75 / 113
Ⅱ-ⅱ.あなたを想う
2-14.小さなライバル
しおりを挟む
国王陛下とそのご家族が過ごすプライベートエリアの一室。
華やかに飾られた部屋で、僕は今後親戚となる人たちと顔を合わせることになった。
「よく来たな、ジル。それにフランも。あぁ、そうだ。番成立おめでとう!」
以前同様ににこやかに歓迎してくれたお義兄様に微笑み返す。
僕が儀礼的な挨拶をすると、お義兄様は「うん、うん」と満足そうに頷いた後、傍らに立つ女性を示した。
「フランも以前のパーティーで会っているだろうけど――」
「王妃のエリザベスですわ。フラン様とはぜひお会いしたいと思っていたのよ。こうしてお話できる機会があって嬉しいわ」
お義兄様の紹介を遮るように、王妃殿下がキラキラと輝くような瞳で言い、ずいっと迫ってきた。
手を握られてきょとんとしてから、慌てちゃう。こんな状況でのマナー、学んでないよ。
「王妃殿下」
「あら、ジル様。わたくしのことは、義姉上と呼んでいただきたいわ、と前から言っていますでしょう?」
「……義姉上、フランが戸惑っています。あと、近すぎます。離れてください」
「まあ、嫉妬ね? あなたのそんな姿を見れることになるなんて、以前のわたくしでは考えられなかったわ」
うふふ、と笑う王妃殿下は、ジル様のちょっと怖い眼差しにも臆した様子がなく、溌剌としてパワフルだった。
そして、僕の手を全然離してくれない。嫌ではないんだけど、どうしたらいいのかわからないなぁ。
お義兄様は「ベスは元気だね」とニコニコと笑うばかりで、諌める気はなさそう。
「……僕も王妃殿下とお会いできて光栄です」
「まぁ、うふふ。フラン様は可愛らしい方ね。とても好きよ。どうぞわたくしのことは、お義姉様と呼んでくださると嬉しいわ。陛下のことをお義兄様と呼んでいらっしゃるのでしょう?」
押しが強い。でも、それが不快に感じられないんだからすごい。なんか憧れちゃう。
「では、お義姉様、と呼ばせていただきます。それで、あの、王太子殿下と王女殿下にご挨拶させていただいても?」
お義姉様の横で静かに礼儀正しく状況を見守っている幼い子どもたちに注意を向けさせる。
途端にお義姉様がハッとした様子で、「そうね。ロアンド、ご紹介なさい」と促し、ようやく離れてくれた。
王太子殿下と王女殿下に視線を合わせるように屈み、微笑みかける。王太子殿下の微笑みに、お義兄様の面影を強く感じた。
「お初にお目にかかります。ジルヴァント殿下の番のフラン・ボワージアと申します。お見知りおきいただけましたら幸いです」
夜会には幼さゆえに参加していなかった王太子殿下たちと顔を合わせるのは初めて。
緊張しながら挨拶すると、「うん」とあどけない声で返事があった。
「私はロアンド。王太子の位についているよ。あなたの義甥になるので、これからも仲良くしてほしい」
「わたくしはエスメラルダよ。ジル兄様が望むなら、あなたと仲良くしてあげてもよろしくてよ」
王太子殿下が友好的な挨拶をくれたのは嬉しかった。でも、王女殿下がツンとした感じだったから、場が少しピリッとした気がする。
「エスメラルダ、きちんとご挨拶なさい」
「悪いね、フラン。エシィはまだ幼くて……」
お義姉様が少し眉を顰めて注意する横で、お義兄様が苦笑しながら謝罪する。
それに対して「お気になさらず」と微笑み返しながら、僕は王女殿下の視線を追って、ジル様を見上げた。
明らかに不機嫌そうな顔をしてる。十にもならない子どもに向ける目じゃないよ。
でも、その視線に負けずにうっとりと見つめ返す王女殿下に、ちょっと感心しちゃった。僕もこんな心の強さを持ちたい。
「エスメラルダ王女殿下、ぜひ仲良くしてくださいませ」
「……ふんっ」
プイッと顔を背ける仕草が子どもらしくて可愛い。あまり気に入られていないようだけど、仲良くなれたらいいなぁ。
そのためにも、ジル様にはもうちょっと優しく対応してあげるよう促した方がいいかな?
華やかに飾られた部屋で、僕は今後親戚となる人たちと顔を合わせることになった。
「よく来たな、ジル。それにフランも。あぁ、そうだ。番成立おめでとう!」
以前同様ににこやかに歓迎してくれたお義兄様に微笑み返す。
僕が儀礼的な挨拶をすると、お義兄様は「うん、うん」と満足そうに頷いた後、傍らに立つ女性を示した。
「フランも以前のパーティーで会っているだろうけど――」
「王妃のエリザベスですわ。フラン様とはぜひお会いしたいと思っていたのよ。こうしてお話できる機会があって嬉しいわ」
お義兄様の紹介を遮るように、王妃殿下がキラキラと輝くような瞳で言い、ずいっと迫ってきた。
手を握られてきょとんとしてから、慌てちゃう。こんな状況でのマナー、学んでないよ。
「王妃殿下」
「あら、ジル様。わたくしのことは、義姉上と呼んでいただきたいわ、と前から言っていますでしょう?」
「……義姉上、フランが戸惑っています。あと、近すぎます。離れてください」
「まあ、嫉妬ね? あなたのそんな姿を見れることになるなんて、以前のわたくしでは考えられなかったわ」
うふふ、と笑う王妃殿下は、ジル様のちょっと怖い眼差しにも臆した様子がなく、溌剌としてパワフルだった。
そして、僕の手を全然離してくれない。嫌ではないんだけど、どうしたらいいのかわからないなぁ。
お義兄様は「ベスは元気だね」とニコニコと笑うばかりで、諌める気はなさそう。
「……僕も王妃殿下とお会いできて光栄です」
「まぁ、うふふ。フラン様は可愛らしい方ね。とても好きよ。どうぞわたくしのことは、お義姉様と呼んでくださると嬉しいわ。陛下のことをお義兄様と呼んでいらっしゃるのでしょう?」
押しが強い。でも、それが不快に感じられないんだからすごい。なんか憧れちゃう。
「では、お義姉様、と呼ばせていただきます。それで、あの、王太子殿下と王女殿下にご挨拶させていただいても?」
お義姉様の横で静かに礼儀正しく状況を見守っている幼い子どもたちに注意を向けさせる。
途端にお義姉様がハッとした様子で、「そうね。ロアンド、ご紹介なさい」と促し、ようやく離れてくれた。
王太子殿下と王女殿下に視線を合わせるように屈み、微笑みかける。王太子殿下の微笑みに、お義兄様の面影を強く感じた。
「お初にお目にかかります。ジルヴァント殿下の番のフラン・ボワージアと申します。お見知りおきいただけましたら幸いです」
夜会には幼さゆえに参加していなかった王太子殿下たちと顔を合わせるのは初めて。
緊張しながら挨拶すると、「うん」とあどけない声で返事があった。
「私はロアンド。王太子の位についているよ。あなたの義甥になるので、これからも仲良くしてほしい」
「わたくしはエスメラルダよ。ジル兄様が望むなら、あなたと仲良くしてあげてもよろしくてよ」
王太子殿下が友好的な挨拶をくれたのは嬉しかった。でも、王女殿下がツンとした感じだったから、場が少しピリッとした気がする。
「エスメラルダ、きちんとご挨拶なさい」
「悪いね、フラン。エシィはまだ幼くて……」
お義姉様が少し眉を顰めて注意する横で、お義兄様が苦笑しながら謝罪する。
それに対して「お気になさらず」と微笑み返しながら、僕は王女殿下の視線を追って、ジル様を見上げた。
明らかに不機嫌そうな顔をしてる。十にもならない子どもに向ける目じゃないよ。
でも、その視線に負けずにうっとりと見つめ返す王女殿下に、ちょっと感心しちゃった。僕もこんな心の強さを持ちたい。
「エスメラルダ王女殿下、ぜひ仲良くしてくださいませ」
「……ふんっ」
プイッと顔を背ける仕草が子どもらしくて可愛い。あまり気に入られていないようだけど、仲良くなれたらいいなぁ。
そのためにも、ジル様にはもうちょっと優しく対応してあげるよう促した方がいいかな?
1,048
あなたにおすすめの小説
婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした
水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」
公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。
婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。
しかし、それは新たな人生の始まりだった。
前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。
そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。
共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。
だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。
彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。
一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。
これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。
痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる