雪豹くんは魔王さまに溺愛される

asagi

文字の大きさ
183 / 224
続×3.雪豹くんとにぎやかな家族

4-13.可愛い怪獣

 今日はブレスラウとルミシャンスを連れて執務室へ行く。

 魔王城敷地内を散歩することはこれまでにもよくあったとはいえ、執務室に行くのは今日が初めてだ。

 それは、子どもたちが執務の邪魔をしてはいけない、というスノウの配慮によるもの。

 なんといっても、ルミシャンスが寝ている時以外はおとなしくしていないから。

 一日の半分以上を寝て過ごしているとはいえ、執務中のアークやロウエンの足元をバタバタと走り回られては、二人は執務に集中できないだろう。

 一方で、ブレスラウにはまったく不安がない。
 子どもらしさがないと思ってしまうほど、ブレスラウは状況を読んで判断することが得意だ。それはアーク曰く「周囲に馬鹿にされないための処世術」らしい。

 ブレスラウの気位の高さは折り紙付きだ。時に、ルミシャンスを前にすると、そんな態度も弱まってしまうことがあるけれど。

 スノウは子どもたちの普段を思い出して微笑みながら、カゴの中でうごうごと動き回っているルミシャンスを宥めるため声をかける。 ブレスラウはスノウに負担をかけないためか、じっと固まってくれていた。

 どちらもスノウにとっては愛しい行動である。

「今日はパパのお仕事姿、見てみようね」

 スノウが二人をつれて執務室に行こうと思ったのはそのためだった。

 普段、一日の大半を執務室で過ごすアークと、子どもたちはあまり触れ合う時間がとれない。だから、たまにはアークと一緒に時間を過ごしてほしいし、魔王の仕事というものを感じさせてあげたかった。

 なんといっても、ブレスラウは次期魔王になることが、アークとロウエンに確実視されているのだから。早い内から教育を施す必要性を、スノウは二人から告げられていた。

 そうした事情とは別に、スノウに傍にいてもらいたいという願いをアークが口にしたことも、今日の執務室訪問の理由であることを、スノウは子どもたちに伝えるつもりはない。なんだか父親の威厳が薄れてしまいそうなので。

「ルミシャンスはおとなしくできるかなぁ?」
「にぃ!」

 ルミシャンスが元気に『もちろんよ!』と鳴いてくるから、余計に信用できない。これは絶対、執務室の床を駆け回るだろう。

 ルミシャンスは、初めての場所に行くと好奇心が刺激されるのか、大興奮状態になってしまうのだ。

「……ぐるる」
「ふふ、ブレスラウは頼りがいがあるお兄ちゃんだね。ほんとありがたいよ」

 ブレスラウの仕方なさそうな鳴き声に微笑み、カゴを抱え直した。

 走り回るルミシャンスを捕まえて、寝かしつけようとするブレスラウの姿が容易に思い浮かべられる。
 それはスノウたちの日常だから。

「ルミシャンスがもっと落ち着けるようになれば、僕も秘書仕事を再開できるんだけど……」

 アークがそれを望んでいるのを知っている。
 初めの内は自分の巣にスノウを囲い込もうとしていたアークだったけれど、スノウが常に傍にいることの方が幸せだと気づいてしまったのだ。

 卵を抱えた後は、子どもたちの世話に集中しているスノウに、時々なんとも言えない目を向けてくるのは、独占欲を必死に抑えようとしているから。

 そんな風にスノウの心に寄り添ってくれようとしている番の願いを無下にしたくない。

 というわけで、今日はルミシャンスの訓練も兼ねているのだ。何度か執務室に通えば、ルイスと遊びながらもおとなしくなってくれると思う。

「お二人のお世話は私にお任せくださいね!」
「ふふ、ルイス、ありがとう。頼りにしてるよ」

 すでにルミシャンスの遊び相手はお手の物になっているルイスの言葉に、スノウは微笑みながら頷く。

 スノウ自身が二人にたくさんの愛を伝えるために触れ合う時間をとっているけれど、ルイスの助けがなければ今頃きっと疲れきっているだろう。

 ルミシャンスの予想外な行動に振り回されて、体力を消耗してしまうのはいつものことだから。

(子育てって大変なんだなぁ)

 そう改めて思ったスノウは、母も昔そんな風に思っていたのだろうかと首を傾げて、「いや、僕はルミシャンスほど予想外な行動なんてしていなかったはず……」と呟いた。

 大量の雪うさぎが家を取り囲んでいる状況に母が仰天している様子が脳裏に浮かんで、その声は少し弱々しくなってしまったのは事実だ。

 お寝坊さん気質はスノウ由来ではないと思うけれど、好奇心旺盛なところはもしかしたらスノウ譲りなのかもしれない。
 そう考えると、ルイスの慣れた様子にも納得がいってしまった。

(……よし、たまにはルイスを労おう)

 そう心に決めて、スノウは久しぶりに執務室の扉をくぐった。

感想 55

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!