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番外編 (響と薫の両親編)
アラビアの女王 3
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産む性である女性と、男性のオメガには、貞淑と道徳的な行いが求められる。結婚をする前に性行為をするなどあり得なかったし、家族にしか肌を見せることは許されないので、結婚してからしかベールも服も脱げなければ、ヒジャブを取って髪や顔を露わにすることもできない。
男性のオメガなので顔までは隠すことは拒んでいたし、結婚も諦めていた父もそこまでは求めなかった。
「異教徒であろうとも、私と結婚するということは、私の家と嫌でも繋がりを持つということです。よろしいのですか?」
フェロモンで骨抜きにして、もう逃がさないようにすることは、ヘサームにとっては簡単なことである。それをする前に、問いかけてみるのは、ジュールが自由な異国からやってきたのに、わざわざ年が12も上のヘサームを手に入れるために、面倒な見合いまで申し込んで、父が納得するように筋を通したことに対するご褒美のような感覚だった。
「その姿のあなたに惹かれたから、そのままのあなたが欲しいと思ったんだ」
「この姿の……? あなたには、私がムスリムの女性のように見えているということですか?」
ヒジャブで髪を隠すのも、肌が一切見えない服を纏うのも、ムスリムの戒律に従ったものだった。それを嫌だと拒みながらも、ヘサームは顔を隠さないことくらいしか抵抗できないのはなぜか、自分でも分からない。
「あなたがその恰好をしているのは、自分の信じる神を敬っているからでしょう? その姿を、僕は美しいと思う」
31年間生きてきて、男性であるという自分を認めて欲しいという気持ちと、オメガであるという事実。相反するその二つに答えをもらった気がして、ヘサームは褐色の手で、白いジュールの頬を撫でた。
結婚はしないと宣言していたから、発情期を自在に操れるヘサームにしてみれば、それが来ない方が都合が良くて、一度も発情期を経験していない。
「もうすぐ、発情期が来ます。そのときに、あなたの番にしていただけますか?」
『上位オメガ』と名称を付けて、研究している自分の体質については、ジュールには教える必要はない。普通のオメガでないと気付いて逃げられる前に、捕まえてしまわなければいけない。
「僕で、いいの?」
「あなたこそ、私でよろしいのですか? 私はこの通り、男性で、あなたより体格が良くて、抑制剤でずっと抑えていたので発情期も激しいかもしれませんよ」
抑制剤は使う必要もなかったし、使ったこともないが、ジュールには使っていたということにする。父も兄も、ヘサームが傲慢な性格だとは思っているが、『上位オメガ』などという概念を知らないので、当然抑制剤で発情期を制御しているものと思われている。それだけの経済力と、医師として抑制剤を自分で処方できる能力が、ヘサームにはあったので、その嘘がばれることはないのだ。
「正直に言えば、僕は、あなたがアルファで、お見合いを申し込んだら殺されるとしても、きっとお父さんにお願いしに行ったよ。あなたが僕を抱きたいと言ったら、それも受け入れていい。僕が欲しいのは、ヘサーム・ビン・ジアーという人間なんだ」
「僕の美の女神」と囁きながら、指の細い繊細な手がヘサームの武骨な手に重なる。
アルファでも構わない。
それは、ヘサームにとっては一番響く愛の言葉だった。
アルファすら傅かせる『上位オメガ』のヘサームの激しい性格を、ジュールは感じ取ってくれている。
「あなたが見かけたとき、私はなにをしていましたか?」
「発情期で倒れた男性のオメガを肩に担いで、市場から病院まで走ってた」
この国では貧富の差が激しく、抑制剤を買えないものや、病院に行けないものもたくさんいる。結婚が決まって抑制剤を止めて発情期を待っていたら、時期外れに発情期が来るものも、少なくはない。そんな場合に、未婚のオメガがフェロモンでアルファを引き寄せて、襲われでもすれば、その後の結婚が望めなくなったり、婚約が破談になったりする。
「この国ではオメガは生きにくいですから」
助けなければいけないと、とっさに担いで、自分の勤めているクリニックまで連れ帰っていた。あれも、ヘサームの立派な体格があったからできたことだ。
そんな男らしい場面を見て、ジュールはヘサームに惚れ込んでくれた。
「ヒジャブが乱れて、艶やかな黒髪が、ほんの少し、見えてた。それなのに、あなたはそんなことも気にせずに、必死にそのひとを助けようとした」
発情期に入った男性のオメガのフェロモンのむせ返るような甘さよりも、ヘサームの雄姿にジュールは電撃に打たれたかのように恋に落ちたのだという。
「ヒジャブもきっと、こうやって……ほら、結んで留めたら、ずれないし、あなたにもっと似合う。こういうデザインも、僕、できるんだよ」
飾るようにくるくると髪に巻き付けて、長めのヒジャブを飾り結びにして、琥珀の花の付いたブローチで留めたジュールに、ヘサームはブローチの留まっているあたりに手をやった。鏡で見せてもらうと、美しく髪を隠しながらもヒジャブが大きな飾りのある帽子のようにまとめられていた。
「このブローチもあなたのデザインですか?」
「結婚式に間に合わせようと思って、大急ぎで作ってもらったんだ。あなたの目の色だ」
「ヘサームと」
「え?」
「ただ、ヘサームと呼んでください。『ビン・ジアー』は、『ジアーの息子』という意味で、ヘサームが私の名前です」
家族以外に呼ぶことを許していない名前を呼ばせるという意味を、ジュールもすぐに分かったのだろう。
「ヘサーム、僕のことは純かジュールって呼んで。純は日本の祖父が付けてくれた名前で、ジュールがフランスの母が付けてくれた名前なんだ」
「純、とは、どういう意味ですか?」
「純粋とか、そういう意味かな。ヘサームは?」
「鋭い剣、という意味です。オメガには勇ましすぎる名前だと、父は後悔していましたが」
苦々しい父の顔を思い出して笑えば、ジュールは青い目を輝かせる。
「勇ましくて、かっこいい名前だ。すごく似合ってる」
鋭い剣は、父にとっては誰かを傷付けかねない恐ろしい凶器の認識だったのだろうが、ジュールにかかれば、彼を守るための武器になる。
30も越したいい年なので、結婚式は父が何と言おうと地味にするつもりだが、それよりもその先を想像せずにはいられない。
初めての発情期と、ジュールとの初めての夜。
「純は、二人きりのときに呼ばせていただきますね。ジュール、あなた、経験はおありで?」
はしたないなどという言葉は、ヘサームにはない。興味のままに問いかければ、白い頬を薔薇色に染めて、ジュールがふるふると頭を振る。
「運命が現れるまで、そんなことはしなくていいって思ってたから。僕の美の女神に出会うまでは」
とても19歳という年には見えない少年のようなジュールは、生涯、ヘサーム以外の相手を知ることはない。そう想像しただけで、じくじくと胎が疼くのは、ヘサームもオメガだからなのだろう。
それが、ジュール相手ならば嫌どころか、楽しみですらあった。
結婚式はジュールがヘサームの父の顔を立てて、ムスリム方式で行われた。異教徒であるジュールとの結婚を引き受けてくれるモスクがなかったので、父方の祖父が見届け人となって、アラビア語の説教を唱えた。
ムスリムでないということに兄や祖父は抵抗を示したが、結婚を拒否し続けていたヘサームが結婚できる最初で最後のチャンスを逃すわけにはいかないと父は必死だったし、最終的な決め手となったのは、ジュールの国籍だった。
フランスと日本の二重国籍を持つジュールは、母はフランス人でキリスト教徒で教会に通ったこともあるが、正式に洗礼を受けたわけではないというのだ。いわゆる、宗教の自由が許された日本の『無宗教』であったわけで、形だけだがムスリムに改宗することに全く抵抗がなかった。
「分からないことは教えてね、ヘサーム」
「えぇ、あなたの妻として、あなたを導きましょう」
デザインの勉強をこの国でするために留学してきているジュールにしてみれば、ムスリムの教義を知って溶け込めば勉強も仕事もしやすい。
結婚の誓約書にサインをするのが、自分ではなく父とジュールであることには、やはり何とも言えない反発があった。
「あなたも、私に新しい世界を教えてくださいますか?」
自由の国から来たジュール。
自由には数多の責任が伴うのであろうが、この生活に窮屈さしか感じていないヘサームにとっては、それは憧れだった。
「僕が捧げられるものなら、全て捧げる」
目の前にいるのが美の女神などという美しく神格化されたものではなく、『上位オメガ』という恐ろしい生き物であるとジュールは知らない。知らないままに、全て彼を飲み込んでしまおうと、ヘサームは心に決めた。
新婚の夜が来る。
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「異教徒であろうとも、私と結婚するということは、私の家と嫌でも繋がりを持つということです。よろしいのですか?」
フェロモンで骨抜きにして、もう逃がさないようにすることは、ヘサームにとっては簡単なことである。それをする前に、問いかけてみるのは、ジュールが自由な異国からやってきたのに、わざわざ年が12も上のヘサームを手に入れるために、面倒な見合いまで申し込んで、父が納得するように筋を通したことに対するご褒美のような感覚だった。
「その姿のあなたに惹かれたから、そのままのあなたが欲しいと思ったんだ」
「この姿の……? あなたには、私がムスリムの女性のように見えているということですか?」
ヒジャブで髪を隠すのも、肌が一切見えない服を纏うのも、ムスリムの戒律に従ったものだった。それを嫌だと拒みながらも、ヘサームは顔を隠さないことくらいしか抵抗できないのはなぜか、自分でも分からない。
「あなたがその恰好をしているのは、自分の信じる神を敬っているからでしょう? その姿を、僕は美しいと思う」
31年間生きてきて、男性であるという自分を認めて欲しいという気持ちと、オメガであるという事実。相反するその二つに答えをもらった気がして、ヘサームは褐色の手で、白いジュールの頬を撫でた。
結婚はしないと宣言していたから、発情期を自在に操れるヘサームにしてみれば、それが来ない方が都合が良くて、一度も発情期を経験していない。
「もうすぐ、発情期が来ます。そのときに、あなたの番にしていただけますか?」
『上位オメガ』と名称を付けて、研究している自分の体質については、ジュールには教える必要はない。普通のオメガでないと気付いて逃げられる前に、捕まえてしまわなければいけない。
「僕で、いいの?」
「あなたこそ、私でよろしいのですか? 私はこの通り、男性で、あなたより体格が良くて、抑制剤でずっと抑えていたので発情期も激しいかもしれませんよ」
抑制剤は使う必要もなかったし、使ったこともないが、ジュールには使っていたということにする。父も兄も、ヘサームが傲慢な性格だとは思っているが、『上位オメガ』などという概念を知らないので、当然抑制剤で発情期を制御しているものと思われている。それだけの経済力と、医師として抑制剤を自分で処方できる能力が、ヘサームにはあったので、その嘘がばれることはないのだ。
「正直に言えば、僕は、あなたがアルファで、お見合いを申し込んだら殺されるとしても、きっとお父さんにお願いしに行ったよ。あなたが僕を抱きたいと言ったら、それも受け入れていい。僕が欲しいのは、ヘサーム・ビン・ジアーという人間なんだ」
「僕の美の女神」と囁きながら、指の細い繊細な手がヘサームの武骨な手に重なる。
アルファでも構わない。
それは、ヘサームにとっては一番響く愛の言葉だった。
アルファすら傅かせる『上位オメガ』のヘサームの激しい性格を、ジュールは感じ取ってくれている。
「あなたが見かけたとき、私はなにをしていましたか?」
「発情期で倒れた男性のオメガを肩に担いで、市場から病院まで走ってた」
この国では貧富の差が激しく、抑制剤を買えないものや、病院に行けないものもたくさんいる。結婚が決まって抑制剤を止めて発情期を待っていたら、時期外れに発情期が来るものも、少なくはない。そんな場合に、未婚のオメガがフェロモンでアルファを引き寄せて、襲われでもすれば、その後の結婚が望めなくなったり、婚約が破談になったりする。
「この国ではオメガは生きにくいですから」
助けなければいけないと、とっさに担いで、自分の勤めているクリニックまで連れ帰っていた。あれも、ヘサームの立派な体格があったからできたことだ。
そんな男らしい場面を見て、ジュールはヘサームに惚れ込んでくれた。
「ヒジャブが乱れて、艶やかな黒髪が、ほんの少し、見えてた。それなのに、あなたはそんなことも気にせずに、必死にそのひとを助けようとした」
発情期に入った男性のオメガのフェロモンのむせ返るような甘さよりも、ヘサームの雄姿にジュールは電撃に打たれたかのように恋に落ちたのだという。
「ヒジャブもきっと、こうやって……ほら、結んで留めたら、ずれないし、あなたにもっと似合う。こういうデザインも、僕、できるんだよ」
飾るようにくるくると髪に巻き付けて、長めのヒジャブを飾り結びにして、琥珀の花の付いたブローチで留めたジュールに、ヘサームはブローチの留まっているあたりに手をやった。鏡で見せてもらうと、美しく髪を隠しながらもヒジャブが大きな飾りのある帽子のようにまとめられていた。
「このブローチもあなたのデザインですか?」
「結婚式に間に合わせようと思って、大急ぎで作ってもらったんだ。あなたの目の色だ」
「ヘサームと」
「え?」
「ただ、ヘサームと呼んでください。『ビン・ジアー』は、『ジアーの息子』という意味で、ヘサームが私の名前です」
家族以外に呼ぶことを許していない名前を呼ばせるという意味を、ジュールもすぐに分かったのだろう。
「ヘサーム、僕のことは純かジュールって呼んで。純は日本の祖父が付けてくれた名前で、ジュールがフランスの母が付けてくれた名前なんだ」
「純、とは、どういう意味ですか?」
「純粋とか、そういう意味かな。ヘサームは?」
「鋭い剣、という意味です。オメガには勇ましすぎる名前だと、父は後悔していましたが」
苦々しい父の顔を思い出して笑えば、ジュールは青い目を輝かせる。
「勇ましくて、かっこいい名前だ。すごく似合ってる」
鋭い剣は、父にとっては誰かを傷付けかねない恐ろしい凶器の認識だったのだろうが、ジュールにかかれば、彼を守るための武器になる。
30も越したいい年なので、結婚式は父が何と言おうと地味にするつもりだが、それよりもその先を想像せずにはいられない。
初めての発情期と、ジュールとの初めての夜。
「純は、二人きりのときに呼ばせていただきますね。ジュール、あなた、経験はおありで?」
はしたないなどという言葉は、ヘサームにはない。興味のままに問いかければ、白い頬を薔薇色に染めて、ジュールがふるふると頭を振る。
「運命が現れるまで、そんなことはしなくていいって思ってたから。僕の美の女神に出会うまでは」
とても19歳という年には見えない少年のようなジュールは、生涯、ヘサーム以外の相手を知ることはない。そう想像しただけで、じくじくと胎が疼くのは、ヘサームもオメガだからなのだろう。
それが、ジュール相手ならば嫌どころか、楽しみですらあった。
結婚式はジュールがヘサームの父の顔を立てて、ムスリム方式で行われた。異教徒であるジュールとの結婚を引き受けてくれるモスクがなかったので、父方の祖父が見届け人となって、アラビア語の説教を唱えた。
ムスリムでないということに兄や祖父は抵抗を示したが、結婚を拒否し続けていたヘサームが結婚できる最初で最後のチャンスを逃すわけにはいかないと父は必死だったし、最終的な決め手となったのは、ジュールの国籍だった。
フランスと日本の二重国籍を持つジュールは、母はフランス人でキリスト教徒で教会に通ったこともあるが、正式に洗礼を受けたわけではないというのだ。いわゆる、宗教の自由が許された日本の『無宗教』であったわけで、形だけだがムスリムに改宗することに全く抵抗がなかった。
「分からないことは教えてね、ヘサーム」
「えぇ、あなたの妻として、あなたを導きましょう」
デザインの勉強をこの国でするために留学してきているジュールにしてみれば、ムスリムの教義を知って溶け込めば勉強も仕事もしやすい。
結婚の誓約書にサインをするのが、自分ではなく父とジュールであることには、やはり何とも言えない反発があった。
「あなたも、私に新しい世界を教えてくださいますか?」
自由の国から来たジュール。
自由には数多の責任が伴うのであろうが、この生活に窮屈さしか感じていないヘサームにとっては、それは憧れだった。
「僕が捧げられるものなら、全て捧げる」
目の前にいるのが美の女神などという美しく神格化されたものではなく、『上位オメガ』という恐ろしい生き物であるとジュールは知らない。知らないままに、全て彼を飲み込んでしまおうと、ヘサームは心に決めた。
新婚の夜が来る。
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