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高校時代
禍を転じて福と為す②
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それからも、彼はあの手この手で自分を演劇部に引き入れようとした。しかし、その度に俺は容赦なく切り捨てた。
それでも諦めない執拗な彼に、俺は密かにハイエナというあだ名をつけた。
「こんなごぼうのように背が高くて、ザトウムシみたいに脚の長い人はそうそういない!」
「ザトウムシ……?」
「大丈夫、褒めてる」
「とにかく却下」
その日、家に帰って、ザトウムシを調べてみたが、やはり貶しているようにしか思えなかった。
そんな攻防を繰り返す中で、俺は自分の意思関係なく、自然と彼の情報を手に入れた。その多くは、毎日のように飽きもせず自分に群がる女子たちの口からだった。
彼女たちによると、彼の名前は、ラティ・ルプーム。隣のクラスの生徒で、成績は中の下。友達は多く、持ち前の人懐っこさで、どうやら先輩からも可愛がられている。
彼が所属する演劇部は、確かに人員不足で廃部の危機らしく、上級生の部員は三年生が引退した昨年から、頭を悩ませていたそうだ。廃部から逃れるには、半年以内に新入部員を三名は確保する必要があるらしい。つまり、彼が廃部を回避したくて躍起になっていたのは、そのためだったのだ。
最初の勧誘から三ヶ月経とうとしていた頃、ぴたりと彼からの勧誘が止まった。とうとう諦めたかと始めは快適に過ごしていたが、一週間経っても彼は目の前に現れるどころか、登校している気配すらなかった。
さすがに気になって、隣のクラスに彼のことを尋ねに行くと、彼らも首を傾げて、口々に、理由はわからないけどこの一週間休んだままだと言った。理由がわからないのなら、これ以上尋ねることもできない。俺は諦めて自分のクラスに戻った。
彼の姿を見なくなってから、二週間が過ぎた。
あれだけ求めていた平穏が、これほどつまらないものに変化するとは思わなかった。今までだって、彼と出会う前まではこうだったはずだ。その時はつまらないとすら感じなかったはず。それなのに、彼を知った後に手に入れたこの普通の日常は、ひどく味気のないものだ。
今の学校生活は、どこからともなく現れて、しつこく絡んでくる小さな竜巻のような彼はいない。
休み時間になっても、当たり障りのない友人たちが話しかけてくるだけで、何の張り合いもない。
昔はこれに満足していた。自分を邪魔する者は必要なかったから。
これは、一種の吊り橋効果だと思う。
しつこく印象を残しておいて、一気に消息を断つ。
それが狙いなら、なかなかの策士だ。だが、まだ入学して半年も満たないのに、そんなことをしている余裕はあるだろうか。それに、廃部を回避したいのなら、早いところ他の人を見つけたほうが効率が良い。
一体、彼に何が起こったのだろうか。
気がつけば、あれだけうざったくて仕方がなかった彼のことを、ずっと気にしている自分がいた。
それでも諦めない執拗な彼に、俺は密かにハイエナというあだ名をつけた。
「こんなごぼうのように背が高くて、ザトウムシみたいに脚の長い人はそうそういない!」
「ザトウムシ……?」
「大丈夫、褒めてる」
「とにかく却下」
その日、家に帰って、ザトウムシを調べてみたが、やはり貶しているようにしか思えなかった。
そんな攻防を繰り返す中で、俺は自分の意思関係なく、自然と彼の情報を手に入れた。その多くは、毎日のように飽きもせず自分に群がる女子たちの口からだった。
彼女たちによると、彼の名前は、ラティ・ルプーム。隣のクラスの生徒で、成績は中の下。友達は多く、持ち前の人懐っこさで、どうやら先輩からも可愛がられている。
彼が所属する演劇部は、確かに人員不足で廃部の危機らしく、上級生の部員は三年生が引退した昨年から、頭を悩ませていたそうだ。廃部から逃れるには、半年以内に新入部員を三名は確保する必要があるらしい。つまり、彼が廃部を回避したくて躍起になっていたのは、そのためだったのだ。
最初の勧誘から三ヶ月経とうとしていた頃、ぴたりと彼からの勧誘が止まった。とうとう諦めたかと始めは快適に過ごしていたが、一週間経っても彼は目の前に現れるどころか、登校している気配すらなかった。
さすがに気になって、隣のクラスに彼のことを尋ねに行くと、彼らも首を傾げて、口々に、理由はわからないけどこの一週間休んだままだと言った。理由がわからないのなら、これ以上尋ねることもできない。俺は諦めて自分のクラスに戻った。
彼の姿を見なくなってから、二週間が過ぎた。
あれだけ求めていた平穏が、これほどつまらないものに変化するとは思わなかった。今までだって、彼と出会う前まではこうだったはずだ。その時はつまらないとすら感じなかったはず。それなのに、彼を知った後に手に入れたこの普通の日常は、ひどく味気のないものだ。
今の学校生活は、どこからともなく現れて、しつこく絡んでくる小さな竜巻のような彼はいない。
休み時間になっても、当たり障りのない友人たちが話しかけてくるだけで、何の張り合いもない。
昔はこれに満足していた。自分を邪魔する者は必要なかったから。
これは、一種の吊り橋効果だと思う。
しつこく印象を残しておいて、一気に消息を断つ。
それが狙いなら、なかなかの策士だ。だが、まだ入学して半年も満たないのに、そんなことをしている余裕はあるだろうか。それに、廃部を回避したいのなら、早いところ他の人を見つけたほうが効率が良い。
一体、彼に何が起こったのだろうか。
気がつけば、あれだけうざったくて仕方がなかった彼のことを、ずっと気にしている自分がいた。
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