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続×3.雪豹くんとにぎやかな家族
4-4.お食事事情
朝から昼に変わっても、卵はゆっくりひびを広げるだけだった。
とはいえ、スノウはのんびりとその変化を楽しんでいる。ドリーが「今のところ全く問題ありません」と太鼓判を押してくれたので。
名前を決めるのに時間がかかっているというのも、早く孵ってと思わない一因かもしれない。
「どれがいいかな~」
卵を撫で、時々見守りながら、ノートをぺらりぺらりとめくる。アークがいないと最終決定できないのだけれど、おそらく候補を絞った方が良さそうだ。そうしないと、たぶん、アークは面倒になって適当に選んでしまうだろう。
「そうですねぇ……。あ、お昼はサンドウィッチを用意しましたよ」
「ありがとう! 甘いのもある?」
「ありますよー。陛下がスノウ様のために、温暖地域のマンゴーという果物を贈ってくださったので、今日はフルーツサンドウィッチにしてあります」
「クリームたっぷり?」
「これでもかと」
ルイスが茶目っ気のある笑みでウインクする。
スノウはもともとフルーツが好きで、よく食べていた。それをよく知るアークは度々珍しいものを贈ってくれる。とても優しくて愛情深い番なのだ。スノウに対して限定での優しさではあるけれど。
そして、そうしたフルーツをたっぷりの生クリームと一緒にパンに挟んだフルーツサンドウィッチに、スノウは最近ハマっている。ケーキとは違った美味しさなのだ。
スノウがよく食べるので、アークが愛情表現としての給餌で食べさせてくれるのも、最近はこれが多い。
美味しいと幸せ倍増で、スノウがにこにこすると、アークも幸せになるのだ。幸せしかない。
「最近はクリームチーズを混ぜた生クリームだから、甘さ控えめでフルーツがより美味しく感じるんだよ!」
「スノウ様がお好きな物なので、料理人たちも工夫をこらしているようですからね。スノウ様がお喜びなので、みなさんも嬉しがってさらに頑張っているようですよ」
「それは僕も嬉しいなぁ」
この城の料理人たちが作る物は、なんだって美味しい。
スノウがここに来てからは、より料理の腕を上げたらしいと聞く。やはり喜んで食べてくれる人がいる方が、料理人たちもやりがいがあるのだ。アークはあまり食に興味がなかったようだし。
用意された昼食をベッドの傍のテーブルで食べる。あまりお行儀が良くないけれど、今は卵の傍を離れたくないのだ。一度ひびが入った後は、卵をあまり動かさない方がいいのだと、ドリーに聞いた。
「うーん……美味しい!」
「キラキラしたお目々ですねー」
「幸せだからねー」
マンゴーはトロッとした感触で、濃厚な甘さ。それが爽やかな風味のクリームと合わさり、いくらでも食べられそうな美味しさだ。
「——この子たちは、何が好きかなぁ」
「スノウ様はお小さい頃、ミルクに蜂蜜を混ぜたのを好んでいらっしゃいましたよね」
「うん、それは今でも好き」
ふふ、と微笑みながら、魔王城に来たばかりの頃を思い出す。
みんなの愛に包まれて、スノウは悲しみを癒やし、こんなに幸せに生きられるようになったのだ。なんだか感慨深いものがある。
「——あ、僕、お乳出る?」
「ゲホッ……ゴホッ……ん、んんっ……急に、なんですか?」
スノウに付き合って一緒にお茶を飲んでいたルイスが、すごい勢いで吹き出した。なんだか苦しそうだ。とりあえずハンカチを渡しておく。
「急じゃないよ? 子どもたちのご飯の話だもん」
「……確かにそうでした」
頷いたルイスが、「うーん」と唸りながら本を取り出す。どうやらまだ答えを知らなかったらしい。
取り出される本が五冊を超えたところで、ルイスは「あっ」と声を漏らしてページをめくる手を止めた。
「——ここに書いてありました」
「なになに?」
開かれたまま差し出されて、指先をナフキンで拭ってから視線を落とす。
そこに書かれていたのは『男性の母体が授乳可能かどうかは、種族差や個体差があります。雪豹族の場合は確率的に半々です』という文章だった。
「——半々……」
「ラトさまはできなかったようですね。あと、竜族の子に対しては、種族差を考えても、母乳ではない方がいいらしいです。成長に必要な栄養が足りないとか」
「そっか。まぁ、まだ出るかも分からないしね」
胸を触ってみたところで、判断はできないのだからどうしようもない。
「ええ。竜族の子のご飯は、陛下に聞いてみるのが一番でしょう。……おそらく、その準備は一切されていないはずなので」
ルイスがしゅん、と眉尻を下げる。ついでに「スライム族は手当り次第に吸収して当たり前なので、うっかり失念してました……」と呟いているので、お世話係としての力不足を嘆いているようだ。
そんなに気にすることではないと思うのだけれど。
それを言うならば、母親であるスノウだって、卵がいてくれる幸せに浮かれて、実際に必要になる物の手配が不十分だったのだから。
暫くして、「陛下がなぜだか喜びそうな話題な気がしてきました……」と言って遠い目をしているルイスを、スノウは不思議になって見つめた。
アークが子どものご飯について気にしていない、と言ったのはルイスなのに、どういうことなのだろう。
とはいえ、スノウはのんびりとその変化を楽しんでいる。ドリーが「今のところ全く問題ありません」と太鼓判を押してくれたので。
名前を決めるのに時間がかかっているというのも、早く孵ってと思わない一因かもしれない。
「どれがいいかな~」
卵を撫で、時々見守りながら、ノートをぺらりぺらりとめくる。アークがいないと最終決定できないのだけれど、おそらく候補を絞った方が良さそうだ。そうしないと、たぶん、アークは面倒になって適当に選んでしまうだろう。
「そうですねぇ……。あ、お昼はサンドウィッチを用意しましたよ」
「ありがとう! 甘いのもある?」
「ありますよー。陛下がスノウ様のために、温暖地域のマンゴーという果物を贈ってくださったので、今日はフルーツサンドウィッチにしてあります」
「クリームたっぷり?」
「これでもかと」
ルイスが茶目っ気のある笑みでウインクする。
スノウはもともとフルーツが好きで、よく食べていた。それをよく知るアークは度々珍しいものを贈ってくれる。とても優しくて愛情深い番なのだ。スノウに対して限定での優しさではあるけれど。
そして、そうしたフルーツをたっぷりの生クリームと一緒にパンに挟んだフルーツサンドウィッチに、スノウは最近ハマっている。ケーキとは違った美味しさなのだ。
スノウがよく食べるので、アークが愛情表現としての給餌で食べさせてくれるのも、最近はこれが多い。
美味しいと幸せ倍増で、スノウがにこにこすると、アークも幸せになるのだ。幸せしかない。
「最近はクリームチーズを混ぜた生クリームだから、甘さ控えめでフルーツがより美味しく感じるんだよ!」
「スノウ様がお好きな物なので、料理人たちも工夫をこらしているようですからね。スノウ様がお喜びなので、みなさんも嬉しがってさらに頑張っているようですよ」
「それは僕も嬉しいなぁ」
この城の料理人たちが作る物は、なんだって美味しい。
スノウがここに来てからは、より料理の腕を上げたらしいと聞く。やはり喜んで食べてくれる人がいる方が、料理人たちもやりがいがあるのだ。アークはあまり食に興味がなかったようだし。
用意された昼食をベッドの傍のテーブルで食べる。あまりお行儀が良くないけれど、今は卵の傍を離れたくないのだ。一度ひびが入った後は、卵をあまり動かさない方がいいのだと、ドリーに聞いた。
「うーん……美味しい!」
「キラキラしたお目々ですねー」
「幸せだからねー」
マンゴーはトロッとした感触で、濃厚な甘さ。それが爽やかな風味のクリームと合わさり、いくらでも食べられそうな美味しさだ。
「——この子たちは、何が好きかなぁ」
「スノウ様はお小さい頃、ミルクに蜂蜜を混ぜたのを好んでいらっしゃいましたよね」
「うん、それは今でも好き」
ふふ、と微笑みながら、魔王城に来たばかりの頃を思い出す。
みんなの愛に包まれて、スノウは悲しみを癒やし、こんなに幸せに生きられるようになったのだ。なんだか感慨深いものがある。
「——あ、僕、お乳出る?」
「ゲホッ……ゴホッ……ん、んんっ……急に、なんですか?」
スノウに付き合って一緒にお茶を飲んでいたルイスが、すごい勢いで吹き出した。なんだか苦しそうだ。とりあえずハンカチを渡しておく。
「急じゃないよ? 子どもたちのご飯の話だもん」
「……確かにそうでした」
頷いたルイスが、「うーん」と唸りながら本を取り出す。どうやらまだ答えを知らなかったらしい。
取り出される本が五冊を超えたところで、ルイスは「あっ」と声を漏らしてページをめくる手を止めた。
「——ここに書いてありました」
「なになに?」
開かれたまま差し出されて、指先をナフキンで拭ってから視線を落とす。
そこに書かれていたのは『男性の母体が授乳可能かどうかは、種族差や個体差があります。雪豹族の場合は確率的に半々です』という文章だった。
「——半々……」
「ラトさまはできなかったようですね。あと、竜族の子に対しては、種族差を考えても、母乳ではない方がいいらしいです。成長に必要な栄養が足りないとか」
「そっか。まぁ、まだ出るかも分からないしね」
胸を触ってみたところで、判断はできないのだからどうしようもない。
「ええ。竜族の子のご飯は、陛下に聞いてみるのが一番でしょう。……おそらく、その準備は一切されていないはずなので」
ルイスがしゅん、と眉尻を下げる。ついでに「スライム族は手当り次第に吸収して当たり前なので、うっかり失念してました……」と呟いているので、お世話係としての力不足を嘆いているようだ。
そんなに気にすることではないと思うのだけれど。
それを言うならば、母親であるスノウだって、卵がいてくれる幸せに浮かれて、実際に必要になる物の手配が不十分だったのだから。
暫くして、「陛下がなぜだか喜びそうな話題な気がしてきました……」と言って遠い目をしているルイスを、スノウは不思議になって見つめた。
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―――
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※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)