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白いポピーに包まれて8 sideS
「よぉ、最近店に来ねぇじゃん。」
少なくとも週に1度は必ず店に訪れていた彼女が2週間程来ていなかったのは、事実だった。淡い春らしい色合いのワンピースを着た彼女は、触れると壊れてしまいそうなほどに弱弱しく見えた。
「昴君……実はさ、伝えないといけないことがあったんだけど、怖くて。でも、まさか、昴君から来てくれるなんて思ってもいなかった。」
その言葉を聞き、昴は、まさか、と思う。もしかすると、彼女は、翼の行方を知っているのかもしれない。期待が脳内を過る。
「それって……。」
昴は、次に麗が発するであろう麗の言葉を我慢強く待つ。
「私さ、しばらく前にしつこく言い寄ってくる男がいるって話したじゃん。そいつさ、長い階段から転げ落ちて、入院してるんだって。意識はあるみたいだけど、元の生活に戻れるかわかんないって。わざわざ私に教えてくれたのよね、その仲間の1人が。気の毒には思ったけど、正直バチが当たったとしか、思えない。」
「へぇ、まぁお前もそれなら良かったんじゃねぇの。気分は良くはないだろうが。それで、その話のどこに怖い要素があるんだ?」
「その話にはさ、裏があってさ。実は、その男、天音ちゃんのことも付け狙ってたみたいなの。本当に、ごめん。引き寄せたのは、全部私が悪いの。天音ちゃんにも直接会って謝りたいよ。」
麗はにわかに信じられないことを言うが、先日のポストに入っていたメッセージは、麗に付きまとっていた男が書いたものであると合点がいった。
「どうして、お前のストーカーが天音を狙う必要があるんだ?お前が仕向けたのか。」
冷静になれず、つい彼女を責めるような口調になる。
「違う。でも、まさか、こんなことになるなんて。余計なことを言わなければよかった。」
そう言った後、麗は、事の詳細を話始める。
彼女を付きまとっていた男・ダイキは、麗に狂気的な好意を抱いていたそうだ。そのことは、麗もダイキが事故に合ってから知ったことだった。
最初は、たまたまバーで会えば話す、そんな程度の関係だったそうだ。好みの女と酒が飲める、ダイキは、それで満たされていたようだったが、欲深くもそれ以上の関係を求めてしまったようだ。一向に進展しない関係に痺れを切らし、強行突破しようと麗に何度も言い寄った。積み重ねが、執着に繋がっていったようだった。そこで、麗は酔っていたこともあり、名前を出してしまったのだ、翼と天音の名を。
『私は、翼君みたいな人が好みなの。でも、翼君には、天音ちゃんっていう可愛い女の子がいる。私はね、あんたにかまけている暇なんてないの。天音ちゃんに負けないくらい、女を磨く必要があるの、いい加減にしてくれない?』
麗の言葉を正確に理解できなかったのか、ダイキは、名前が挙がった翼と天音を恨むようになった。
しかし、その頃、翼は、置手紙をして、出て行ったばかりだった。ダイキは、翼の弟である昴の跡をつけたりし、天音を必死に探した。最初こそ、天音の顔などわからなかったが、ダイキの執念は凄まじかった。休みの日、ついに昴と家の近くを歩いていた天音を見かけ、顔を脳内に焼き付けた。あの女こそが、麗が振り向かない元凶なのだと。
無防備な天音を狙うのは容易だった。天音の容姿からして、学生であろうと容易に想像できたのだろう。平日の夕刻から夜にかけ、ひたすら周辺で天音を待つだけだった。
ダイキの本来の目的は未遂に終わった後は、ずっと凛太朗が横にいたので、手を出すことはできずにいた。そして、ダイキが階段から落とされる数十分前、昴や天音の住むマンションに寄ったのには、それなりの理由があった。ダイキは、マンションがオートロックで入れないことを知っていた。天音に近づくことが難し中、どうやって恐怖を与えるのかを考えた結果、手紙を出すことにした。
マンションの郵便ポストには、苗字の札が入っているので、どの部屋に住んでいるのは知るのは容易だった。ダイキは、天音宛のメッセージをポストへ入れると、そのまま天音を待つことなく立ち去ったそうだ。
「この話はね、全部、彼と電話していた男から聞いたの。」
「じゃあ、天音が隠そうとした足の痣は……。」
事の発端は、昴自身であることを知り、体が心から冷えていく。すごく大切なものを再び失ったような、そんな孤独感だ。
「きっとダイキの仕業だと思う。そんな風なことも言っていたそうだから……本当にごめん、私のせいで天音ちゃんに怖い思いを……」
「……口は災いの元だ。でも、話してくれてありがとう。」
昴は、怒りを抑え、その言葉を無理矢理絞り出した。麗を責めても仕方がない。昴自身が、軽率に天音のことを話したのが災いを引き寄せたのだと認めざるを得なかったからだ。軽率な行動が重なり、招いた悲劇だった。これから天音をどうやって守るかを考えるようにした。
少なくとも週に1度は必ず店に訪れていた彼女が2週間程来ていなかったのは、事実だった。淡い春らしい色合いのワンピースを着た彼女は、触れると壊れてしまいそうなほどに弱弱しく見えた。
「昴君……実はさ、伝えないといけないことがあったんだけど、怖くて。でも、まさか、昴君から来てくれるなんて思ってもいなかった。」
その言葉を聞き、昴は、まさか、と思う。もしかすると、彼女は、翼の行方を知っているのかもしれない。期待が脳内を過る。
「それって……。」
昴は、次に麗が発するであろう麗の言葉を我慢強く待つ。
「私さ、しばらく前にしつこく言い寄ってくる男がいるって話したじゃん。そいつさ、長い階段から転げ落ちて、入院してるんだって。意識はあるみたいだけど、元の生活に戻れるかわかんないって。わざわざ私に教えてくれたのよね、その仲間の1人が。気の毒には思ったけど、正直バチが当たったとしか、思えない。」
「へぇ、まぁお前もそれなら良かったんじゃねぇの。気分は良くはないだろうが。それで、その話のどこに怖い要素があるんだ?」
「その話にはさ、裏があってさ。実は、その男、天音ちゃんのことも付け狙ってたみたいなの。本当に、ごめん。引き寄せたのは、全部私が悪いの。天音ちゃんにも直接会って謝りたいよ。」
麗はにわかに信じられないことを言うが、先日のポストに入っていたメッセージは、麗に付きまとっていた男が書いたものであると合点がいった。
「どうして、お前のストーカーが天音を狙う必要があるんだ?お前が仕向けたのか。」
冷静になれず、つい彼女を責めるような口調になる。
「違う。でも、まさか、こんなことになるなんて。余計なことを言わなければよかった。」
そう言った後、麗は、事の詳細を話始める。
彼女を付きまとっていた男・ダイキは、麗に狂気的な好意を抱いていたそうだ。そのことは、麗もダイキが事故に合ってから知ったことだった。
最初は、たまたまバーで会えば話す、そんな程度の関係だったそうだ。好みの女と酒が飲める、ダイキは、それで満たされていたようだったが、欲深くもそれ以上の関係を求めてしまったようだ。一向に進展しない関係に痺れを切らし、強行突破しようと麗に何度も言い寄った。積み重ねが、執着に繋がっていったようだった。そこで、麗は酔っていたこともあり、名前を出してしまったのだ、翼と天音の名を。
『私は、翼君みたいな人が好みなの。でも、翼君には、天音ちゃんっていう可愛い女の子がいる。私はね、あんたにかまけている暇なんてないの。天音ちゃんに負けないくらい、女を磨く必要があるの、いい加減にしてくれない?』
麗の言葉を正確に理解できなかったのか、ダイキは、名前が挙がった翼と天音を恨むようになった。
しかし、その頃、翼は、置手紙をして、出て行ったばかりだった。ダイキは、翼の弟である昴の跡をつけたりし、天音を必死に探した。最初こそ、天音の顔などわからなかったが、ダイキの執念は凄まじかった。休みの日、ついに昴と家の近くを歩いていた天音を見かけ、顔を脳内に焼き付けた。あの女こそが、麗が振り向かない元凶なのだと。
無防備な天音を狙うのは容易だった。天音の容姿からして、学生であろうと容易に想像できたのだろう。平日の夕刻から夜にかけ、ひたすら周辺で天音を待つだけだった。
ダイキの本来の目的は未遂に終わった後は、ずっと凛太朗が横にいたので、手を出すことはできずにいた。そして、ダイキが階段から落とされる数十分前、昴や天音の住むマンションに寄ったのには、それなりの理由があった。ダイキは、マンションがオートロックで入れないことを知っていた。天音に近づくことが難し中、どうやって恐怖を与えるのかを考えた結果、手紙を出すことにした。
マンションの郵便ポストには、苗字の札が入っているので、どの部屋に住んでいるのは知るのは容易だった。ダイキは、天音宛のメッセージをポストへ入れると、そのまま天音を待つことなく立ち去ったそうだ。
「この話はね、全部、彼と電話していた男から聞いたの。」
「じゃあ、天音が隠そうとした足の痣は……。」
事の発端は、昴自身であることを知り、体が心から冷えていく。すごく大切なものを再び失ったような、そんな孤独感だ。
「きっとダイキの仕業だと思う。そんな風なことも言っていたそうだから……本当にごめん、私のせいで天音ちゃんに怖い思いを……」
「……口は災いの元だ。でも、話してくれてありがとう。」
昴は、怒りを抑え、その言葉を無理矢理絞り出した。麗を責めても仕方がない。昴自身が、軽率に天音のことを話したのが災いを引き寄せたのだと認めざるを得なかったからだ。軽率な行動が重なり、招いた悲劇だった。これから天音をどうやって守るかを考えるようにした。
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