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最終章 王子と令嬢の結婚
8.エルランド兄上のお誕生日は若鶏の丸焼きで
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エルランド兄上のお誕生日に出す鶏の丸焼きに関して、ロヴィーサ嬢もセシーリア嬢もクラース殿から言い聞かされていた。
「丸焼きにするのは若鶏です。大人になり切った鶏だと硬くて筋張っていて、美味しさが半減します」
「若鶏ですね!」
「若鶏を捕まえに行きましょう!」
ロヴィーサ嬢とセシーリア嬢の料理は食材の捕獲から始まる。魔窟に行くとオリーヴィアさんとお魚四号さんがロヴィーサ嬢とセシーリア嬢と僕を待っていてくれた。
『卵が育ってきているのです』
『見て行ってくれますか?』
オリーヴィアさんとお魚四号さんの示す先には、水槽があって、その中に三つの卵が沈められていた。卵は以前はグレープフルーツくらいだったのに、今は子どもの頭くらいの大きさになっている。
水槽の前ではお魚五号ちゃんとソイラちゃんが、ぺちぺちと水槽のガラスを叩いていた。
『にーたよ? いこいこ』
『ねーたよ。あかたん、まぁだ?』
お魚五号ちゃんとソイラちゃんは弟妹が生まれてくるのが待ちきれないようだ。
水槽を覗いていると、お魚四号さんとオリーヴィアさんが説明してくれる。
『胎児の形から性別が分かるようになってきました。この魚の形の胎児が入っている卵が男の子で、人間の形の胎児が入っている卵が女の子です』
『今回は男の子が一人に、女の子が二人のようです』
順調に大きくなっている卵の様子に僕も安心する。
前回のお産では、お魚四号さんとオリーヴィアさんの卵は一個、生まれる前に死んでしまった。そういうこともあるのだろうが、とても悲しい出来事だった。
三個の卵が全て健康に生まれて来ることを祈らずにはいられない。
「可愛い赤ちゃんが生まれることを祈っています」
「全員健康で生まれてきますように」
「見守るしかできないのはもどかしいかもしれませんが、赤ちゃんが無事に生まれて来ることを祈っています」
ロヴィーサ嬢も僕もセシーリア嬢も、お魚四号さんとオリーヴィアさんに励ましの声をかけたのだった。
『本日は若鶏を数匹狩るということですが、何匹か決まってはいないのですか?』
「鶏の大きさを見てから決めようと思います」
『分かりました。狩り終わったら、何匹狩ったのか教えてください。記録します』
お魚五号ちゃんとソイラちゃんと、生まれて来る卵の中の赤ちゃんの父親であっても、お魚四号さんはこの魔窟の管理人の仕事をきっちりとしてくれる。
お魚四号さんが働いてくれているからこの魔窟の安全は守られているのだった。
鶏のいる層に降りていくロヴィーサ嬢とセシーリア嬢と僕。僕がランプを持って、ロヴィーサ嬢とセシーリア嬢はすぐにでも戦えるように身構えている。
鶏のいる層に入ると、雄の鶏が鋭い嘴で、襲ってくる。
「これは若鶏ではありませんね」
「眠らせましょう」
冷静に嘴を氷の盾で防いだセシーリア嬢の横から、ロヴィーサ嬢がオレンジ色に光る金柑くらいの大きさの魔法の睡眠玉を投げる。睡眠玉は雄鶏の顔に当たって、雄鶏はその場に倒れて寝てしまった。
「群れを守るために雄のボスが出てきたのでしょうね」
「残りは若い鶏と雌でしょう」
「若鶏を狩って行きましょう」
打ち合わせをして、ロヴィーサ嬢とセシーリア嬢が走り出す。まだ成鳥になり切っていない若鶏を狙って、ロヴィーサ嬢とセシーリア嬢は勝って行く。
若鶏とは言え、モンスターなのでかなりの大きさがある。
必死に若鶏を守ろうとする雌はロヴィーサ嬢に投げられて昏倒して、若鶏だけが的確に狩られていく。
大型犬くらいの大きさの若鶏は三羽仕留められた。
血抜きをして、羽を毟って、そのままの姿でマジックポーチに納められる。
「これくらいでよさそうですね」
「十分だと思います」
狩りを終えたロヴィーサ嬢とセシーリア嬢と合流して、入口で待っていた僕も一緒にお魚四号さんとオリーヴィアさんのところに戻った。
「若鶏は三匹いただきました。雄鶏は眠っていますが、睡眠玉が切れたら起きると思います」
『三匹ですね。記録しておきます』
「今後とも魔窟をよろしくお願いします」
『心得ました』
お魚四号さんと言葉を交わして、ロヴィーサ嬢はセシーリア嬢と僕と一緒にミエト家に帰って行った。
エルランド兄上のお誕生日はエリアス兄上のお誕生日のすぐ後である。
王城の厨房でセシーリア嬢は一生懸命内臓を抜いて処理をした若鶏のお腹に、ハーブやスパイスやお米を詰めて焼いていた。
王城の大きなオーブンでも一度に焼けるのは一羽だけ。
早朝から王城にやってきて、セシーリア嬢はロヴィーサ嬢と僕と一緒に、オーブンの熱のこもった厨房で汗をかきながら若鶏の丸焼きを作っていた。
「味見をしたいのですが、折角の丸焼きを崩してしまいます」
「味見用に一羽確保しておけばよかったですね」
「味見のためだけに一羽は多すぎる気もしますが」
味見をしたいセシーリア嬢と、味見のために一羽確保するというスケールの大きいロヴィーサ嬢の会話で、セシーリア嬢はくすくすと笑っていた。
出来上がった若鶏の丸焼きは大広間に運ばれて、セシーリア嬢とロヴィーサ嬢と僕は順番にシャワーを浴びて着替えて、大広間に入った。
大広間は若鶏の丸焼きの香ばしい匂いが広がっている。
「セシーリア嬢、私の隣りに来てくれますか?」
「はい、エルランド殿下」
エリアス兄上に呼ばれたエルランド兄上が、セシーリア嬢を伴って壇上に上がっていく。
「本日は弟、エルランドの誕生日に来てくれて本当に感謝する。エルランドも今年で研究課程を卒業する。卒業した暁には、魔族の国の宰相家の令嬢、セシーリア嬢との結婚が決まっている」
「皆様、今日は私の誕生日のためにお集まりくださり本当にありがとうございます。私は研究課程を卒業して、弟のエドヴァルドの誕生日が来たら、エドヴァルドと合同で結婚式を行おうと思っています。私の最愛の婚約者、セシーリア嬢が今日は皆様のために若鶏の丸焼きを準備しております」
「皆様に少しでも楽しんでいただけるよう、若鶏の丸焼きを用意させていただきました。エルランド殿下のお誕生日を共にお祝いいたしましょう」
エリアス兄上、エルランド兄上、セシーリア嬢の挨拶に拍手が巻き起こるが、貴族たちの視線は大広間の中央に据えてあるテーブルの上の若鶏の丸焼きに向いている。
これだけいい香りがするのだから、食べたくもなるだろう。
壇上から降りたセシーリア嬢がエプロンをつけて若鶏の丸焼きを切り分ける。
中に入れるお米については、クラース殿から提案があった。
「もち米にしてしまうのはどうでしょう?」
「もち米! それは絶対に美味しい!」
「脂を吸ってますます美味しくなると思います」
もち米と若鶏の肉をもらった僕は早速食べてみる。もち米は若鶏の旨味を吸ってものすごく美味しくて、鶏肉とパリパリの皮によく合う。もちもちとした食感がまたたまらない。
エルランド兄上も若鶏の肉ともち米をもらっていた。
「とても美味しいです、セシーリア嬢。こんな料理を作れるセシーリア嬢と結婚できる私は幸せです」
「エルランド殿下に喜んでいただけて嬉しいですわ」
「若鶏の狩りからやってくださったんでしょう? さすが魔族ですね」
「ロヴィーサ様に助けていただいてやったことです」
謙遜しているが、セシーリア嬢はエルランド兄上に褒められてとても嬉しそうだった。
壇上ではマンドラゴラのダンスが始まっている。
バレエの衣装を着て、人参マンドラゴラたちが『白鳥の湖』を踊っている。
「アルマス、どれが王子役?」
「見て分からないのか? あの気品あふれる姿!」
「うーん、ちょっと分からないなぁ」
若鶏の丸焼きを食べながら、ヘンリッキとアルマスが話している。
アルマスへの愛があってもヘンリッキは人参マンドラゴラを見分けることはできないようだ。
「ヘンリッキ、やっぱり分からないよね」
「分かりませんね」
ヘンリッキに聞いてみて僕はそうだろうと頷く。
「衣装で分かる気はしますが……」
「ロヴィーサ嬢は分かるのですか?」
「衣装が微妙に違いますよ」
ロヴィーサ嬢に言われて壇上を見てみると、確かに微妙に衣装が違っている気がする。しかし、人参マンドラゴラ自体が小さいので、衣装の面積が狭くて分かりづらい。
「アルマス、王子と白鳥役は、はっきり分かる衣装にした方がいいよ」
僕の忠告に、アルマスは納得していない顔をしていた。
「丸焼きにするのは若鶏です。大人になり切った鶏だと硬くて筋張っていて、美味しさが半減します」
「若鶏ですね!」
「若鶏を捕まえに行きましょう!」
ロヴィーサ嬢とセシーリア嬢の料理は食材の捕獲から始まる。魔窟に行くとオリーヴィアさんとお魚四号さんがロヴィーサ嬢とセシーリア嬢と僕を待っていてくれた。
『卵が育ってきているのです』
『見て行ってくれますか?』
オリーヴィアさんとお魚四号さんの示す先には、水槽があって、その中に三つの卵が沈められていた。卵は以前はグレープフルーツくらいだったのに、今は子どもの頭くらいの大きさになっている。
水槽の前ではお魚五号ちゃんとソイラちゃんが、ぺちぺちと水槽のガラスを叩いていた。
『にーたよ? いこいこ』
『ねーたよ。あかたん、まぁだ?』
お魚五号ちゃんとソイラちゃんは弟妹が生まれてくるのが待ちきれないようだ。
水槽を覗いていると、お魚四号さんとオリーヴィアさんが説明してくれる。
『胎児の形から性別が分かるようになってきました。この魚の形の胎児が入っている卵が男の子で、人間の形の胎児が入っている卵が女の子です』
『今回は男の子が一人に、女の子が二人のようです』
順調に大きくなっている卵の様子に僕も安心する。
前回のお産では、お魚四号さんとオリーヴィアさんの卵は一個、生まれる前に死んでしまった。そういうこともあるのだろうが、とても悲しい出来事だった。
三個の卵が全て健康に生まれて来ることを祈らずにはいられない。
「可愛い赤ちゃんが生まれることを祈っています」
「全員健康で生まれてきますように」
「見守るしかできないのはもどかしいかもしれませんが、赤ちゃんが無事に生まれて来ることを祈っています」
ロヴィーサ嬢も僕もセシーリア嬢も、お魚四号さんとオリーヴィアさんに励ましの声をかけたのだった。
『本日は若鶏を数匹狩るということですが、何匹か決まってはいないのですか?』
「鶏の大きさを見てから決めようと思います」
『分かりました。狩り終わったら、何匹狩ったのか教えてください。記録します』
お魚五号ちゃんとソイラちゃんと、生まれて来る卵の中の赤ちゃんの父親であっても、お魚四号さんはこの魔窟の管理人の仕事をきっちりとしてくれる。
お魚四号さんが働いてくれているからこの魔窟の安全は守られているのだった。
鶏のいる層に降りていくロヴィーサ嬢とセシーリア嬢と僕。僕がランプを持って、ロヴィーサ嬢とセシーリア嬢はすぐにでも戦えるように身構えている。
鶏のいる層に入ると、雄の鶏が鋭い嘴で、襲ってくる。
「これは若鶏ではありませんね」
「眠らせましょう」
冷静に嘴を氷の盾で防いだセシーリア嬢の横から、ロヴィーサ嬢がオレンジ色に光る金柑くらいの大きさの魔法の睡眠玉を投げる。睡眠玉は雄鶏の顔に当たって、雄鶏はその場に倒れて寝てしまった。
「群れを守るために雄のボスが出てきたのでしょうね」
「残りは若い鶏と雌でしょう」
「若鶏を狩って行きましょう」
打ち合わせをして、ロヴィーサ嬢とセシーリア嬢が走り出す。まだ成鳥になり切っていない若鶏を狙って、ロヴィーサ嬢とセシーリア嬢は勝って行く。
若鶏とは言え、モンスターなのでかなりの大きさがある。
必死に若鶏を守ろうとする雌はロヴィーサ嬢に投げられて昏倒して、若鶏だけが的確に狩られていく。
大型犬くらいの大きさの若鶏は三羽仕留められた。
血抜きをして、羽を毟って、そのままの姿でマジックポーチに納められる。
「これくらいでよさそうですね」
「十分だと思います」
狩りを終えたロヴィーサ嬢とセシーリア嬢と合流して、入口で待っていた僕も一緒にお魚四号さんとオリーヴィアさんのところに戻った。
「若鶏は三匹いただきました。雄鶏は眠っていますが、睡眠玉が切れたら起きると思います」
『三匹ですね。記録しておきます』
「今後とも魔窟をよろしくお願いします」
『心得ました』
お魚四号さんと言葉を交わして、ロヴィーサ嬢はセシーリア嬢と僕と一緒にミエト家に帰って行った。
エルランド兄上のお誕生日はエリアス兄上のお誕生日のすぐ後である。
王城の厨房でセシーリア嬢は一生懸命内臓を抜いて処理をした若鶏のお腹に、ハーブやスパイスやお米を詰めて焼いていた。
王城の大きなオーブンでも一度に焼けるのは一羽だけ。
早朝から王城にやってきて、セシーリア嬢はロヴィーサ嬢と僕と一緒に、オーブンの熱のこもった厨房で汗をかきながら若鶏の丸焼きを作っていた。
「味見をしたいのですが、折角の丸焼きを崩してしまいます」
「味見用に一羽確保しておけばよかったですね」
「味見のためだけに一羽は多すぎる気もしますが」
味見をしたいセシーリア嬢と、味見のために一羽確保するというスケールの大きいロヴィーサ嬢の会話で、セシーリア嬢はくすくすと笑っていた。
出来上がった若鶏の丸焼きは大広間に運ばれて、セシーリア嬢とロヴィーサ嬢と僕は順番にシャワーを浴びて着替えて、大広間に入った。
大広間は若鶏の丸焼きの香ばしい匂いが広がっている。
「セシーリア嬢、私の隣りに来てくれますか?」
「はい、エルランド殿下」
エリアス兄上に呼ばれたエルランド兄上が、セシーリア嬢を伴って壇上に上がっていく。
「本日は弟、エルランドの誕生日に来てくれて本当に感謝する。エルランドも今年で研究課程を卒業する。卒業した暁には、魔族の国の宰相家の令嬢、セシーリア嬢との結婚が決まっている」
「皆様、今日は私の誕生日のためにお集まりくださり本当にありがとうございます。私は研究課程を卒業して、弟のエドヴァルドの誕生日が来たら、エドヴァルドと合同で結婚式を行おうと思っています。私の最愛の婚約者、セシーリア嬢が今日は皆様のために若鶏の丸焼きを準備しております」
「皆様に少しでも楽しんでいただけるよう、若鶏の丸焼きを用意させていただきました。エルランド殿下のお誕生日を共にお祝いいたしましょう」
エリアス兄上、エルランド兄上、セシーリア嬢の挨拶に拍手が巻き起こるが、貴族たちの視線は大広間の中央に据えてあるテーブルの上の若鶏の丸焼きに向いている。
これだけいい香りがするのだから、食べたくもなるだろう。
壇上から降りたセシーリア嬢がエプロンをつけて若鶏の丸焼きを切り分ける。
中に入れるお米については、クラース殿から提案があった。
「もち米にしてしまうのはどうでしょう?」
「もち米! それは絶対に美味しい!」
「脂を吸ってますます美味しくなると思います」
もち米と若鶏の肉をもらった僕は早速食べてみる。もち米は若鶏の旨味を吸ってものすごく美味しくて、鶏肉とパリパリの皮によく合う。もちもちとした食感がまたたまらない。
エルランド兄上も若鶏の肉ともち米をもらっていた。
「とても美味しいです、セシーリア嬢。こんな料理を作れるセシーリア嬢と結婚できる私は幸せです」
「エルランド殿下に喜んでいただけて嬉しいですわ」
「若鶏の狩りからやってくださったんでしょう? さすが魔族ですね」
「ロヴィーサ様に助けていただいてやったことです」
謙遜しているが、セシーリア嬢はエルランド兄上に褒められてとても嬉しそうだった。
壇上ではマンドラゴラのダンスが始まっている。
バレエの衣装を着て、人参マンドラゴラたちが『白鳥の湖』を踊っている。
「アルマス、どれが王子役?」
「見て分からないのか? あの気品あふれる姿!」
「うーん、ちょっと分からないなぁ」
若鶏の丸焼きを食べながら、ヘンリッキとアルマスが話している。
アルマスへの愛があってもヘンリッキは人参マンドラゴラを見分けることはできないようだ。
「ヘンリッキ、やっぱり分からないよね」
「分かりませんね」
ヘンリッキに聞いてみて僕はそうだろうと頷く。
「衣装で分かる気はしますが……」
「ロヴィーサ嬢は分かるのですか?」
「衣装が微妙に違いますよ」
ロヴィーサ嬢に言われて壇上を見てみると、確かに微妙に衣装が違っている気がする。しかし、人参マンドラゴラ自体が小さいので、衣装の面積が狭くて分かりづらい。
「アルマス、王子と白鳥役は、はっきり分かる衣装にした方がいいよ」
僕の忠告に、アルマスは納得していない顔をしていた。
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