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運命の悪戯13
進路指導室で担任に留学することを告げてからは、授業も身に入らなかった。全ては私の意識の外で起こっていることで、まるで水族館の水槽をみているようなぼやっとしたものだった。隣の席のクラスメイトにも、珍しくノートあまり書いてないね、と言われるほどだった。
「うん、ちょっと怠くて。五月病かもしれない。」
そう言う天音に、クラスメイトは、驚いた顔をする。
「へぇ。そんなこと思ったりするんだ。学校ではすごくきっちりしているから、そんな感情ないと思ってた。」
「学校ではって、ちょっと失礼すぎるよ。」
「ごめん、ごめん。だって、ちょっと前に買い物中にあった時、カッコいいお兄さんと歩いていたし、服もすごくおしゃれだったもん。ギャップがすごくて。どういう関係か気になったけど、親戚の人だったなんて残念。ちょっと昼ドラみたいな展開を期待したのにぃ。」
そう言ってクラスメイトは面白がった後に、あからさまに残念そうな表情をする。彼女の言う“カッコいいお兄さん”は、翼のことだ。以前、街で会い、翌日、学校へ行った時に質問攻めにあったからだ。翼は、華奢な背丈ではあるが、天音よりは年上であることは明らかであった。また、彼はオシャレである上に、爪や髪、肌の手入れなどは、女子顔負けの気の使いようだった。
「そんな展開ないよ。本当、仲の良いお兄さんって感じだから。」
翼と一緒に過ごした時間はかけがえのないないものだった。叶うならスイスに発つまでに会いたい、もし会えなくとも連絡はしてほしい、そう思うのだった。
天音と凛太郎の放課後は、以前の教室で居残りをする生活へと戻っていた。クラスメイト達は、再び残る生活になった2人を特に気にする様子もなく、受け入れていた。
「凛ちゃん、実はさ、スイスに留学することになったんだ。」
席について教科書をカバンから出している凛太郎に向かってそう言うと、彼は、手を止め、顔を上げる。何か言うために口を開こうとしたものの、すぐに口を閉じ、真一文字になる。
「急な話だったんだ。先生に薦められて。返事も早くしないとダメだったし、両親も喜んでくれてる。そんな状況だったから、断れなくて。凛ちゃんに、言うのが遅くなってごめんね。」
凛太郎は、天音の話を静かに最後まで聞くと、視線を落とす。
「いいんじゃない?勉強にもなるし。両親と暮らすことが天音さんにとって、1番だと思う。」
2人の会話が聞こえてきたのか、複数人が天音の留学について尋ね始める。
「天音ちゃん、すごい。2年生でも行けるんだね。」
「3年生が留学すると、半年で日本で卒業式して、大学に進学するか、そのまま、編入して、現地の大学に進むのがほとんどだよな。水瀬の場合は、その点、スイスで過ごす時間が長くなるってことだよな?」
「いつまで行くか聞いた?」
漠然のクラスメイトの話を聞いていた天音は、大事なことを聞き忘れていたことに気付く。今話していた“期間”についてだ。行くか行かないかの話ばかりだったので、期間などは気にしていなかった。留学というのだからある程度のまとまった期間であることは理解していた。
「まだ詳細は決まってないって言われたけど、期間かぁ。だいたいでも聞いておけばよかったね。」
そう言うと、周りは笑いに包まれる。
「すごい大事なことだよ。ホームシックになること考えなかったの?」
「それが、天音ちゃんの両親は、今、スイスにいるから、むしろ今がホームシックの状態だもんね。」
「なんだ、じゃあ、ちょっと気が楽だな。」
天音は、凛太朗を見ると、座ったままで、その話をつまらなそうに聞いていた。心から喜んでいるであろうクラスメイトとは、対照的であるように天音の目には映った。
「うん、ちょっと怠くて。五月病かもしれない。」
そう言う天音に、クラスメイトは、驚いた顔をする。
「へぇ。そんなこと思ったりするんだ。学校ではすごくきっちりしているから、そんな感情ないと思ってた。」
「学校ではって、ちょっと失礼すぎるよ。」
「ごめん、ごめん。だって、ちょっと前に買い物中にあった時、カッコいいお兄さんと歩いていたし、服もすごくおしゃれだったもん。ギャップがすごくて。どういう関係か気になったけど、親戚の人だったなんて残念。ちょっと昼ドラみたいな展開を期待したのにぃ。」
そう言ってクラスメイトは面白がった後に、あからさまに残念そうな表情をする。彼女の言う“カッコいいお兄さん”は、翼のことだ。以前、街で会い、翌日、学校へ行った時に質問攻めにあったからだ。翼は、華奢な背丈ではあるが、天音よりは年上であることは明らかであった。また、彼はオシャレである上に、爪や髪、肌の手入れなどは、女子顔負けの気の使いようだった。
「そんな展開ないよ。本当、仲の良いお兄さんって感じだから。」
翼と一緒に過ごした時間はかけがえのないないものだった。叶うならスイスに発つまでに会いたい、もし会えなくとも連絡はしてほしい、そう思うのだった。
天音と凛太郎の放課後は、以前の教室で居残りをする生活へと戻っていた。クラスメイト達は、再び残る生活になった2人を特に気にする様子もなく、受け入れていた。
「凛ちゃん、実はさ、スイスに留学することになったんだ。」
席について教科書をカバンから出している凛太郎に向かってそう言うと、彼は、手を止め、顔を上げる。何か言うために口を開こうとしたものの、すぐに口を閉じ、真一文字になる。
「急な話だったんだ。先生に薦められて。返事も早くしないとダメだったし、両親も喜んでくれてる。そんな状況だったから、断れなくて。凛ちゃんに、言うのが遅くなってごめんね。」
凛太郎は、天音の話を静かに最後まで聞くと、視線を落とす。
「いいんじゃない?勉強にもなるし。両親と暮らすことが天音さんにとって、1番だと思う。」
2人の会話が聞こえてきたのか、複数人が天音の留学について尋ね始める。
「天音ちゃん、すごい。2年生でも行けるんだね。」
「3年生が留学すると、半年で日本で卒業式して、大学に進学するか、そのまま、編入して、現地の大学に進むのがほとんどだよな。水瀬の場合は、その点、スイスで過ごす時間が長くなるってことだよな?」
「いつまで行くか聞いた?」
漠然のクラスメイトの話を聞いていた天音は、大事なことを聞き忘れていたことに気付く。今話していた“期間”についてだ。行くか行かないかの話ばかりだったので、期間などは気にしていなかった。留学というのだからある程度のまとまった期間であることは理解していた。
「まだ詳細は決まってないって言われたけど、期間かぁ。だいたいでも聞いておけばよかったね。」
そう言うと、周りは笑いに包まれる。
「すごい大事なことだよ。ホームシックになること考えなかったの?」
「それが、天音ちゃんの両親は、今、スイスにいるから、むしろ今がホームシックの状態だもんね。」
「なんだ、じゃあ、ちょっと気が楽だな。」
天音は、凛太朗を見ると、座ったままで、その話をつまらなそうに聞いていた。心から喜んでいるであろうクラスメイトとは、対照的であるように天音の目には映った。
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