星賢者のたゆたう物語

maturi

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第1章 星は巡りて、瞬く始まり

出逢い

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私は何も持っていなかった。
訂正。
スピカと言う名前を持っていた。
でも、それしか持っていなかった。

十数年の時をイケニエとして祭壇に監禁され、白い光の部屋で時間を浪費している。

それも今日で終わる。

イケニエは命の光で何千、何万という人を救う代償に自由と命を失う。

私の命は残り僅か。

あと少しで解放される。

「助けて!」

「・・・くない」

「まだ死にたくない!」

「何のために生まれたかすらわからない! 何にが生きているのかわからない! このまま死ぬなら、生まれて来なければ良かった!」

私は希望の巫女。人々に光と奇跡を捧げる為だけに存在する。

「私にも希望が欲しい!」

その瞬間、部屋が崩壊した。

何も無い闇に覆い尽くされ、周囲に気味の悪い何かの息遣いがいくつも感じられる。

「い、いやああああああ」

こんな終わり方は嫌だ。神様なんていない。こんな世界、滅びて仕舞えばいいのに。

闇の中で蠢くなにかが迫って来た。

これで終わるなら、呪ってやる。

全てを諦めて目を閉じた。



「悪いが俺が先約だ。失せろよ有象無象。第七創世禁呪『熾天使セラフ』」

目を開けるとボロボロの黒いローブを身に纏い、黒い瞳と黒い髪の少年が六つの魔法陣をその手に発動させながら何かを防いでいた。

「あなたは?」

その言葉に少年は反応せず、闇を睨みつけていた。

「今は少し気分がいい。見逃してやろう」

今度は無数の牙が全方向から迫る。

「はあ、所詮は意思なき獣か」

少年は手を払う動作をしただけで周囲が焔の世界へと変貌する。

闇は焔に照らされ、状況が鮮明に見えた。
夥しい黒い異形の化け物が焔に焼かれて消えて行く。

「助けてくれたのですか?」

「俺は希望を与えに来た。お前の生には救いがなさすぎた。だから、これからは俺が応えよう。お前の従者となる許可が欲しい」

「私には何も無いよ?」

「俺には希望しかない。何もない方が都合がいい」

「後悔しても知らないよ?」

「俺が後悔する事はない。何故なら、君にたどり着けた事が俺にとってどれほどの救いであった事か」

「じゃあ、私に希望をください」

「仰せのままに」

焔の世界は消え、魔法陣によって固定された空間から世界を見下ろしていた。

「これが世界だ。それでは旅をしよう。この世界に希望を見出すための旅を」

「ええ。お願いします」

私は彼という希望と出逢った。
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