オーバーウェルミング

日向木陰

文字の大きさ
3 / 4
プロローグ

プロローグ3

しおりを挟む




本来、五大皇種は、争いを好まない。
悪魔族は別としてそれ以外の種族は、主に傍観、監視、などに重きを置き自ら手を下すことがないからだ。

まぁ、一体一体が強すぎるためこの世界を滅ぼすということを自覚しているのだろうか。
それに対抗するにはそれなりの戦力をぶつけないといけないという理屈もあるが。
しかし、今は、各々が怒りに任せて破壊の限りを尽くしていた。


「何故だ、なぜ儂わこれほどまでに怒っているのだ。」

孤島カルデアでまさに戦闘真っ最中ら一体の最強種、神族の彼は戦いながらもこのようなことを考えていた。

神族。この世界の創造主。この世界最強の種族と言われている、一体

しかしなぜ、この争いが始まったのかも分からず。
ただただ怒りに任せて戦闘を続けていた。


すると突然、自分の魔力が急激減っていくのを感じる。
急激に減って魔力の向かう先を見ると、2人の人間が自分の魔力を吸収しているのに気づいた。

これと同様周りの4体からも魔力を吸収しているのを感じる。

この状況で魔力の減少はまずいと考え、その2人に向かって攻撃を行おうとした。

しかし、どうしてもあの人間たちが敵意を向けているようには見えず、本気の攻撃を発動することをためらってしまう。

何故だ?なにかがおかしい。
何かに対する違和感、それを感じてはいるのだが、神族はなにがどうなっているのか認識できずにいた。


リゲルとミーティアは今もまだ窮地から打破できずにいた、絶え間なく来る攻撃と神珠を扱うことから来る疲労感すでに2人はガス欠寸前の状態まで来ていた。

「まじで、やばいな、」
「えぇ、そうね。」

「何か打開策を考えないとまじでやばいわ。」
「そうね。能力では、圧倒的に向こうが上。」

「しかし、こっちの魔力は残りわずか、こりゃ詰んでるな。やけ酒かっ喰らいたくなるわ。」
「うるさい、そういうのは言わなくて良いわよ。」

しばらくの沈黙が続いたあと、
ここでミーティアの表情が変わった。
「ひとつだけ思いついた方法があるわよ。」

「いったい何なんだよ。」

「神珠に吸収した魔力を二人の体に取り込むの。」
「頭がついにいっちまったか。」

「うるさいわね。さっき本当に置いて逃げればよかった。」

「わりぃ、冗談だよ。」

「わかってるわよ。そんなこと。」

「てかほんとにそんなことができんのかよ。」

「さぁ誰もやったことないですもの。」

「それに、お前が取り込んで万が一、俺らの子供に影響あったらどうすんだよ。」

「それは大丈夫よ。」
「何で言いきれるんだよ。」

「だって私たちの子供よ。」

リゲルはこの時、何故かうまく行きそうな気がしてしまった。
「たくっ、本当に強気な王女様だよ、お前は」
「それに惚れたのは、あんたでしょ」
「ふっ、わかったよ。お前のプランに俺は乗る。必ず二人でこの島を出よう。」
「当然!!」

二人は一度魔力の吸収をやめ、
少し呼吸を整え、神珠イモートリティーに両手をかざす。

「「大いなる力よ我らの身に宿りたまえ。」」

すると、イモートリティーは、金色の輝きを放ち、二人の身体を包み込んだ。

「やべっーなんつー魔力だ。」
「ほんとに、さすが最強種達の魔力。これならいけるかもしれない。」

そう言って二人は上空の5体の最強種を視界にとらえた。

「行くわよ。」
「おう、」

そして、そちらに飛び込んでいく、


5体の最強種は、それに目を奪われていた。
体内から魔力が吸収されていたと思えば、それがやみ、地上から突如、金色の光が現れ、そこに自身並、又はそれ以上の魔力を持った2人の人間が現れたのだ。


しかし、5体はそれにまた怒りを覚えそちらに矛先を向けるのだった。


あれからどれくらい、時間が経っただろう、
戦闘を続けるもなかなか倒れる気配がない、
むしろ、魔力だけが減っていき、苦しい状況が続いていた。

「全然、埒があかねぇーじゃねぇーか。」
「そうね。まぁ、もともと、バケモノ達を相手にする時点で、バカ極まりない行動なんだけどね。」
「お前が言うなよ。」

辛い状況で、こういう会話をするというのが、二人の間で日常になっていた。
熱くなる前に、一旦間をおいて、冷静に考える。そして互いの状態の確認。
いくつもの苦難を二人で乗り越えてきたからこそできることである。

「やっぱり変ね。明らかに様子がおかしい。」
「あぁ、5体とも、怒りで我を忘れてやがる」

「もしかして、操られてる?」
「馬鹿か、あんな化け物をそれも5体、一気に操れる魔法があってたまるか。」

「でも、それ以外、考えられないじゃない。それに見て、神族は、怒りを抑える種族と聞いているのに今のあの表情。」

「ああ、ありゃえげつねぇわ。切れてる時のお前みてぇだ。」

「あっ?なんか言ったか?」

「いや、別に。」

「とにかく、多分あの5体は、感情か精神かわからないけど、操られてるいるわ。」

「あぁ、そういう考え方が妥当だな。」

「となると、倒すじゃなくて魔法を解く方に切り替えてましょう。」

「そうだなぁ、ってなるとあれしかないか、」

「そうよ。もうあれしかない。」

「覚悟を決めるか。」
「とっくに決めてるわよ。」

二人は、防御魔法を展開する。そして、手と手を取り合う。
「これが最後になるかもしんねぇな。」

「えぇ、こればっかりわ、なんとも言えないわ。でも、この子を産むまでは、死ねない。」

「あぁ、俺もこいつにあいてぇ。」

「「必ず生きる。」」

二人は抱き合い、額同士をつなぐ。
すると今度は虹色の光が放たれ始めた。

それは、
如何なる魔法をも無効にすることができる最高の魔法、それからずっと語り継がれることになる祝福の輝き」

「「リヤン」」

すると孤島カルデアに虹色の輝きが広がる。
大地な燃え盛る炎が消え、緑が元に戻る、
ただ建造物などは瓦礫から砂に帰る。

そして、5体の最強種もそれぞれその光に包まれ、我を取り戻した。

「我々は一体!?」
最上位種族達は、周りの状況を未だに掴めずにいた。

「何ということを」
神族は落胆とともに己のやったことを悔いていた。
「あのもの達は!?」

神族は、リゲル、ミーティアの方に向かって飛び込んでいった。

孤島カルデアのど真ん中でリゲルとミーティアは寝転んでいた。
「はっはっ、もう体もボロボロだわ。」
「そうね、もう動けない。」

すると空から一つの影が飛んで向かってきているのに気がついた。

「いや、もう戦闘は無理だぞ。」
リゲルがそういっていると、飛んで来た影は二人のすぐそばまで来た。

「礼をいう。人間の者たちよ。」
神族はまず頭を下げた。

「我は神族の主神ジェフである。」

「「えっ?」」

二人はこの状況についていけなかった。
本来、神族が人間に頭を下げるなどないからだ。
主神とは、神族の最高位である。そんな大物が簡単に頭を下げたのだ。

「はっはっ、なんかどっと疲れちまった。」
リゲルは寝転びながら笑い出した。


そのあと続々と残りの4体もこちらに向かって降りてきた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

R・P・G ~女神に不死の身体にされたけど、使命が最低最悪なので全力で拒否して俺が天下統一します~

イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の現地調査のために訪れた山の中で異世界の大地の女神と接触する。 半ば強制的に異世界へと転生させられた凛人。しかしその世界は、欲と争いにまみれた戦乱の世だった。 凛人はその惑星の化身となり、星の防人として、人間から不死の絶対的な存在へとクラスチェンジを果たす。 だが、不死となった代償として女神から与えられた使命はとんでもないものであった…… 同じく地球から勇者として転生した異国の者たちも巻き込み、女神の使命を「絶対拒否」し続ける凛人の人生は、果たして!? 一見頼りない、ただのおっさんだった男が織りなす最強一味の異世界治世ドラマ、ここに開幕!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

処理中です...