雪豹くんは魔王さまに溺愛される

asagi

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続.雪豹くんと魔王さま

2-37.襲い来るもの⑦

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 ラトの家について、お茶を飲んでほっこりする。戦闘の疲労も少し癒えた気がした。
 ルイスは面白がるような表情で壁際に控えている。ついてきていた吸血鬼族は、護衛として外にいるらしい。一緒に中でお茶を飲めばいいのに。

(あ、でも、「陛下のプライベートの話に立ち入るのは御免被る、じゃなくてご遠慮します!」って言ってたから、部下さんとしては話を聞くのも気まずいのかも?)

 誘いを固辞した吸血鬼族の姿を思い出して、スノウは苦笑する。
 一見すると忠実な部下という感じだけれど、なかなか愉快な性格のようだ。

「それで、話というのは、子作りに関してでいいんだね?」

 不意に話を切り出したラトの横で、ナイトがブホッとお茶を吹き出した。汚い。
 ラトが台拭きをナイトの顔にぶん投げている。その遠慮のない関係が面白くて、少し羨ましい。

「そうなの。運命の番だと、男同士でも子どもができるし、卵で生まれるんだよね?」
「ああ、それは間違っていないよ。男女だと十月とつきお腹で育むけど、運命の番だと一月ひとつきだね。卵を産み落としてから、さらに半年ほどで孵る。孵るまでの時間は種族差があるようだけれど」

 スノウはふむふむと頷いた。こうして経験者に話を聞けるのはためになる。

「雪豹だと半年?」
「そうだね。獣人族はだいたいそれくらいだ」
「竜族は?」

 答えが返るのには間があった。
 きょとんと目を瞬かせるスノウに、ラトが肩をすくめる。

「私は竜族を生んだことはないし、身近にもそんなやつはいなかったから、知らないね。それは陛下に聞くといい」
「そっか。うん、そうする」

 アークがすんなりと答えてくれるだろうかと少し不安だ。
 でも、スノウが本気で知りたいと思っていることを、アークがはぐらかすことはないに決まっている。

「ひとつ言っておくけど……子どもは発情期のときじゃないとできないからね?」
「あ、そうなんだ。それ以外のときは無理なの?」
「ああ。絶対というわけではないようだけど、ほぼ無理と言っていいだろうね」

 だから、アークは普段子どもができる可能性を考えていないのかと、スノウは納得した。
 お腹に子種を仕込むことで子作りできることは知っている。アークは子作りに消極的なわりに、普通に中に出すからなんでだろうと思っていたのだ。

「じゃあ、僕の次の発情期は――」
「おい、数えるな! 少なくとも俺の前では! 俺は孫の子作りなんて想像したくないんだ!」

 指を折って予定を思い出そうとしたら、ナイトに全力で止められた。頭を抱えて、苦悩するように唸っている。

 スノウはパチパチと目を瞬かせながら首を傾げた。
 ナイトがそれほどまでに拒否する意味が分からない。スノウは行為の詳細を話したわけではないのだけれど。

「……困ったじいさんだ」

 ラトが呆れた様子でやれやれとため息をつきながら言う。そして、シッシッと追い払うように手を振った。

「――ナイト。邪魔するなら離れてろ。あのな、子作りってのは、母体の方が負担がでかいんだよ。ただでさえ雪豹族は華奢なんだ。スノウのためにも、私は安全に子を作る方法を教える必要がある」

 ナイトが黙り込む。そして、渋々と立ち上がり、寝室の方へと去っていった。ラトの言い分に理解を示したらしい。

 スノウは「うーん……」と呟きながら首を傾げた。

「どうした?」
「子作りって大変なの?」
「それは当然そうだ。男の身体で卵を産み落とすっていうのは、想像以上にしんどいぞ。それで私は一人しか子どもを持たなかった」
「そうなんだ……僕、たくさん子どもがほしいんだけど……」

 少ししょんぼりとする。望みが叶わないかもしれない。
 そんなスノウを見て、ラトが苦笑した。そして、ポンポンと撫でるように頭を叩く。

「スノウの気持ちは分かる。でも、無理をしないように。陛下は治癒魔法を使えるが、それで万病を排せるわけじゃないんだ。――陛下を一人遺して逝きたくはないだろう?」
「っ、それは当たり前! 僕はずっとアークと一緒にいるんだもん」

 パッと顔を上げて告げる。
 子どもがほしい気持ちに変わりはないけれど、何を最優先するのか忘れたことはない。

「その気持ちを忘れなければ大丈夫さ。あと、それを陛下にももっと伝えるといい」
「どうして?」

 スノウの目をラトが覗き込むように見つめる。そして仕方なさそうに微笑んだ。

「……陛下はスノウと二人きりで過ごしたいと言って子作りを後回しにしているかもしれない。でも、心の奥で恐れているのは、子どもにスノウを奪われることじゃない。――スノウがそのせいでこの世を去ってしまうことだよ」

 ラトの言葉がスノウの胸に強く響いた。

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