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十章 ふーちゃんとまーちゃんの婚約
41.現れた見知らぬ女子生徒
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お誕生日のお茶会にはガブリエラちゃんとフリーダちゃんも来ていた。
弟のケヴィンくんも来ているのだが、わたくしはガブリエラちゃんとフリーダちゃんに聞きたいことがあった。
「わたくしのお誕生日のお茶会に来てくださってありがとうございます、ガブリエラ嬢、フリーダ嬢」
「フリーダもお茶会に参加する年になりました。これからよろしくお願いいたします、エリザベート様」
「エリザベートさまは、エクムントおじさまのこんやくしゃなのでしょう。エクムントおじさまとのけっこんがちかづいたということですね」
「わたくしが一つ年を取るごとに、エクムント様との結婚は近付いていますね。嬉しいことを言ってくださいます、フリーダ嬢」
「わたくし、エクムントおじさまとエリザベートさまのけっこんしきにしゅっせきしたいのです」
辺境伯家と公爵家を結ぶ結婚式は国を挙げて盛大に行われるだろう。そこにエクムント様の姪のガブリエラちゃんとフリーダちゃんを呼ばないなんてことはない。
特にエクムント様は自分の姪や甥を可愛がっているのだ。
「もちろん招待すると思いますよ」
「とてもたのしみです」
「エリザベート様、フリーダがすみません」
「いいのですよ。わたくしも結婚できる日を楽しみにしています。フリーダ嬢がそういう話をしてくださって嬉しいのですよ」
結婚式に招くようにフリーダちゃんが強請ったようにガブリエラちゃんは感じてしまったのかもしれない。エクムント様が可愛い姪や甥を招かないはずはないし、わたくしは未来の結婚式の話は大歓迎だった。
それ以外にも聞きたいことがあったのだとわたくしは話題を変える。
「ガブリエラ嬢のドレスを、フリーダ嬢がお譲りで着ることがありますか?」
「はい、あります」
「あるのですね!」
「わたくしは成長期なので、一年前のドレスは着れなくなってしまっています。お茶会に招かれる回数も少ないし、春秋物のドレス、夏物のドレス、冬物のドレスと変えていくと、一つの季節のドレスを数回しか着ていないことがあります。それではもったいないので、フリーダにドレスを譲っています」
「わたくし、おねえさまのどれすをきています。おねえさまのどれすはとてもきれいで、ちいさなころからわたくしもきたいとおもっていたので、きられてとてもうれしいです」
やはり男の子と女の子では全く違うようだ。
エクムント様は男の子はドレスをお譲りできないというようなことを言っていたが、女の子はドレスをお譲りして、憧れの自分のお姉様のドレスを着ることを喜びとしているようだった。
「わたくしの妹のマリアも、わたくしやクリスタのドレスを着たがるのです」
「きもちはわかりますわ。わたくし、おねえさまがドレスをきているのをみて、ずっとあんなドレスがきたいとおもっていたのです。おねえさまにおゆずりしてもらって、じぶんできられたときにはほんとうにうれしかったのです」
フリーダちゃんもガブリエラちゃんに憧れてそのドレスを着たいと願っていたようだった。
キルヒマン侯爵家でもそうなのだから、まーちゃんのやっていることはそれほどおかしなことではないのだとわたくしは納得することができた。
お茶会が終わるとわたくしとエクムント様とふーちゃんとまーちゃんとクリスタちゃんと両親でお客様たちを見送った。
エクムント様は最後まで残ってわたくしにずっとついていてくださった。
わたくしのお誕生日のお茶会が終わると、わたくしとクリスタちゃんは学園に戻る。
学園では運動会の練習で生徒たちは忙しそうだった。
わたくしもクリスタちゃんも出場する競技を決める。
一年生のときからわたくしは乗馬で出場していて、今年も乗馬で出場するつもりだった。クリスタちゃんは一年生のときに大縄跳びで参加していた。
「お姉様、運動会の出場競技はどうするおつもりですか?」
「わたくしは乗馬で出場するつもりです。クリスタは?」
「わたくしは去年大縄跳びで出場してとても楽しかったので、今年も大縄跳びで出場しようかと思っています」
昼食の時間だったので食堂で話していると、レーニちゃんとレーニちゃんに招かれたミリヤムちゃんも話に加わってくる。
「わたくしもクリスタ嬢と同じ、大縄跳びにしようと思います」
「去年はわたくしは走り幅跳びでしたが、クリスタ様とレーニ様が大縄跳びで出場するのならば、ローゼン寮の大縄跳びに出場してみたいと思います」
「ミリヤム嬢とはライバルですね」
「一緒に切磋琢磨して頑張りましょうね」
仲良く話が進んでいるところに、黒髪の女子生徒が近付いてきた。
この国は七割程度が黒髪で、国王陛下と皇太子のハインリヒ殿下も黒髪だ。わたくしも特別な光沢があるが黒髪であることには変わりないし、ミリヤムちゃんも黒髪だ。
黒髪に黒い目というのはありふれた色彩で、特別なことは何もない。
だから、わたくしはその女子生徒が誰なのか全く分からなかった。
「お姉様、よくもわたくしを今日まで無視し続けられましたわね」
その女子生徒は誰かに向かって言っているのだが、それが誰なのか分からない。
わたくしもクリスタちゃんもレーニちゃんもミリヤムちゃんも、他の誰かの知り合いだろうと思って話を続けた。
「去年はエリザベート様が乗馬で素晴らしい成績を残したので、今年も期待されていますよ」
「そんな、わたくしは練習通りにやっただけで、馬が頑張ってくれたのですよ」
「エリザベート嬢は馬にも愛されるのですね」
「お姉様はさすがですわ」
話していると、女子生徒が更に近付いて来ていた。
「わたくしを無視するだなんて、それだけわたくしの存在が怖かったのでしょうね。やっとお会いすることができました、お姉様」
何か言っているがよく分からないので、聞かないことにする。
「クリスタとレーニ嬢はペオーニエ寮ですが、ミリヤム嬢はローゼン寮で、違う寮同士で同じ競技に出るのは複雑ではないですか?」
「去年はそう思っていました。けれど、今年はクリスタ様とレーニ様と競えることが楽しいのではないかと思っているのです」
「大縄跳びはいいですよ。跳ぶ全員の心が一つになったときに、大きな感動を覚えます」
「なかなか揃わなくて難しいですけれどね」
大縄跳びでクリスタちゃんとレーニちゃんはペオーニエ寮の生徒として出場して、ミリヤムちゃんはローゼン寮の生徒として出場するので、どちらを応援するか迷ってしまいそうな気がする。
「わたくしはどちらを応援すればいいのでしょう?」
「お姉様、どちらとも応援すればいいのですよ!」
「わたくしとクリスタ嬢のことも、ミリヤム嬢のことも応援してください」
「寮が違うのに応援してくださるなんて光栄です」
話していると、女子生徒が胸を反らせているのが分かる。どこか誇らしげにも見える顔に見覚えは本当に全くない。
「こんなにもわたくしのことを恐れるだなんて。やはりわたくしの存在は脅威だったのですね、お姉様。それにしても、実の姉でもない相手を『お姉様』と呼ぶだなんて醜悪ですわ」
実の姉でもないなんて、誰のことなのだろう。
わたくしたちの方を向いて喋りかけているような気がするが、わたくしもクリスタちゃんもレーニちゃんもミリヤムちゃんも全く心当たりがないので、相手にしないことにした。
「それでは、午後の授業に行きますね。ミリヤム嬢、一緒に行きましょう」
「はい、お姉様。わたくしはレーニ嬢と行ってきますわ」
「エリザベート嬢、ミリヤム嬢、またお茶のときに会いましょうね」
「失礼いたします、クリスタ様、レーニ様」
挨拶をして食堂から出ると、見知らぬ女子生徒はついてこようとしていたが、周囲に止められていた。
「あの方々に盾突くなんて、身を滅ぼすだけですよ」
「何も言われなくて本当によかったですね」
「もう関わらない方がいいですよ」
周囲に言われているが、見知らぬ女子生徒はまだ何か言っていた。
「わたくしが怖くて堪らないのですね。あんな風に逃げて行って。この学園では全生徒が平等。必ずお姉様をわたくしが相応しくない座から引きずり降ろしてみせます。お姉様に公爵令嬢も、皇太子殿下の婚約者も相応しくない」
公爵令嬢で、皇太子殿下の婚約者。
それはクリスタちゃんのことではないだろうか。
しかし、クリスタちゃんとその女子生徒が知り合いとは全く思えないのだ。
何かを忘れている。
わたくしは、その何かを思い出せずにいた。
弟のケヴィンくんも来ているのだが、わたくしはガブリエラちゃんとフリーダちゃんに聞きたいことがあった。
「わたくしのお誕生日のお茶会に来てくださってありがとうございます、ガブリエラ嬢、フリーダ嬢」
「フリーダもお茶会に参加する年になりました。これからよろしくお願いいたします、エリザベート様」
「エリザベートさまは、エクムントおじさまのこんやくしゃなのでしょう。エクムントおじさまとのけっこんがちかづいたということですね」
「わたくしが一つ年を取るごとに、エクムント様との結婚は近付いていますね。嬉しいことを言ってくださいます、フリーダ嬢」
「わたくし、エクムントおじさまとエリザベートさまのけっこんしきにしゅっせきしたいのです」
辺境伯家と公爵家を結ぶ結婚式は国を挙げて盛大に行われるだろう。そこにエクムント様の姪のガブリエラちゃんとフリーダちゃんを呼ばないなんてことはない。
特にエクムント様は自分の姪や甥を可愛がっているのだ。
「もちろん招待すると思いますよ」
「とてもたのしみです」
「エリザベート様、フリーダがすみません」
「いいのですよ。わたくしも結婚できる日を楽しみにしています。フリーダ嬢がそういう話をしてくださって嬉しいのですよ」
結婚式に招くようにフリーダちゃんが強請ったようにガブリエラちゃんは感じてしまったのかもしれない。エクムント様が可愛い姪や甥を招かないはずはないし、わたくしは未来の結婚式の話は大歓迎だった。
それ以外にも聞きたいことがあったのだとわたくしは話題を変える。
「ガブリエラ嬢のドレスを、フリーダ嬢がお譲りで着ることがありますか?」
「はい、あります」
「あるのですね!」
「わたくしは成長期なので、一年前のドレスは着れなくなってしまっています。お茶会に招かれる回数も少ないし、春秋物のドレス、夏物のドレス、冬物のドレスと変えていくと、一つの季節のドレスを数回しか着ていないことがあります。それではもったいないので、フリーダにドレスを譲っています」
「わたくし、おねえさまのどれすをきています。おねえさまのどれすはとてもきれいで、ちいさなころからわたくしもきたいとおもっていたので、きられてとてもうれしいです」
やはり男の子と女の子では全く違うようだ。
エクムント様は男の子はドレスをお譲りできないというようなことを言っていたが、女の子はドレスをお譲りして、憧れの自分のお姉様のドレスを着ることを喜びとしているようだった。
「わたくしの妹のマリアも、わたくしやクリスタのドレスを着たがるのです」
「きもちはわかりますわ。わたくし、おねえさまがドレスをきているのをみて、ずっとあんなドレスがきたいとおもっていたのです。おねえさまにおゆずりしてもらって、じぶんできられたときにはほんとうにうれしかったのです」
フリーダちゃんもガブリエラちゃんに憧れてそのドレスを着たいと願っていたようだった。
キルヒマン侯爵家でもそうなのだから、まーちゃんのやっていることはそれほどおかしなことではないのだとわたくしは納得することができた。
お茶会が終わるとわたくしとエクムント様とふーちゃんとまーちゃんとクリスタちゃんと両親でお客様たちを見送った。
エクムント様は最後まで残ってわたくしにずっとついていてくださった。
わたくしのお誕生日のお茶会が終わると、わたくしとクリスタちゃんは学園に戻る。
学園では運動会の練習で生徒たちは忙しそうだった。
わたくしもクリスタちゃんも出場する競技を決める。
一年生のときからわたくしは乗馬で出場していて、今年も乗馬で出場するつもりだった。クリスタちゃんは一年生のときに大縄跳びで参加していた。
「お姉様、運動会の出場競技はどうするおつもりですか?」
「わたくしは乗馬で出場するつもりです。クリスタは?」
「わたくしは去年大縄跳びで出場してとても楽しかったので、今年も大縄跳びで出場しようかと思っています」
昼食の時間だったので食堂で話していると、レーニちゃんとレーニちゃんに招かれたミリヤムちゃんも話に加わってくる。
「わたくしもクリスタ嬢と同じ、大縄跳びにしようと思います」
「去年はわたくしは走り幅跳びでしたが、クリスタ様とレーニ様が大縄跳びで出場するのならば、ローゼン寮の大縄跳びに出場してみたいと思います」
「ミリヤム嬢とはライバルですね」
「一緒に切磋琢磨して頑張りましょうね」
仲良く話が進んでいるところに、黒髪の女子生徒が近付いてきた。
この国は七割程度が黒髪で、国王陛下と皇太子のハインリヒ殿下も黒髪だ。わたくしも特別な光沢があるが黒髪であることには変わりないし、ミリヤムちゃんも黒髪だ。
黒髪に黒い目というのはありふれた色彩で、特別なことは何もない。
だから、わたくしはその女子生徒が誰なのか全く分からなかった。
「お姉様、よくもわたくしを今日まで無視し続けられましたわね」
その女子生徒は誰かに向かって言っているのだが、それが誰なのか分からない。
わたくしもクリスタちゃんもレーニちゃんもミリヤムちゃんも、他の誰かの知り合いだろうと思って話を続けた。
「去年はエリザベート様が乗馬で素晴らしい成績を残したので、今年も期待されていますよ」
「そんな、わたくしは練習通りにやっただけで、馬が頑張ってくれたのですよ」
「エリザベート嬢は馬にも愛されるのですね」
「お姉様はさすがですわ」
話していると、女子生徒が更に近付いて来ていた。
「わたくしを無視するだなんて、それだけわたくしの存在が怖かったのでしょうね。やっとお会いすることができました、お姉様」
何か言っているがよく分からないので、聞かないことにする。
「クリスタとレーニ嬢はペオーニエ寮ですが、ミリヤム嬢はローゼン寮で、違う寮同士で同じ競技に出るのは複雑ではないですか?」
「去年はそう思っていました。けれど、今年はクリスタ様とレーニ様と競えることが楽しいのではないかと思っているのです」
「大縄跳びはいいですよ。跳ぶ全員の心が一つになったときに、大きな感動を覚えます」
「なかなか揃わなくて難しいですけれどね」
大縄跳びでクリスタちゃんとレーニちゃんはペオーニエ寮の生徒として出場して、ミリヤムちゃんはローゼン寮の生徒として出場するので、どちらを応援するか迷ってしまいそうな気がする。
「わたくしはどちらを応援すればいいのでしょう?」
「お姉様、どちらとも応援すればいいのですよ!」
「わたくしとクリスタ嬢のことも、ミリヤム嬢のことも応援してください」
「寮が違うのに応援してくださるなんて光栄です」
話していると、女子生徒が胸を反らせているのが分かる。どこか誇らしげにも見える顔に見覚えは本当に全くない。
「こんなにもわたくしのことを恐れるだなんて。やはりわたくしの存在は脅威だったのですね、お姉様。それにしても、実の姉でもない相手を『お姉様』と呼ぶだなんて醜悪ですわ」
実の姉でもないなんて、誰のことなのだろう。
わたくしたちの方を向いて喋りかけているような気がするが、わたくしもクリスタちゃんもレーニちゃんもミリヤムちゃんも全く心当たりがないので、相手にしないことにした。
「それでは、午後の授業に行きますね。ミリヤム嬢、一緒に行きましょう」
「はい、お姉様。わたくしはレーニ嬢と行ってきますわ」
「エリザベート嬢、ミリヤム嬢、またお茶のときに会いましょうね」
「失礼いたします、クリスタ様、レーニ様」
挨拶をして食堂から出ると、見知らぬ女子生徒はついてこようとしていたが、周囲に止められていた。
「あの方々に盾突くなんて、身を滅ぼすだけですよ」
「何も言われなくて本当によかったですね」
「もう関わらない方がいいですよ」
周囲に言われているが、見知らぬ女子生徒はまだ何か言っていた。
「わたくしが怖くて堪らないのですね。あんな風に逃げて行って。この学園では全生徒が平等。必ずお姉様をわたくしが相応しくない座から引きずり降ろしてみせます。お姉様に公爵令嬢も、皇太子殿下の婚約者も相応しくない」
公爵令嬢で、皇太子殿下の婚約者。
それはクリスタちゃんのことではないだろうか。
しかし、クリスタちゃんとその女子生徒が知り合いとは全く思えないのだ。
何かを忘れている。
わたくしは、その何かを思い出せずにいた。
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