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九章 クリスタちゃんの婚約と学園入学
18.失敗だらけのレーニちゃんのお誕生日
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レーニちゃんのお誕生日会には一度ディッペル家に戻ってから出かけた。
ディッペル家の方が王都よりもリリエンタール領に近いし、お茶会のときには学園を休んでいいことになっているので、ふーちゃんやまーちゃんにも会いたかったのだ。
わたくしとクリスタちゃんがディッペル家に帰ってくると、ふーちゃんとまーちゃんが飛び付いてくる。
「わたし、リップマンせんせいに、『おねえさまたちはどこ?』っていっかいもきかなかったよ!」
「わたくし、おねえさまをさがして、にわをあるきまわらなかったわ!」
誇らしげに報告してくるふーちゃんとまーちゃんの後ろで、ヘルマンさんとレギーナが嬉しそうに微笑んでいる。
「庭を探し回られると、フランツ様とマリア様を探すのが大変でした。それがなくなって楽になりました」
「リップマン先生も、毎日授業のたびに聞かれていたのでお困りだったのが、助かったことでしょう」
ふーちゃんとまーちゃんの成長を感じつつも、わたくしはディッペル家にいるときにはたっぷりとふーちゃんとまーちゃんを可愛がるつもりだった。
絵本を読んであげて、一緒にお散歩に行って、お茶の時間も一緒に過ごして、ふーちゃんとまーちゃんが眠るまでクリスタちゃんは歌を歌ってあげていた。
翌日は馬車と列車でリリエンタール領まで出かけた。
ふーちゃんは行きたそうにしていたが、来年からは行けると分かっているので、必死に我慢してわたくしとクリスタちゃんが馬車に乗り込むのをまーちゃんと一緒に手を振って見送ってくれた。
リリエンタール領ではレーニちゃんがわたくしとクリスタちゃんを待っていてくれた。
「エリザベート様、クリスタ様、お越しいただきありがとうございます」
「フランツも来たがっていましたが、来年は行けると分かっているのでいい子でお留守番しています」
「本日はお招きいただきありがとうございます」
「フランツ様にわたくしもお会いしたかったですわ」
ふーちゃんのことを可愛がってくれているレーニちゃんはふーちゃんに会いたいと言ってくれていた。お屋敷に戻ったらお礼状を書くのだが、そのときにふーちゃんにも何か書いてもらおうとわたくしは思っていた。
エクムント様もリリエンタール家のお屋敷に来ていた。
背の高いエクムント様は肌の色もあってとても目立つ。中央の方ではあまりエクムント様のような濃い肌の色のひとはいないのだ。見上げるような長身に纏う軍服と、緩やかに波打つ黒髪に優しくも力強い金色の目。あまり格好いいのでわたくしは胸がどきどきしてしまう。
「エリザベート嬢がレーニ嬢に私を招待してくださるように言ってくださったのですね」
「辺境伯家は中央の貴族との結びつきも大事かと思いましたので」
「ありがとうございます。リリエンタール家は鉄道事業に力を入れている土地。列車がなければ辺境伯領へも気軽には来られません。リリエンタール家のおかげで辺境伯領と中央が結ばれています」
やはりエクムント様はリリエンタール家とお近付きになりたかったようだ。わたくしはレーニちゃんに招待するように勧めてよかったと安心する。
「レーニ嬢とは一緒にお茶をしたことはありますが、リリエンタール侯爵とお話しさせていただく機会はなかなかありませんからね」
今日はエクムント様はわたくしたちとお茶をするよりも、レーニちゃんのお母様のリリエンタール侯爵とお話をするのかもしれない。そう思うと浮かれていた気持ちがしぼんでくる。
エクムント様のお役に立てたことは嬉しいのだが、エクムント様と少しでも多くの時間を共有したいという気持ちはどうしても捨てられなかった。
「リリエンタール侯爵、隣国と我が国を繋ぐ鉄道事業はどうなっていますか?」
「順調に進んでおりますわ。来年には隣国まで列車で行けるようになるでしょう」
「新型の列車も開発中と聞きます」
「そうなのです。これまでの列車よりも速く、安全な列車を作り上げたいと思っております」
エクムント様とリリエンタール侯爵が話しているところに、わたくしもそっとエクムント様の隣りに立ってお話を聞いてみる。
レーニちゃんやクリスタちゃんやミリヤムちゃんとお茶をしたい気持ちはあったが、エクムント様のおそばにいたかった。
「新型の列車が完成すれば、辺境伯領への移動も時間が短縮されますか?」
「もちろんですわ。全ての列車を一度に新型の列車に変えることはできませんが、辺境伯領と王都に向かう列車は、優先的に変えていきたいと思っております」
大人同士の会話なのでわたくしは口を挟めないでいると、エクムント様がちらりとわたくしを見た。
「エリザベート嬢、何か飲まれますか?」
「あ、は、はい。紅茶をいただきますわ」
「エリザベート嬢に紅茶を」
自分が幼くて小さくてエクムント様の隣りに立つのが恥ずかしいような気分になってきていたわたくしに、エクムント様の心遣いは嬉しかった。リリエンタール侯爵もエクムント様も紅茶を頼んで、わたくしと一緒にお茶をする。
いつもと違う大人のお茶会に、わたくしは緊張していた。
「エリザベート嬢、紅茶をどうぞ。ミルクもいりますか?」
「はい、いただきます」
エクムント様がわたくしにミルクポッドを手渡してくれようとする。そのときに手が触れ合ってわたくしは急に恥ずかしくなってしまった。
これまで何度も手を繋いだことも、エスコートされてエクムント様の手に手を重ねたこともある。
それなのに急に来た恥ずかしさに、無意識のうちに手を引いてしまって、わたくしはミルクポッドを取り落としてしまった。
それだけならばよかったのだが、ミルクポッドの中の牛乳がわたくしのドレスのスカートに大量にかかってしまったのだ。
「エリザベート嬢、すみません。私が早く手を離してしまったから」
「い、いいえ。わたくしが手を滑らせたのです。エクムント様のせいではありません」
軍服の胸ポケットからハンカチを取り出してエクムント様がわたくしに差し出す。ハンカチでどうにかなる程度の濡れ方ではなかったのだが、エクムント様がわたくしが刺繍したハンカチを使ってくださっていることが嬉しくて、わたくしはハンカチをお借りした。
「レーニの部屋で着替えを。レーニのドレスで入るものがあるでしょう」
リリエンタール侯爵が言ってくれるのに甘えて、わたくしはレーニちゃんのお部屋に入らせてもらった。
大事なエクムント様からもらった布で作ったドレスを汚してしまったことも悲しいし、エクムント様に謝らせてしまったことも申し訳ないし、わたくしは何をしているのだろうと落ち込んでしまう。
これまでこんなことはなかったのに、わたくしはどうしてしまったのだろう。
落ち込んでいるとレーニちゃんが部屋に来てくれた。
「エリザベートお姉様とわたくしのドレスのサイズはほぼ同じですよね? わたくしのもので申し訳ないのですが、夏物のドレスを着てくださいませ」
「ありがとうございます、レーニちゃん。わたくしがミルクを零してしまったせいで、迷惑をおかけします」
「気にしないでください、エリザベートお姉様。失敗は誰にでもありますわ」
ドレスは染み抜きをしてもらうことにして、わたくしはレーニちゃんのドレスを借りることにした。レモンイエローのドレスは、わたくしは選ばない色だが、借りるのだから文句があるわけがない。
ありがたく着させてもらった。
レモンイエローのドレスで会場に戻ると、わたくしはものすごく目立ってしまうことに気付いた。
今流行っている辺境伯領の布は濃淡があるが紫色なのだ。黄色は紫色の補色である。紫色のドレスの群れの中にいると、目がちかちかするくらい目立ってしまう。
恥ずかしくてエクムント様に声をかけられないわたくしに、エクムント様の方から近寄って来て話しかけてくださる。
「落ち着かれましたか? 今日のエリザベート嬢は具合が悪いのですか?」
「ぅわたくしは元気ですわ! とっても!」
声が裏返って、会場に響いてしまった。普段ならば上品に返事ができたはずなのに、今日は何かがおかしい。
エクムント様はいつもよりも格好よく見えるし、わたくしはいつもよりも幼く、小さく、無様に感じられる。
失敗ばかりのわたくしをエクムント様は責めることはなかった。
紅茶のカップをソーサーに乗せて、壁際に置いてあるソファに座る。エクムント様と二人きりと思うと落ち着かなくなってくるわたくしに、エクムント様が静かに呟く。
「エリザベート嬢のそのドレス、普段は着られない色ですね」
「レーニ嬢からお借りしました」
「その色もとてもよくお似合いですよ。可愛らしいです」
わたくしの髪の光沢が紫色なので、補色で目がちかちかしないかとか、わたくしの普段着ている色ではないので落ち着かないとか思っていた気持ちが、エクムント様の言葉によってふわふわと浮き上がる。
「そのドレスだったら、髪飾りは暖色系がいいかもしれませんね」
「わたくし、今日はこの髪飾りしか持って来ていませんの」
「エリザベート嬢は幼い頃から空色がお好きでしたからね。ベビードレスの色も空色でしたね」
空色の薔薇の髪飾りを付けているわたくしにエクムント様は懐かしそうに目を細める。
「気付いていましたか、そのドレス、私の目の色ですよ?」
耳元に囁かれて、わたくしは飛び上がってしまった。紅茶は飲み干していたので零さなかったのが幸いだった。
そういえばエクムント様の目の色は金色で、このドレスはレモンイエローだ。
目の色と近いといえば近い。
「エリザベート嬢が私の目の色を身に着けてくれているようで嬉しいです」
「そう言っていただけたら、わたくしも嬉しいです」
紫色のドレスの群れの中で補色で目立つレモンイエローのドレスのわたくしに、エクムント様はこんなに優しい言葉をかけてくれる。
わたくしはエクムント様のことが改めて大好きだと感じ入っていた。
「エリザベート様、ミリヤム嬢に婚約者様をご紹介くださいな」
このお誕生会の主催のレーニちゃんがミリヤム嬢を連れて来ていうのに、わたくしはレーニちゃんがレモンイエローのドレスを選んだのはエクムント様の目の色のことを思ってかと考えて、感謝しつつ、ソファから立ち上がった。
ディッペル家の方が王都よりもリリエンタール領に近いし、お茶会のときには学園を休んでいいことになっているので、ふーちゃんやまーちゃんにも会いたかったのだ。
わたくしとクリスタちゃんがディッペル家に帰ってくると、ふーちゃんとまーちゃんが飛び付いてくる。
「わたし、リップマンせんせいに、『おねえさまたちはどこ?』っていっかいもきかなかったよ!」
「わたくし、おねえさまをさがして、にわをあるきまわらなかったわ!」
誇らしげに報告してくるふーちゃんとまーちゃんの後ろで、ヘルマンさんとレギーナが嬉しそうに微笑んでいる。
「庭を探し回られると、フランツ様とマリア様を探すのが大変でした。それがなくなって楽になりました」
「リップマン先生も、毎日授業のたびに聞かれていたのでお困りだったのが、助かったことでしょう」
ふーちゃんとまーちゃんの成長を感じつつも、わたくしはディッペル家にいるときにはたっぷりとふーちゃんとまーちゃんを可愛がるつもりだった。
絵本を読んであげて、一緒にお散歩に行って、お茶の時間も一緒に過ごして、ふーちゃんとまーちゃんが眠るまでクリスタちゃんは歌を歌ってあげていた。
翌日は馬車と列車でリリエンタール領まで出かけた。
ふーちゃんは行きたそうにしていたが、来年からは行けると分かっているので、必死に我慢してわたくしとクリスタちゃんが馬車に乗り込むのをまーちゃんと一緒に手を振って見送ってくれた。
リリエンタール領ではレーニちゃんがわたくしとクリスタちゃんを待っていてくれた。
「エリザベート様、クリスタ様、お越しいただきありがとうございます」
「フランツも来たがっていましたが、来年は行けると分かっているのでいい子でお留守番しています」
「本日はお招きいただきありがとうございます」
「フランツ様にわたくしもお会いしたかったですわ」
ふーちゃんのことを可愛がってくれているレーニちゃんはふーちゃんに会いたいと言ってくれていた。お屋敷に戻ったらお礼状を書くのだが、そのときにふーちゃんにも何か書いてもらおうとわたくしは思っていた。
エクムント様もリリエンタール家のお屋敷に来ていた。
背の高いエクムント様は肌の色もあってとても目立つ。中央の方ではあまりエクムント様のような濃い肌の色のひとはいないのだ。見上げるような長身に纏う軍服と、緩やかに波打つ黒髪に優しくも力強い金色の目。あまり格好いいのでわたくしは胸がどきどきしてしまう。
「エリザベート嬢がレーニ嬢に私を招待してくださるように言ってくださったのですね」
「辺境伯家は中央の貴族との結びつきも大事かと思いましたので」
「ありがとうございます。リリエンタール家は鉄道事業に力を入れている土地。列車がなければ辺境伯領へも気軽には来られません。リリエンタール家のおかげで辺境伯領と中央が結ばれています」
やはりエクムント様はリリエンタール家とお近付きになりたかったようだ。わたくしはレーニちゃんに招待するように勧めてよかったと安心する。
「レーニ嬢とは一緒にお茶をしたことはありますが、リリエンタール侯爵とお話しさせていただく機会はなかなかありませんからね」
今日はエクムント様はわたくしたちとお茶をするよりも、レーニちゃんのお母様のリリエンタール侯爵とお話をするのかもしれない。そう思うと浮かれていた気持ちがしぼんでくる。
エクムント様のお役に立てたことは嬉しいのだが、エクムント様と少しでも多くの時間を共有したいという気持ちはどうしても捨てられなかった。
「リリエンタール侯爵、隣国と我が国を繋ぐ鉄道事業はどうなっていますか?」
「順調に進んでおりますわ。来年には隣国まで列車で行けるようになるでしょう」
「新型の列車も開発中と聞きます」
「そうなのです。これまでの列車よりも速く、安全な列車を作り上げたいと思っております」
エクムント様とリリエンタール侯爵が話しているところに、わたくしもそっとエクムント様の隣りに立ってお話を聞いてみる。
レーニちゃんやクリスタちゃんやミリヤムちゃんとお茶をしたい気持ちはあったが、エクムント様のおそばにいたかった。
「新型の列車が完成すれば、辺境伯領への移動も時間が短縮されますか?」
「もちろんですわ。全ての列車を一度に新型の列車に変えることはできませんが、辺境伯領と王都に向かう列車は、優先的に変えていきたいと思っております」
大人同士の会話なのでわたくしは口を挟めないでいると、エクムント様がちらりとわたくしを見た。
「エリザベート嬢、何か飲まれますか?」
「あ、は、はい。紅茶をいただきますわ」
「エリザベート嬢に紅茶を」
自分が幼くて小さくてエクムント様の隣りに立つのが恥ずかしいような気分になってきていたわたくしに、エクムント様の心遣いは嬉しかった。リリエンタール侯爵もエクムント様も紅茶を頼んで、わたくしと一緒にお茶をする。
いつもと違う大人のお茶会に、わたくしは緊張していた。
「エリザベート嬢、紅茶をどうぞ。ミルクもいりますか?」
「はい、いただきます」
エクムント様がわたくしにミルクポッドを手渡してくれようとする。そのときに手が触れ合ってわたくしは急に恥ずかしくなってしまった。
これまで何度も手を繋いだことも、エスコートされてエクムント様の手に手を重ねたこともある。
それなのに急に来た恥ずかしさに、無意識のうちに手を引いてしまって、わたくしはミルクポッドを取り落としてしまった。
それだけならばよかったのだが、ミルクポッドの中の牛乳がわたくしのドレスのスカートに大量にかかってしまったのだ。
「エリザベート嬢、すみません。私が早く手を離してしまったから」
「い、いいえ。わたくしが手を滑らせたのです。エクムント様のせいではありません」
軍服の胸ポケットからハンカチを取り出してエクムント様がわたくしに差し出す。ハンカチでどうにかなる程度の濡れ方ではなかったのだが、エクムント様がわたくしが刺繍したハンカチを使ってくださっていることが嬉しくて、わたくしはハンカチをお借りした。
「レーニの部屋で着替えを。レーニのドレスで入るものがあるでしょう」
リリエンタール侯爵が言ってくれるのに甘えて、わたくしはレーニちゃんのお部屋に入らせてもらった。
大事なエクムント様からもらった布で作ったドレスを汚してしまったことも悲しいし、エクムント様に謝らせてしまったことも申し訳ないし、わたくしは何をしているのだろうと落ち込んでしまう。
これまでこんなことはなかったのに、わたくしはどうしてしまったのだろう。
落ち込んでいるとレーニちゃんが部屋に来てくれた。
「エリザベートお姉様とわたくしのドレスのサイズはほぼ同じですよね? わたくしのもので申し訳ないのですが、夏物のドレスを着てくださいませ」
「ありがとうございます、レーニちゃん。わたくしがミルクを零してしまったせいで、迷惑をおかけします」
「気にしないでください、エリザベートお姉様。失敗は誰にでもありますわ」
ドレスは染み抜きをしてもらうことにして、わたくしはレーニちゃんのドレスを借りることにした。レモンイエローのドレスは、わたくしは選ばない色だが、借りるのだから文句があるわけがない。
ありがたく着させてもらった。
レモンイエローのドレスで会場に戻ると、わたくしはものすごく目立ってしまうことに気付いた。
今流行っている辺境伯領の布は濃淡があるが紫色なのだ。黄色は紫色の補色である。紫色のドレスの群れの中にいると、目がちかちかするくらい目立ってしまう。
恥ずかしくてエクムント様に声をかけられないわたくしに、エクムント様の方から近寄って来て話しかけてくださる。
「落ち着かれましたか? 今日のエリザベート嬢は具合が悪いのですか?」
「ぅわたくしは元気ですわ! とっても!」
声が裏返って、会場に響いてしまった。普段ならば上品に返事ができたはずなのに、今日は何かがおかしい。
エクムント様はいつもよりも格好よく見えるし、わたくしはいつもよりも幼く、小さく、無様に感じられる。
失敗ばかりのわたくしをエクムント様は責めることはなかった。
紅茶のカップをソーサーに乗せて、壁際に置いてあるソファに座る。エクムント様と二人きりと思うと落ち着かなくなってくるわたくしに、エクムント様が静かに呟く。
「エリザベート嬢のそのドレス、普段は着られない色ですね」
「レーニ嬢からお借りしました」
「その色もとてもよくお似合いですよ。可愛らしいです」
わたくしの髪の光沢が紫色なので、補色で目がちかちかしないかとか、わたくしの普段着ている色ではないので落ち着かないとか思っていた気持ちが、エクムント様の言葉によってふわふわと浮き上がる。
「そのドレスだったら、髪飾りは暖色系がいいかもしれませんね」
「わたくし、今日はこの髪飾りしか持って来ていませんの」
「エリザベート嬢は幼い頃から空色がお好きでしたからね。ベビードレスの色も空色でしたね」
空色の薔薇の髪飾りを付けているわたくしにエクムント様は懐かしそうに目を細める。
「気付いていましたか、そのドレス、私の目の色ですよ?」
耳元に囁かれて、わたくしは飛び上がってしまった。紅茶は飲み干していたので零さなかったのが幸いだった。
そういえばエクムント様の目の色は金色で、このドレスはレモンイエローだ。
目の色と近いといえば近い。
「エリザベート嬢が私の目の色を身に着けてくれているようで嬉しいです」
「そう言っていただけたら、わたくしも嬉しいです」
紫色のドレスの群れの中で補色で目立つレモンイエローのドレスのわたくしに、エクムント様はこんなに優しい言葉をかけてくれる。
わたくしはエクムント様のことが改めて大好きだと感じ入っていた。
「エリザベート様、ミリヤム嬢に婚約者様をご紹介くださいな」
このお誕生会の主催のレーニちゃんがミリヤム嬢を連れて来ていうのに、わたくしはレーニちゃんがレモンイエローのドレスを選んだのはエクムント様の目の色のことを思ってかと考えて、感謝しつつ、ソファから立ち上がった。
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