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第1章 はじまりの街 編

005 サポートペット

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 サウザンド・ジョブ・オンライン(Thousand Job Online)略してTJO には
いわゆる『無限収納』とか『インベントリ』というモノが一応存在している。
 しかし無限というか≪極めて有限≫なのだ。具体的には≪わずか50品目≫だ。
即座に出し入れ出来るためリュックやカバン等よりは、はるかにマシだが容量がさみしい。
 この仕様に序盤こそ、なんとかやり繰りしていたプレイヤーも、徐々に所持品や消耗品で『インベントリ』が圧迫されはじめると不満や批判が続出した。

「…せめてミケとかなら、まだぎりぎり…いやでも……」

 そこで発売から1年たった『大型アップデート』で、実装され登場したのが『サポートペット』である。一言で表すなら『連れ歩ける無限倉庫』。
 雑誌インタビューによると、どうやらプレイヤーの『インベントリ』の拡張は難しかったらしい。その代わりに…という事で登場した『サポートペット』のスペックであるが、なんと一気に≪65535品目に激増≫したうえ、『インベントリ』内では『1セット99個まで』だったのが、『1セット9999個まで』スタック可能となった。
 倉庫キャラ? そんなゴミいらねwww 状態である。

 比べてみると以下の通り、圧倒的である。
インベントリ     50品目    各99個まで  例)薬草×99
サポートペット 65535品目  各9999個まで  例)薬草×9999

 ただし『即座に出し入れは出来ない』し、≪非戦闘NPC扱い≫なので『戦闘中の出し入れも不可能』。また≪プレイヤー側の仕様上≫、『インベントリ』にも手元にも『一度に99個までしか取り出せない』。
 それから一応は希望制に近いので『サポートペット』は購入する必要がある。(もっとも発売1年も経過していたので大半のプレイヤーにとってたいした金額では無かったのだが)

 ≪性能はどれも同じ≫だが、動物の種類、柄といった見た目や、会話、性格付け…等で値段はピンからキリまでとなっている。
 ちなみに探求の街[クルブズ]の『ペットショップ』で購入された、
『金色のイワトビペンギン型』、性格ツンデレ……が確認された中では最高額で、
1,800万G = 18,000,000G …だったらしい。性能一緒なのに……

 『ペットショップ』を出てからも、命名に不満そうに尻尾を振り回しながら、後をついてきていた、≪4,000Gのミケネコさん≫を見ながら『サポートペット』の歴史について考えていると、≪4,000Gの三毛猫雌のミケネコさん(CV:井口裕香)≫が、ようやく機嫌をなおしたのか質問してきた。

「…そうだ、どうよんだらいいの? ご主人さま?」

 ご主人様って…なんかむず痒くなってくるな。だがそこら中で名前を連呼されるのもあまりよろしくない、TJOの世界で目立つのは自殺行為だ。
 う~ん……「ご主人様」、「主殿」、「親方様?」、「マスター?」、「マイロード」
……俺は一体何様だよ……

「それじゃ、ご主人様」
「それじゃ、ご主人さま~、これからどうするの?」
「宿屋で宿を取って、道具屋で冒険用の道具を揃えて、露天で食料を買って探索に出る」
「ぶきとか、ぼうぐとか買わないの?」
「大丈夫だ、問題ない」
「だいじょうぶそうに見えないけど……」

 「………」確かに素手だし布の服だし、100%『村人』だな。だがこれでいいのだ。

「なかまとかとパーティとか組んだりしないの?」
「大丈夫だ、問題ない」
「だいじょうぶそうに見えないけど……」

 「………」確かに素手だし布の服だし、100%ぼっち『村人』その1だな。だがこれでいいのだ。ゲーム時代では『サポートペット』が実装されてない1年目だったので、予算に余裕があったから”盾”や”皮鎧”を買ったりしていたが、結果として必要無かった。
 だから今回はその費用を『サポートペット』購入にまわした。そして宿屋で部屋を取り、道具屋で道具を、周辺で食料を買い込んでLV上げにはいる。
 客観的に見ると、”素手”で”布の服”の、ぼっち『村人』その1…な『みならい僧侶』LV1が、『三毛猫』1匹と本日、死出の旅に出る。

「大丈夫だ、問題ない」
「だいじょうぶそうに見えないけど……」
 ミケネコが不安そうにヒゲをピクピク動かした。


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LV:1
職業:みならい僧侶
サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)
所持金:6,000G
武器:なし
防具:布の服
所持品:0/50


>ちなみに探求の街[クルブズ]のペットショップで購入された金色のイワトビペンギン型、性格ツンデレ・・・が確認された中では最高額で、1,800万Gだったらしい。性能一緒なのに

 はい、想像通り?(CV:釘宮理恵)です。予算の都合でセリフは一切ありません。
「何よっ、このワタシに荷物を持たせようっていうの? 馬鹿なの?」
 とかそんなセリフはありません。
「ま、まぁ今日は特別に1つぐらいなら持ってあげてもいいわ。とっ特別なんだからねっ」
 とかいうデレもありません。

 ちなみに購入者は、『なんとか型の謎の病』を発症されていた方の様です。
よくわかりません。
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