サウザンド・ジョブ・オンライン ~あるみならい僧侶の話~

アヤマチ☆ユキ

文字の大きさ
5 / 95
第1章 はじまりの街 編

005 サポートペット

しおりを挟む

 サウザンド・ジョブ・オンライン(Thousand Job Online)略してTJO には
いわゆる『無限収納』とか『インベントリ』というモノが一応存在している。
 しかし無限というか≪極めて有限≫なのだ。具体的には≪わずか50品目≫だ。
即座に出し入れ出来るためリュックやカバン等よりは、はるかにマシだが容量がさみしい。
 この仕様に序盤こそ、なんとかやり繰りしていたプレイヤーも、徐々に所持品や消耗品で『インベントリ』が圧迫されはじめると不満や批判が続出した。

「…せめてミケとかなら、まだぎりぎり…いやでも……」

 そこで発売から1年たった『大型アップデート』で、実装され登場したのが『サポートペット』である。一言で表すなら『連れ歩ける無限倉庫』。
 雑誌インタビューによると、どうやらプレイヤーの『インベントリ』の拡張は難しかったらしい。その代わりに…という事で登場した『サポートペット』のスペックであるが、なんと一気に≪65535品目に激増≫したうえ、『インベントリ』内では『1セット99個まで』だったのが、『1セット9999個まで』スタック可能となった。
 倉庫キャラ? そんなゴミいらねwww 状態である。

 比べてみると以下の通り、圧倒的である。
インベントリ     50品目    各99個まで  例)薬草×99
サポートペット 65535品目  各9999個まで  例)薬草×9999

 ただし『即座に出し入れは出来ない』し、≪非戦闘NPC扱い≫なので『戦闘中の出し入れも不可能』。また≪プレイヤー側の仕様上≫、『インベントリ』にも手元にも『一度に99個までしか取り出せない』。
 それから一応は希望制に近いので『サポートペット』は購入する必要がある。(もっとも発売1年も経過していたので大半のプレイヤーにとってたいした金額では無かったのだが)

 ≪性能はどれも同じ≫だが、動物の種類、柄といった見た目や、会話、性格付け…等で値段はピンからキリまでとなっている。
 ちなみに探求の街[クルブズ]の『ペットショップ』で購入された、
『金色のイワトビペンギン型』、性格ツンデレ……が確認された中では最高額で、
1,800万G = 18,000,000G …だったらしい。性能一緒なのに……

 『ペットショップ』を出てからも、命名に不満そうに尻尾を振り回しながら、後をついてきていた、≪4,000Gのミケネコさん≫を見ながら『サポートペット』の歴史について考えていると、≪4,000Gの三毛猫雌のミケネコさん(CV:井口裕香)≫が、ようやく機嫌をなおしたのか質問してきた。

「…そうだ、どうよんだらいいの? ご主人さま?」

 ご主人様って…なんかむず痒くなってくるな。だがそこら中で名前を連呼されるのもあまりよろしくない、TJOの世界で目立つのは自殺行為だ。
 う~ん……「ご主人様」、「主殿」、「親方様?」、「マスター?」、「マイロード」
……俺は一体何様だよ……

「それじゃ、ご主人様」
「それじゃ、ご主人さま~、これからどうするの?」
「宿屋で宿を取って、道具屋で冒険用の道具を揃えて、露天で食料を買って探索に出る」
「ぶきとか、ぼうぐとか買わないの?」
「大丈夫だ、問題ない」
「だいじょうぶそうに見えないけど……」

 「………」確かに素手だし布の服だし、100%『村人』だな。だがこれでいいのだ。

「なかまとかとパーティとか組んだりしないの?」
「大丈夫だ、問題ない」
「だいじょうぶそうに見えないけど……」

 「………」確かに素手だし布の服だし、100%ぼっち『村人』その1だな。だがこれでいいのだ。ゲーム時代では『サポートペット』が実装されてない1年目だったので、予算に余裕があったから”盾”や”皮鎧”を買ったりしていたが、結果として必要無かった。
 だから今回はその費用を『サポートペット』購入にまわした。そして宿屋で部屋を取り、道具屋で道具を、周辺で食料を買い込んでLV上げにはいる。
 客観的に見ると、”素手”で”布の服”の、ぼっち『村人』その1…な『みならい僧侶』LV1が、『三毛猫』1匹と本日、死出の旅に出る。

「大丈夫だ、問題ない」
「だいじょうぶそうに見えないけど……」
 ミケネコが不安そうにヒゲをピクピク動かした。


---------------------------------------------------------------------------
LV:1
職業:みならい僧侶
サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)
所持金:6,000G
武器:なし
防具:布の服
所持品:0/50


>ちなみに探求の街[クルブズ]のペットショップで購入された金色のイワトビペンギン型、性格ツンデレ・・・が確認された中では最高額で、1,800万Gだったらしい。性能一緒なのに

 はい、想像通り?(CV:釘宮理恵)です。予算の都合でセリフは一切ありません。
「何よっ、このワタシに荷物を持たせようっていうの? 馬鹿なの?」
 とかそんなセリフはありません。
「ま、まぁ今日は特別に1つぐらいなら持ってあげてもいいわ。とっ特別なんだからねっ」
 とかいうデレもありません。

 ちなみに購入者は、『なんとか型の謎の病』を発症されていた方の様です。
よくわかりません。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

処理中です...