101 / 180
四章 キスがしたい十五歳
11.僕の秘密
しおりを挟む
お誕生日パーティーの後でエルランド兄上はセシーリア嬢の手を取って話しかけていた。
「我が国は魔族の国のことが分かっていないものがいるのです。それをすぐに諫めることができずにセシーリア嬢の心を傷付けてしまって申し訳ありません」
「いいえ、エルランド殿下、わたくしはこの程度では傷付きません。行き遅れの年増と言われ続けていますからね。気になさらなくてもいいのですよ」
余裕の表情のセシーリア嬢に、エルランド兄上が首を振る。
「そんなことに慣れなくていいのです。この国にいる間は私がセシーリア嬢を守ります。セシーリア嬢以外で私の愛するひとはいないのですから」
行き遅れとも、年増とも言われていたが、それに慣れている様子のセシーリア嬢に、エルランド兄上は慣れなくていいのだと伝えている。手を取られてそんな熱烈なことを言われて、セシーリア嬢は頬を染めていた。
「エルランド殿下がわたくしを選んでくださってよかったと思っています。お慕いしております、エルランド殿下」
「私も愛しています、セシーリア嬢」
そのまま二人がキスをしそうないい雰囲気だったので、僕もロヴィーサ嬢もエリアス兄上もユリウス義兄上も父上もダミアーン伯父上も、王家だけの私室からそっと出た。
廊下を歩いて応接室に移りながらダミアーン伯父上が誇らしげに語る。
「エルランドもいい男になったな。伯父として嬉しい」
「私も父親としてとても誇らしい」
「エンシオ殿、いい息子を持ったな。これで魔族の国の宰相家も安心だろう」
「そう思ってもらえると嬉しいな」
エルランド兄上とセシーリア嬢の結婚は、運命の相手というだけでなく、魔族の国と我が国の結びつきをより強固にするためのものでもある。エルランド兄上がセシーリア嬢の心を掴んで、魔族の国の宰相家を安心させているということは、両国にとってもめでたいことだった。
「それにしても、ロヴィーサ嬢は勇気のある振る舞いをしましたね」
「いえ、本来は黙っていて、エルランド殿下にお伝えして対応を待つべきでした。差し出がましいことを致しました」
「ご立派でしたよ」
「どうしても許せなかったのです。セシーリア嬢は魔族として、人間の国に嫁いでくるのは非常に心細いことでしょうに、この国のものがそれを歓迎しないようなことを結婚前から言って、子どものことまで話しに持ち出すなんて。子どもができない夫婦などどれだけでもいるのに」
エリアス兄上の前でロヴィーサ嬢がこれだけ強く語るのも初めてなのではないだろうか。それだけロヴィーサ嬢は王城で陰口を叩いていた連中が許せなかったようだ。
「エドは素晴らしい女性を婚約者にしたな」
「はい、ロヴィーサ嬢は僕の誇りです」
エリアス兄上に言われて僕が答えると、ロヴィーサ嬢は目を伏せて恥じらっていた。
ロヴィーサ嬢は勇敢で、モンスターも倒すが慎ましやかな淑女で、大人である。
僕はそんなロヴィーサ嬢に言えていないことが一つあった。
「爺や……あの毛布のことなんだけど……」
「あれだけでは寒くなってきましたか? 分厚い布団を出しますか?」
「まだ大丈夫。そうじゃなくて……」
僕は毛布を一枚持っている。
淡い緑色で、薄手の毛布で夏場も使える優れものだ。
ロヴィーサ嬢と初めて会ったときにも、僕はこの毛布に包まれていた。
僕が体調をすぐに崩して熱を出すので、爺やはこの毛布で小さな頃から僕をくるんでくれていた。毛布に包まれると僕は安心して眠りにつくことができる。
十五歳にもなって、毛布が手放せないなんて、あまりにも子どもっぽいと思うのだが、僕はこの毛布がないと眠れないのだ。
ロヴィーサ嬢はそんなことは知らない。
勇敢で格好いいロヴィーサ嬢にそんなことを打ち明けて、笑われないだろうか。子どもだと思われないだろうか。
でもいつかは打ち明けなければいけないことだった。
晩ご飯の後にロヴィーサ嬢が僕の部屋に勉強を教えに来てくれたときに、僕は思い切って秘密を打ち明けることにした。
「ロヴィーサ嬢、実は、僕はこの毛布がないと眠れないのです」
「わたくしは、母に買ってもらったぬいぐるみを枕元に置いて寝ていますよ」
「へ?」
「エド殿下も大事な毛布があるのですね」
あっさりと受け入れてくれるロヴィーサ嬢に、僕は必死に言い訳をする。
「小さな頃から使っていて、熱が出たときにもこの毛布に包まれると眠ることができたから」
言っていると、爺やがそっと言葉を添えてくれた。
「その毛布は、エドヴァルド殿下のお母上がこの国に嫁いでくるときに作られたもので、春夏秋冬問わず使える魔法のかかったものなのです。包むと体力を回復するので、エドヴァルド殿下に使っておりました」
僕は知らなかったが、なければ眠れない毛布は、母上の形見だった。
「これは母上の形見なの?」
「そうです。何度エドヴァルド殿下のお命を救ってくれたか分かりません」
包むと体力を回復する毛布のおかげで僕の命は繋がれていた。
そんな大事なことを爺やはこれまで僕に伝えてくれなかった。
「それで、これに包まるとよく眠れるのか」
「エドヴァルド殿下のために、先帝陛下がお母上の毛布を与えたのです」
「父上が下さったんだ……」
僕の毛布は母上の形見であり、父上の愛もこもっていた。
「そんな大事な毛布ならば、ずっと使わねばなりませんね」
「ロヴィーサ嬢は僕が毛布に執着するのを、子どもっぽいと思いませんか?」
「全然思いませんよ。慣れた寝具の方が寝やすいのは確かですし、その毛布には亡き先帝陛下のお妃様の愛が詰まっているのでしょう」
僕を産んで亡くなった母上は、どれほど無念だったか僕には想像もできないほどだ。僕だけでなく、母上にはヒルダ姉上もエリアス兄上もエルランド兄上もいた。幼い子どもを残して亡くなった母上は本当につらかっただろう。
その母上の毛布を使って、僕は命を繋ぎ止めていた。何度も栄養が足りなくて、普通の人間の食べるものが合わなくて熱を出して寝込み、生死の狭間を行きかったが、そのたびに毛布に包まれて僕は生還した。
今生きていられるのもこの毛布のおかげかもしれない。
「わたくしも、母が買ってくれたぬいぐるみを枕元に置いています。見ますか?」
「見たいです」
僕が言えば、ロヴィーサ嬢はぬいぐるみを持ってきてくれる。
大きな抱き枕になりそうなくらいのドラゴンのぬいぐるみ。羽があって角があって尻尾の長いスタンダードなドラゴンだ。
「これをロヴィーサ嬢のお母上が買ってくれたのですか?」
「そうです。わたくしが小さな頃に、乗れるくらいのぬいぐるみが欲しいと強請ったのです」
確かに小さな子どもならば乗れるくらいの大きさのぬいぐるみだった。
大きなぬいぐるみを抱き締めているロヴィーサ嬢はとても可愛い。
「エド殿下はわたくしを子どもっぽいと思いますか?」
「いいえ、そのぬいぐるみはロヴィーサ嬢のお母上との大事な思い出でしょう?」
ロヴィーサ嬢は僕の年でお母上を亡くしている。
生まれたときからいなければ、最初からないものだと諦めの付くものだが、十五歳まで一緒にいたお母上を亡くしたロヴィーサ嬢はどれほど悲しかっただろう。
思い出として枕元にドラゴンのぬいぐるみを置いて、抱き締めていないと眠れないとしてもおかしくなど全くない。
「わたくしとエド殿下は似ているのですね」
「ロヴィーサ嬢はぬいぐるみ、僕は毛布がないと眠れない。似ていますね」
笑い合って、僕はロヴィーサ嬢に秘密を打ち明けられたことに安堵していた。
「エド殿下の毛布、触れてもいいですか?」
「僕もロヴィーサ嬢のぬいぐるみ、抱いてみたいです」
ロヴィーサ嬢が壊れ物にでも触れるように僕の毛布を撫でる。
僕はロヴィーサ嬢の大きなドラゴンのぬいぐるみを抱き締めた。
ドラゴンのぬいぐるみはロヴィーサ嬢の匂いがする。
「確かに毛布には魔法がかかっているようですね。どの季節でも使えるとは便利ですね」
「僕はこれをマジックポーチに入れて、旅行先にも持って行っているのです」
白状するとロヴィーサ嬢は微笑んで答えてくれる。
「大事な毛布ですからね」
理解ある婚約者がいて僕は本当に幸せだった。
「我が国は魔族の国のことが分かっていないものがいるのです。それをすぐに諫めることができずにセシーリア嬢の心を傷付けてしまって申し訳ありません」
「いいえ、エルランド殿下、わたくしはこの程度では傷付きません。行き遅れの年増と言われ続けていますからね。気になさらなくてもいいのですよ」
余裕の表情のセシーリア嬢に、エルランド兄上が首を振る。
「そんなことに慣れなくていいのです。この国にいる間は私がセシーリア嬢を守ります。セシーリア嬢以外で私の愛するひとはいないのですから」
行き遅れとも、年増とも言われていたが、それに慣れている様子のセシーリア嬢に、エルランド兄上は慣れなくていいのだと伝えている。手を取られてそんな熱烈なことを言われて、セシーリア嬢は頬を染めていた。
「エルランド殿下がわたくしを選んでくださってよかったと思っています。お慕いしております、エルランド殿下」
「私も愛しています、セシーリア嬢」
そのまま二人がキスをしそうないい雰囲気だったので、僕もロヴィーサ嬢もエリアス兄上もユリウス義兄上も父上もダミアーン伯父上も、王家だけの私室からそっと出た。
廊下を歩いて応接室に移りながらダミアーン伯父上が誇らしげに語る。
「エルランドもいい男になったな。伯父として嬉しい」
「私も父親としてとても誇らしい」
「エンシオ殿、いい息子を持ったな。これで魔族の国の宰相家も安心だろう」
「そう思ってもらえると嬉しいな」
エルランド兄上とセシーリア嬢の結婚は、運命の相手というだけでなく、魔族の国と我が国の結びつきをより強固にするためのものでもある。エルランド兄上がセシーリア嬢の心を掴んで、魔族の国の宰相家を安心させているということは、両国にとってもめでたいことだった。
「それにしても、ロヴィーサ嬢は勇気のある振る舞いをしましたね」
「いえ、本来は黙っていて、エルランド殿下にお伝えして対応を待つべきでした。差し出がましいことを致しました」
「ご立派でしたよ」
「どうしても許せなかったのです。セシーリア嬢は魔族として、人間の国に嫁いでくるのは非常に心細いことでしょうに、この国のものがそれを歓迎しないようなことを結婚前から言って、子どものことまで話しに持ち出すなんて。子どもができない夫婦などどれだけでもいるのに」
エリアス兄上の前でロヴィーサ嬢がこれだけ強く語るのも初めてなのではないだろうか。それだけロヴィーサ嬢は王城で陰口を叩いていた連中が許せなかったようだ。
「エドは素晴らしい女性を婚約者にしたな」
「はい、ロヴィーサ嬢は僕の誇りです」
エリアス兄上に言われて僕が答えると、ロヴィーサ嬢は目を伏せて恥じらっていた。
ロヴィーサ嬢は勇敢で、モンスターも倒すが慎ましやかな淑女で、大人である。
僕はそんなロヴィーサ嬢に言えていないことが一つあった。
「爺や……あの毛布のことなんだけど……」
「あれだけでは寒くなってきましたか? 分厚い布団を出しますか?」
「まだ大丈夫。そうじゃなくて……」
僕は毛布を一枚持っている。
淡い緑色で、薄手の毛布で夏場も使える優れものだ。
ロヴィーサ嬢と初めて会ったときにも、僕はこの毛布に包まれていた。
僕が体調をすぐに崩して熱を出すので、爺やはこの毛布で小さな頃から僕をくるんでくれていた。毛布に包まれると僕は安心して眠りにつくことができる。
十五歳にもなって、毛布が手放せないなんて、あまりにも子どもっぽいと思うのだが、僕はこの毛布がないと眠れないのだ。
ロヴィーサ嬢はそんなことは知らない。
勇敢で格好いいロヴィーサ嬢にそんなことを打ち明けて、笑われないだろうか。子どもだと思われないだろうか。
でもいつかは打ち明けなければいけないことだった。
晩ご飯の後にロヴィーサ嬢が僕の部屋に勉強を教えに来てくれたときに、僕は思い切って秘密を打ち明けることにした。
「ロヴィーサ嬢、実は、僕はこの毛布がないと眠れないのです」
「わたくしは、母に買ってもらったぬいぐるみを枕元に置いて寝ていますよ」
「へ?」
「エド殿下も大事な毛布があるのですね」
あっさりと受け入れてくれるロヴィーサ嬢に、僕は必死に言い訳をする。
「小さな頃から使っていて、熱が出たときにもこの毛布に包まれると眠ることができたから」
言っていると、爺やがそっと言葉を添えてくれた。
「その毛布は、エドヴァルド殿下のお母上がこの国に嫁いでくるときに作られたもので、春夏秋冬問わず使える魔法のかかったものなのです。包むと体力を回復するので、エドヴァルド殿下に使っておりました」
僕は知らなかったが、なければ眠れない毛布は、母上の形見だった。
「これは母上の形見なの?」
「そうです。何度エドヴァルド殿下のお命を救ってくれたか分かりません」
包むと体力を回復する毛布のおかげで僕の命は繋がれていた。
そんな大事なことを爺やはこれまで僕に伝えてくれなかった。
「それで、これに包まるとよく眠れるのか」
「エドヴァルド殿下のために、先帝陛下がお母上の毛布を与えたのです」
「父上が下さったんだ……」
僕の毛布は母上の形見であり、父上の愛もこもっていた。
「そんな大事な毛布ならば、ずっと使わねばなりませんね」
「ロヴィーサ嬢は僕が毛布に執着するのを、子どもっぽいと思いませんか?」
「全然思いませんよ。慣れた寝具の方が寝やすいのは確かですし、その毛布には亡き先帝陛下のお妃様の愛が詰まっているのでしょう」
僕を産んで亡くなった母上は、どれほど無念だったか僕には想像もできないほどだ。僕だけでなく、母上にはヒルダ姉上もエリアス兄上もエルランド兄上もいた。幼い子どもを残して亡くなった母上は本当につらかっただろう。
その母上の毛布を使って、僕は命を繋ぎ止めていた。何度も栄養が足りなくて、普通の人間の食べるものが合わなくて熱を出して寝込み、生死の狭間を行きかったが、そのたびに毛布に包まれて僕は生還した。
今生きていられるのもこの毛布のおかげかもしれない。
「わたくしも、母が買ってくれたぬいぐるみを枕元に置いています。見ますか?」
「見たいです」
僕が言えば、ロヴィーサ嬢はぬいぐるみを持ってきてくれる。
大きな抱き枕になりそうなくらいのドラゴンのぬいぐるみ。羽があって角があって尻尾の長いスタンダードなドラゴンだ。
「これをロヴィーサ嬢のお母上が買ってくれたのですか?」
「そうです。わたくしが小さな頃に、乗れるくらいのぬいぐるみが欲しいと強請ったのです」
確かに小さな子どもならば乗れるくらいの大きさのぬいぐるみだった。
大きなぬいぐるみを抱き締めているロヴィーサ嬢はとても可愛い。
「エド殿下はわたくしを子どもっぽいと思いますか?」
「いいえ、そのぬいぐるみはロヴィーサ嬢のお母上との大事な思い出でしょう?」
ロヴィーサ嬢は僕の年でお母上を亡くしている。
生まれたときからいなければ、最初からないものだと諦めの付くものだが、十五歳まで一緒にいたお母上を亡くしたロヴィーサ嬢はどれほど悲しかっただろう。
思い出として枕元にドラゴンのぬいぐるみを置いて、抱き締めていないと眠れないとしてもおかしくなど全くない。
「わたくしとエド殿下は似ているのですね」
「ロヴィーサ嬢はぬいぐるみ、僕は毛布がないと眠れない。似ていますね」
笑い合って、僕はロヴィーサ嬢に秘密を打ち明けられたことに安堵していた。
「エド殿下の毛布、触れてもいいですか?」
「僕もロヴィーサ嬢のぬいぐるみ、抱いてみたいです」
ロヴィーサ嬢が壊れ物にでも触れるように僕の毛布を撫でる。
僕はロヴィーサ嬢の大きなドラゴンのぬいぐるみを抱き締めた。
ドラゴンのぬいぐるみはロヴィーサ嬢の匂いがする。
「確かに毛布には魔法がかかっているようですね。どの季節でも使えるとは便利ですね」
「僕はこれをマジックポーチに入れて、旅行先にも持って行っているのです」
白状するとロヴィーサ嬢は微笑んで答えてくれる。
「大事な毛布ですからね」
理解ある婚約者がいて僕は本当に幸せだった。
1
あなたにおすすめの小説
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。
前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。
外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。
もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。
そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは…
どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。
カクヨムでも同時連載してます。
よろしくお願いします。
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる