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四章 キスがしたい十五歳
5.バックリーン家の陞爵
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隣国の疫病も治まって、バックリーン家のアルマスとアクセリとアンニーナ嬢が隣国に呼ばれることになった。
アルマスは僕の学友で、僕が隣国に紹介したので、僕とロヴィーサ嬢も招かれている。
バックリーン家には隣国からも騎士号が授与されるということだった。
これでバックリーン家は隣国からも魔族の国からも騎士号を授与されているとても珍しい子爵家になる。
アルマスとアクセリとアンニーナ嬢は隣国の国王陛下も命の危機から救った。その功績はわが国でも讃えられるべきだと言われていた。
僕はこの機会を逃すつもりはなかった。
まずは隣国でのアルマスとアクセリとアンニーナ嬢の騎士号の授与式だ。
国王陛下が大広間で厳かに、膝をついて頭を下げるアルマスとアクセリとアンニーナ嬢に告げる。
「この度は私の命を救ってくれて、この国の疫病も治めてくれて、非常に感謝している。この功績を讃え、バックリーン家に騎士号を授与する」
集まっている隣国の貴族の中から拍手が沸き起こる。隣国の貴族の中には疫病に苦しめられていたものも少なくないので、アルマスとアクセリとアンニーナ嬢の開発した薬湯に救われたものもいるのだろう。
「アルマス・バックリーンはヘンリッキ・ハーヤネンのところに婿入りすると決まっているので、アクセリ・バックリーン、前へ」
「はい」
呼ばれてアクセリが前へ出て国王陛下の前で膝をつく。国王陛下が腰の剣を抜いてアクセリの細い肩に乗せた。
「アクセリ・バックリーン、バックリーン家の代表として、この国のために尽力してくれたことに感謝し、騎士号を授与する」
「お受けいたします」
「これからも何か病気が蔓延するようなことがあれば、我が国を守ってほしい」
「承知いたしました」
アクセリはしっかりと国王陛下の前でもやり取りができていた。
バックリーン家が隣国の国王陛下を救って、隣国全体も救って騎士号を得た件に関して、僕はエリアス兄上とエルランド兄上と父上に相談に行っていた。
エリアス兄上もエルランド兄上も父上も、僕が月に二回王城に行くときには時間を作ってくれていた。
父上は国王陛下の座は退いたが、エリアス兄上の補佐として国の政を教えている。エリアス兄上はユリウス義兄上と共に父上に学んで国を治めている。エルランド兄上も研究課程を卒業したらそれに加わる予定だ。
「エリアス兄上、ユリウス義兄上、バックリーン家の陞爵を考えてもらえないでしょうか?」
「そのことに関しては、隣国からも話が来ている。バックリーン家の子息と令嬢が隣国の国王陛下をお救いし、国を守ったという功績は決して小さなものではない」
「陞爵が叶いますか?」
「ユリウスと父上とも話していた。伯爵家に陞爵させてもよいのではないかと」
バックリーン家は今は子爵家だ。魔族の国の騎士号と隣国の騎士号を持ってはいるが、貴族としては非常に位が低い部類に入る。
それを伯爵家にするというのだから、ものすごい陞爵になる。
「伯爵家にできますか?」
「それだけのことをバックリーン家はしているよ。魔族の国との交友関係も隣国との交友関係も円滑にして、隣国の国王陛下の命を救っているからね」
それだけではなくて、疫病を治めているし、魔族の国では魔族の食べ物を人間が食べられるようにして、人間の食べ物を魔族が食べられるようにして、飢饉を乗り越える術を与えた。
バックリーン家の功績は挙げていけばいくほどすごいものだった。
「エドの学友ならば伯爵家くらいがちょうどいい」
「ハーヤネン公爵家の嫡男と結婚するのだろう、伯爵家くらいにはなっておかないと」
エリアス兄上もエルランド兄上も、アルマスの身分が低すぎたことを気にしていたようだ。僕は平民のころからアルマスを親友と思っていたが、身分の差というものはどうしても現れてしまう。
それが小さくなるのならば僕も嬉しい。
「エリアス兄上、よろしくお願いします」
「エドの学友の家だ。しっかりと陞爵させよう」
エリアス兄上の言葉に、僕は安心していた。
隣国からバックリーン家が騎士号を授与されてから、少しして、バックリーン家は王城に呼び出されていた。集められた貴族たちも、バックリーン家の家族たちもどうしてバックリーン家の一家が呼び出されているか分かっている。
国王陛下であるエリアス兄上がマントを翻して立ち上がる。
「バックリーン家の代表、アクセリ・バックリーン、前へ」
隣国から騎士号を授与されたときもだが、隣国の国王陛下を救う薬湯を作ったのはアルマスとアクセリとアンニーナ嬢で、アルマスはヘンリッキの元に婿入りが決まっているので、バックリーン家の代表はアクセリと決まったようだ。
アクセリが前に出てエリアス兄上の前で膝をつく。
「バックリーン家は魔族の食材を人間が食べられるように、人間の食材を魔族が食べられるようにする技術を開発し、魔族の国から騎士号を授与されている。今回、隣国の疫病を治めて、隣国の国王陛下をお救いして、隣国からも騎士号を授与されている。大変名誉なことだ」
「ありがとうございます」
「そのことで我が国と魔族の国、隣国の関係もますます友好的になっている。その功績を讃えて、バックリーン家を伯爵家へと陞爵する」
「お受けいたします」
「これからもますます薬草研究に励んで、この国を支えて欲しい」
「尽力いたします」
まだ十二歳とは思えないアクセリの堂々とした受け答えに僕は拍手をしていた。貴族の中からも拍手が巻き起こる。バックリーン家は無事に伯爵家になった。
バックリーン家が伯爵家になったことについて、アルマスのご両親は信じられない様子だった。アクセリが戻ってくると、青ざめた顔でロヴィーサ嬢に相談している。
「私たちは統治などよく分かりません」
「どうやって伯爵家の所領を守って行けばいいのでしょう?」
問いかけるアルマスのご両親にロヴィーサ嬢が穏やかに答える。
「統治に関しては、教えてくれる方を手配しましょう。急に伯爵家になったので戸惑っていると思います。補佐となる方も紹介しましょう」
貴族の中でも地位は低いが学のあるものや、良家の出身だが次子、三子で、家を継げないものはたくさんいる。そういうものたちにとっては、伯爵家の補佐となれるのは非常に利益のあることだった。
「補佐してもらって、アクセリ様が当主になれる年まで頑張るのです」
「はい、一生懸命勉強します」
「できる限りのことはします」
食べるものや着るものに困っていた平民時代よりもバックリーン家は豊かには鳴ったが、その豊かさには責任が伴う。どの貴族もその責任を果たせているかと言えば疑問だが、それでも伯爵家となったバックリーン家は所領の民のために働かねばならない。
平民だったアルマスのご両親には統治の方法が分からないが、平民の心に寄り添うことはできるだろう。アルマスのご両親もいい統治者になるのではないかと僕は思っていた。
ミエト家に帰ると僕とロヴィーサ嬢は普段着に着替えて、晩ご飯の準備をする。
今日の晩ご飯はコロッケのようだが、普段とは違った。
ロヴィーサ嬢はジャガイモを使っていない。
濃いホワイトソースを作って、そこに解した蟹の身を混ぜて、冷やして丸めている。そこに小麦粉と卵とパン粉をつけて揚げている。
蟹だけでなく、トウモロコシが入っているものもある。
「これはなんですか?」
「蟹クリームコロッケと、コーンクリームコロッケです」
「蟹の入ったクリームコロッケと、コーンの入ったクリームコロッケ……」
お鍋の油の中では蟹クリームコロッケとコーンクリームコロッケが美味しそうに揚がっている。
出来上がった蟹クリームコロッケとコーンクリームコロッケに、キャベツの千切りの塩昆布和えを添えて、一口齧ってみると、とろとろのクリームが溢れ出して、熱さに僕ははふはふと息をする。
冷やしながら食べていると、クリームに蟹の旨味が溶けだしてとても美味しい。コーンクリームコロッケはトウモロコシが甘くてとても美味しい。
「アルマスが伯爵家の子息だなんて信じられませんね」
「それだけアルマス様が努力した結果です」
「アルマスとアクセリとアンニーナ嬢ですよ」
「そうでしたね」
晩ご飯を食べながらロヴィーサ嬢と微笑み合うのも楽しい。
今日はいい一日だったと思いながら、僕は蟹クリームコロッケをお代わりした。
アルマスは僕の学友で、僕が隣国に紹介したので、僕とロヴィーサ嬢も招かれている。
バックリーン家には隣国からも騎士号が授与されるということだった。
これでバックリーン家は隣国からも魔族の国からも騎士号を授与されているとても珍しい子爵家になる。
アルマスとアクセリとアンニーナ嬢は隣国の国王陛下も命の危機から救った。その功績はわが国でも讃えられるべきだと言われていた。
僕はこの機会を逃すつもりはなかった。
まずは隣国でのアルマスとアクセリとアンニーナ嬢の騎士号の授与式だ。
国王陛下が大広間で厳かに、膝をついて頭を下げるアルマスとアクセリとアンニーナ嬢に告げる。
「この度は私の命を救ってくれて、この国の疫病も治めてくれて、非常に感謝している。この功績を讃え、バックリーン家に騎士号を授与する」
集まっている隣国の貴族の中から拍手が沸き起こる。隣国の貴族の中には疫病に苦しめられていたものも少なくないので、アルマスとアクセリとアンニーナ嬢の開発した薬湯に救われたものもいるのだろう。
「アルマス・バックリーンはヘンリッキ・ハーヤネンのところに婿入りすると決まっているので、アクセリ・バックリーン、前へ」
「はい」
呼ばれてアクセリが前へ出て国王陛下の前で膝をつく。国王陛下が腰の剣を抜いてアクセリの細い肩に乗せた。
「アクセリ・バックリーン、バックリーン家の代表として、この国のために尽力してくれたことに感謝し、騎士号を授与する」
「お受けいたします」
「これからも何か病気が蔓延するようなことがあれば、我が国を守ってほしい」
「承知いたしました」
アクセリはしっかりと国王陛下の前でもやり取りができていた。
バックリーン家が隣国の国王陛下を救って、隣国全体も救って騎士号を得た件に関して、僕はエリアス兄上とエルランド兄上と父上に相談に行っていた。
エリアス兄上もエルランド兄上も父上も、僕が月に二回王城に行くときには時間を作ってくれていた。
父上は国王陛下の座は退いたが、エリアス兄上の補佐として国の政を教えている。エリアス兄上はユリウス義兄上と共に父上に学んで国を治めている。エルランド兄上も研究課程を卒業したらそれに加わる予定だ。
「エリアス兄上、ユリウス義兄上、バックリーン家の陞爵を考えてもらえないでしょうか?」
「そのことに関しては、隣国からも話が来ている。バックリーン家の子息と令嬢が隣国の国王陛下をお救いし、国を守ったという功績は決して小さなものではない」
「陞爵が叶いますか?」
「ユリウスと父上とも話していた。伯爵家に陞爵させてもよいのではないかと」
バックリーン家は今は子爵家だ。魔族の国の騎士号と隣国の騎士号を持ってはいるが、貴族としては非常に位が低い部類に入る。
それを伯爵家にするというのだから、ものすごい陞爵になる。
「伯爵家にできますか?」
「それだけのことをバックリーン家はしているよ。魔族の国との交友関係も隣国との交友関係も円滑にして、隣国の国王陛下の命を救っているからね」
それだけではなくて、疫病を治めているし、魔族の国では魔族の食べ物を人間が食べられるようにして、人間の食べ物を魔族が食べられるようにして、飢饉を乗り越える術を与えた。
バックリーン家の功績は挙げていけばいくほどすごいものだった。
「エドの学友ならば伯爵家くらいがちょうどいい」
「ハーヤネン公爵家の嫡男と結婚するのだろう、伯爵家くらいにはなっておかないと」
エリアス兄上もエルランド兄上も、アルマスの身分が低すぎたことを気にしていたようだ。僕は平民のころからアルマスを親友と思っていたが、身分の差というものはどうしても現れてしまう。
それが小さくなるのならば僕も嬉しい。
「エリアス兄上、よろしくお願いします」
「エドの学友の家だ。しっかりと陞爵させよう」
エリアス兄上の言葉に、僕は安心していた。
隣国からバックリーン家が騎士号を授与されてから、少しして、バックリーン家は王城に呼び出されていた。集められた貴族たちも、バックリーン家の家族たちもどうしてバックリーン家の一家が呼び出されているか分かっている。
国王陛下であるエリアス兄上がマントを翻して立ち上がる。
「バックリーン家の代表、アクセリ・バックリーン、前へ」
隣国から騎士号を授与されたときもだが、隣国の国王陛下を救う薬湯を作ったのはアルマスとアクセリとアンニーナ嬢で、アルマスはヘンリッキの元に婿入りが決まっているので、バックリーン家の代表はアクセリと決まったようだ。
アクセリが前に出てエリアス兄上の前で膝をつく。
「バックリーン家は魔族の食材を人間が食べられるように、人間の食材を魔族が食べられるようにする技術を開発し、魔族の国から騎士号を授与されている。今回、隣国の疫病を治めて、隣国の国王陛下をお救いして、隣国からも騎士号を授与されている。大変名誉なことだ」
「ありがとうございます」
「そのことで我が国と魔族の国、隣国の関係もますます友好的になっている。その功績を讃えて、バックリーン家を伯爵家へと陞爵する」
「お受けいたします」
「これからもますます薬草研究に励んで、この国を支えて欲しい」
「尽力いたします」
まだ十二歳とは思えないアクセリの堂々とした受け答えに僕は拍手をしていた。貴族の中からも拍手が巻き起こる。バックリーン家は無事に伯爵家になった。
バックリーン家が伯爵家になったことについて、アルマスのご両親は信じられない様子だった。アクセリが戻ってくると、青ざめた顔でロヴィーサ嬢に相談している。
「私たちは統治などよく分かりません」
「どうやって伯爵家の所領を守って行けばいいのでしょう?」
問いかけるアルマスのご両親にロヴィーサ嬢が穏やかに答える。
「統治に関しては、教えてくれる方を手配しましょう。急に伯爵家になったので戸惑っていると思います。補佐となる方も紹介しましょう」
貴族の中でも地位は低いが学のあるものや、良家の出身だが次子、三子で、家を継げないものはたくさんいる。そういうものたちにとっては、伯爵家の補佐となれるのは非常に利益のあることだった。
「補佐してもらって、アクセリ様が当主になれる年まで頑張るのです」
「はい、一生懸命勉強します」
「できる限りのことはします」
食べるものや着るものに困っていた平民時代よりもバックリーン家は豊かには鳴ったが、その豊かさには責任が伴う。どの貴族もその責任を果たせているかと言えば疑問だが、それでも伯爵家となったバックリーン家は所領の民のために働かねばならない。
平民だったアルマスのご両親には統治の方法が分からないが、平民の心に寄り添うことはできるだろう。アルマスのご両親もいい統治者になるのではないかと僕は思っていた。
ミエト家に帰ると僕とロヴィーサ嬢は普段着に着替えて、晩ご飯の準備をする。
今日の晩ご飯はコロッケのようだが、普段とは違った。
ロヴィーサ嬢はジャガイモを使っていない。
濃いホワイトソースを作って、そこに解した蟹の身を混ぜて、冷やして丸めている。そこに小麦粉と卵とパン粉をつけて揚げている。
蟹だけでなく、トウモロコシが入っているものもある。
「これはなんですか?」
「蟹クリームコロッケと、コーンクリームコロッケです」
「蟹の入ったクリームコロッケと、コーンの入ったクリームコロッケ……」
お鍋の油の中では蟹クリームコロッケとコーンクリームコロッケが美味しそうに揚がっている。
出来上がった蟹クリームコロッケとコーンクリームコロッケに、キャベツの千切りの塩昆布和えを添えて、一口齧ってみると、とろとろのクリームが溢れ出して、熱さに僕ははふはふと息をする。
冷やしながら食べていると、クリームに蟹の旨味が溶けだしてとても美味しい。コーンクリームコロッケはトウモロコシが甘くてとても美味しい。
「アルマスが伯爵家の子息だなんて信じられませんね」
「それだけアルマス様が努力した結果です」
「アルマスとアクセリとアンニーナ嬢ですよ」
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