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続×3.雪豹くんとにぎやかな家族
4-26.二人の成長
ブレスラウとルミシャンスが生まれて半年。
久しぶりに執務が早く終わると言っていたアークも含め、みんなでささやかなお茶会をしようとしたら、ロウエンとマルモも参加してくれることになった。
ロウエンとは毎日のように顔を合わせているけれど、マルモとは久しぶりだ。
どうやらロウエンと番契約を結んでからは、マルモは城での仕事をやめて、ロウエンの屋敷で過ごしているらしい。
番の習性として、囲いたがるのは仕方ないのだろう。でも、それがロウエンがしていることだと思うと、なんだか微笑ましくなるのはスノウだけではないはずだ。
今日はロウエンとマルモの話をゆっくり聞きたいな、と楽しみにしていたあまりに、お茶会を開く中庭に着くのが早すぎた。
「あ、ゆっくり準備していいよー」
慌て始めるメイドたちに微笑み肩をすくめる。
まだ準備が整っていないことだし、庭の散歩でもしよう。元気いっぱいのルミシャンスが腕から下りたそうにしているのを見て、そう決めた。
「あっちのお花見に行こうね」
「にー! おやつ」
「おやつは後で。……ルミシャンスは花より団子なのかな」
テーブルの方をキラキラとした目で見つめるルミシャンスを見下ろし、誰に似たのだろうと首を傾げる。
スノウも食べることは好きだけれど、花の鑑賞も昔から好んでいた。ルミシャンスほど食い意地は張っていなかったと思う。
「——ということは、アーク?」
そう呟くも、すぐに『それはないか』と思い直した。
アークはスノウのこと以外は、おしなべて関心が薄いから。花も食べ物も、同率でどうでもいいことだろう。生きるのに最低限存在していれば良いとか言いそうだ。
「ママ。俺はそっちに行けない」
「え、……ああ、そっか。生け垣の幅が狭いもんね」
ブレスラウに声を掛けられて、目の前の生け垣迷路の幅に意識が向いた。
改めてブレスラウを見つめ直し、「成長したねぇ」と感慨に耽ってしまう。
ブレスラウの竜体は既にスノウの身長を超えていた。既に子供部屋への出入りが大変になってきたので、ブレスラウは専用の部屋に移るかという話が出ている。
アークの竜体の大きさを考えたら、まだまだ大きくなるのだろう。
城に入れなくなる日も近い、と思ったところで、ふと気づいたことがあってスノウは首を傾げた。
「ブレスラウは人型にはならないの?」
アークが大きな竜体から生活しやすい人型に変化しているように、ブレスラウも人型になれば今までどおりの生活ができるはずだ。
そんなことは、頭の良いブレスラウなら分かっているだろう。
「人型……なってもいいけど」
「いいんだ」
何かこだわりがあるのかと思っていたのに、あっさりと言われて、スノウは拍子抜けするような気分だった。
思わずじっと見つめると、ブレスラウが首を傾げる。
「ママ、見たい?」
「見たい。けど、すぐなれるものなの?」
スノウは人型になるのに、それなりに苦労した。雪豹族特有の魔力の操作法を学ばないとならなかったからだ。
でも、ブレスラウの気負わない話し方は、人型になろうと思えばすぐになれると思っているように感じられた。
望むことがプレッシャーになってはいけないと思いつつも、ブレスラウの人型がどんな姿なのか気になって、思わず期待に満ちた目を向けてしまう。
「なれるはず。でも、服がない」
「あ、そうだ。外で裸はダメ」
「分かってる」
当然のように頷かれた。むしろ、『気づいていなかったの?』とでも言われている気分だ。
スノウの方が親なのに、ブレスラウの方がしっかりしているように見えるのは、きっと気のせい。だけど、なんとなく悔しくなる。
「お召し物をご用意しますか?」
「ルイス、お願いね」
とりあえず近くの東屋でルイスの帰りを待つことにして、スノウは動きたがるルミシャンスを地面に下ろした。
ルミシャンスはまだ人型になる気配がない。雪豹族はまだ獣型で過ごす時期だから当然だ。
比べて考えると、竜族の成長の速度がより早く感じる。それなのに、生きる長さは竜族の方が獣人の十倍ほどなのだから驚きだ。
「にー、虫」
「食べないでよー」
「とどかない」
蝶を追って跳ねるルミシャンスを見守る。
数ヶ月前は、ルイスのスライム体を捕まえようとしてその場でジャンプするという可愛い動きをしていた。でも、今はもう一丁前に狩りのような動きができるようになっている。
人型にはなれなくても、確実に成長していることを感じて、嬉しいけれど寂しくもなる。
(あっという間に、僕の手を離れちゃうんだろうなぁ)
初めからあまり手が掛からなかったブレスラウはともかく、甘えん坊のルミシャンスが独り立ちする日には、泣いてしまう気がする。その予想はほぼ確信だ。
「ルミ、蝶は食べごたえがない。肉を取って来ようか?」
「どこから?」
「おやつがいい!」
「……それはお茶会でたらふく食える」
スノウが真顔で放った問いには答えが返ってこなかった。ブレスラウはどこから肉を取ってくるつもりだったのだろう。
久しぶりに執務が早く終わると言っていたアークも含め、みんなでささやかなお茶会をしようとしたら、ロウエンとマルモも参加してくれることになった。
ロウエンとは毎日のように顔を合わせているけれど、マルモとは久しぶりだ。
どうやらロウエンと番契約を結んでからは、マルモは城での仕事をやめて、ロウエンの屋敷で過ごしているらしい。
番の習性として、囲いたがるのは仕方ないのだろう。でも、それがロウエンがしていることだと思うと、なんだか微笑ましくなるのはスノウだけではないはずだ。
今日はロウエンとマルモの話をゆっくり聞きたいな、と楽しみにしていたあまりに、お茶会を開く中庭に着くのが早すぎた。
「あ、ゆっくり準備していいよー」
慌て始めるメイドたちに微笑み肩をすくめる。
まだ準備が整っていないことだし、庭の散歩でもしよう。元気いっぱいのルミシャンスが腕から下りたそうにしているのを見て、そう決めた。
「あっちのお花見に行こうね」
「にー! おやつ」
「おやつは後で。……ルミシャンスは花より団子なのかな」
テーブルの方をキラキラとした目で見つめるルミシャンスを見下ろし、誰に似たのだろうと首を傾げる。
スノウも食べることは好きだけれど、花の鑑賞も昔から好んでいた。ルミシャンスほど食い意地は張っていなかったと思う。
「——ということは、アーク?」
そう呟くも、すぐに『それはないか』と思い直した。
アークはスノウのこと以外は、おしなべて関心が薄いから。花も食べ物も、同率でどうでもいいことだろう。生きるのに最低限存在していれば良いとか言いそうだ。
「ママ。俺はそっちに行けない」
「え、……ああ、そっか。生け垣の幅が狭いもんね」
ブレスラウに声を掛けられて、目の前の生け垣迷路の幅に意識が向いた。
改めてブレスラウを見つめ直し、「成長したねぇ」と感慨に耽ってしまう。
ブレスラウの竜体は既にスノウの身長を超えていた。既に子供部屋への出入りが大変になってきたので、ブレスラウは専用の部屋に移るかという話が出ている。
アークの竜体の大きさを考えたら、まだまだ大きくなるのだろう。
城に入れなくなる日も近い、と思ったところで、ふと気づいたことがあってスノウは首を傾げた。
「ブレスラウは人型にはならないの?」
アークが大きな竜体から生活しやすい人型に変化しているように、ブレスラウも人型になれば今までどおりの生活ができるはずだ。
そんなことは、頭の良いブレスラウなら分かっているだろう。
「人型……なってもいいけど」
「いいんだ」
何かこだわりがあるのかと思っていたのに、あっさりと言われて、スノウは拍子抜けするような気分だった。
思わずじっと見つめると、ブレスラウが首を傾げる。
「ママ、見たい?」
「見たい。けど、すぐなれるものなの?」
スノウは人型になるのに、それなりに苦労した。雪豹族特有の魔力の操作法を学ばないとならなかったからだ。
でも、ブレスラウの気負わない話し方は、人型になろうと思えばすぐになれると思っているように感じられた。
望むことがプレッシャーになってはいけないと思いつつも、ブレスラウの人型がどんな姿なのか気になって、思わず期待に満ちた目を向けてしまう。
「なれるはず。でも、服がない」
「あ、そうだ。外で裸はダメ」
「分かってる」
当然のように頷かれた。むしろ、『気づいていなかったの?』とでも言われている気分だ。
スノウの方が親なのに、ブレスラウの方がしっかりしているように見えるのは、きっと気のせい。だけど、なんとなく悔しくなる。
「お召し物をご用意しますか?」
「ルイス、お願いね」
とりあえず近くの東屋でルイスの帰りを待つことにして、スノウは動きたがるルミシャンスを地面に下ろした。
ルミシャンスはまだ人型になる気配がない。雪豹族はまだ獣型で過ごす時期だから当然だ。
比べて考えると、竜族の成長の速度がより早く感じる。それなのに、生きる長さは竜族の方が獣人の十倍ほどなのだから驚きだ。
「にー、虫」
「食べないでよー」
「とどかない」
蝶を追って跳ねるルミシャンスを見守る。
数ヶ月前は、ルイスのスライム体を捕まえようとしてその場でジャンプするという可愛い動きをしていた。でも、今はもう一丁前に狩りのような動きができるようになっている。
人型にはなれなくても、確実に成長していることを感じて、嬉しいけれど寂しくもなる。
(あっという間に、僕の手を離れちゃうんだろうなぁ)
初めからあまり手が掛からなかったブレスラウはともかく、甘えん坊のルミシャンスが独り立ちする日には、泣いてしまう気がする。その予想はほぼ確信だ。
「ルミ、蝶は食べごたえがない。肉を取って来ようか?」
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