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カリス(受け)視点
8.番になる夜
カリスの手でリオネルを脱がせてベッドに押し倒したときには、カリスは興奮で息が荒くなっていた。
リオネルの足の間に体を滑り込ませて、中心を舐めていると、リオネルがそこを硬くさせて高ぶっているのが分かる。カリスにリオネルが反応してくれている。それだけでカリスは目が眩むほどの興奮を覚えた。
舐めていると、リオネルが問いかけてくる。
「閣下、一点、確認したいことがあります」
「なんだ? 言ってみろ」
「閣下がわたしに挿入しますか? わたしが閣下に挿入しますか?」
カリスはオメガで、リオネルはアルファ。
普通に考えればリオネルがカリスを抱く以外の選択肢はないのに、カリスに確認する律義さと忠義に、カリスは笑みがこぼれる。笑った吐息がリオネルの中心にかかって、そこがますます大きくなった気がする。
「どちらがいい? 選ばせてやる」
「閣下のお心のままに」
「リオネルが選んでいい」
「それでは、抱かせていただきたく存じます」
「最初からそのつもりだ」
リオネルがカリスを抱くことができそうで安心して舐めるのを再開すると、リオネルが苦しそうな声を出す。
「閣下、ダメです……もう、出そうです」
「一度出しておけ。そっちの方が楽だろう」
「閣下っ!? あぁっ!」
喉の奥まで咥えて吸うと、リオネルの中心がカリスの口の中で弾ける。
吐き出された白濁はリオネルのフェロモンの香りがして、カリスは抵抗なくそれを飲んでしまった。飲むとヒートで苦しかった体が少し楽になった気がする。
「の、むなんて……閣下、体によくないのでは?」
「アルファの精を受けたら楽になると聞いていたが、その通りだったようだな。かなり楽になった」
「本当ですか?」
飲んだことに抵抗感を見せるリオネルに笑って言って、カリスは自分のパジャマも下着も脱いでしまった。リオネルがカリスの首筋を吸い上げて、鎖骨を舐めて、胸に唇を寄せる。豊かな胸を揉まれて、乳首を舐められると、甘い声が漏れてしまう。
「んっ……リオネル」
「はい、閣下」
「まだ、閣下なのか? ベッドの上でまで色気がない」
「か、カリス様」
「様もいらないのだが、まぁいいだろう」
ヒートでカリスの後孔は濡れて、アルファをほしがっている。リオネルが欲しくてたまらなくて、自分から挿入しようと跨ると、リオネルが慌てて止めてくる。
「待って! カリス様、いけません! 初めてなのでしょう? 裂けます!」
「おれはオメガなのだから、受けいられるようにできている」
「お願いです! 待ってください! わたしに触れさせて」
初めてだったが、リオネルにこの身を裂かれても繋がりたいと思うカリスに対して、リオネルはカリスの下から逃れてカリスに覆い被さるようにしてくる。
面倒はかけたくなかったが、リオネルに中を探られて、解されると快感に体が震える。
リオネルは慎重に指一本から始めて、二本、三本とゆっくり増やしていく。
その刺激がじれったくてカリスはリオネルにねだった。
「もう平気だ。リオネル、キてくれ」
「カリス様、待ってください。わたしはケダモノになりたくない」
「いいから」
「ダメです!」
いいからほしいというカリスに絶対に譲らずに、リオネルが丁寧にカリスの後孔を解していく。
十分に柔らかくなったと判断したところで、リオネルが指を引き抜いてくれたので、カリスはうつぶせになった。
初心者はこの体勢が受け入れやすいと閨教育で習ったし、リオネルにならばうなじを噛まれても構わないと思ったのだ。
リオネルを自分のものにしたい。
同時にリオネルのものになりたい。
リオネルへの気持ちは抑えきれないほど膨れ上がっていて、カリスはもうどうしようもないくらいになっていた。
「カリス様、向かい合ってしましょう。その体勢だと、間違いなくカリス様のうなじを噛んでしまいます」
「噛みたくないのか?」
「か、噛みたいです! でも、カリス様は望んでいないでしょう?」
汗ばんだ肌にへばりつく長い髪をかき分けて、うなじを晒せば、リオネルは躊躇っているようだった。
「一時の思いで噛ませたら、カリス様は一生後悔します」
――リオネル、後悔しないか?
――後悔など致しません。閣下のものにしてください。
はっきりとリオネルはカリスのものにしてほしいと言った。
それならば長年秘めていた感情を、もう解放してもいいのではないだろうか。
噛んでほしい。
カリスはここ十年ヒートを経験していなかった。このヒートを逃せば、次にヒートが来るのが十年先でもおかしくはない。
今、リオネルが愛しいと告げて、番にしてもらわなければ、二度と機会はないかもしれない。
その気持ちを込めて、カリスはうなじを晒したままでリオネルを振り返った。
「おれのものになると言った」
「わたしはカリス様のものです」
「それなら、おれもリオネルのものにしてくれ」
ヒートで熟れ切った体はリオネルを求めている。
ずっとリオネルをかわいいと思ってきた心は、もう隠しようがない。
リオネルがほしくてたまらない。
懇願するカリスに、リオネルはくどいほどに確認する。
「カリス様、後悔しませんね?」
「リオネルこそ」
「わたしはカリス様を生涯愛すると決めたのです」
出会ったときから既に愛していたというリオネルの告白に、カリスは胎が疼くのを感じる。
うなじを見せつけるようにして、カリスはリオネルに懇願した。
「リオネル、噛んで」
乱暴ではないくらいゆっくりとリオネルがカリスの中に入ってくる。みっちりと中を埋められて、それだけで快感で達してしまいそうなのに、リオネルが最奥に到達すると同時に、カリスのうなじに歯を立てた。
最初は遠慮がちに噛んでいたが、ぐっと力がこもって、カリスのうなじにリオネルのアルファ特有の鋭い犬歯が突き刺さる。皮膚を突き破られた瞬間、電撃でも走ったかのような衝撃にカリスは背を反らせて感じいっていた。
細胞が全てリオネルのためのものに置き換わるような不思議な感覚がカリスの中で起きていた。
最初はリオネルが主体だったが、カリスが上になってリオネルを翻弄して、リオネルとたっぷりと交わった後で、二人で風呂に入って、リオネルはカリスの体と髪を丁寧に洗って乾かしてくれた。
うなじの血の滲む噛み跡は消毒して、ガーゼをテープで止めて治療してくれる。
ガーゼの上からでもリオネルの噛み跡が感じられそうで、カリスはそこを何度も撫でて幸福感に浸っていた。
お互いに溶け合うほどに抱き合った三日間。
それが終わると、カリスのヒートは落ち着いた。
三日目の夜に、抱き合った後、風呂で体を清めて、リオネルにガーゼを取り替えてもらって、カリスはリオネルとベッドに入った。
ベッドの中でリオネルを抱き締めて、その耳に囁く。
「初めて出会ったときから、かわいいと思っていた」
「わたしを、ですか?」
「そうだ。おれにオメガの本能なんてないと思っていたのに、かわいくてかわいくて、リオネルをおれのものにしたくてたまらなかった」
もう隠すことはできないと心の内を全部伝えれば、リオネルは両手で頬を押さえて恥じらっていた。恥じらいつつも、カリスを見つめてリオネルが言う。
「わたしと閣下は運命の番なのではないでしょうか?」
「そうかもしれない。出会った瞬間に、守りたくて、大切にしたくて、庇護欲がわいて仕方がなかった」
他のアルファには全く感づかれなかったカリスのフェロモンに、リオネルだけが気付いていた。他のアルファのフェロモンを感じられなかったカリスが、リオネルのフェロモンだけは感じていた。
それを考えると、カリスとリオネルは運命の番だというのも間違いではないのかもしれない。
「わたしも閣下の素顔を見たとき、この尊い方に生涯仕えたいと思いました。生涯おそばにいたい、例え閣下が誰かのものになってしまっても、一番近くでお支えしたいと思っていました」
誠実なリオネルの言葉にカリスは自分の中に焦りがあったことを認めた。
「すまない、こんな性急にことを運んでしまって」
「謝られることはないです。わたしは閣下の番になれて幸せです」
「次のヒートが十年先かもしれないと思ったら、今番になっておかなければ、リオネルを手に入れられないと思ってしまった」
次のヒートが十年後かもしれない可能性を口にすれば、リオネルも考えることがあったようだ。
「次のヒートは十年後かもしれない……」
「その可能性も大いにあるな」
「それでは、わたしは十年後まで閣下を抱くことができないのですか?」
「そんなの無理です」と絶望的な顔になっているリオネルに、カリスは吹き出してしまった。
カリスの番になることに抵抗があったわけではないし、カリスのヒートが今後来ないかもしれないこともリオネルは気にしている様子はなかった。
考えていたのは、もうカリスを抱けないかもしれないということだけだった。
「ヒートのとき以外はおれを抱けないか?」
「いいえ! 毎日でもお抱き致したいです!」
「毎日か……体力は持つだろうが、毎日は困るな」
「閣下の都合のいいときに抱かせていただければと思います!」
リオネルの言葉に、カリスはリオネルを抱き寄せて、頬を撫で、その唇に軽く口付ける。
「どうしてくれる。もうおれはお前を手放せないぞ?」
「手放さないでください。ずっとおそばに置いてください」
「番を持たないオメガは短命だと昔から言われていた。兄上からは早く番を持つようにと何度も言われた。だが、おれは誰にも触れられたくなかった。自分がオメガだということを認められなかった」
リオネルに出会うまでは、誰かに触れられたいと思うことはなかった。出会ってからも、リオネル以外に触れられたいと思わなかった。
リオネルだけがカリスの特別だった。
「リオネルは番を解除しようと思えばいつでもできる。おれと別れたいと思ったら、いつでもそうしてくれて構わない」
「何を仰るのですか! わたしは閣下を運命の番と思っております! そうでなくても、閣下だけを愛しております! 閣下以外の相手を抱くなど考えられません! 閣下の方こそ、わたしと別れたいと思っても、もう番になってしまったので方法はありませんよ?」
オメガは生涯に一人しか番を持てないが、アルファは番を解消しようと思えばできるし、番を複数持つこともできる。カリスがそれを指摘すれば、リオネルは真面目にカリスを見つめてくる。
こんなに情熱的に口説かれて、心が動かないはずがない。
「あぁ、リオネル、かわいい。おれのリオネル」
「はい、閣下のリオネルです」
「手放すことなどできるわけがない。おれはリオネルがかわいくてかわいくてたまらない」
抱き締めると、リオネルもカリスに告げる。
「愛する閣下。どうか、ずっとわたしをおそばに置いてください」
「リオネル」
「愛しています、閣下。閣下だけを永遠に愛しています」
「おれも愛している、リオネル」
お互いに気持ちを確かめ合って、カリスとリオネルは本当の意味で夫夫となった。
リオネルの足の間に体を滑り込ませて、中心を舐めていると、リオネルがそこを硬くさせて高ぶっているのが分かる。カリスにリオネルが反応してくれている。それだけでカリスは目が眩むほどの興奮を覚えた。
舐めていると、リオネルが問いかけてくる。
「閣下、一点、確認したいことがあります」
「なんだ? 言ってみろ」
「閣下がわたしに挿入しますか? わたしが閣下に挿入しますか?」
カリスはオメガで、リオネルはアルファ。
普通に考えればリオネルがカリスを抱く以外の選択肢はないのに、カリスに確認する律義さと忠義に、カリスは笑みがこぼれる。笑った吐息がリオネルの中心にかかって、そこがますます大きくなった気がする。
「どちらがいい? 選ばせてやる」
「閣下のお心のままに」
「リオネルが選んでいい」
「それでは、抱かせていただきたく存じます」
「最初からそのつもりだ」
リオネルがカリスを抱くことができそうで安心して舐めるのを再開すると、リオネルが苦しそうな声を出す。
「閣下、ダメです……もう、出そうです」
「一度出しておけ。そっちの方が楽だろう」
「閣下っ!? あぁっ!」
喉の奥まで咥えて吸うと、リオネルの中心がカリスの口の中で弾ける。
吐き出された白濁はリオネルのフェロモンの香りがして、カリスは抵抗なくそれを飲んでしまった。飲むとヒートで苦しかった体が少し楽になった気がする。
「の、むなんて……閣下、体によくないのでは?」
「アルファの精を受けたら楽になると聞いていたが、その通りだったようだな。かなり楽になった」
「本当ですか?」
飲んだことに抵抗感を見せるリオネルに笑って言って、カリスは自分のパジャマも下着も脱いでしまった。リオネルがカリスの首筋を吸い上げて、鎖骨を舐めて、胸に唇を寄せる。豊かな胸を揉まれて、乳首を舐められると、甘い声が漏れてしまう。
「んっ……リオネル」
「はい、閣下」
「まだ、閣下なのか? ベッドの上でまで色気がない」
「か、カリス様」
「様もいらないのだが、まぁいいだろう」
ヒートでカリスの後孔は濡れて、アルファをほしがっている。リオネルが欲しくてたまらなくて、自分から挿入しようと跨ると、リオネルが慌てて止めてくる。
「待って! カリス様、いけません! 初めてなのでしょう? 裂けます!」
「おれはオメガなのだから、受けいられるようにできている」
「お願いです! 待ってください! わたしに触れさせて」
初めてだったが、リオネルにこの身を裂かれても繋がりたいと思うカリスに対して、リオネルはカリスの下から逃れてカリスに覆い被さるようにしてくる。
面倒はかけたくなかったが、リオネルに中を探られて、解されると快感に体が震える。
リオネルは慎重に指一本から始めて、二本、三本とゆっくり増やしていく。
その刺激がじれったくてカリスはリオネルにねだった。
「もう平気だ。リオネル、キてくれ」
「カリス様、待ってください。わたしはケダモノになりたくない」
「いいから」
「ダメです!」
いいからほしいというカリスに絶対に譲らずに、リオネルが丁寧にカリスの後孔を解していく。
十分に柔らかくなったと判断したところで、リオネルが指を引き抜いてくれたので、カリスはうつぶせになった。
初心者はこの体勢が受け入れやすいと閨教育で習ったし、リオネルにならばうなじを噛まれても構わないと思ったのだ。
リオネルを自分のものにしたい。
同時にリオネルのものになりたい。
リオネルへの気持ちは抑えきれないほど膨れ上がっていて、カリスはもうどうしようもないくらいになっていた。
「カリス様、向かい合ってしましょう。その体勢だと、間違いなくカリス様のうなじを噛んでしまいます」
「噛みたくないのか?」
「か、噛みたいです! でも、カリス様は望んでいないでしょう?」
汗ばんだ肌にへばりつく長い髪をかき分けて、うなじを晒せば、リオネルは躊躇っているようだった。
「一時の思いで噛ませたら、カリス様は一生後悔します」
――リオネル、後悔しないか?
――後悔など致しません。閣下のものにしてください。
はっきりとリオネルはカリスのものにしてほしいと言った。
それならば長年秘めていた感情を、もう解放してもいいのではないだろうか。
噛んでほしい。
カリスはここ十年ヒートを経験していなかった。このヒートを逃せば、次にヒートが来るのが十年先でもおかしくはない。
今、リオネルが愛しいと告げて、番にしてもらわなければ、二度と機会はないかもしれない。
その気持ちを込めて、カリスはうなじを晒したままでリオネルを振り返った。
「おれのものになると言った」
「わたしはカリス様のものです」
「それなら、おれもリオネルのものにしてくれ」
ヒートで熟れ切った体はリオネルを求めている。
ずっとリオネルをかわいいと思ってきた心は、もう隠しようがない。
リオネルがほしくてたまらない。
懇願するカリスに、リオネルはくどいほどに確認する。
「カリス様、後悔しませんね?」
「リオネルこそ」
「わたしはカリス様を生涯愛すると決めたのです」
出会ったときから既に愛していたというリオネルの告白に、カリスは胎が疼くのを感じる。
うなじを見せつけるようにして、カリスはリオネルに懇願した。
「リオネル、噛んで」
乱暴ではないくらいゆっくりとリオネルがカリスの中に入ってくる。みっちりと中を埋められて、それだけで快感で達してしまいそうなのに、リオネルが最奥に到達すると同時に、カリスのうなじに歯を立てた。
最初は遠慮がちに噛んでいたが、ぐっと力がこもって、カリスのうなじにリオネルのアルファ特有の鋭い犬歯が突き刺さる。皮膚を突き破られた瞬間、電撃でも走ったかのような衝撃にカリスは背を反らせて感じいっていた。
細胞が全てリオネルのためのものに置き換わるような不思議な感覚がカリスの中で起きていた。
最初はリオネルが主体だったが、カリスが上になってリオネルを翻弄して、リオネルとたっぷりと交わった後で、二人で風呂に入って、リオネルはカリスの体と髪を丁寧に洗って乾かしてくれた。
うなじの血の滲む噛み跡は消毒して、ガーゼをテープで止めて治療してくれる。
ガーゼの上からでもリオネルの噛み跡が感じられそうで、カリスはそこを何度も撫でて幸福感に浸っていた。
お互いに溶け合うほどに抱き合った三日間。
それが終わると、カリスのヒートは落ち着いた。
三日目の夜に、抱き合った後、風呂で体を清めて、リオネルにガーゼを取り替えてもらって、カリスはリオネルとベッドに入った。
ベッドの中でリオネルを抱き締めて、その耳に囁く。
「初めて出会ったときから、かわいいと思っていた」
「わたしを、ですか?」
「そうだ。おれにオメガの本能なんてないと思っていたのに、かわいくてかわいくて、リオネルをおれのものにしたくてたまらなかった」
もう隠すことはできないと心の内を全部伝えれば、リオネルは両手で頬を押さえて恥じらっていた。恥じらいつつも、カリスを見つめてリオネルが言う。
「わたしと閣下は運命の番なのではないでしょうか?」
「そうかもしれない。出会った瞬間に、守りたくて、大切にしたくて、庇護欲がわいて仕方がなかった」
他のアルファには全く感づかれなかったカリスのフェロモンに、リオネルだけが気付いていた。他のアルファのフェロモンを感じられなかったカリスが、リオネルのフェロモンだけは感じていた。
それを考えると、カリスとリオネルは運命の番だというのも間違いではないのかもしれない。
「わたしも閣下の素顔を見たとき、この尊い方に生涯仕えたいと思いました。生涯おそばにいたい、例え閣下が誰かのものになってしまっても、一番近くでお支えしたいと思っていました」
誠実なリオネルの言葉にカリスは自分の中に焦りがあったことを認めた。
「すまない、こんな性急にことを運んでしまって」
「謝られることはないです。わたしは閣下の番になれて幸せです」
「次のヒートが十年先かもしれないと思ったら、今番になっておかなければ、リオネルを手に入れられないと思ってしまった」
次のヒートが十年後かもしれない可能性を口にすれば、リオネルも考えることがあったようだ。
「次のヒートは十年後かもしれない……」
「その可能性も大いにあるな」
「それでは、わたしは十年後まで閣下を抱くことができないのですか?」
「そんなの無理です」と絶望的な顔になっているリオネルに、カリスは吹き出してしまった。
カリスの番になることに抵抗があったわけではないし、カリスのヒートが今後来ないかもしれないこともリオネルは気にしている様子はなかった。
考えていたのは、もうカリスを抱けないかもしれないということだけだった。
「ヒートのとき以外はおれを抱けないか?」
「いいえ! 毎日でもお抱き致したいです!」
「毎日か……体力は持つだろうが、毎日は困るな」
「閣下の都合のいいときに抱かせていただければと思います!」
リオネルの言葉に、カリスはリオネルを抱き寄せて、頬を撫で、その唇に軽く口付ける。
「どうしてくれる。もうおれはお前を手放せないぞ?」
「手放さないでください。ずっとおそばに置いてください」
「番を持たないオメガは短命だと昔から言われていた。兄上からは早く番を持つようにと何度も言われた。だが、おれは誰にも触れられたくなかった。自分がオメガだということを認められなかった」
リオネルに出会うまでは、誰かに触れられたいと思うことはなかった。出会ってからも、リオネル以外に触れられたいと思わなかった。
リオネルだけがカリスの特別だった。
「リオネルは番を解除しようと思えばいつでもできる。おれと別れたいと思ったら、いつでもそうしてくれて構わない」
「何を仰るのですか! わたしは閣下を運命の番と思っております! そうでなくても、閣下だけを愛しております! 閣下以外の相手を抱くなど考えられません! 閣下の方こそ、わたしと別れたいと思っても、もう番になってしまったので方法はありませんよ?」
オメガは生涯に一人しか番を持てないが、アルファは番を解消しようと思えばできるし、番を複数持つこともできる。カリスがそれを指摘すれば、リオネルは真面目にカリスを見つめてくる。
こんなに情熱的に口説かれて、心が動かないはずがない。
「あぁ、リオネル、かわいい。おれのリオネル」
「はい、閣下のリオネルです」
「手放すことなどできるわけがない。おれはリオネルがかわいくてかわいくてたまらない」
抱き締めると、リオネルもカリスに告げる。
「愛する閣下。どうか、ずっとわたしをおそばに置いてください」
「リオネル」
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「おれも愛している、リオネル」
お互いに気持ちを確かめ合って、カリスとリオネルは本当の意味で夫夫となった。
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