歌ってマリアージュ

柆マスミ

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認識と成長と発見と

1歳です

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3話

はい、どうもーカミールです!
本日無事に、1歳を迎えました!(ジャーン☆)
夕方にお父様とお母様がお祝いにパーティーしてくれるんだってー!嬉しー!!!
赤ちゃん用の柵がついたベッドでキャッキャと笑いながら独りで芋虫のようにゴロゴロしていると、兄の
が近づいてきた
キル兄様~ と無邪気に手を伸ばせば、キル兄様は微笑みながら柵越しに手を握ってくれた
「カミ~今日も可愛いね!今日はお前のお誕生日だよ?お父様とお母様がお祝いしてくれるんだ。僕もカミに似合う可愛いお花を創ったから楽しみにしててね!」
ありがとうお兄様~!「前」はひとりっ子だったからなー…妹思いの兄が出来て私は幸せだよー!
私の頬をツンツンしながらいう兄の言葉に、私は嬉しさが抑えきれず、始終ニコニコしながら手をブンブンを振って兄にお礼の気持ちを伝える
キル兄様…外見は超イケメン王子顔なのに中身までイケメンってスゴーい!
嬉しさMAXで興奮している赤子の私に応えて、王子顔で0円スマイルをくれる兄…素晴らしい!
創ったって言ってたけど、手作りかな?それとも種から育てたのかなー?
あーもう、楽しみー!!
早く喋れるようになって、キル兄様にはお礼を言いたいなー
そんな事を思っていると、兄の横に見知らぬ大きな身長の妖精さんが現れた
妖精さんはお父様と同じくらいの身長で肩まである淡いピンク色の髪を揺らし首を傾げた
[キルよ、そなた妹には内緒で創っていたのではなかったか?]
妖精さんが呟くと、キル兄様が ハッ!?として繋いでいた手を離して自分の口を押さえる
「あ!そうだった!うっかり喋っちゃったよ…エルにカミ、今のは無し、ね?」
口元を押さえていた手を離し人差し指を口にあてナイショのポーズをするキル兄様
あらら、内緒だったのか…大丈夫だよー赤子聞いてないよーの意味を込めて
「う?きぃーーんーなー」 と答えた
うーん、やっぱりまだまだ話せないな
1歳になったら結構イケると思ったのになー残念  っていうかエル? L?
私が疑問を浮かべる中、キル兄様は爽やかな笑顔でもう一度シーっとナイショのポーズをしながら、また後でね!と去っていった

バイバイと兄へと手を振る一方、大きい妖精さんはキル兄様の後には付いていかず、柵に両腕をついて私を見降ろしていた
おぉ、今気付いたけど、思ったよりも顔近いな…

「うー?かぁー…?」(あの…なにか?)

なんで見てるの?という疑問一杯で妖精さんへ話しかけると妖精さんは

[…そなたは何故、そのように話せるのだ?]  と聞いてきた

え?妖精とは小さい時には意思疎通可能なんだって聞いたからだよね?
私は疑問を浮かべつつも

えーっと…小さい時は妖精さんと自由にお話ができるって聞いていたもので…
何か失礼がありましたらお詫びいたしますが…?

そういうと妖精さんはフルフルと首を左右に振った
[…ちがう。私が聞きたいのは、赤子のお前が何故そのように大人びた意思があり明確に話せるのだ?という事だ…普通の赤子はそんな風に思案したり受け答えが出来たりはしない…]

その答えに、 あーなるほど!
確かに普通の赤子なら欲求全開&単語のみで話すんだろうな…と、納得してしまったが、あれ?これって拙いんじゃないかな?
薄々は気付いてたけど、やっぱり私が「前世」の記憶を持っているのって普通じゃないよね? 
もし、異端者ってバレたらお父様やお母様、キル兄様に気持ち悪がられて嫌われる!?最悪、捨てられちゃうかも!?

ガーンという効果音が聞こえてくる位に目に見えて落ち込んだ私は自然と泣きそうになっていた
その表情と感情を察した妖精さんは慌てて
[なっ…泣くでないぞ?私はお前を蔑んだり誰かに言ったりはせぬ…ただ、知りたかったのだ。お前のように意思がある赤子は久方ぶりに見たのでな…お前も「異界からの転生者」なのかと…]

「異界からの転生者」
その言葉に、泣きそうになっていた私はピタッと泣くのをやめる

……「異界からの転生者」って?
[そなたのように赤子が意思を持っての意思疎通が可能な場合、「転生者」つまり前の記憶を持って産まれて来る者が多いのだ…]

なるほど…確かに私が初ってわけじゃないよねー
前の世界でもダライラマのように「転生」の記憶がある人が居たし…そうですね、記憶はあると思います…

[そなたの言っている だらいらま?は知らぬが、前世の記憶を持って産まれてくる者は何年かに一度見る事があるのだ…どうやらそなたもそうらしいな?だが、何故「あると思います」なのだ?]

いやー…実は、前世の記憶はあるっちゃーあるんですが、名前とかどんな性格で何処で暮らしていたとかが全然覚えていないんですよね…
あ!でも、さっき一つ思い出した事があります!私「前世」は兄弟が居ない、ひとりっ子でした!
話している内になんとなく前は居なかったなーって思ったんです!

あーあー!と赤ちゃん語で必死に話せば、妖精さんは柵から左腕を離し宥めるように私の頭を撫でた

[分かった…分かったから少し落ち着け そのように声を上げるとそなたの母親と父親と水のが飛んでくる…騒がしいのは好かんのだ]

わー初タッチですね! 
キャッキャと嬉しそうに笑えば、妖精さんも少しだけ微笑んでくれた

そういえば…貴方のお名前は、もしかしてエルさんですか?
妖精さんは撫でていた手を止めて聞いてきた
[何故、私の名前を知っているのだ?]
さっき、キル兄様が私の名前の他に「エル」と呼んでいたので…違いましたか?
妖精さんは再び左右に緩く首を振りながら答えた
[いや、合っている…だが、正式にはエルドレッドという名で、そなたの父であるヴィルートの契約妖精なのだ]

エルドレッドさん!!かっこいい名前!やっとお会いできましたね!

父様の妖精さんを見た事が無かった為、お会いできた事が嬉しくてキラキラした目で妖精さんを見つめる 

[エルでよい…水のと同じで敬称も付けなくてよい]

エルドレッドことエルは少し照れたのかピンクの髪で顔を隠すように横を向きつつ再び私の頭を撫でてくれた
わーい エル優しい~!撫で撫でありがとう!!
改めてお礼を言うとよしよしという程度だった撫で圧が気持ち強めのガシガシに変わった
全く痛くないが、髪が乱れるよ~
アワアワとしながらエルの指を掴むとエルはピタッと撫でる手を止めて私の小さな手を片手で包み握手状態になった

セラが火のは恥ずかしくて姿を見せるのが好きじゃないって言っていたのに、姿を見せてくれてありがとう、エル!これからもお父様とバラロード領を宜しくね?
[あぁ…意思疎通が出来ない赤子は喧しいから苦手だが、お前は別だ  これからは出来るだけ、姿を見せるように努力しよう…]

おぉ!どうやらお父様の契約妖精さんともお友達になれたようだ!
本日1歳のバースデーを前に、妖精のお友達が2人になりました~!





そして迎えたバースデーパーティー
母に抱っこされながら大広間に行ってみると、家中の皆が集まり祝ってくれた
「「「「「カミール(様)お誕生日おめでとう!」」」」」
ドアが開くなり一省に声をかけられちょっとビックリしたものの
プレゼントを渡されホクホクとして笑う
執事・メイドさんたちに料理番の人たちからは可愛い子供専用の木製スプーンとフォーク(手彫りな上に料理長の契約妖精の火の妖精さんに手伝って貰ったらしく持ち手の所に名前が刻まれている)
お父様からは色合いも可愛い子供用食器セット(見た感じ高級そうにみえないけどメイドさんがお皿の裏の作者名をみて、かなり驚いていたので、きっとお高いのだろう…大切にしないと)
お母様からはお食事の時に洋服が汚れないようにする色違いの手作り前掛け7枚(7枚をずらして並べると虹色だー刺繍も可愛い!…7枚あるって事は1週間分ってことだね!)

そして最後の大トリ!

「はい、カミ!僕からの贈り物…「カミリア」だよ!」

満面の王子スマイルから渡されたソレは何と光を当ててもいないのにキラキラと輝く淡い紫の生花だった
しかもこのカミリアという花は、なんとキル兄様の手作り(新種?)らしい
魔法で作るのだから、簡単な話にも思えるが、花を新しく「生成」するのはとても難しく、大人でも新種の花を作れる程の力のある人は王宮に籍を置く魔術師や花を専門に扱っていて国の承認を得られた資格を持つ花屋だけらしい

「わー…」

キラキラと光る花を見つめているとキル兄様が嬉しそうに私に花を差し出してくれる

「はい、大好きな僕の妹へ…お誕生日、おめでとう」

しかも私の身長を考慮して、跪き片膝を付いた状態で差し出す姿は、アメリカとかで良くある求婚のポーズ!!その姿はまるで王子様!

危ないな…これ、花に感動してなかったら、キュン死にする所だったわ…

「…あ-と!」

子供らしく笑いながら、花を受け取りありがとうの意味を込めて、ギューっと抱きつく

「良かった!そんなに喜んでもらえて」

キル兄様は嬉しそうに私を抱き上げて立ち上がると優しく微笑む

フフフフフ…役得 役得、
兄とはいえ、こんな美形のテンプレ王子からの花と笑顔とハグを独り占め出来るなんて、
今日は最高の誕生日ですよフフフフフフ…


私が(気持ち悪く)微笑んでいると、いつの間にか周りには沢山の妖精さんが集まっていた

皆、口々に≪おめでとう! お祝いだー!  祝福を!≫と
部屋中に透明で触れない不思議で綺麗な花を撒いてくれる

「カミ、見てごらん!君へのお祝いに、妖精さん達が聖なる花を撒いて祝ってくれてるよ!」

兄は興奮して天井から無限に降り注ぐ透明な花を見ている

後で知ったが、この透明な花は「ピュアリス」といって、妖精からの聖なる贈り物で、
妖精に気に入られた特別な者にのみにしか見ることが出来ない位、とっても貴重な花で
しかもこの花には病気を癒したり、祝福を与えたりする様々な効果があるらしく
妖精が沢山集まる我が家では、誰かのお祝い事の度に降っていたが、
通常だと「ピュアリス」が降ってくる事すら奇跡に近いレベルなので、この国に住む人々は拝んだり感動の涙を流す程のモノだったらしい

妖精は滅多に花を降らせる事が無い  という事や
自分の家に妖精が沢山居る事  等、

全てにおいて我が家が常識外な一家だという事に、私は後々気付くのであった
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