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3話
しおりを挟む「ここか…」
あれから暫く歩き回って、教師寮の鍵に書かれた番号の部屋を見つけた。
教師寮は校舎の中ではなく、校舎外に別館として建っていた。なぜ最初からこの発想に至らなかったのか…
と、とにかく“F306”の部屋に入ろう。
カードキーの様な形状の鍵を、扉に翳す。
軍でも採用されているような先端技術だぞこれ…さすが魔法学園だな。
ピー、と電子音が鳴った。どうやら解錠出来たらしい。
「失礼しまーす…」
「…。」
扉を開けて部屋に入ると、まだ昼間だと言うのに薄暗い。外からの光を布で遮っているようだ。カチャカチャ、と何かを弄っている音が聞こえる。それに、同室の人は女性の様だが、こちらの言葉に反応しない。というより、何で女性なんだ?
この寮…まさか男女混合!?
なんと、楽園はここにあったのか!
「あの、もしもし?」
「…。」
近づいて話しかけてみるが反応しない。
相変わらず何かを弄っている。ここにいるという事で、教師なのはほぼ確定…まさか、この女性…魔法工学とやらの変わり者だろうか。
「…あのー!すみませーん!今日から同室になりました!アレシアと申します!」
「…聞こえてんヨ、るっさいナぁ…こちとら《MF12号》君の作成で忙しいんだヨ!わかる!」
怒られてしまった。
だけどさっぱり分からない。マイフレンド12号君?この女性は一体何を言っているんだ。
まさかその手元の…
「…まさか、それ…?」
「ソレじゃない。MF12号君ダ。わかんねーかナァ?」
「ご、ごめん分かんない。」
「ハッ、わーった。教えてやル。こいつァ…」
・
・
「まぁざっトこんなモンか?なんカききてェことあれバ答えてやるけド。」
「無いです。」
半ば無理やり話を聞かされたお陰でこの人のことがだいたい分かった。この人だいぶヤバい人だ。と言うより、話を聞きはじめて数秒で出てきた、《趣味が魔道具作成》って事を聞いてから、何となくそんな気配はしてたけど…
「あっそ。ククク…いま動かしてやるからナァ…。」
道具に語りかけてる所とかを見るに、もう手遅れだとすら思う。いや、手遅れだ。
そのうち永遠の命だー!とか芸術は爆発だ!とか言って自分を改造し出すんじゃないか…
「え、えーっと…結局その魔道具君は、何に使うんですか?」
「ンなもん私の話し相手ダ。それ以外あるカ?…ッと!これで完成ダ!」
俺と話しながらも手を動かし続け、組み立てていたMF12号が完成したらしい。
かなり嬉しそうだ。
「アー、アー。聞こえるカMF12!」
《きこ、えま、えまえまえまええええええままままままますすまえすすままま。》
ボンッ!
小さな爆発と共に魔道具は壊れた。うん。
なんだろう、全然悲しくない。
「…。」
「うぉああア!?大丈夫かァ!?クソ、もう息が…」
魔道具に息もクソもないだろ、というツッコミは無粋だろうか、無粋だな、うん。
多分、サンタを信じてる子供に『サンタはね、君のおかあさんとおとうさんなんだよ。』って言うくらい無粋だ。
「あの、話し相手くらいなら俺、しますけど…?」
「……本当に?ウソじゃないよナ?」
話相手になってもいいと伝えると、彼女の目の色が変わった。いやどんだけだよ…
「…メシでもいこうゼ。食堂は開いてるだロ。」
♢♢♢
同室の女性に連れられ、俺は食堂に着いた。
道中で話していたが、彼女は『ジンジャー』と言う名前らしい。話の中で出てきた。
「うぉ…広いな…」
「まぁ、生徒数800人だしナ。」
何だかんだで来ていなかった食堂の広さに驚いていると、衝撃の事実が。
学園長曰く4学年あるらしいから、各学年200人か…倍率高そうだな。
「ま、今は誰もいねーヨ。まだ休みだからナ。明日からは忙しく…ア。厨房に誰もいねェ。料理人達も休みカ。忘れてた。」
なんという事でしょう、結局誰も居ないのか。いや確かにこの昼間から誰もいない厨房でコックが働いてたらビックリするけど…
「しゃーなイ。私は魔装の開発を急ぐカ。アレシア?だったっケ?私はこれで。じゃあナ。」
「り、了解。また後で。」
ジンジャー先生は魔装とやらの開発に行ってしまった。
魔装?聞いたことない単語だな。機密事項かな?…気にしたところで探れないしどうでもいいんだけどね。
さて、どうしよう。部屋もわかったことだし外でメシにしようか…って、そうだ。
俺、生徒に勉強教えるって言っても教科書何一つ持ってねぇ。学園長んとこ行くか…
・
・
・
「って事で教科書どうするんですか?」
「って事でってなんじゃ。」
ん?話が繋がらない?さっきまでのは回想だ。
「教科書な…あったあった。これじゃ。」
学園長から手渡された本を見る。
厚さは…漫画の単行本2冊程度か?大きさは
A4サイズだと思う。
中には、驚くべき内容が…。
「え?これだけ?」
「そう、これだけなんじゃよ…」
まさかの基礎の基礎の基礎の基礎…位の内容が載っていた。正直、このレベルは3歳児でもわかると思うんですよ、はい。
《詠唱の仕方》とか馬鹿にしてるのか?
読むだけじゃん。
「どう見ても物足りないじゃろ?だから自由に教えて欲しいんじゃよ。」
「これは酷い…今からでも書き直した方がいいんじゃ?」
「それが出来たら苦労しとらんわ…妾だって忙しいんじゃぞ?北の侵攻を止めたりのぅ…」
あれ?それって俺が止めたやつじゃ…
また動き出したのか、しぶといなぁ。
「まぁ、魔法理論はその教科書じゃ。これが魔法技能、そんでこっちが体術。あとこれが算術…」
「えぇ…」
学園長が取り出す教科書をそれぞれ流し読みしていくが…どれもこれもレベルが低い。
特に算術!九九なんて小学生でもできるぞ!?ここは小学校なのか!?
「ここって…何歳くらいの子が?」
「あ~、大体じゃが、15~19歳じゃ。」
高校生じゃん!教育水準低すぎィ!!
これはマズいでしょ。このままだとほんっとーに基礎しか使えない魔法使いが量産されてしまう。
俺が何とかするしかないのか…!
「あーそれと、この学園な、教師がナメられる風潮があるからのぅ、念のため聞いておくが…お主の魔法技能と、体術技能のランクは?」
教師がナメられる風潮って…俺、いじめられたりしないよね?そうなったら心折れちゃうよ?
「魔法SS、体術Bですけど…」
「…うむぅ、体術をもう少し頑張らんと。お主、体術も教えるのじゃぞ?」
「は、はぁ。」
魔法技能と体術技能ランク。
昔、なんとかっていう人が実力を測る道具を発明したそうな。それに触れるとその人の実力がE~SSのランクで現れる。ゲームみたいだな。
…要するに、俺は魔法は出来るけど体術ができないってこった。軍人だっただろって?
訓練しても成長しないんだよ!
「まぁよい、ランクが全てではないからな。あ、これお主が担当するクラスの名簿じゃ。」
学園長から手渡されたのは“SS”と書かれたファイル。名前を覚えるのは苦手だから、頑張らないとな~等の考えは、ファイルを開いた瞬間霧散した。
中には、『ヴァレリア・クロフォード』と言う名前のみ。
「…は?あの、これ一人しか書いてないんですけど。」
「んぉ?おぉ、学園に魔法SSランクが漸く1人入学してきたんじゃ!お主にはその子の担任をしてもらうんじゃよ。」
なんと俺のクラスは1人らしい。
ヴァレリア・クロフォード。名前ももう覚えてしまったんだが、さっきまでの俺の悩みは何だったんだ。
……はぁ。
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