銀幕世界に憧れて 観た映画の個人的感想

忠行

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横浜ブルク13で『顔を捨てた男』観ました

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 顔に極端な変形を持つ俳優志望のエドワードは隣に越してきた劇作家を目指すイングリッドに惹かれながらも自分の気持ちを閉じ込めて生きていたが、外見を劇的に変える実験的な治療を受けて新しい顔と人生を手に入れる。
 過去を捨ててガイという名を名乗り別人としてイングリットと良い仲になり順風満帆と思われる人生を歩み出した矢先、かつての自分のような顔をしたオズワルドという男が現れる。
 人が忌避するような異形と呼べる容貌にも関わらず明るく社交的でカリスマ性と自信にあふれ、人々を魅了するオズワルドにエドワードは第二の人生が乗っ取られたような妄想にとりつかれてゆき、順調だった人生が狂いだす――。

 厭な映画だ。
 変形した顔は好奇の目に晒されて孤独に違いないという無意識の偏見、同じ障害を持つ人たちへの思い込みを捨てきれない自身の隠された本心を突きつけられるような展開は見ていてつらい。
 またオズワルドというイレギュラーが登場する以前から不穏な空気が満ち、現実なのかそうでないのか曖昧模糊とした場面が出てくる。
 16mmフィルムで撮られた映像は80年代の作品のようにザラつき、音楽もふくめ時代設定が現代なのか過去なのか不明瞭なのも不安をかき立てられて悪夢のよう。
 名刺代わりとも言われる顔だが、美容医療の発達やスマホの写真加工アプリでなりたい自分や見せたい自分に手が届きやすくなった現代だからこそ、この悪夢的展開とブラックユーモアを織り交ぜながら自分とは何かという問いを投げかけてくる内容は刺さる。
 顔を変えればなりたい自分になれるのか!? と『サブスタンス』同様に本作を現代社会の外見至上主義ルッキズム風刺と見るのは簡単だが監督の関心はもっと深いところにあるように思える。もちろんルッキズム批判もふくまれているとは思うが。
 作中の演劇場面なども、異なる人生への願望や美醜に囚われがちな人間の心を掘り下げた傑作。
 己とはなにか――アイデンティティについて考えられさせる作品で、この映画から何を感じ取るかは人によってまったく異なるだろうし決して万人受けする内容ではないので人におすすめはしないが観て損はしない逸品。
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