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続×3.雪豹くんとにぎやかな家族
4-28.竜族の事情
お茶会に人型で参加したブレスラウを見て、アークとロウエンが目を丸くして驚いた。冷静なことが多い二人を知っているから、その表情がなんだか面白い。
竜体を知らないマルモは「もうこんなに大きくなられたのですね」と微笑ましい表情だ。
「さっき、人型になってほしいなぁって言ったら、変化してくれたんだよ」
ルイスがお茶を用意してくれているのを見ながら教える。
ブレスラウは自分の話題だというのに、どうでも良さそうにしながら、膝上に抱いたルミシャンスの遊び相手をしていた。
「……時期的にそろそろかとは思っていたが」
「さすが竜族の族長候補ですね。すんなりと変化されるとは」
アークがブレスラウを観察している対面では、ロウエンが感心した表情で呟く。
驚きが去れば、冷静な思考が戻ったようで「——お披露目はどうしますか?」なんて話題が出てきた。
「お披露目って何? 二人を城のみんなに紹介するの?」
初耳の話だ。
一口お茶を飲んだティーカップをテーブルに戻しながら、スノウはアークとロウエンを順繰りに見つめた。
「二人と言うより、ブレスラウ様を、ですね。お披露目するのも竜族方です」
「竜族に?」
首を傾げる。なぜブレスラウだけなのか気になったけれど、すぐに竜族の長候補というのが重要なのだと理解した。
「本来なら、竜族の里で顔見せをするが、俺は帰るつもりがないからな」
「実はずっと要望が来てはいたんですよ。陛下がまだ早いと先延ばししていただけで」
アークたちが言うには、次期族長候補のブレスラウの評判は竜族の里にも届いていて、里への一時帰還をと望む声があったらしい。族長候補ならば、他の竜族とも触れ合うべきだという主張と共に。
でも、アークはあまり竜族の里を好んでいないようで、ずっと断り続けていた。
それに、竜族の里には、以前スノウを襲おうとした竜族の女性が蟄居している。帰ったところで会うことはないだろうけれど、そもそも近づきたくないらしい。
「——というわけで、最近は城でのお披露目をしろとうるさく言われてまして。陛下も族長という立場はありますから、妥協するつもりなんですよ」
「城に竜族を集めて、ブレスラウのお披露目をするってことだね」
うんうん、と頷き納得する。
ブレスラウに一度くらいは竜族の里を見せてもいいんじゃないかと、スノウは思う。
でも、アークとしてそれは「大人になってから勝手に行けばいい」ということらしい。だいぶ放任主義だけれど、竜族っぽい判断だし、ブレスラウも否やはないようだ。
「——ブレスラウのお披露目……もしかしたら、番候補が見つかるかも?」
色々と披露目の手はずを整えるのは大変そうだ。でも、番が見つかったら喜ばしいと思って、自然と頬が緩んでしまう。
運命の番ではなければ、基本的には同族と番うのが多いのだから、可能性は低くないだろう。
「それは……どうだろうか」
「竜族ですからね」
楽しみにするスノウとは対照的に、アークとロウエンは苦笑気味だ。
「どういうこと?」
「竜族の生は長いからな。数百年にも及ぶ年月を考えると、生まれて一年もせずに番を持とうとすることはほぼありえない。そもそも同族に対しても、愛着が薄いんだ。運命の番に会わなければ、長い時を独り身で過ごすのが当たり前だ」
アークの言葉に、スノウは少し肩を落とした。
確かにそうだと納得する反面、ブレスラウの番を見る日が随分と遠そうだと悟って残念に思う。
「……まぁ、ブレスラウがしたいようにするのが一番良いんだろうしね」
そう呟きながらブレスラウに視線を移す。
話を聞き流して、ルミシャンスの口におやつをせっせと運んでいる姿を見ると、番を得るなんて希望は捨てておいた方がいいかもしれないと思った。
「——ブレスラウの隣に番が立つのは想像できないけど、ルミシャンスに番ができた時にすごく反対している光景はすぐに思い浮かぶ……」
妹大好きな雰囲気を隠しきれないブレスラウを眺めて、スノウは苦笑してしまった。
ロウエンがブフッと吹き出すように笑い、「た、たしかに……!」と苦しそうに言う。マルモが慌てたように世話を焼いているのが微笑ましい。
アークは「竜族にはあるまじき姿だから、披露目の時にはルミシャンスを離していた方がいいな」と諦めたように呟いていた。
親としてブレスラウの行動は許容できるけれど、竜族としては駄目だという判断らしい。
スノウは『竜族って、面倒くさい性質なんだなぁ』と何度目かの感想を抱きながらも、自分はありのままのブレスラウを愛そうと、改めて心に決めた。
多少、妹離れした方がいいかな、とも思うけれど。
竜体を知らないマルモは「もうこんなに大きくなられたのですね」と微笑ましい表情だ。
「さっき、人型になってほしいなぁって言ったら、変化してくれたんだよ」
ルイスがお茶を用意してくれているのを見ながら教える。
ブレスラウは自分の話題だというのに、どうでも良さそうにしながら、膝上に抱いたルミシャンスの遊び相手をしていた。
「……時期的にそろそろかとは思っていたが」
「さすが竜族の族長候補ですね。すんなりと変化されるとは」
アークがブレスラウを観察している対面では、ロウエンが感心した表情で呟く。
驚きが去れば、冷静な思考が戻ったようで「——お披露目はどうしますか?」なんて話題が出てきた。
「お披露目って何? 二人を城のみんなに紹介するの?」
初耳の話だ。
一口お茶を飲んだティーカップをテーブルに戻しながら、スノウはアークとロウエンを順繰りに見つめた。
「二人と言うより、ブレスラウ様を、ですね。お披露目するのも竜族方です」
「竜族に?」
首を傾げる。なぜブレスラウだけなのか気になったけれど、すぐに竜族の長候補というのが重要なのだと理解した。
「本来なら、竜族の里で顔見せをするが、俺は帰るつもりがないからな」
「実はずっと要望が来てはいたんですよ。陛下がまだ早いと先延ばししていただけで」
アークたちが言うには、次期族長候補のブレスラウの評判は竜族の里にも届いていて、里への一時帰還をと望む声があったらしい。族長候補ならば、他の竜族とも触れ合うべきだという主張と共に。
でも、アークはあまり竜族の里を好んでいないようで、ずっと断り続けていた。
それに、竜族の里には、以前スノウを襲おうとした竜族の女性が蟄居している。帰ったところで会うことはないだろうけれど、そもそも近づきたくないらしい。
「——というわけで、最近は城でのお披露目をしろとうるさく言われてまして。陛下も族長という立場はありますから、妥協するつもりなんですよ」
「城に竜族を集めて、ブレスラウのお披露目をするってことだね」
うんうん、と頷き納得する。
ブレスラウに一度くらいは竜族の里を見せてもいいんじゃないかと、スノウは思う。
でも、アークとしてそれは「大人になってから勝手に行けばいい」ということらしい。だいぶ放任主義だけれど、竜族っぽい判断だし、ブレスラウも否やはないようだ。
「——ブレスラウのお披露目……もしかしたら、番候補が見つかるかも?」
色々と披露目の手はずを整えるのは大変そうだ。でも、番が見つかったら喜ばしいと思って、自然と頬が緩んでしまう。
運命の番ではなければ、基本的には同族と番うのが多いのだから、可能性は低くないだろう。
「それは……どうだろうか」
「竜族ですからね」
楽しみにするスノウとは対照的に、アークとロウエンは苦笑気味だ。
「どういうこと?」
「竜族の生は長いからな。数百年にも及ぶ年月を考えると、生まれて一年もせずに番を持とうとすることはほぼありえない。そもそも同族に対しても、愛着が薄いんだ。運命の番に会わなければ、長い時を独り身で過ごすのが当たり前だ」
アークの言葉に、スノウは少し肩を落とした。
確かにそうだと納得する反面、ブレスラウの番を見る日が随分と遠そうだと悟って残念に思う。
「……まぁ、ブレスラウがしたいようにするのが一番良いんだろうしね」
そう呟きながらブレスラウに視線を移す。
話を聞き流して、ルミシャンスの口におやつをせっせと運んでいる姿を見ると、番を得るなんて希望は捨てておいた方がいいかもしれないと思った。
「——ブレスラウの隣に番が立つのは想像できないけど、ルミシャンスに番ができた時にすごく反対している光景はすぐに思い浮かぶ……」
妹大好きな雰囲気を隠しきれないブレスラウを眺めて、スノウは苦笑してしまった。
ロウエンがブフッと吹き出すように笑い、「た、たしかに……!」と苦しそうに言う。マルモが慌てたように世話を焼いているのが微笑ましい。
アークは「竜族にはあるまじき姿だから、披露目の時にはルミシャンスを離していた方がいいな」と諦めたように呟いていた。
親としてブレスラウの行動は許容できるけれど、竜族としては駄目だという判断らしい。
スノウは『竜族って、面倒くさい性質なんだなぁ』と何度目かの感想を抱きながらも、自分はありのままのブレスラウを愛そうと、改めて心に決めた。
多少、妹離れした方がいいかな、とも思うけれど。
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