雪豹くんは魔王さまに溺愛される

asagi

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三章.雪豹の青年

47.雪豹の青年と雪うさぎ

 籠を持って駆ける。すれ違う皆が微笑ましげに見ているのも気にせず、執務室を目指して急いだ。
 雪うさぎが入った籠には魔法をかけて、雪が溶けないようにしているけれど、早くアークに見てもらいたい。喜んでくれるだろうか。子どもの頃に作った雪うさぎより可愛くできたと思うんだけど。母みたいに笑ってくれたら嬉しい。

「スノウ様~、そんなに急がなくても、陛下は逃げませんよぉ……!」
「アークは逃げなくても、時間は限りがあるの!」

 スノウは獣人なだけあって、動きが身軽だ。対照的に、スライムであるルイスはあまり速く動くのが得意ではないらしい。置いて行くことがないように気をつけながら、スノウは見えてきた扉に笑みを浮かべた。



「――アーク! お疲れ様。今大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。何かあったか?」

 扉を開けて中を覗き込むと、アークが様々な紙を見比べながらロウエンに何か指示をしているようだった。遠慮がちに尋ねたスノウには、愛おしげな笑みが返って来る。
 ロウエンが「やれやれ……休憩の時間ですね」と呟く。ルイスがサッと隣の給湯室に向かった。

「あのね、僕、アークにお土産持ってきたんだ」
「土産?」

 きょとんとするアークに籠を差し出す。オレンジ色の手巾を掛けてあるので、まだ中は見えない。
 アークに腰を抱かれて、膝の上に横向きに座る。手巾をのける仕草をドキドキしながら見守った。どんな反応をするだろう。

「これは……雪うさぎか」

 ふわりと顔が綻んだ。そのアークの表情を見るだけで、スノウの胸もぽかぽかと温まる。喜んでもらえた。
 アークが雪うさぎの一体を指先で撫でる。籠の中には雪うさぎが四体いるのだ。アークとスノウとルイスとロウエン。身近な三人と自分をイメージして作った。
 アークが触ったのは、スノウ自身をイメージして作ったもの。それが何をイメージしたなんてアークには分からないだろうに、スノウのものを一番に触れてくれて嬉しい。

「久しぶりに見たが、可愛いな。ありがとう」
「うん。喜んでくれて嬉しい」

 にこりと笑って返すと、不意にアークの瞳が丸まった。どうしたのだろう。首を傾げると、視線がスノウの頭に向いているのに気づく。手で探ると柔らかい感触が触れた。庭師に貰った花だ。ルイスがつけてくれていたんだった。

「これ、庭師さんがくれたんだよ。僕とアークの瞳の色!」

 頭を差し出すようにすると、アークの指先が髪を梳くようにしながら花に触れる。黄色と夕陽色の花があるはずだ。

「綺麗な花をもらったな。スノウによく似合っている。……そうだ、披露目の装飾には生花の冠を使おう。宝石を散りばめた土台にあしらえば、華やかでいい」

 真剣な表情で呟いたアークが、紙に何かを書きつける。ロウエンが疲れたようにため息をついた。

「陛下……これで何度目の修正ですか。先ほど、黄色と橙色の宝石を使ったティアラにすると決めたばかりではありませんか」
「それに花を付け足せばいいんだろう。スノウが一番輝く装飾を用意しなければ」
「……いつになったら本決まりするんでしょうね」

 アークがスノウのお披露目の準備で忙しいのは、度々こうして修正が入るからなのかもしれない。アークの熱意が強い。普段の服を仕立てる時も、ああでもないこうでもないと仕立て屋を振り回しているのを思い出した。
 スノウは苦笑しながら、アークの頬に手を当てて見つめる。

「――アーク、準備はほどほどで終わらせてね。僕はアークと一緒に過ごす時間が長い方が嬉しいよ」
「うっ……そうだな。そうしよう」

 呻いたアークだが、悩んだ末に頷いてくれた。これでロウエンたちの苦労も少しは減るはずだ。

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