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第2章 出会いの街 編

070 ”夢”の宝箱 <04/05(金)PM 03:33>

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 ※※※ 注意 ※※※

 ただいま [夢の洞窟] 中です。


 大量だったり、黒かったり、テカってたり…そういうのが苦手な方は、しばらく読み飛ばしていただいた方が良いかと思います。ご注意下さい。

 [夢の洞窟]終了まで『目印』として、『無理矢理サブタイトルに”夢”の文字を付けていこう』と思います。よろしければ参考にして下さい。

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 出会いの街[ヘアルツ]の西(←)の岩山にある[夢の洞窟]を探索中の俺達3人は、最初の『大きめの北に伸びた長方形の大部屋(もしくは広い通路?)』から、右、東(→)の『脇通路ルート』を探索し、『合計9個もの宝箱』を発見し、アイテムを回収した。
 そして元の入り口付近まで戻ってきた俺達は、続けて『北(↑)ルート?』の探索を開始し、最初の曲がり角で10個目の宝箱を発見、アイテムを回収したのだった。

北(↑)


┠─ これまで探索していた東(→)の脇通路
入り口

(※↑大雑把に この様な感じです)


「その先は少し広そうだな」
 ヒイラギが前方の様子を見ながら、そうつぶやいた。
 ≪狭い場所≫に近付くと渋滞、混雑するため、『陸海空3軍の覇者』達の『退散速度が遅く』なり、≪広い場所≫に近付くと『退散速度が速くなる』ので大体の目安になるのだ。

「ん~、部屋? の様な広い通路? の様な…」
 前方は膨らんだコブの様な小部屋?みたいで、西(左←)方向に大きく曲がっていた。

「出てきたぞ」
 ケイが前方のコブ風の小部屋?の奥、『右斜め前方』の隅を指差しながら言った。
見ると虫達が退散していく地面の上に、宝箱が1つ姿を見せはじめている。

「よしよし、こっちのルートも順調だな」
 と、ヒイラギはご機嫌で宝箱の方へと近寄っていく。
ケイは左方向の通路? を警戒し、俺は回復の用意をして見守る事にする。

「それじゃ …分析:罠[トラップアナライズ]」
 ヒイラギがスキルを使用すると、宝箱の上面部から下底部に向けて『光る板状のモノ』がス~っと降りていく。

「罠LV21… 『ミミック』だ」

 「………」『ミミック』。ミミックという言葉には、”真似る”、”似せる”、”擬態する”…という意味がある。その名の通り『宝箱に擬態』している≪待ちモンスター≫で、LVは、『プレイヤーの LV ~ LV*2』…の強敵だ。

 TJOでは『ミミック』は、宝箱の『罠、トラップ扱い』のモンスターであり、宝箱のPOP時に≪選択される罠の1つ≫である。そのため『討伐』する事により、「罠(トラップ)を『解除』した」事になり、『ミミック』のドロップとは別に『本来の宝箱の中身』もドロップする。

 TJOにおける『ミミック』は、”オウムガイ”や”アンモナイト”に近い? イカ、タコに似た生物? で、『強固な殻ごと宝箱に擬態』しており、獲物(プレイヤー)がやってきて、開ける(口の中を覗く)のを待っている。
 そして開けた瞬間、目の前の対象に『強烈に噛み付き、食べよう』とする。
 その噛み付く力は凄まじく、貝などが貝柱によってしっかりと閉じる様に、『不意』をつかれて”ガッチリと噛み付かれる(クリティカル)と≪真っ二つ≫にされる事もある。

 ……これ、すなわちしぼうあらん、と。
(訳 雨が降ろうが降るまいが、死んじゃうの~ん)

 ミミックに『先制クリティカルを食らう』か、識別などをして『攻撃をしかける(FAを取る)』と、『ミミックは宝箱の”擬態”を解き』、完全に〈戦闘状態〉に移行する。
 そして硬い殻(元宝箱の外側部分)で身を守りながら、触手状の足? で素早く移動して、攻撃対象ターゲットに近付き、殻(宝箱のフタだった)の部分での『噛み付き』を繰り出して来る(ようするに”食べよう”としてくる)。
 ”硬く”、”素早く”、”噛み付きが強力”… とても素早い”カミツキガメ”、”ワニガメ”と戦う様なイメージだろうか? 『箱』だとあなどると酷い目に会うだろう。


 さてそんな”危険”極まりない『ミミック』であるが、当然危険リスクには、報酬、対価リターンがある。「いよっ、待ってましたっ!」

 まず「本来の宝箱の中身」 …これは残念ながら『運』になる。ミミックのLVは、『識別したプレイヤー』か、『識別せず開けようとしたプレイヤー』の『LV ~ LV*2』である。
 つまり今回の場合、『LV17のヒイラギが識別した』ので、『LV17~34』だったのだが、最大のLV34だったとしても、このダンジョンの宝箱LVとしては、≪そこそこ≫でしか無い。
 そして今回はLV21…つまり『かなり低めの宝箱』という事で、中身はあまり期待出来ないのだ。だからと言って『LV34のミミック』であれば、LV17、LV15、LV12の俺達は『立ち去る』以外の選択肢は無かっただろう。強すぎても困るわけである。

 次に『ミミック』自体の『通常』ドロップと『G』なのだが…これが『凄まじい』のだ。
 『ミミック』は、『特殊扱いのモンスター』なので、『通常』ドロップと『G』は…【同じ特殊処理】で計算される。それが、

 ”100G” *(ミミックLV * ミミックLV)

 …である。つまり『LV1のミミックは100G』であるが、『LV200のミミックは4,000,000G』だ。今回の『ミミック』はLV21…つまり『100G *(21 * 21) =44,100G』…である。
 『通常』ドロップか、『G』、が≪当選するたび≫に、『44,100G』をドロップするのだ。
『G百足』LV18が落とす『G』が、おおよそ『1,000G』なのだから、≪44倍≫だ。

 いかに『ミミック』の落とす『Gが≪破格≫』か? おわかりだろう。
(古のゲーム”ドラ食う”の”金男”は650G。他の周辺モンスターの6~8倍程度だ)

 そして『レア』ドロップは『宝箱』である。アタリが出たら≪もう1回≫だ。
(識別してみたら『ミミック』で、本当に≪もう1回≫…という事もある(らしい))

 さらに『激レア』ドロップだが、実は詳しくわかっていない。
 …というのも『ミミック』は討伐しても、モンスター情報は全て『???』のままなのだ。
(まぁ毎回『ランダム』みたいなモノなので仕方無いだろう)
 他の『G』、『通常』ドロップ、『レア』ドロップが『判明』しているのは、プレイヤーにわかりやすかった(有志が検証しやすかった)からにすぎない…のである。

 とりあえず分かっている事は、『古い時代(高LV)のミミックからは、旧文明の遺失アイテムである”大判””小判”が見つかる事があるぞ』
 …という公式サイトの『ミミック紹介欄』にあった『この一文』だけで、確かに『高LVのミミック』からは、『大判』『小判』が、≪ごく稀≫にドロップする。
 本当に”ごく稀”なので、「時々出る『宝箱』の方が『レア』で、こちらが『激レア』なのだろう」…という事だ。


 ともかく、TJOでは「モンスター討伐時に『G』も『通常』もドロップしない」という事は、『絶対に無い』。「倒すという労働に対し、『何もドロップしない』…というのは≪給料未払い≫にも匹敵し、看過出来るものでは無い」…というヤマコウ〔※1〕の『理念』によるモノらしい。

 つまり『LV21 ミミック』と識別した時点で、討伐時に「最低でも『44,100G』はドロップする」事が『確約されている』のだ。後は『運(LUC)』によるが、普通、2~4個ほどドロップするので、「『44,100G』×2~4個が期待出来る」計算だ。『破格』である。
 ミミックが『特殊処理で計算されている』のは、プレイヤーがミミック遭遇時に「”明確な賞品”、報酬を先に提示」して、「最低でも”これだけのリターン”がありますよ? 挑戦しますか?」…と問いかけてくれている、とも言える。

 そして『ミミック』が『他の高LV罠の宝箱』とは『一線を画す』点がソコなのだ。
 例え『高LV罠の宝箱』でも、中身は一切保障されていない。『ミスリルの長剣』だったとしても、『-6』などであればゴミもゴミ、赤字なのだ。
 高LVミミックは、「最低でも〇〇Gの稼ぎ(リターン)」が保障され、そのリスク(ミミックのLV)に見合うか? を検討する事が出来る。しかも運(リアルラック?)次第では、それが「複数ドロップする」という、まさに『夢の宝箱』なのである。


「LV21、か」
「LV21ですか……」
「ん~、ギリギリいけるか? …ってところだなぁ」

 「………」ミミックのLVは『識別したヒイラギのLV17が基準』なので、『倍のLV34』だった可能性もある。それに比べれば≪倒せるチャンス≫なのだ。
 だがミミックは、”痛い”、”固い”、”速い”の3拍子揃った強敵である。判断を誤れば簡単に死者が出るし、全滅もする。

 ちなみに「LV34だった場合」だが、『通常』ドロップ、『G』は1つにつき『115,600G』だったわけだ…『破格』である。
 しかし絶対に倒せないだろう。ケイが奇跡的にクリティカルを連発…ダメだな。多分『ミミックLV34』の「クリティカルでない”ただの1撃”」で、LV15のケイでは『”140%”以上食らって即死してしまう』だろう。そうなればミミックは”移動速度が速い”ので、俺達も順々に噛み付かれて全滅だ。やはり『立ち去る』以外の選択肢は無い。

 まぁ元々『最高LV(プレイヤーLV*2)ぐらいのミミック』とは、『フルパーティ(6人組)』や『クランハント』などで、『堅固な壁役』、『回復職』、『支援担当』、『強力な攻撃担当アタッカー』などが揃っている場合に、≪挑戦を検討する≫ようなレベルだ。
 無論、「装備もプラス品などで固めてあって当然」という感じになる。俺達の様な状態で挑戦するのは『死に戻り』〔※2〕する時ぐらいのものだろう。


「最初から『全力』でかかるか…」
「いいのか?」
「あぁ、倒すまでに『30%』食らわなければ「仕方が無い」と諦めよう。だが多分”食らう”と思うがな」
「そうですね… ミミックは”攻撃力が高い”ですし、”固い”ですから、わざわざ食らわなくても良いかもですね」
 これまでの戦闘時ケイが、先に「しっかり30%食らって」から討伐しているのは、「クリティカルヒットが出て1撃で倒してしまう」…という事態を恐れているから、である。
 いかに『鉄の大剣』や、狙う部位などで≪確率が低い≫とはいえ、『クリティカル率はゼロでは無い』のだ。ピンチでも無い雑魚戦で「うっかり倒しちゃった (・ω<) テヘペロ 」などと、無意味に「『貯金』を使ってしまっている」と、ある日突然『強制降格クラスチェンジ』させられて、後悔する事になるだろう。


「装備を変えるから、待っててくれ」
「おぅ」
「はい」
 そう断ってからケイは装備を交換しはじめた。

「俺は『鋼のメイス』のままで やってみるわ」
「≪固い箱そのもの≫みたいなモノ… ですからねぇ」
 ヒイラギは腰の『鋼のメイス』を手にとって、じっと見て『耐久値』をチェックしている。
まぁ『メイス』は耐久値が高めの武器だから、まだまだ大丈夫だろう。

「欲を言えば『支援、補助魔法』とか欲しいとこだが…」
「他に集まりませんでしたからねぇ」
「まぁその分、今回は≪分け前も良い≫わけだしなぁw」
「文句言えないですねぇ」
 ヒイラギと談笑をしながら、ケイが装備を交換するのを待つ。

 ケイは、装備していた『青銅の鉢金』を外して『インベントリ』に戻し、代わりに最初装備していた『鋼の兜』を取り出して装備した。
 そして最初に装備していた『青銅のブーツ』では無く、『中部屋』で『Gカマド』LV16の集団が落とした、『レア』ドロップの『鉄のブーツ』を取り出して装備し、最後に『レザーグローブ』を取り出して装備した。武器は『鉄の大剣』のままである、つまり、

ケイ前期型 『鋼の兜』、『鉄の鎧』、『レザーグローブ』、『青銅のブーツ』
ケイ中期型 『青銅の鉢金』、『鉄の鎧』
ケイ後期型 『鋼の兜』、『鉄の鎧』、『レザーグローブ』、『鉄のブーツ』

 …という事だ。やはりケイの防具は「拾った物を適当に使っている」っぽい? まぁポーション代がかかるし、『鉄の大剣』は高いからなぁ… 防具を欲しがるわけだ。
 またこの様に、白アイテム(『鉄のブーツ』)は『即戦力になる』ので≪装備が貧弱な内≫は結構助かる事がある。
 (装備が整ってくると、そうそう『拾い物』でパワーアップしなくなったりするが)


「すまん、待たせたな」
 ケイがフル装備に換装して『ミミック』挑戦の準備が整った。なお俺(略。
視界の右下の方へ意識を向けると<04/05(金)PM 03:39>と表示されていた。


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LV:12(非公開)
職業:みならい僧侶(偽装公開)(僧侶)
サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)
所持金:4,961G
武器:なし
防具:布の服
所持品:15/50 初心者用道具セット(小)、干し肉×21、バリ好きー(お得用)90%、樽(中)90%、コップ(木)、サクランボ×1、鋼のナイフ、鉄の斧、青銅のブーツ、賞金首の首輪[†カムイ†]懸賞金:94,000G、鬼王丸×2、弓(不確定名)、鉄のブーツ、棒(不確定名)、篭手(不確定名)


〔※1〕TJO総合統括プロデューサー 山岡 光一 ヤマコウ(通称)(CV:小山力也)
 長所短所、メリットデメリット、リスクリターンといった事を重要視する。
 挑戦者魂チャレンジスピリット開拓精神フロンティアスピリットを評価し、停滞、安定、マンネリを嫌う。TJOの理念に大きく影響を与える人物。

 彼の理念により、ただ得する、ただ損する、何のリスクも無いのに強力、苦労したのに儲けが無い…などといった『理不尽さ』が、ほぼ存在しないゲーム性となっている。強力な攻撃、効果には必ずなんらかのリスク、代償を伴う。
 またゲーム内、ゲーム外を問わず、悪事、犯罪行為には厳しい。過去作でも迷惑行為、RMTチートbotなど、容赦なくBANしてきた実績を持つ。

〔※2〕『死に戻り』とは、
 ①ゲーム等で死ぬと一定の場所(セーブポイント、城、教会、自宅等)に戻されて、そこで生き返る(再スタートする)事である。
 ②また≪①を利用≫して、わざと死亡して帰還(ワープ)する行為である。

 TJOの場合、デスペナルティは「(赤以外は)所持金の何%かを落とすだけ」であるので、所持金が少ない場合など、わざと死亡すれば「最後に触れたクリスタル前にワープ出来る」という事になる。
 ゲーム時代「ダンジョンの深層等から帰るのが面倒な時」や、「辺境の町村などから4大都市に戻りたい場合」などに、ポーション等の消耗品を購入して「所持金を使いきり」、近辺のモンスターやトラップを利用して死亡して、一気に帰還する… というプレイヤーはそこそこ存在した。

分析:罠[トラップアナライズ] 宝箱等に仕掛けられた罠の種類と罠LVを識別し、罠LVを半減させる(小数点以下切捨て)
  補足:ミミックだった場合は、そのミミックのLVも識別する、ただしミミックのLVは半減出来ない。


「すなわちしぼうあらん~?」
「古の伝承に記された言葉… だな」
「また でんしょ~?」

「漢字で書くと、『即ち死亡有らん』…となる」
「ん~?」
「解読は難航しているのだが、『即』、『死亡』…というところから、「『即死に注意しろ』…という意味では無いか?」、という説が有力だ」
「なるほど~??」
(※この物語はフィクションです)
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