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二章 高等学校二年生の王子
1.夏休みの終わり
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夏休みが終わって、僕は高等学校の二年生になった。
一年生のときは学期の途中から入学したが、二年生は最初から通える。
二年生になって初めの日が、ヘンリッキのお誕生日だった。
「お誕生会は週末にやるから、エドヴァルド殿下もアルマスも来てくれると嬉しいです」
「招待状をもらっているよ。ロヴィーサ嬢と伺おうと思っていたんだ」
ヘンリッキはハーヤネン公爵家の子息なので、同じ公爵家であるミエト家がお祝いに行かないわけにはいかなかった。ロヴィーサ嬢のお誕生日にハーヤネン公爵家も親子でお祝いに来てくれているので、ここでハーヤネン公爵家とミエト公爵家の仲のよさを見せなければいけない。
貴族同士でいがみ合って足を引っ張り合うのもある意味仕方がないことなのだが、ハーヤネン公爵家はヘンリッキが僕の学友であるし、一度は謀反を起こしかけたが、今は関係が良好だということをハーヤネン公爵家自体も示したがっている。
「俺が行ってもいいのか? 俺、着ていく服がないよ」
アルマスは着ていく服の心配をしている。
確かにアルマス一家の着ていた服は、お誕生会を開いたときにもとても質素だったし、貴族の中に混ざれるようなものとは思えなかった。
アルマスに恥をかかせたくない気持ちと、僕で何ができるのか迷う気持ちで、僕は何も言えない。
「アルマスと私の体格はそれほど変わらないと思うんだ。私の服を貸そうか?」
「いいのか?」
「アルマスはエドヴァルド殿下の学友で、私の大事な相手だ。ぜひお誕生会には来て欲しいんだ」
僕はヘンリッキとアルマスよりも細くて小さいけれど、アルマスとヘンリッキの体格はあまり変わらない。アルマスがヘンリッキの服を借りられるならそれが一番いいだろう。
ミエト公爵家に戻ってからロヴィーサ嬢に話をする。
ロヴィーサ嬢も研究課程の二年生になっていて、お屋敷に戻ったところだった。
「ロヴィーサ嬢、ヘンリッキのお誕生会に招かれていたでしょう?」
「そうでしたね。招待状をいただいていました。お返事は致しましたが」
「ドレスをどうなさいますか?」
僕の問いかけにロヴィーサ嬢は自分のお誕生日にエルランド兄上に言われたことを思い出したようだ。
ロヴィーサ嬢は自分のお誕生日には新年のパーティーと同じドレスを着ていた。ロヴィーサ嬢がそのドレスを気に入って着ているのは分かっていたし、とてもよくお似合いだったので、僕は気付いていなかった。
ロヴィーサ嬢は見栄が大事な貴族社会で、お誕生日の席でドレスを新調できない公爵だと周囲に思わせてしまいかねないことをしでかしてしまったのだ。
今回はロヴィーサ嬢が主役ではないし、ロヴィーサ嬢は僕のお誕生日にドレスを新調したばかりだ。
悩んでしまうのも仕方がないだろう。
「わたくしは、自分のお誕生日に着たドレスを着ていきます」
「あのドレスをですか?」
凛と答えたロヴィーサ嬢に、僕はそれでいいのかと問うてしまう。
「ドレスを作るためにはたくさんのお金がかかります。わたくしは所領を失って貧しかった時期があるので、お金の大切さを誰よりも分かっているつもりです。それに、あのドレスはとても気に入っているのです。自分のお誕生日にドレスを新調できない、エドヴァルド殿下のお誕生日にドレスを新調できない、そのことは問題かもしれませんが、ハーヤネン公爵家の子息のお誕生日に見栄を張る必要はないと思っています」
エルランド兄上に釘を刺されたら、僕ならば毎回ドレスやスーツを新調しようと考えてしまうだろう。
そんなことはなく、ロヴィーサ嬢は自分の考えを持っていた。
尊敬のまなざしでロヴィーサ嬢を見ると、頬を染めて微笑んでいる。
「ダミアーン王太子殿下から、林檎が届いています。アップルパイを作りましょうか」
「アップルパイ!」
僕が王城にいる間もダミアーン伯父上は僕のことを気にしてくれていたが、ミエト家に移ってからもそれは続いていた。
ロヴィーサ嬢が見せてくれる大きな箱にはいっぱいの林檎が詰まっている。
魔力のこもった林檎なのだろうが、僕が手に入れられる果物の種類はとても少ないので、ダミアーン伯父上からの贈り物は非常に助かっていた。
「これからお礼状を書いて来ます」
「その間にアップルパイを焼いておきますね」
厨房にロヴィーサ嬢が行っている間に、僕は魔法でインクの途切れない誕生日に父上からもらった万年筆を出して、便箋にお礼を書いていた。
ミエト家で僕がどれだけ幸福に暮らしているか。魔族の国から輸入される食材がどれだけミエト家に豊富にあるか。ダミアーン伯父上の送ってくれた林檎がどれだけ嬉しかったか。
書き終えて封筒に入れて封をすると、爺やに渡す。
「これをダミアーン伯父上にお送りして」
「心得ました」
お礼のできない無礼な甥とは思われたくない。
ダミアーン伯父上とはこれからもずっといい関係でいたいと思っていた。
お礼状を書き終えると、僕は厨房に顔を出す。
オーブンの中でアップルパイが焼き上がりつつあって、ロヴィーサ嬢はフルーツティーを淹れていた。
熱湯で濃く淹れたフルーツティーに氷を入れて冷やしてピッチャーに入れている。ガラスのピッチャーの中は綺麗な赤い色のフルーツティーと氷で涼やかにカランカランと音が鳴っている。
焼き上がったアップルパイをお皿に乗せてロヴィーサ嬢が居間に持って行く。僕もフルーツティーのピッチャーとグラスを持って居間に移動した。
ソファに腰かけてアップルパイとフルーツティーをいただく。
アップルパイの皮はさくさくで、中の林檎も歯ごたえが残るくらいの焼け具合で敷かれているクリームチーズがさっぱりとしていて美味しい。
フルーツティーは冷たくて、僕はごくごくと喉を鳴らして飲んでしまった。
大きなアップルパイではなかったのですぐに食べ終わってしまったが、晩ご飯もあるのでこれくらいがちょうどいい。
食べ終わると僕は部屋に戻って高等学校の宿題をしていた。
宿題をしていると、部屋のドアがノックされる。
「はーい。どうぞ」
声をかけると、ロヴィーサ嬢が入って来た。
「家庭教師をつけることにエド殿下が抵抗があることは分かっています」
「は、はい」
「わたくし、高等学校はそこそこの成績で卒業しています。わたくしが宿題を見るというのはどうでしょう?」
家庭教師に姉上や兄上と比べられて僕が嫌な思いをしたのを、ロヴィーサ嬢は知っている。だから、自分が僕の宿題を見てくれると言っているのだ。
「いいのですか? ロヴィーサ嬢は、公爵家の当主で、モンスター狩りもしていて、食事の用意もしてくれて、お弁当も作ってくださる。大変ではないですか?」
「料理は最近はエド殿下も一緒にしてくださるでしょう? 宿題も終わったのを間違っていないかチェックするだけならば、それほど大変ではありませんよ」
僕は本当にいい伴侶を選んだと感動してしまった。
働き者で、どこまでも僕のことを考えてくれるロヴィーサ嬢に愛しさが募る。
「ロヴィーサ嬢、大好きです」
「わたくしもエド殿下が大好きですわ」
珍しく照れずに答えてくれたロヴィーサ嬢を僕はじっと見つめる。
「初めて出会ったときから、なんて可愛らしい方だろうと思っていました。それだけではなくて、強いところも見せていただきました。エド殿下の婚約者になれたことを、今はとても誇りに思っています」
王家の王子と公爵家の令嬢の結婚なのだから、政略結婚に決まっているが、僕の父上も政略結婚の形を取っているが、留学先の魔族の国で母上を見初めた恋愛結婚だ。
ヒルダ姉上は隣国に幼い頃に行ったときに王子と出会って、それ以来手紙のやり取りをして交友を深めていた。その王子と遂に結婚することができて、幸せそうに嫁いで行った。
エリアス兄上も高等学校で運命の相手に出会っている。エリアス兄上の婚約者は同性の相手だが、エルランド兄上か僕の子どもを養子に貰うという条件で婚約を果たしている。
エルランド兄上はまだ運命の相手に出会っていないが、高等学校を卒業したら魔族の国に留学することが決まっているので、そこで出会えるのではないかと言っている。
この国の王家が恋愛結婚を重んじてくれるので、僕がロヴィーサ嬢に惚れたときもあっさりと婚約が許されたのだ。
僕は王家に生まれたことで、王城に常人には毒物となるモンスターの肉や魔力の宿った食材を置いておけないと離れたが、ミエト家に来てからしみじみと、あの家族の中に生まれてよかったと実感していた。
一年生のときは学期の途中から入学したが、二年生は最初から通える。
二年生になって初めの日が、ヘンリッキのお誕生日だった。
「お誕生会は週末にやるから、エドヴァルド殿下もアルマスも来てくれると嬉しいです」
「招待状をもらっているよ。ロヴィーサ嬢と伺おうと思っていたんだ」
ヘンリッキはハーヤネン公爵家の子息なので、同じ公爵家であるミエト家がお祝いに行かないわけにはいかなかった。ロヴィーサ嬢のお誕生日にハーヤネン公爵家も親子でお祝いに来てくれているので、ここでハーヤネン公爵家とミエト公爵家の仲のよさを見せなければいけない。
貴族同士でいがみ合って足を引っ張り合うのもある意味仕方がないことなのだが、ハーヤネン公爵家はヘンリッキが僕の学友であるし、一度は謀反を起こしかけたが、今は関係が良好だということをハーヤネン公爵家自体も示したがっている。
「俺が行ってもいいのか? 俺、着ていく服がないよ」
アルマスは着ていく服の心配をしている。
確かにアルマス一家の着ていた服は、お誕生会を開いたときにもとても質素だったし、貴族の中に混ざれるようなものとは思えなかった。
アルマスに恥をかかせたくない気持ちと、僕で何ができるのか迷う気持ちで、僕は何も言えない。
「アルマスと私の体格はそれほど変わらないと思うんだ。私の服を貸そうか?」
「いいのか?」
「アルマスはエドヴァルド殿下の学友で、私の大事な相手だ。ぜひお誕生会には来て欲しいんだ」
僕はヘンリッキとアルマスよりも細くて小さいけれど、アルマスとヘンリッキの体格はあまり変わらない。アルマスがヘンリッキの服を借りられるならそれが一番いいだろう。
ミエト公爵家に戻ってからロヴィーサ嬢に話をする。
ロヴィーサ嬢も研究課程の二年生になっていて、お屋敷に戻ったところだった。
「ロヴィーサ嬢、ヘンリッキのお誕生会に招かれていたでしょう?」
「そうでしたね。招待状をいただいていました。お返事は致しましたが」
「ドレスをどうなさいますか?」
僕の問いかけにロヴィーサ嬢は自分のお誕生日にエルランド兄上に言われたことを思い出したようだ。
ロヴィーサ嬢は自分のお誕生日には新年のパーティーと同じドレスを着ていた。ロヴィーサ嬢がそのドレスを気に入って着ているのは分かっていたし、とてもよくお似合いだったので、僕は気付いていなかった。
ロヴィーサ嬢は見栄が大事な貴族社会で、お誕生日の席でドレスを新調できない公爵だと周囲に思わせてしまいかねないことをしでかしてしまったのだ。
今回はロヴィーサ嬢が主役ではないし、ロヴィーサ嬢は僕のお誕生日にドレスを新調したばかりだ。
悩んでしまうのも仕方がないだろう。
「わたくしは、自分のお誕生日に着たドレスを着ていきます」
「あのドレスをですか?」
凛と答えたロヴィーサ嬢に、僕はそれでいいのかと問うてしまう。
「ドレスを作るためにはたくさんのお金がかかります。わたくしは所領を失って貧しかった時期があるので、お金の大切さを誰よりも分かっているつもりです。それに、あのドレスはとても気に入っているのです。自分のお誕生日にドレスを新調できない、エドヴァルド殿下のお誕生日にドレスを新調できない、そのことは問題かもしれませんが、ハーヤネン公爵家の子息のお誕生日に見栄を張る必要はないと思っています」
エルランド兄上に釘を刺されたら、僕ならば毎回ドレスやスーツを新調しようと考えてしまうだろう。
そんなことはなく、ロヴィーサ嬢は自分の考えを持っていた。
尊敬のまなざしでロヴィーサ嬢を見ると、頬を染めて微笑んでいる。
「ダミアーン王太子殿下から、林檎が届いています。アップルパイを作りましょうか」
「アップルパイ!」
僕が王城にいる間もダミアーン伯父上は僕のことを気にしてくれていたが、ミエト家に移ってからもそれは続いていた。
ロヴィーサ嬢が見せてくれる大きな箱にはいっぱいの林檎が詰まっている。
魔力のこもった林檎なのだろうが、僕が手に入れられる果物の種類はとても少ないので、ダミアーン伯父上からの贈り物は非常に助かっていた。
「これからお礼状を書いて来ます」
「その間にアップルパイを焼いておきますね」
厨房にロヴィーサ嬢が行っている間に、僕は魔法でインクの途切れない誕生日に父上からもらった万年筆を出して、便箋にお礼を書いていた。
ミエト家で僕がどれだけ幸福に暮らしているか。魔族の国から輸入される食材がどれだけミエト家に豊富にあるか。ダミアーン伯父上の送ってくれた林檎がどれだけ嬉しかったか。
書き終えて封筒に入れて封をすると、爺やに渡す。
「これをダミアーン伯父上にお送りして」
「心得ました」
お礼のできない無礼な甥とは思われたくない。
ダミアーン伯父上とはこれからもずっといい関係でいたいと思っていた。
お礼状を書き終えると、僕は厨房に顔を出す。
オーブンの中でアップルパイが焼き上がりつつあって、ロヴィーサ嬢はフルーツティーを淹れていた。
熱湯で濃く淹れたフルーツティーに氷を入れて冷やしてピッチャーに入れている。ガラスのピッチャーの中は綺麗な赤い色のフルーツティーと氷で涼やかにカランカランと音が鳴っている。
焼き上がったアップルパイをお皿に乗せてロヴィーサ嬢が居間に持って行く。僕もフルーツティーのピッチャーとグラスを持って居間に移動した。
ソファに腰かけてアップルパイとフルーツティーをいただく。
アップルパイの皮はさくさくで、中の林檎も歯ごたえが残るくらいの焼け具合で敷かれているクリームチーズがさっぱりとしていて美味しい。
フルーツティーは冷たくて、僕はごくごくと喉を鳴らして飲んでしまった。
大きなアップルパイではなかったのですぐに食べ終わってしまったが、晩ご飯もあるのでこれくらいがちょうどいい。
食べ終わると僕は部屋に戻って高等学校の宿題をしていた。
宿題をしていると、部屋のドアがノックされる。
「はーい。どうぞ」
声をかけると、ロヴィーサ嬢が入って来た。
「家庭教師をつけることにエド殿下が抵抗があることは分かっています」
「は、はい」
「わたくし、高等学校はそこそこの成績で卒業しています。わたくしが宿題を見るというのはどうでしょう?」
家庭教師に姉上や兄上と比べられて僕が嫌な思いをしたのを、ロヴィーサ嬢は知っている。だから、自分が僕の宿題を見てくれると言っているのだ。
「いいのですか? ロヴィーサ嬢は、公爵家の当主で、モンスター狩りもしていて、食事の用意もしてくれて、お弁当も作ってくださる。大変ではないですか?」
「料理は最近はエド殿下も一緒にしてくださるでしょう? 宿題も終わったのを間違っていないかチェックするだけならば、それほど大変ではありませんよ」
僕は本当にいい伴侶を選んだと感動してしまった。
働き者で、どこまでも僕のことを考えてくれるロヴィーサ嬢に愛しさが募る。
「ロヴィーサ嬢、大好きです」
「わたくしもエド殿下が大好きですわ」
珍しく照れずに答えてくれたロヴィーサ嬢を僕はじっと見つめる。
「初めて出会ったときから、なんて可愛らしい方だろうと思っていました。それだけではなくて、強いところも見せていただきました。エド殿下の婚約者になれたことを、今はとても誇りに思っています」
王家の王子と公爵家の令嬢の結婚なのだから、政略結婚に決まっているが、僕の父上も政略結婚の形を取っているが、留学先の魔族の国で母上を見初めた恋愛結婚だ。
ヒルダ姉上は隣国に幼い頃に行ったときに王子と出会って、それ以来手紙のやり取りをして交友を深めていた。その王子と遂に結婚することができて、幸せそうに嫁いで行った。
エリアス兄上も高等学校で運命の相手に出会っている。エリアス兄上の婚約者は同性の相手だが、エルランド兄上か僕の子どもを養子に貰うという条件で婚約を果たしている。
エルランド兄上はまだ運命の相手に出会っていないが、高等学校を卒業したら魔族の国に留学することが決まっているので、そこで出会えるのではないかと言っている。
この国の王家が恋愛結婚を重んじてくれるので、僕がロヴィーサ嬢に惚れたときもあっさりと婚約が許されたのだ。
僕は王家に生まれたことで、王城に常人には毒物となるモンスターの肉や魔力の宿った食材を置いておけないと離れたが、ミエト家に来てからしみじみと、あの家族の中に生まれてよかったと実感していた。
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