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2話
しおりを挟む魔法。
日本にいた頃は憧れたものだ、『自分も魔法が使えたら?』なんて妄想をしたのも一度や二度ではない。あの頃ノートに書き記したことは、黒歴史となって保存されている。
その時書いたものの中に、魔法学園という単語も出てきた覚えがある。俺のイメージでは、そこかしこに美男美女。そんな中ぽつりぽつりと魔法の才が無い子がいる…みたいな。
まぁ、そんな話はいいか。
俺は今…
「うわー、でっかい建物だわ…」
アリスと共に、魔法学園の校門の前にいる。
俺の身長が約百七十センチ。それを考慮して考えると…門だけでも三、四メートルはある。
そこに人1人が入れるくらいの扉が付けられている。通用口か?なんにせよ、ここから入るんだな。
俺なんて軍の図書館と先輩に少し教えてもらっただけだってのに…ここで学べる奴は恵まれてるな。こんな所で魔法を教えるかと思うと、プレッシャーに押し潰されそうだ…。
「マジか…ここで教えるのか…」
「とりあえず行きますか!ほら、とりあえず中に入ってみましょう!」
「あ、ちょ、待て待て。」
俺の制止を聞かず、通用口からアリスが入ろうとした。
すると、何処からか警告音のようなものが聞こえてくる。
《警告!警告!これより先は関係者及び生徒以外の立ち入りを禁止しています!》
「うわぁ!?な、なんですかこれ!?」
「…警告?」
「んなことはわかってんですよ!」
《繰り返す!これより先は関係者及び生徒以外の立ち入りを禁止しています!》
「…どうします?これ。」
「…さぁ?」
どうしますったってどうしようもないだろう。
せめて誰か人がいればいいのだが…そんなに都合よく現れる訳もなし、どうしたもんか。
こんな時携帯が無いのが悔やまれる。頼り切りの生活だったんだな、と身をもって実感する。
「止まれ!何者だ!」
突然通用口の扉が勢い良く開き、都合よく人が現れた。なんという奇跡!
相手方は敵意バリバリだがこの際どうでもいい!
「…王国軍から転籍になったアレシアだ。こっちはその、オマケみたいな物だ。」
「同じく転籍となりました、アリスと申します。オマケではありませんよ?」
「アレシア…あぁ、新しく入ってくる先生ってこの人達か。」
…悲しい、軍だと有名人なのに俺の手柄は軍の手柄になるから、軍以外では名前有名じゃないの。悲しい。
わーとかきゃーとか言われるのを少し期待したんだけどなぁ。
「さっきは悪かったな。俺はグレアム、ここで体術を教えている。警報に引っかかってたって事は、教員登録がまだっつー事だ。付いてきな、学園長の所で登録を済ませちまおう。」
「あ、あぁ。ありがとうございます。」
良かった、この人は親しみやすい人のようだ。最初に出会った人がまともに会話できる人で良かった…!
「んな堅苦しいのはいいって!これから同僚なんだから!」
「おっと!そうですか~!わっかりました!
私も素で行かせていただきます!」
敬語はいらないか、楽でいいな。それよりも…
あーあ、アリスが本性出しちゃったよ。化けの皮が全部剥げた。見ろこの顔。ドン引き…
「…。」
してない。なんで顔を赤くしているんだグレアム先生!今のどこにそんな要素があった!
「…ぐ、グレアム先生?行きません?」
「そーですよグレアム先生!早く連れていって下さいな!」
「わ、わかった!こっちだ!」
♢♢♢
「ここだ、ここが学園長室だ。」
グレアム先生に連れられて来た先には、
でかでかと
《学園長室!!》
と、書いてある扉があった。うん。なんとも自己主張の激しい学園長の様だ。
「気をつけろよ、なかなかに気難しい人だからな。あんなでも本当に強いから困る…」
あんな…とは、そこまで酷いのか?
まぁ、ある程度の礼節をもって相手をすれば、不快に思わせることは無いだろう。
扉を数回ノックする。
「王国軍より参りました、アレシア・シェイドです。」
『おぉ、待っていたぞ!さぁ入れ!』
中から入れ、と声が聞こえてきた。
…思いの外声が高いのはきっと声が高い女性なのだろう。ほら、アニメ声の声優とかいるじゃん。そんな感じ。
「ほら、入りましょう先輩!」
待て、お前何の挨拶もしてないだろ。ああ行っちゃった…まぁいいや、どうにでもなれ。
俺も行くとしよう。
アリスに続いて学園長室へ入る。
そこには大きな机、社長室にありそうなイス、来客用のソファと見られる物などがあった。
全体的に豪華なのだが…学園長がいない。
「よく来たな、軍の英雄とその奴隷よ。」
部屋を見回していると、突然イスが回転して
少女が現れた。…ロリが現れた。
もう一度だけ言わせてくれ。ロリが現れた。
まさか背もたれに隠れているとは…
「小さっ!?」
「なんじゃ?妾に喧嘩売っとるんか?おぉ?」
こいつ言いやがった。思ってても口に出しちゃいけないことを思いっきり言い放ちやがった。
「す、すみませんすみません!家の奴隷が…」
「…まぁよい、次は無いぞ。よいな!」
その言葉と共に、言いようのない圧が俺達を襲った。
俺は平気だが、アリスには堪えたらしい。足が生まれたての小鹿のように震えている。
…このロリ、只者じゃない。化物か!?
「は、ひゃいぃ…」
アリスが涙目で返事をする。
黙ってればそれだけでいいのに、どうして口を開いてしまうのか…
「が、学園長、この者達の魔力登録を!」
「おおグレアム。そういえばそうじゃったなぁ。お主ら、少しこっちに来い。」
グレアム先生が話しかけたことによって、かかっていた圧が霧散した。あの2人結構仲良かったりするのか?
とりあえず学園長に言われた通りに進むと、足元に大きな魔法陣が出現した。
「わ、何でしょうこれ。」
「魔力登録だろ…多分。」
「その通りじゃ!さて。…汝らの通行、学園長、シャルロッテ・ヴァルプルギスの名の元に許可する!」
魔法陣が強烈な光を発している。登録中という訳か。それにしても…名前かっこいいなこのロリ。見た目はあれだけど…
「…ぃよし!完了!これで、晴れて汝らも我が学園の一員じゃ!これから宜しく頼むぞ!」
「え、えぇ、はい。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします学園長ッ!」
「む、良い返事じゃ奴隷の!所でお主、名前なんて言うんじゃ?」
こうして俺達は教師となった…らしい。
まだ生徒達と顔を合わせていないから、実感はわかないがな。
♢♢♢
現在、俺達は来客用のソファで学園長と仕事内容の確認をしている。…しているのだが、
「おかしくないですか?これ。魔法技能、魔法理論をほぼ全クラス、体術を1クラス、基礎学習の算術等を1クラスと、それに担任って。」
「ぜーんぜん?なーんもおかしい所なんぞないがのぅ。のぅ?グレアム。」
「………………はい…!」
いや絶対おかしいんじゃん。グレアム先生めっちゃ申し訳なさそうに見てるじゃん。なんというイジメ…それに比べてアリスは…
「私は1クラスの魔法技能ですか…ちょっぴり物足りませんね!」
全部まとめて押し付けてやりたい。
おかしすぎるだろ、どんだけ人員いないんだ。
「…人手不足なんですか?ここ。」
「うんにゃ、そんなことは無いぞ。ウチは1年、2年と基礎学習をして、3年、4年で学科分岐する方式を取っていてな。学科の先生はいっぱいいるんじゃが、基礎の先生がおらんのじゃ。なんせつまらんしのぅ。はははは!特に魔法工学の連中は変わり者だらけじゃよ!」
つまらんって言い切りやがったよ!そういうことか、基礎を教えるなんてつまんない事をやる先生が全然いないからこんな滅茶苦茶な授業スケジュールになるのか!
というか、変わり者を放置しておくなよ…
「前教えてたヤツは過労で倒れて治療中だしのぅ…ま、頑張ってくれぃ。」
「……。」
言葉が出ない。俺も過労で倒れるハメになりそうだ…くぅ、教師の仕事なんて受けるんじゃなかった…!
「あ、そうそう。アレシアが教えるクラスは
エリートから凡人まで幅広いからの。きちんと個々のレベルに合わせて教えてやるんじゃぞ?あ、アリスは凡人オンリーじゃ。レベルをきちんと落として、わかり易くな!」
「そんな無茶な…」
「わっかりましたぁ!確かEクラスですね!それじゃ早速行ってきます!」
「うむ!元気じゃなあ!ま、今日はまだ学期が始まってないから教室に行ったところでだーれもいないがのぅ。」
この学園長…止めもしなかったぞ。
“悪魔”の二つ名は俺なんかよりこの人の方が似合っているような気がするのは俺だけか?
「滅茶苦茶だ…それで、いつから新学期なんですか?」
「明日じゃ。」
このロリ今なんて言った?明日だと?
明日から、新学期?
「……はい?」
「明日じゃ。明日から新1年生と新2年生の授業が始まるぞ。それまでに準備をしておいてくれればいいからのぅ。あ、教える内容は任せる。英雄の手腕、見せて貰おうかのぅ!」
ふはははは!と笑う学園長を物凄くぶん殴ってやりたい衝動に駆られるが、ここは耐えるんだ俺、耐えろ、耐えろ…
「…あ、明日の準備があるので僕はこれで…!」
「おぅ、じゃあのー。あ、これをやろう。教師寮のカギじゃ。」
学園長がカードキーを投げ渡してくる。よかった、住むところは保証されているのか…いや、だからなんだと言う話なんだが。俺家あるし。
まぁせっかくだから寮に住もうと思うがね。同室が面白いやつだといいな。
「ほんじゃーのー。…ククッ、どうやって辿り着くのか、見物じゃな。」
「アレシア…強く生きてくれ…!」
学園長の言葉を聞き流しつつ学園長室を出た俺は、鍵に書いてある“F306”という部屋を探すことにした。
…あ、教師寮の場所が分からない……。
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