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一章 王子と冒険者の出会い
30.僕のお誕生日
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海辺の町で過ごしたのは半日だけで、夜には僕はミエト公爵家に帰っていた。
シャワーを浴びると腕や顔や脚がひりひりするのは日焼けをしてしまったからかもしれない。
日に焼けないように長袖長ズボンを身につけていたのだが、それでも日焼けは防げなかったようだ。
魔族のダミアーン伯父上も僕と同じ銀髪に菫色の瞳で、色素がとても薄い。爺やも色素がとても薄い。ダミアーン伯父上と同じ色彩だった母上も色素が薄かったのだろう。
日焼けは僕はもっと気を付けないといけない。
部屋に戻ってひりひりする腕と顔と脚が火照って眠れないでいると、ドアがノックされた。ベッドから飛び起きてドアのところに行くと、ロヴィーサ嬢が立っている。
「ロヴィーサ嬢、どうされましたか?」
「海に行ったのでエド殿下も日に焼けてしまわれたでしょう。この乳液を塗るとかなり楽になるので、試してみられるとよいと思いますよ」
「届けに来て下さったんですか?」
「夜に失礼かとは考えたのですが、エド殿下が眠れていないのではないかと思いまして」
ロヴィーサ嬢は僕のために肌に塗る乳液を届けてくれた。
「ありがとうございます。日焼けした肌が火照って眠れませんでした」
「安眠できますように」
僕の前髪を掻き上げてロヴィーサ嬢が僕の額にキスをする。お休みのキスをされて、僕は別の意味で眠れなくなりそうな予感がしていた。
乳液を塗ると、火照った腕と顔と脚がさっぱりとして、落ち着いてくる。
目を閉じるとロヴィーサ嬢の姿が瞼の裏に浮かんでくる。
クラーケンと戦うロヴィーサ嬢。
バーベキューで食材を焼いてくれるロヴィーサ嬢。
クラーケンは身がぷりぷりしていてとても美味しかった。
まだ残っているから、明日以降も食べられるだろう。
明日の食事にも期待して、僕は眠りについた。
僕のお誕生日は学年の一番最後の方にある。
僕は高等学校の一年生の中でもかなり遅い生まれなのだ。
秋生まれのヘンリッキとは一年近く誕生日が違う。
僕のお誕生日のためにロヴィーサ嬢はドレスを誂えていた。
菫色のストレートラインのドレスで、胸から下が真っすぐになっている。
何を着ていても美しいが、今日のロヴィーサ嬢は特に美しい気がした。
僕もスーツを新しく誂えて、ミッドナイトブルーのスーツを着ていた。ロヴィーサ嬢の目の色よりも濃いが、青なのは同じだ。
馬車に乗って早めに王城についた僕とロヴィーサ嬢は、マジックポーチから料理を取り出す。
父上とヒルダ姉上とエリアス兄上とエルランド兄上のお皿は白地に薄い青で薔薇が描かれているが、僕の分のお皿は縁の部分が緑色ではっきりと区別できるようになっていた。
お皿の上にはロヴィーサ嬢が作ってくれた軽食を乗せていく。
サンドイッチにスコーンにおにぎりに小さなタルトもある。
僕とロヴィーサ嬢が僕の食事の準備をしているのを、隣国から僕のお誕生日のために帰って来てくれているヒルダ姉上が興味深そうに見ていた。
「このサンドイッチは何が入っているのですか?」
「豚のモンスターの肉と魔力の込められたキャベツを炒めたものです」
「タルトの上に乗っているのはなんですか?」
「桃に似た魔力のこもった果物です」
はきはきと答えるロヴィーサ嬢にヒルダ姉上が笑顔になる。
「ロヴィーサ嬢が作られたと聞きました。とてもお料理上手なのですね。エドはいい婚約者に巡り合いました」
「恐縮です」
「わたくしも夫の胃袋を掴むべきかしら」
料理をしたことのないヒルダ姉上まで、ロヴィーサ嬢の料理を見て料理をしたいと思ったようだった。
お誕生会が始まると、王家のテーブルには警備兵と爺やがついて、僕の料理を他のひとが食べることがないように見張っている。元々王家のテーブルには近付くだけでも不審者扱いされるので、僕はそれほど心配していなかった。
父上が紅茶の入ったカップを持ち上げて、挨拶をする。
「我が家の末っ子、エドヴァルドも十三歳になった。生まれた当初は乳母を拒み、衰弱して生きられるか分からないような状態だった。育ってからも魔族であるということで、満足な食事を私たちは与えることができなくて、ずっと病弱だった」
ロヴィーサ嬢に出会うまでの僕は、今の僕では考えられないほど病弱で、死が間近にあった。それを追い払ってくれたのはロヴィーサ嬢の存在だ。
「ロヴィーサ・ミエト公爵と婚約し、ミエト家に行ってから、エドヴァルドは健康を取り戻した。そして、十三の年を溌溂として迎えることができた。これからも我が家の末っ子エドヴァルドをよろしく頼むと共に、エドヴァルドの健康を守ってくれているロヴィーサ・ミエト嬢に深く感謝する」
父上の挨拶にヒルダ姉上とエリアス兄上とエルランド兄上が拍手をしている。エリアス兄上も夏休みを利用して、僕のお誕生日のために帰国して来てくれていた。
「エド、お誕生日おめでとう。エドがこんなに元気で十三歳を迎えられるなんて思っていなかったよ」
「エドが健康なのが私の一番の幸せだ」
エリアス兄上とエルランド兄上にお祝いされて僕は頭を下げる。
「エリアス兄上、エルランド兄上、ありがとうございます。ミエト家を公爵家にしてくれたのもエリアス兄上の考えがあってのこと。お陰で僕は堂々とミエト家に滞在できます」
「少し早いけれど、エドをお婿に出した気分になるな」
「それがエドの幸せならば、それでいいんだがな」
寂し気なアリアス兄上とエルランド兄上に、僕は胸が痛む。僕もエリアス兄上とエルランド兄上と離れるのは寂しかった。
それでも、僕は魔族でモンスターの血肉が必要だ。食事に使う材料も魔力を帯びているものしか受け付けない。
厨房に父上に毒になるようなものを置いておくのは忍びなかったので、僕が王城を出たのは仕方がないことだった。
「いつでも会えます」
「そうだな、エド」
「高等学校でも会えるしな」
エルランド兄上とは高等学校でも会える。
永遠の別れではないのだと僕はエリアス兄上とエルランド兄上に伝えた。
貴族たちが次々と挨拶に来るのに対応していて、僕は結局持って来た料理をほとんど食べられなかった。
少しだけでも食べられたのは嬉しかったし、食べられなかったとしても、王城に僕の食べるものがある安心感は全く違う。
これからも王城に行くときにはロヴィーサ嬢の作った料理を持って行こうと考えていた。
お誕生会が終わって、馬車でミエト家に帰ってからが僕のお誕生日の本番だった。
ロヴィーサ嬢はこの日のために魔窟に通ってモンスターを狩って溜めていてくれたのだ。
「ホタテと海老と烏賊の魚介のサラダ、ジャガイモマンドラゴラのスープ、フォアグラのテリーヌ、デザートは桃のタルトです」
「ホタテをサラダに使ったのですか?」
「豪勢にしてみました」
テーブル一杯に並んだお皿に僕は食べるのが待ちきれない。
爺やがパンをサーブしてくれて、僕は食べ始めた。
魚介のサラダは柑橘系のドレッシングが味を引き締めてとても美味しい。ジャガイモマンドラゴラのスープは、ワイバーンの骨でとったお出汁がよくきいている。フォアグラのテリーヌは口の中で蕩ける美味しさだ。
どれもモンスターとつくのだが、ミエト家ではもうモンスターの肉でもそう呼ばないようになっていた。
ロヴィーサ嬢も僕と同じものを食べられると分かってから、僕と同じものを食べている。
同じ食卓を囲んで、同じものを食べる。
幼い頃から憧れていたが、叶えられなかった夢が、今叶う。
「まだまだ食材は残っています、明日は何を食べましょうか?」
「鮭のホイル焼きが食べたいです」
「鮭もありますね。明日は鮭のホイル焼きにしましょう」
お酒は飲めないので紅茶で乾杯して、僕とロヴィーサ嬢は二人きりでお誕生日を祝う。
もうすぐ夏休みも終わる。
夏休みが終わったら、僕は高等学校の二年生になる。
シャワーを浴びると腕や顔や脚がひりひりするのは日焼けをしてしまったからかもしれない。
日に焼けないように長袖長ズボンを身につけていたのだが、それでも日焼けは防げなかったようだ。
魔族のダミアーン伯父上も僕と同じ銀髪に菫色の瞳で、色素がとても薄い。爺やも色素がとても薄い。ダミアーン伯父上と同じ色彩だった母上も色素が薄かったのだろう。
日焼けは僕はもっと気を付けないといけない。
部屋に戻ってひりひりする腕と顔と脚が火照って眠れないでいると、ドアがノックされた。ベッドから飛び起きてドアのところに行くと、ロヴィーサ嬢が立っている。
「ロヴィーサ嬢、どうされましたか?」
「海に行ったのでエド殿下も日に焼けてしまわれたでしょう。この乳液を塗るとかなり楽になるので、試してみられるとよいと思いますよ」
「届けに来て下さったんですか?」
「夜に失礼かとは考えたのですが、エド殿下が眠れていないのではないかと思いまして」
ロヴィーサ嬢は僕のために肌に塗る乳液を届けてくれた。
「ありがとうございます。日焼けした肌が火照って眠れませんでした」
「安眠できますように」
僕の前髪を掻き上げてロヴィーサ嬢が僕の額にキスをする。お休みのキスをされて、僕は別の意味で眠れなくなりそうな予感がしていた。
乳液を塗ると、火照った腕と顔と脚がさっぱりとして、落ち着いてくる。
目を閉じるとロヴィーサ嬢の姿が瞼の裏に浮かんでくる。
クラーケンと戦うロヴィーサ嬢。
バーベキューで食材を焼いてくれるロヴィーサ嬢。
クラーケンは身がぷりぷりしていてとても美味しかった。
まだ残っているから、明日以降も食べられるだろう。
明日の食事にも期待して、僕は眠りについた。
僕のお誕生日は学年の一番最後の方にある。
僕は高等学校の一年生の中でもかなり遅い生まれなのだ。
秋生まれのヘンリッキとは一年近く誕生日が違う。
僕のお誕生日のためにロヴィーサ嬢はドレスを誂えていた。
菫色のストレートラインのドレスで、胸から下が真っすぐになっている。
何を着ていても美しいが、今日のロヴィーサ嬢は特に美しい気がした。
僕もスーツを新しく誂えて、ミッドナイトブルーのスーツを着ていた。ロヴィーサ嬢の目の色よりも濃いが、青なのは同じだ。
馬車に乗って早めに王城についた僕とロヴィーサ嬢は、マジックポーチから料理を取り出す。
父上とヒルダ姉上とエリアス兄上とエルランド兄上のお皿は白地に薄い青で薔薇が描かれているが、僕の分のお皿は縁の部分が緑色ではっきりと区別できるようになっていた。
お皿の上にはロヴィーサ嬢が作ってくれた軽食を乗せていく。
サンドイッチにスコーンにおにぎりに小さなタルトもある。
僕とロヴィーサ嬢が僕の食事の準備をしているのを、隣国から僕のお誕生日のために帰って来てくれているヒルダ姉上が興味深そうに見ていた。
「このサンドイッチは何が入っているのですか?」
「豚のモンスターの肉と魔力の込められたキャベツを炒めたものです」
「タルトの上に乗っているのはなんですか?」
「桃に似た魔力のこもった果物です」
はきはきと答えるロヴィーサ嬢にヒルダ姉上が笑顔になる。
「ロヴィーサ嬢が作られたと聞きました。とてもお料理上手なのですね。エドはいい婚約者に巡り合いました」
「恐縮です」
「わたくしも夫の胃袋を掴むべきかしら」
料理をしたことのないヒルダ姉上まで、ロヴィーサ嬢の料理を見て料理をしたいと思ったようだった。
お誕生会が始まると、王家のテーブルには警備兵と爺やがついて、僕の料理を他のひとが食べることがないように見張っている。元々王家のテーブルには近付くだけでも不審者扱いされるので、僕はそれほど心配していなかった。
父上が紅茶の入ったカップを持ち上げて、挨拶をする。
「我が家の末っ子、エドヴァルドも十三歳になった。生まれた当初は乳母を拒み、衰弱して生きられるか分からないような状態だった。育ってからも魔族であるということで、満足な食事を私たちは与えることができなくて、ずっと病弱だった」
ロヴィーサ嬢に出会うまでの僕は、今の僕では考えられないほど病弱で、死が間近にあった。それを追い払ってくれたのはロヴィーサ嬢の存在だ。
「ロヴィーサ・ミエト公爵と婚約し、ミエト家に行ってから、エドヴァルドは健康を取り戻した。そして、十三の年を溌溂として迎えることができた。これからも我が家の末っ子エドヴァルドをよろしく頼むと共に、エドヴァルドの健康を守ってくれているロヴィーサ・ミエト嬢に深く感謝する」
父上の挨拶にヒルダ姉上とエリアス兄上とエルランド兄上が拍手をしている。エリアス兄上も夏休みを利用して、僕のお誕生日のために帰国して来てくれていた。
「エド、お誕生日おめでとう。エドがこんなに元気で十三歳を迎えられるなんて思っていなかったよ」
「エドが健康なのが私の一番の幸せだ」
エリアス兄上とエルランド兄上にお祝いされて僕は頭を下げる。
「エリアス兄上、エルランド兄上、ありがとうございます。ミエト家を公爵家にしてくれたのもエリアス兄上の考えがあってのこと。お陰で僕は堂々とミエト家に滞在できます」
「少し早いけれど、エドをお婿に出した気分になるな」
「それがエドの幸せならば、それでいいんだがな」
寂し気なアリアス兄上とエルランド兄上に、僕は胸が痛む。僕もエリアス兄上とエルランド兄上と離れるのは寂しかった。
それでも、僕は魔族でモンスターの血肉が必要だ。食事に使う材料も魔力を帯びているものしか受け付けない。
厨房に父上に毒になるようなものを置いておくのは忍びなかったので、僕が王城を出たのは仕方がないことだった。
「いつでも会えます」
「そうだな、エド」
「高等学校でも会えるしな」
エルランド兄上とは高等学校でも会える。
永遠の別れではないのだと僕はエリアス兄上とエルランド兄上に伝えた。
貴族たちが次々と挨拶に来るのに対応していて、僕は結局持って来た料理をほとんど食べられなかった。
少しだけでも食べられたのは嬉しかったし、食べられなかったとしても、王城に僕の食べるものがある安心感は全く違う。
これからも王城に行くときにはロヴィーサ嬢の作った料理を持って行こうと考えていた。
お誕生会が終わって、馬車でミエト家に帰ってからが僕のお誕生日の本番だった。
ロヴィーサ嬢はこの日のために魔窟に通ってモンスターを狩って溜めていてくれたのだ。
「ホタテと海老と烏賊の魚介のサラダ、ジャガイモマンドラゴラのスープ、フォアグラのテリーヌ、デザートは桃のタルトです」
「ホタテをサラダに使ったのですか?」
「豪勢にしてみました」
テーブル一杯に並んだお皿に僕は食べるのが待ちきれない。
爺やがパンをサーブしてくれて、僕は食べ始めた。
魚介のサラダは柑橘系のドレッシングが味を引き締めてとても美味しい。ジャガイモマンドラゴラのスープは、ワイバーンの骨でとったお出汁がよくきいている。フォアグラのテリーヌは口の中で蕩ける美味しさだ。
どれもモンスターとつくのだが、ミエト家ではもうモンスターの肉でもそう呼ばないようになっていた。
ロヴィーサ嬢も僕と同じものを食べられると分かってから、僕と同じものを食べている。
同じ食卓を囲んで、同じものを食べる。
幼い頃から憧れていたが、叶えられなかった夢が、今叶う。
「まだまだ食材は残っています、明日は何を食べましょうか?」
「鮭のホイル焼きが食べたいです」
「鮭もありますね。明日は鮭のホイル焼きにしましょう」
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