな傷をつけられたかもしれなかったんだぞ。」
「凜ちゃん、変わったね。」
「天音さんもだよ。僕たちは、高校生になったんだ。いつまでも子どもじゃない。ちゃんと考えられるし、行動もできる。」
「……そうだね。決断も、できるよね。凜ちゃん、もう帰ろう。」
そう言って、天音は、ベンチに置いたバッグを肩にかけ、歩き始める。駅前まで2人は、何となく無言だった。
「天音さん、もう1人でも大丈夫だから。」
凛太朗はそれだけ言うと、改札へ向かう。ぽつりと残された天音は、久しぶりにイヤホンを装着した。帰宅途中でこうやって音楽を聴くのは久しぶりだった。しかし、この1年で色々起こったことを思い出すと、心を軽くすることはできなかった。通りかっかた学生の集団の目をやる。彼らは、談笑しているのに、天音はそうすることができない環境が現実に突きつけられた気分だった。思えば、昴との会話は減ったし、2人で笑うことも減った。それは翼がいなくなったことが1番の要因だ。翼と話せるようになるまでは、いなくとも平気だったのに、今は違った。それに加え、凛太朗との仲も悪いことが自覚できるようになってきた。
否、仲が悪いと言うよりかは、凛太朗が天音の心配をするあまりに、距離が生まれたと言った方が正しい。どこで間違ってしまったのだろう、天音が思い返しても、その答えは、見つかることはない。ただ、全てを捨ててしまえば、楽になれるんじゃないかと思うばかりだった。
「本当はさ、お花見したかったんだけどね。色々あったし、満開になってからは、雨が降ったりで、今年は散るの早かったな。凜ちゃん、ニューヨークにいた頃はお花見とかしてたの?」
「僕は、通った時に見上る程度。そこまで真剣に花を見た記憶はない。お花見に行く人もいるようだけど。」
「そうなんだ。そんな日本みたいな文化あったんだね。私、ニューヨークには行ったことないからなぁ。海外って、四季がないって言うじゃん。」
「うん。でも、ニューヨークはあったよ。日本みたいにはっきりとしたものじゃなかったけど。」
「へぇ。知らなかった。流石、住んでいただけのことはあるね。」
「まぁ、漠然としてたから薄い記憶しかないけど。……天音さん、あれから変わったことある。」
唐突に凛太朗に聞かれ、ドキリとする。きっと彼が聞いているのは、あれから不審な人物に会っていないか、ということだろう。
「ううん。休みの日に1人で出かけることはあったけど、特に何も。すごく周りを見るようにしてたけど。」
「そっか。ちなみに思い返しても、心当たりはない。男の人で、煙草も吸っているような。……例えばさ、天音さんの同居人の知り合いとか。」
「もしかして、凜ちゃんは、昴や翼が原因じゃないかって、言いたいの?」
天音は、凛太朗をじっと見つめる。
「可能性の1つとして、だよ。」
「翼は、わかんないけど、昴の素行は、悪い時もあった。でも、それに私って関係ある?凜ちゃん、比べられるのとか、嫌だったじゃん。それと一緒だよ。私だって疑いたくないし、2人のことをそんな目で見ないでほしい。」
「天音さんに危害が加わったんだから、誰であろうと僕は、疑う。怪我で今回は済んだけど、それ以上の被害があったかもしれないって、考えたことある?……相手は、男だ。いろんな傷をつけられたかもしれなかったんだぞ。」
「凜ちゃん、変わったね。」
「天音さんもだよ。僕たちは、高校生になったんだ。いつまでも子どもじゃない。ちゃんと考えられるし、行動もできる。」
「……そうだね。決断も、できるよね。凜ちゃん、もう帰ろう。」
そう言って、天音は、ベンチに置いたバッグを肩にかけ、歩き始める。駅前まで2人は、何となく無言だった。
「天音さん、もう1人でも大丈夫だから。」
凛太朗はそれだけ言うと、改札へ向かう。ぽつりと残された天音は、久しぶりにイヤホンを装着した。帰宅途中でこうやって音楽を聴くのは久しぶりだった。しかし、この1年で色々起こったことを思い出すと、心を軽くすることはできなかった。通りかっかた学生の集団の目をやる。彼らは、談笑しているのに、天音はそうすることができない環境が現実に突きつけられた気分だった。思えば、昴との会話は減ったし、2人で笑うことも減った。それは翼がいなくなったことが1番の要因だ。翼と話せるようになるまでは、いなくとも平気だったのに、今は違った。それに加え、凛太朗との仲も悪いことが自覚できるようになってきた。
否、仲が悪いと言うよりかは、凛太朗が天音の心配をするあまりに、距離が生まれたと言った方が正しい。どこで間違ってしまったのだろう、天音が思い返しても、その答えは、見つかることはない。ただ、全てを捨ててしまえば、楽になれるんじゃないかと思うばかりだった。
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