雪豹くんは魔王さまに溺愛される

asagi

文字の大きさ
206 / 224
続×3.雪豹くんとにぎやかな家族

4-36.スノウと竜族

 スノウたちを観察するように眺めていたパールセンが、一歩近づいてくる。

「ブレスラウ様はアーク様と仲がよろしいのですね」
「普通だと思う」
「親子なのだから、竜族でもこのくらいの関係はさほど不思議ではないだろう」

 端的に答えたブレスラウに続き、アークがそう言うが『さほど』と言っている時点で、不思議と感じるのも間違いではないと肯定している。

 スノウは敏感にその意味合いを理解して、苦笑するしかなかった。普通の竜族はどれほど親子でも無関心なのだろうか、と少しばかり興味が湧いてくる。

「……そうですか。それに雪豹とも仲がよろしいとは——」
「俺の母親だから。他人に文句を言われる筋合いはない」

 ブレスラウの金眼が光を放つように強く輝いているように見えた。パールセンの言葉を遮ったところから考えても、気分を害した様子だ。

 スノウはぱちりと瞬く。何がブレスラウの気に触ったのかよく分からなかった。

「俺の番を雪豹呼ばわりか」

 ブレスラウを援護するように、アークが正面からパールセンを見据える。
 竜族の中でも頂点に立つ二人から強い視線を向けられて、パールセンは慌てた様子だ。

「い、いえ、アーク様の番を貶すつもりは……!」
「そのつもりはなかったとしても、心の奥底にある感情が隠しきれていない」

 フン、と鼻を鳴らしたアークが、スノウに視線を流す。『大丈夫か?』と気遣うような眼差しに、スノウは微笑みを返した。

 そもそもスノウは、アークたちが気にするほど、竜族からの扱いに不満を持ってない。
 なぜなら、スノウが日頃接する竜族はアークとブレスラウの二人だけで、それ以上の竜族と交流を持とうなんて思っていないのだから。

 今後も関わりの薄い他人から無関心な態度をされても、スノウの心に傷一つ付かないのだ。
 竜族は他者に関心が薄いという前情報を持っていたというのも、大きな理由だ。

「申し訳ありません」
「お気になさらず」

 小さく下げられた頭。形ばかりの謝罪を微笑みと共に受け入れて、スノウは食事へと意識を移す。
 近くに並べられているデザートが照明で煌めいていて、とても美味しそうに見えた。

「……ママが気にしていないならいい」

 スノウのどうでもよさそうな態度を見て、ブレスラウは不満を飲み込んだようだ。胸の内に凝る思いはありそうだけれど、この場でそれを示すのは良くないと判断したらしい。

 そんな大人より賢い対応をするブレスラウを褒めるため、スノウはにこにこと笑いながら頭を撫でた。ぎりぎり背伸びをしなくても届く。
 いつまでこうして愛でていられるのかと考えると、少し寂しくなった。

「ねぇ、あそこのデザート食べない?」
「俺はいらない」
「むぅ……」

 甘いものを好まないブレスラウらしい返事だった。思わず拗ねてしまいながら、自分用に取り分ける。
 アークはパールセンと話があると言って離れていった。

「——ん、美味しい!」
「ママは果物が好きだね」
「うん。アークがよく珍しいもの取り寄せてくれるんだよ」
「知ってる」

 フルーツタルトを食べながら、じっとブレスラウを眺める。

 片手にグラスを持って時折口に運びながら、スノウを見守る姿は大人顔負けだ。初めてなのにパーティー慣れしている雰囲気が漂っている。
 竜族の成長は早いんだな、と改めて実感した。

「誰も話しかけて来ないね?」
「パールセンが失敗したから。みんな怖気づいてる」

 フン、と鼻で笑う仕草がアークそっくりだった。歳を考えたら生意気な態度なのに、板についていて格好いい。
 竜族の女性たちからの視線を強く感じて、スノウは「うーん……」と声を漏らした。

 アークたちはブレスラウに番は早いと言ってたけれど、その気になればすぐにでも番候補ができそうだ。少なくとも竜族の女性の多くは、ブレスラウの番になることを望んでいる気がする。

 この中に、いつかブレスラウの番になる女性がいるのだろうか。それならば、スノウも仲良くなれるようにしたいのだけれど。
 そう思ってはみたけれど、竜族の気位の高さを考えると無理かもしれないと気づいて、少しだけ落ち込んだ。

 竜族の気難しさはどにかならないものかと、つい心の中で嘆いてしまった。

感想 55

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)