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一章 王子と冒険者の出会い
17.マンドラゴラを飼うということ
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「びーぎゃ! びぎゃびぎゃ!」
蕪マンドラゴラが僕の膝の上に座って、アルマスとの会話に混ざっているつもりになっている。可愛いので僕は蕪マンドラゴラをそのままにしておいた。
「これ、俺も飼えるかな?」
「アルマスも蕪マンドラゴラが欲しいの?」
「俺のうち、猫も犬も飼えないんだ」
アルマスの家は借家なので猫も犬も飼えない契約になっているとアルマスは教えてくれた。蕪ならば植物なので問題ないし、いざとなれば野菜籠に隠してしまえばいい。
「蕪がいいの? 大根や人参もあるみたいなんだけど」
「顔を見て決めたいな」
アルマスの要望で、僕は薄暗くなった庭に出て蕪マンドラゴラと大根マンドラゴラと人参マンドラゴラを引き抜いてきた。
冬の冷たい水で綺麗に洗って戻ってくると、アルマスは申し訳なさそうにしている。
「エドヴァルド殿下を使うなんて悪かったな」
「いいよ。アルマスは家庭菜園には入れないんだからね」
アルマスの安全のために家庭菜園に入れてはいけない。家庭菜園にはアルマスにとっては毒となりうる植物が植えてあるのだ。
こういうことを考えるとロヴィーサ嬢が魔族の血を引いていてくれて本当によかったと思う。
僕はロヴィーサ嬢と一緒に家庭菜園の世話ができて、ロヴィーサ嬢に食事も作ってもらえる。
「お食事の用意ができました。テーブルへどうぞ」
ロヴィーサ嬢が声をかけてくれて、僕はテーブルへ移ろうとしたが、アルマスはソファから動かない。アルマスは人参マンドラゴラと大根マンドラゴラと蕪マンドラゴラを見比べているのだ。
「どいつも可愛い! 選べない!」
「三匹飼っちゃえば?」
「いいのか? 餌は?」
「餌は……勝手に土に埋まってるよ」
蕪マンドラゴラを引き抜いてから、餌を上げた覚えはないのだが、蕪マンドラゴラはお腹が空いたら勝手に自分で土に埋まっている。土に埋まれば植物なので栄養が取れるのだろう。
蕪マンドラゴラのために、僕はお屋敷の中にも埋まれるプランターを置いていた。
「土に埋まるだけか。うちは農家だからちょうどいいな。三匹とももらっていいのか?」
「いいと思う。いいですよね、ロヴィーサ嬢」
「アルマス様がマンドラゴラを飼いたいのですね。三匹持って行ってくださって構いませんよ」
ロヴィーサ嬢もアルマスがマンドラゴラをもらうことに関して反対しなかった。
「蕪マンドラゴラでシチューを作ってみました。マンドラゴラ自体は魔力を持っていますが、薬にもなる栄養価の高い植物です。人間が食べても毒にはならず栄養になるので、アルマス様の分も作ってみました」
「えー!? 俺……じゃない、私がロヴィーサ様の手料理を食べていいのですかー!?」
叫んでいるアルマスに僕は心が狭いと思いながらちょっとむっとしてしまった。
「アルマスと言えども、僕のロヴィーサ嬢の手料理を食べるなんて」
「お嫌でしたか?」
「心が狭いと分かっているのですが、妬けます」
素直に僕が言うと、ロヴィーサ嬢が頬を染めて微笑む。
「これ以降は、エドヴァルド殿下のためだけに料理を作りますね」
いつか、子どもができたらそれも変わるのかもしれないが、僕はまだ十二歳。ロヴィーサ嬢の約束はしばらくは有効のようだった。
ロヴィーサ嬢が約束してくれたので僕もやっと落ち着いて食卓に着ける。
「ロヴィーサ嬢とアルマスと同じものを食べられる日が来るなんて思いませんでした」
「魔族の国の魔力のこもった食材には様々なものがあります。その中には常人が食べても問題ないものもあると思うのです。少しずつ探していきましょうね」
僕とロヴィーサ嬢が結婚して子どもが生まれたとする。その子どもが常人だった場合には、僕とは全く別の料理を食べなければいけない。
それを考えると、常人も魔族も共通して食べられる食材を探しておくのも必要な気がしていた。
「エドヴァルド殿下のお母上がモンスター由来のものを口にしないと誓ったのは、エドヴァルド殿下と同じ理由でした。王城の厨房で自分の子どもや伴侶が毒に晒されないようにという気遣いだったのです」
どれだけ自分の魔力が枯渇して苦しくても、母上はモンスター由来のものを口にしなかった。それがどれだけの覚悟なのか、僕にはよく分かる。
僕が王城を出てミエト侯爵家にやってきたのも同じ理由なのだから。
「エドヴァルド殿下のお母上はすごいひとだったんだな」
「僕は覚えていないけれど、頑固で、芯があって、凛としたひとだったって父上が言っていた」
「ロヴィーサ様もそんな感じだもんな。だから惚れたのか」
「そうだよ」
素直に僕が答えると、ロヴィーサ嬢が顔を真っ赤にしている。僕がロヴィーサ嬢に惚れているのは周知の事実なので言っても構わないと思っていたが、ロヴィーサ嬢には恥ずかしかったようだ。
「エドヴァルド殿下、そんな、あけすけに言わないでくださいませ」
照れるロヴィーサ嬢も可愛いので僕はますます口説きたくなってしまうが、アルマスの前でロヴィーサ嬢に吹っ飛ばされたらアルマスがびっくりしてしまいそうなのでぐっと我慢した。
メインディッシュは猪のモンスターの肉のソテーだった。ポークソテーとよく似ているが、脂が蕩けるように甘くてとても美味しい。
ロヴィーサ嬢とアルマスのメインディッシュはポークソテーだった。
家庭菜園で採れたズッキーニやジャガイモやトマトのゴロゴロ入っているオムレツを付け合わせに、猪のモンスターのソテーを食べる。オムレツはコカトリスの卵で、しっかりと味がついていて美味しい。
「シチューも美味いし、オムレツも、ポークソテーも、こんな美味いものは食べたことがない」
「僕のは材料が違うけど、見た目はほとんど変わらないね」
ロヴィーサ嬢はこんなところまで気遣いをしてくれていた。
材料が違っても、お皿の上に乗っている料理の見た目がほとんど変わらないようにすることで、僕とロヴィーサ嬢とアルマスが同じ食卓を囲んでいるのだと強く感じることができる。
特に今日は蕪マンドラゴラのシチューが全員同じもので、他人と同じものを食べられる喜びを僕は味わっていた。
食事が終わると、僕はロヴィーサ嬢とお茶をしながら、爺やを呼んだ。
「爺やはモンスター由来のものは口にしないと母上の誓いに従っているけれど、常人も食べられる今日のような蕪マンドラゴラのシチューくらいなら食べてもいいんじゃないかな」
「それは……」
「僕は爺やが心配なんだ。爺やにはずっと仕えていて欲しいし、長生きもして欲しい」
顕著に体調を崩すことはないが、爺やの身体に魔力が枯渇しているのは確かだった。常人として暮らすのに魔力はいらないかもしれないが、僕は魔力のこもったものを十分に食べられなかった時期に、どれだけ自分が寝込んで周囲を心配させたかをしっかりと覚えていた。
「爺やにマンドラゴラや常人の毒にならないものを食べて欲しい。それで誓いが破られたと母上は思わないんじゃないかな。お願いだよ、爺や」
僕が目を潤ませるのに、爺やは額に手をやってため息をついた。
「エドヴァルド殿下には敵いませんな」
「それじゃ、食べてくれるんだね?」
「あり難くいただきます」
爺やの件も解決できそうで僕は嬉しくてロヴィーサ嬢に飛び付く。抱き締めると、ロヴィーサ嬢は小山ほどある猪のモンスターを素手で受け止めたとは思えないほどほっそりとしていた。
「エドヴァルド殿下、よかったですね」
「はい。僕にとって爺やは赤ん坊のころから面倒を見てくれた大事なひとなのです」
僕には乳母がいないのは、僕が魔族で僕のミルクや離乳食に常人の乳母は触れることができなかったからだ。母上の輿入れのときについてきた爺やは僕のミルクや離乳食に触れることができて、僕は爺やに育てられた。
「エドヴァルド殿下に心配されるなど、私も果報者ですな」
「爺やは僕の乳母代わりだからね」
話が終わってアルマスのところに行くと、アルマスは大根マンドラゴラと人参マンドラゴラと蕪マンドラゴラを並ばせていた。
「大根一号、人参二号、蕪三号!」
「びゃい!」
「びょえ!」
「びょわ!」
アルマスは大根マンドラゴラに大根一号、人参マンドラゴラに人参二号、蕪マンドラゴラに蕪三号と名前を付けたようだった。
「こいつらは三兄弟だと思うんだ。大根が長男で、人参が次男、蕪が末っ子だ」
「それなら、僕は蕪になっちゃうな」
「そっか、エドヴァルド殿下も末っ子か」
アルマスの言葉に、僕には大根マンドラゴラがエリアス兄上、人参マンドラゴラがエルランド兄上、蕪マンドラゴラが僕に思えてきた。
僕の蕪マンドラゴラはいそいそとプランターの土を掻き分けて埋まっている。
「エーメル……ロヴィーサ嬢、蕪マンドラゴラの名前はエーメルでどうでしょう?」
「可愛い名前ですね。何から取ったのですか?」
「僕の家系は父上がエンシオ、兄上がエリアスとエルランド、僕がエドヴァルドで、全員名前が『エ』から始まっているのです。僕は末っ子だけど弟が欲しかったから、僕の弟だったらどんな名前かを考えました」
「エドヴァルド殿下はエーメルの兄上なのですね」
「弟だと思って可愛がります」
僕に弟が生まれることはないけれど、蕪マンドラゴラのエーメルを弟だと思って可愛がることはできる。
「エーメル!」
「びぎゃ!」
呼ぶとエーメルはプランターの中から返事をしてくれた。
蕪マンドラゴラが僕の膝の上に座って、アルマスとの会話に混ざっているつもりになっている。可愛いので僕は蕪マンドラゴラをそのままにしておいた。
「これ、俺も飼えるかな?」
「アルマスも蕪マンドラゴラが欲しいの?」
「俺のうち、猫も犬も飼えないんだ」
アルマスの家は借家なので猫も犬も飼えない契約になっているとアルマスは教えてくれた。蕪ならば植物なので問題ないし、いざとなれば野菜籠に隠してしまえばいい。
「蕪がいいの? 大根や人参もあるみたいなんだけど」
「顔を見て決めたいな」
アルマスの要望で、僕は薄暗くなった庭に出て蕪マンドラゴラと大根マンドラゴラと人参マンドラゴラを引き抜いてきた。
冬の冷たい水で綺麗に洗って戻ってくると、アルマスは申し訳なさそうにしている。
「エドヴァルド殿下を使うなんて悪かったな」
「いいよ。アルマスは家庭菜園には入れないんだからね」
アルマスの安全のために家庭菜園に入れてはいけない。家庭菜園にはアルマスにとっては毒となりうる植物が植えてあるのだ。
こういうことを考えるとロヴィーサ嬢が魔族の血を引いていてくれて本当によかったと思う。
僕はロヴィーサ嬢と一緒に家庭菜園の世話ができて、ロヴィーサ嬢に食事も作ってもらえる。
「お食事の用意ができました。テーブルへどうぞ」
ロヴィーサ嬢が声をかけてくれて、僕はテーブルへ移ろうとしたが、アルマスはソファから動かない。アルマスは人参マンドラゴラと大根マンドラゴラと蕪マンドラゴラを見比べているのだ。
「どいつも可愛い! 選べない!」
「三匹飼っちゃえば?」
「いいのか? 餌は?」
「餌は……勝手に土に埋まってるよ」
蕪マンドラゴラを引き抜いてから、餌を上げた覚えはないのだが、蕪マンドラゴラはお腹が空いたら勝手に自分で土に埋まっている。土に埋まれば植物なので栄養が取れるのだろう。
蕪マンドラゴラのために、僕はお屋敷の中にも埋まれるプランターを置いていた。
「土に埋まるだけか。うちは農家だからちょうどいいな。三匹とももらっていいのか?」
「いいと思う。いいですよね、ロヴィーサ嬢」
「アルマス様がマンドラゴラを飼いたいのですね。三匹持って行ってくださって構いませんよ」
ロヴィーサ嬢もアルマスがマンドラゴラをもらうことに関して反対しなかった。
「蕪マンドラゴラでシチューを作ってみました。マンドラゴラ自体は魔力を持っていますが、薬にもなる栄養価の高い植物です。人間が食べても毒にはならず栄養になるので、アルマス様の分も作ってみました」
「えー!? 俺……じゃない、私がロヴィーサ様の手料理を食べていいのですかー!?」
叫んでいるアルマスに僕は心が狭いと思いながらちょっとむっとしてしまった。
「アルマスと言えども、僕のロヴィーサ嬢の手料理を食べるなんて」
「お嫌でしたか?」
「心が狭いと分かっているのですが、妬けます」
素直に僕が言うと、ロヴィーサ嬢が頬を染めて微笑む。
「これ以降は、エドヴァルド殿下のためだけに料理を作りますね」
いつか、子どもができたらそれも変わるのかもしれないが、僕はまだ十二歳。ロヴィーサ嬢の約束はしばらくは有効のようだった。
ロヴィーサ嬢が約束してくれたので僕もやっと落ち着いて食卓に着ける。
「ロヴィーサ嬢とアルマスと同じものを食べられる日が来るなんて思いませんでした」
「魔族の国の魔力のこもった食材には様々なものがあります。その中には常人が食べても問題ないものもあると思うのです。少しずつ探していきましょうね」
僕とロヴィーサ嬢が結婚して子どもが生まれたとする。その子どもが常人だった場合には、僕とは全く別の料理を食べなければいけない。
それを考えると、常人も魔族も共通して食べられる食材を探しておくのも必要な気がしていた。
「エドヴァルド殿下のお母上がモンスター由来のものを口にしないと誓ったのは、エドヴァルド殿下と同じ理由でした。王城の厨房で自分の子どもや伴侶が毒に晒されないようにという気遣いだったのです」
どれだけ自分の魔力が枯渇して苦しくても、母上はモンスター由来のものを口にしなかった。それがどれだけの覚悟なのか、僕にはよく分かる。
僕が王城を出てミエト侯爵家にやってきたのも同じ理由なのだから。
「エドヴァルド殿下のお母上はすごいひとだったんだな」
「僕は覚えていないけれど、頑固で、芯があって、凛としたひとだったって父上が言っていた」
「ロヴィーサ様もそんな感じだもんな。だから惚れたのか」
「そうだよ」
素直に僕が答えると、ロヴィーサ嬢が顔を真っ赤にしている。僕がロヴィーサ嬢に惚れているのは周知の事実なので言っても構わないと思っていたが、ロヴィーサ嬢には恥ずかしかったようだ。
「エドヴァルド殿下、そんな、あけすけに言わないでくださいませ」
照れるロヴィーサ嬢も可愛いので僕はますます口説きたくなってしまうが、アルマスの前でロヴィーサ嬢に吹っ飛ばされたらアルマスがびっくりしてしまいそうなのでぐっと我慢した。
メインディッシュは猪のモンスターの肉のソテーだった。ポークソテーとよく似ているが、脂が蕩けるように甘くてとても美味しい。
ロヴィーサ嬢とアルマスのメインディッシュはポークソテーだった。
家庭菜園で採れたズッキーニやジャガイモやトマトのゴロゴロ入っているオムレツを付け合わせに、猪のモンスターのソテーを食べる。オムレツはコカトリスの卵で、しっかりと味がついていて美味しい。
「シチューも美味いし、オムレツも、ポークソテーも、こんな美味いものは食べたことがない」
「僕のは材料が違うけど、見た目はほとんど変わらないね」
ロヴィーサ嬢はこんなところまで気遣いをしてくれていた。
材料が違っても、お皿の上に乗っている料理の見た目がほとんど変わらないようにすることで、僕とロヴィーサ嬢とアルマスが同じ食卓を囲んでいるのだと強く感じることができる。
特に今日は蕪マンドラゴラのシチューが全員同じもので、他人と同じものを食べられる喜びを僕は味わっていた。
食事が終わると、僕はロヴィーサ嬢とお茶をしながら、爺やを呼んだ。
「爺やはモンスター由来のものは口にしないと母上の誓いに従っているけれど、常人も食べられる今日のような蕪マンドラゴラのシチューくらいなら食べてもいいんじゃないかな」
「それは……」
「僕は爺やが心配なんだ。爺やにはずっと仕えていて欲しいし、長生きもして欲しい」
顕著に体調を崩すことはないが、爺やの身体に魔力が枯渇しているのは確かだった。常人として暮らすのに魔力はいらないかもしれないが、僕は魔力のこもったものを十分に食べられなかった時期に、どれだけ自分が寝込んで周囲を心配させたかをしっかりと覚えていた。
「爺やにマンドラゴラや常人の毒にならないものを食べて欲しい。それで誓いが破られたと母上は思わないんじゃないかな。お願いだよ、爺や」
僕が目を潤ませるのに、爺やは額に手をやってため息をついた。
「エドヴァルド殿下には敵いませんな」
「それじゃ、食べてくれるんだね?」
「あり難くいただきます」
爺やの件も解決できそうで僕は嬉しくてロヴィーサ嬢に飛び付く。抱き締めると、ロヴィーサ嬢は小山ほどある猪のモンスターを素手で受け止めたとは思えないほどほっそりとしていた。
「エドヴァルド殿下、よかったですね」
「はい。僕にとって爺やは赤ん坊のころから面倒を見てくれた大事なひとなのです」
僕には乳母がいないのは、僕が魔族で僕のミルクや離乳食に常人の乳母は触れることができなかったからだ。母上の輿入れのときについてきた爺やは僕のミルクや離乳食に触れることができて、僕は爺やに育てられた。
「エドヴァルド殿下に心配されるなど、私も果報者ですな」
「爺やは僕の乳母代わりだからね」
話が終わってアルマスのところに行くと、アルマスは大根マンドラゴラと人参マンドラゴラと蕪マンドラゴラを並ばせていた。
「大根一号、人参二号、蕪三号!」
「びゃい!」
「びょえ!」
「びょわ!」
アルマスは大根マンドラゴラに大根一号、人参マンドラゴラに人参二号、蕪マンドラゴラに蕪三号と名前を付けたようだった。
「こいつらは三兄弟だと思うんだ。大根が長男で、人参が次男、蕪が末っ子だ」
「それなら、僕は蕪になっちゃうな」
「そっか、エドヴァルド殿下も末っ子か」
アルマスの言葉に、僕には大根マンドラゴラがエリアス兄上、人参マンドラゴラがエルランド兄上、蕪マンドラゴラが僕に思えてきた。
僕の蕪マンドラゴラはいそいそとプランターの土を掻き分けて埋まっている。
「エーメル……ロヴィーサ嬢、蕪マンドラゴラの名前はエーメルでどうでしょう?」
「可愛い名前ですね。何から取ったのですか?」
「僕の家系は父上がエンシオ、兄上がエリアスとエルランド、僕がエドヴァルドで、全員名前が『エ』から始まっているのです。僕は末っ子だけど弟が欲しかったから、僕の弟だったらどんな名前かを考えました」
「エドヴァルド殿下はエーメルの兄上なのですね」
「弟だと思って可愛がります」
僕に弟が生まれることはないけれど、蕪マンドラゴラのエーメルを弟だと思って可愛がることはできる。
「エーメル!」
「びぎゃ!」
呼ぶとエーメルはプランターの中から返事をしてくれた。
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