雪豹くんは魔王さまに溺愛される

asagi

文字の大きさ
207 / 224
続×3.雪豹くんとにぎやかな家族

4-37.過去のしこり

「——ブレスラウは仲良くなれそうな竜族に会えた?」

 遠回しに探りを入れてみたら、スノウそっくりな金眼がゆっくりと瞬いた。『どうしてそんなことを聞くのか』と心底不思議そうだ。

「いない」
「……そう」

 端的な答えがブレスラウの思いのすべてだった。
 ルミシャンスやスノウに優しい態度で勘違いしてしまいそうだけれど、やはりブレスラウも竜族なのだ。他者への関心が極めて薄い。

「そもそも」
「うん」

 ブレスラウが珍しく自発的に言葉を続けたので、スノウは目を丸くしながら相槌を打つ。

「彼女たちは強い竜族の隣に立つというステータスに惹かれているだけ」
「……あ、興味持たれてるのは気づいていたんだね」

 子どもらしくない鋭い指摘だった。自然と苦笑してしまう。
 間違ってはいないだろうけれど、冷淡だなぁと思った。これは恋心を知るのは無理なのではないか、と少し不安になる。

 でも、アークもスノウに出会うまではこんな感じだったはずなので、希望は捨てないでいてもいいだろう。きっとブレスラウもいつか惹かれる人が現れるはず。

「——勘違いとか、されないといいけど」

 ふと思い出したのは、アークの婚約者だと言い張っていた竜族の女性のことだ。あれは人間に操られて行動していた部分もあったらしいけれど、感情の部分は本人のもの。
 同じようなことが、ブレスラウに降り掛かってもおかしくない。

 咄嗟に周囲に視線を走らせる。何か変なことをしでかす者がいないか警戒するのは、親として当然のことだ。
 スノウがブレスラウを守るのに力足らずであることなんて、分かりきっているけれど。

「ママ?」
「いや……昔ね、アークの婚約者だって自称した竜族の女性が、城で暴れたことがあって」

 不思議そうな顔をするブレスラウに説明してみたけれど、言葉にすると随分と酷いように聞こえて、スノウは苦笑してしまった。

 あの時、スノウはアークが助けてくれると心から信じていたから、恐怖心もほとんどなかった。でも、被害にあったのがスノウでなければ、悲惨なことになっていたのかもしれないと思うと、ため息をつきたくなる。

 同じようなことは二度と起こしてはならない。あれは魔王城で生活する多くの者を危険に晒す行為だった。

「……父者が守った?」
「うん。対処もしっかりしてくれたよ。だから問題はなかったんだけど。ブレスラウにも同じようなことがあったらダメだなぁって思って——」
「警戒した?」

 スノウの言葉尻を奪うようにブレスラウが硬い声で言う。スノウは頷きながら、ブレスラウの表情を窺った。
 不満と心配と警戒心。竜族に対する印象が更に悪化してしまったような気がする。

 これは教えるべきではなかったか、とスノウは後悔した。

「で、でも、大丈夫だよ! そんな変なこと考えているような人はいなさそうだし。アークが釘を刺してるはずだから!」

 竜族の女性が起こした事件の後、アークは里に対しても警告をしていたのだ。パールセンが失敗した後に、竜族たちがスノウたちとの距離を詰めてこようとして来ないのがその証左。
 彼らはスノウたちを慎重に対応すべき相手だと見做しているのだろう。

「……そう。俺も気をつける」
「いや、ブレスラウはそもそも竜族のみんなにちょっと冷たいから。これ以上ってなったら、さすがに次期族長として相応しくないって思われちゃうかも」

 ブレスラウが竜族たちに向ける眼差しは、まるで敵を見ているかのようだった。それはやりすぎだろう。
 そんなスノウの注意に、ブレスラウは少し不貞腐れた雰囲気になる。

「別に、族長になれなくてもいい」

 それは素直な言葉だったのだろう。スノウも、その気持ちは分かる。
 ブレスラウに与えられた『次期族長候補』という立場は、望んで得たものではないのだ。

 だからといって、スノウは「じゃあ、好きにしたらいいよ」とは言えない。
 竜族には竜族の生き方があり、それはスノウの常識とは異なるのだ。ブレスラウは竜族として生まれた以上、ある程度は竜族の常識に従う必要がある。

「うーん、そんな風に言わないで。みんなとちょっと知り合ってみようかな、って思うだけでもいいと思うし」
「難しい」

 顔を顰めながら提案を退けられてしまったら、スノウも続ける言葉がない。竜族との交流に慣れていないのはスノウも同じなのだ。

「んー……僕もどうしたらいいかよく分からないから、後でアークに聞こうね」
「……分かった」

 結局アークに問題を放り投げることにした。アークは頼りがいがあるからきっと大丈夫。上手いようにブレスラウを導いてくれるはずだ。

感想 55

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。