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続×3.雪豹くんとにぎやかな家族
4-49.一件落着?
実行犯が目的や指示役などの背後関係について洗いざらい話したのは、事件が起きた翌日だった。アークとブレスラウが実行犯に直接対峙した直後のことである。
問題が起こるたびに思うことだけれど、事態の把握が早すぎる。普通はもっと難航するものだろう。
アークと共に動くことになったブレスラウとは違い、スノウは関与を拒まれたので、どのような手法で尋問が行われたかは分からない。
でも、執務室に帰ってきたブレスラウが「なかなか面白かった」と呟いていたので良しとする。アークは「ブレスラウは飲み込みが早い」と満足そうだった。
「——結局、また人間だったの?」
尋問の結果を教えてくれたアークに、スノウはつい呆れた声でそう返した。
ここ数年起きる問題のほとんどが、人間が原因となって起こされている気がする。『また』と言ってしまうのも仕方ないだろう。
「ああ。魔族を捕らえることを諦めていないようだな」
「こんなところまで入り込んでるなんて……」
スノウは眉を寄せた。
これまで人間が干渉してきた雪豹の里も白狼の里も、魔族世界の端に位置していた。だからこそ、人間が入り込みやすい場所だったのだ。
それなのに今回は魔王城のお膝元である街で人間が活動していたなんて、あまり良いことではない。
「随分と無理をしてやって来たようだな。既に死にかけだったから、指示を出した国に送り返してやった」
「……高濃度魔力に耐えられなかったんだね」
スノウたち魔族にとっては快適な魔力濃度だけれど、人間にとっては害である。
魔力アイテムで対処していたはずだけれど、完全ではなかったというだけだ。
「——ここで魔族を攫っても、連れ帰るのは無理だったんじゃない?」
ルイスが囚われていたのは、街外れにある廃屋の地下だったらしい。
これまでに誘拐被害者が逃げ出すたびに、囚える場所を移動していたというのだから、随分と手間を掛けているなぁと思う。
それはそれとして、こんな街で捕らえた魔族を、人間世界まで持ち帰るのは無理に近い気がする。
「それは転移場所を点々と用意していたようだ。そのすべてを見て回っても、使われた形跡はなかったが」
「誰か転移させたの?」
こんな短時間で見て回るなんて、そんな方法しかないだろうと思った。
でも、アークが静かに首を横に振る。
「いや。大体の場所が把握できれば、俺の能力である程度把握できる。ブレスラウにも練習させた」
「え、ブレスラウもできたの? すごい!」
アークの能力の凄さは今更のことだったので驚くことはなかったけれど、それをブレスラウもできるとなれば、スノウは当然褒め称える。
アークが少し拗ねた雰囲気になった気がした。アークも賞賛されたかったのかもしれない。
「……父者には及ばない。もっと練習が必要」
「そうなんだ。アークはすごいもんね。たくさん教えてもらうといいよ」
悔しそうなブレスラウを宥めると、何故か眉を寄せられた。反対に、アークは機嫌を良くしたようだ。
「上達するまで付き合おう」
「……すぐ上手くなる」
アークとブレスラウの視線がぶつかり合う。
それを眺めながら、スノウは『父親と息子って、こういう関係なんだなぁ』と微笑ましくなった。
スノウ自身は父親を知らないから、少し羨ましいと思わなくもないけれど。
「それにしても、実行犯を送り返すだけで対処終了?」
怪我をしたものはいなかったとしても、誘拐された被害者はたくさんいる。それを考えると、少々対処が甘い気がした。
首を傾げ尋ねるスノウに対し、アークとブレスラウ、そしてロウエンが視線を交わした。なにやら裏事情がありそうだ。
怪しい雰囲気とは対照的に、ルミシャンスが走り回る音が平和である。ルイスに遊んでもらっているらしい。
昨日の疲れが残っていないのは良かったけれど、案外タフだなぁと感じる。
「——それについては、ブレスラウが竜族の一部を率いて対処することになった」
「まさか皆殺し……?」
アークの発言を思い出して、スノウは目を見開いた。
でも、すぐに「違う」と返ってきたので安心する。戦うのがダメだとは言わないけれど、ブレスラウにはまだ早い気がするのだ。
「竜族の特殊魔法だ」
「初めて聞いた。どんな魔法?」
スノウは思わず目を輝かせた。竜族の能力の高さを思えば、特殊魔法に凄まじい効果があってもおかしくない。
「魔力溜まりを意図的に創り出す」
「うん? それって、つまり……?」
「人間世界の一部、今回の事件の首謀者の国が、魔族世界に近い魔力濃度になる。時間が経てば薄まるが、それまでは人間が暮らしていくのに不都合がある空間になるだろう。魔物も現れるからな」
アークの説明を飲み込んで、スノウは固まった。
(それ、結果的に皆殺しになってない……?)
「……人間は逃げられない?」
「魔力が周囲に満ちるまでには時間がかかる。国を捨てて逃げることは可能だろう」
「……そっか。それならいいのかな」
やり過ぎのような、そうでもないような、よく分からないけれど、それが魔王としてのアークの決断ならば、スノウは受け入れるだけだ。ブレスラウも納得しているようだし。
「——ブレスラウは人間世界まで行くの?」
一つだけ気になったのがそれだった。
特殊魔法を使うにしても、人間世界まで遠出するというなら、少し寂しいし心配になってしまう。
「いや。これは竜族が集まって行う儀式魔法——大規模な魔法で、遠隔から放つことができるからな」
「じゃあ、ブレスラウはここにいられるんだね!」
ホッとしてにこっと笑ったら、アークが目を細めて頷いた。
心配事はなくなったし、ブレスラウの試練もなんとかなりそうだし、これにて一件落着と考えてもいいだろうか。
「——安心したらお腹空いたかも。ルミシャンス、おやつにしよう!」
「にー! おやつ!!」
目をキラキラさせて飛び込んできたルミシャンスを抱きしめて、スノウはふふっと笑った。
次の街散策はもっと楽しみたいものだ。
問題が起こるたびに思うことだけれど、事態の把握が早すぎる。普通はもっと難航するものだろう。
アークと共に動くことになったブレスラウとは違い、スノウは関与を拒まれたので、どのような手法で尋問が行われたかは分からない。
でも、執務室に帰ってきたブレスラウが「なかなか面白かった」と呟いていたので良しとする。アークは「ブレスラウは飲み込みが早い」と満足そうだった。
「——結局、また人間だったの?」
尋問の結果を教えてくれたアークに、スノウはつい呆れた声でそう返した。
ここ数年起きる問題のほとんどが、人間が原因となって起こされている気がする。『また』と言ってしまうのも仕方ないだろう。
「ああ。魔族を捕らえることを諦めていないようだな」
「こんなところまで入り込んでるなんて……」
スノウは眉を寄せた。
これまで人間が干渉してきた雪豹の里も白狼の里も、魔族世界の端に位置していた。だからこそ、人間が入り込みやすい場所だったのだ。
それなのに今回は魔王城のお膝元である街で人間が活動していたなんて、あまり良いことではない。
「随分と無理をしてやって来たようだな。既に死にかけだったから、指示を出した国に送り返してやった」
「……高濃度魔力に耐えられなかったんだね」
スノウたち魔族にとっては快適な魔力濃度だけれど、人間にとっては害である。
魔力アイテムで対処していたはずだけれど、完全ではなかったというだけだ。
「——ここで魔族を攫っても、連れ帰るのは無理だったんじゃない?」
ルイスが囚われていたのは、街外れにある廃屋の地下だったらしい。
これまでに誘拐被害者が逃げ出すたびに、囚える場所を移動していたというのだから、随分と手間を掛けているなぁと思う。
それはそれとして、こんな街で捕らえた魔族を、人間世界まで持ち帰るのは無理に近い気がする。
「それは転移場所を点々と用意していたようだ。そのすべてを見て回っても、使われた形跡はなかったが」
「誰か転移させたの?」
こんな短時間で見て回るなんて、そんな方法しかないだろうと思った。
でも、アークが静かに首を横に振る。
「いや。大体の場所が把握できれば、俺の能力である程度把握できる。ブレスラウにも練習させた」
「え、ブレスラウもできたの? すごい!」
アークの能力の凄さは今更のことだったので驚くことはなかったけれど、それをブレスラウもできるとなれば、スノウは当然褒め称える。
アークが少し拗ねた雰囲気になった気がした。アークも賞賛されたかったのかもしれない。
「……父者には及ばない。もっと練習が必要」
「そうなんだ。アークはすごいもんね。たくさん教えてもらうといいよ」
悔しそうなブレスラウを宥めると、何故か眉を寄せられた。反対に、アークは機嫌を良くしたようだ。
「上達するまで付き合おう」
「……すぐ上手くなる」
アークとブレスラウの視線がぶつかり合う。
それを眺めながら、スノウは『父親と息子って、こういう関係なんだなぁ』と微笑ましくなった。
スノウ自身は父親を知らないから、少し羨ましいと思わなくもないけれど。
「それにしても、実行犯を送り返すだけで対処終了?」
怪我をしたものはいなかったとしても、誘拐された被害者はたくさんいる。それを考えると、少々対処が甘い気がした。
首を傾げ尋ねるスノウに対し、アークとブレスラウ、そしてロウエンが視線を交わした。なにやら裏事情がありそうだ。
怪しい雰囲気とは対照的に、ルミシャンスが走り回る音が平和である。ルイスに遊んでもらっているらしい。
昨日の疲れが残っていないのは良かったけれど、案外タフだなぁと感じる。
「——それについては、ブレスラウが竜族の一部を率いて対処することになった」
「まさか皆殺し……?」
アークの発言を思い出して、スノウは目を見開いた。
でも、すぐに「違う」と返ってきたので安心する。戦うのがダメだとは言わないけれど、ブレスラウにはまだ早い気がするのだ。
「竜族の特殊魔法だ」
「初めて聞いた。どんな魔法?」
スノウは思わず目を輝かせた。竜族の能力の高さを思えば、特殊魔法に凄まじい効果があってもおかしくない。
「魔力溜まりを意図的に創り出す」
「うん? それって、つまり……?」
「人間世界の一部、今回の事件の首謀者の国が、魔族世界に近い魔力濃度になる。時間が経てば薄まるが、それまでは人間が暮らしていくのに不都合がある空間になるだろう。魔物も現れるからな」
アークの説明を飲み込んで、スノウは固まった。
(それ、結果的に皆殺しになってない……?)
「……人間は逃げられない?」
「魔力が周囲に満ちるまでには時間がかかる。国を捨てて逃げることは可能だろう」
「……そっか。それならいいのかな」
やり過ぎのような、そうでもないような、よく分からないけれど、それが魔王としてのアークの決断ならば、スノウは受け入れるだけだ。ブレスラウも納得しているようだし。
「——ブレスラウは人間世界まで行くの?」
一つだけ気になったのがそれだった。
特殊魔法を使うにしても、人間世界まで遠出するというなら、少し寂しいし心配になってしまう。
「いや。これは竜族が集まって行う儀式魔法——大規模な魔法で、遠隔から放つことができるからな」
「じゃあ、ブレスラウはここにいられるんだね!」
ホッとしてにこっと笑ったら、アークが目を細めて頷いた。
心配事はなくなったし、ブレスラウの試練もなんとかなりそうだし、これにて一件落着と考えてもいいだろうか。
「——安心したらお腹空いたかも。ルミシャンス、おやつにしよう!」
「にー! おやつ!!」
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次の街散策はもっと楽しみたいものだ。
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