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病院の一角
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僕は、T国立医療大学病院への研修を命じられた。最先端医療機器を扱う病院を見学できることは、勉強にもなるし、何より興味深い。特定の営業担当だけ入ることが許されたその環境に、中堅そこそこの自身が選ばれて、研修できることに誇りに思えた。今の時代、胸を張って仕事ができることはなかなかない。医療従事者と医療機器の開発者、相互の関係を良好に保つことが発展への道標だと僕は思っている。
研修は、支部長から直々に命ぜられたのだが、その際、もう一つ言われたことがある。
「前支部長がそこで入院中だから様子を見に行っておいで、世話になっただろう」
驚いた。崎戸前支部長は、健康を第一に考えて、仕事も定時に終わり、規則正しい生活をしていたと耳にしたことがあったからだ。なんと世の中は残酷なのだろう、健康に気を遣っている人ほど病気になったりする。一体、前支部長はどういった病で、そう疑問を抱きつつも、聞き返すことなく、数日後の研修へ臨んだ。
交通機関を乗り継ぎ、たどり着いたT医療病院。近くを通り外観だけ見たことはあったが、実際は思ったよりも大きかった。都市部にあるこの病院は、通常の病院と変わらず、外来患者や緊急の患者も受け入れる。最先端医療機器を使った最先端の医療の他、新薬の開発、臨床試験なども行う研究施設も併設されているため、国内でも随一の規模だ。
僕は、病院の事務所へ向かい受付をすると、すぐに担当者が迎えにきて、病院内を案内された。AI技術を取り入れた機器や写真でしか見たことのない器具を見ると、この病院の医療の発展ぶりは他の地方病院と天と地ほど差があるのは、想像にたやすい。これらの医療技術や機器をもっと広く取り入れることができれば、苦しむ人も少なくなるのだろうと思いつつ、見学した機器や技術について詳細にメモを取った。
小一時間ほどの見学が終わると、あとは、最近の困難な手術事例と最新機器の使用実績の説明を受けた、そのとき目を通した資料表紙には、『※一般病棟』と書かれていた。特別があるのか、著名人が入院する病棟については秘匿とされていたようだった。そのことについては、あえて触れることなく、事例や機器について、差し障りのない程度の質問を繰り返し、研修を終えた頃は、すっかり昼食時が過ぎていた。
「本日は、ありがとうございました。今日は勉強になりました。このあとは、ここに入院している元上司に挨拶をしてから帰ります」
担当者にそう伝えると、快く了承してくれて、端末から入院している部屋まで教えてくれると言ってくれたので、僕は前支部長である“崎戸理子”の名を告げた。
「……その方の病名とか知らされていますか?」
何かを探るような雰囲気で、担当者は、僕に尋ねるが、僕は何も知らされていなかったので、正直に知らないと答える。すると、担当者は、少し考えてから、上の者に確認します。と言って、その場を離れた。5分以上経過しただろうか、担当者は戻ってきてから、病棟まで案内すると告げた。
担当者は、歩きながら淡々と告げる。
「崎戸様が入院しているのは、特別病棟です。本日の研修では、あえてお話ししなかったのですが、特別病棟というのは、特殊な病を患った患者様の生活する空間ですね。面会は、基本的には謝絶なんですが、今回は、医学界の進歩を担う会社の担当者様、またそれに関わっていた患者様ということで特別に許可をいただきました」
僕は、はっとする。研修資料には、一般病棟のものしかなかったが、特別病棟のものも存在していたらしい。しかも、それは著名人のための身を隠すための病棟ではなく、病を隠す病棟。いったいどのような病のことなのだろうか、戸崎前支部長は、難しい人だった。僕のような一担当が会いに行ってもいいものだろうか、今更、やめますということもできずに、重い足取りで、特別病棟へと向かう。
特別病棟は、研究施設に併設される形で、一般病棟からはずいぶん離れた場所に建っていた。病院棟の一角といえば一角だが、完全に孤立させられている一角だった。敷地内にいくつも建物が建っていてわからなかったが、この特別病棟だけは、窓が小さいように感じた。まるでコンクリートの牢獄だった。
研修は、支部長から直々に命ぜられたのだが、その際、もう一つ言われたことがある。
「前支部長がそこで入院中だから様子を見に行っておいで、世話になっただろう」
驚いた。崎戸前支部長は、健康を第一に考えて、仕事も定時に終わり、規則正しい生活をしていたと耳にしたことがあったからだ。なんと世の中は残酷なのだろう、健康に気を遣っている人ほど病気になったりする。一体、前支部長はどういった病で、そう疑問を抱きつつも、聞き返すことなく、数日後の研修へ臨んだ。
交通機関を乗り継ぎ、たどり着いたT医療病院。近くを通り外観だけ見たことはあったが、実際は思ったよりも大きかった。都市部にあるこの病院は、通常の病院と変わらず、外来患者や緊急の患者も受け入れる。最先端医療機器を使った最先端の医療の他、新薬の開発、臨床試験なども行う研究施設も併設されているため、国内でも随一の規模だ。
僕は、病院の事務所へ向かい受付をすると、すぐに担当者が迎えにきて、病院内を案内された。AI技術を取り入れた機器や写真でしか見たことのない器具を見ると、この病院の医療の発展ぶりは他の地方病院と天と地ほど差があるのは、想像にたやすい。これらの医療技術や機器をもっと広く取り入れることができれば、苦しむ人も少なくなるのだろうと思いつつ、見学した機器や技術について詳細にメモを取った。
小一時間ほどの見学が終わると、あとは、最近の困難な手術事例と最新機器の使用実績の説明を受けた、そのとき目を通した資料表紙には、『※一般病棟』と書かれていた。特別があるのか、著名人が入院する病棟については秘匿とされていたようだった。そのことについては、あえて触れることなく、事例や機器について、差し障りのない程度の質問を繰り返し、研修を終えた頃は、すっかり昼食時が過ぎていた。
「本日は、ありがとうございました。今日は勉強になりました。このあとは、ここに入院している元上司に挨拶をしてから帰ります」
担当者にそう伝えると、快く了承してくれて、端末から入院している部屋まで教えてくれると言ってくれたので、僕は前支部長である“崎戸理子”の名を告げた。
「……その方の病名とか知らされていますか?」
何かを探るような雰囲気で、担当者は、僕に尋ねるが、僕は何も知らされていなかったので、正直に知らないと答える。すると、担当者は、少し考えてから、上の者に確認します。と言って、その場を離れた。5分以上経過しただろうか、担当者は戻ってきてから、病棟まで案内すると告げた。
担当者は、歩きながら淡々と告げる。
「崎戸様が入院しているのは、特別病棟です。本日の研修では、あえてお話ししなかったのですが、特別病棟というのは、特殊な病を患った患者様の生活する空間ですね。面会は、基本的には謝絶なんですが、今回は、医学界の進歩を担う会社の担当者様、またそれに関わっていた患者様ということで特別に許可をいただきました」
僕は、はっとする。研修資料には、一般病棟のものしかなかったが、特別病棟のものも存在していたらしい。しかも、それは著名人のための身を隠すための病棟ではなく、病を隠す病棟。いったいどのような病のことなのだろうか、戸崎前支部長は、難しい人だった。僕のような一担当が会いに行ってもいいものだろうか、今更、やめますということもできずに、重い足取りで、特別病棟へと向かう。
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