土地神様に守られて 〜転生したらまた魔女の男子だった件〜

秋月真鳥

文字の大きさ
151 / 180
転生したらまた魔女の男子だった件

151.セイラン様と僕

しおりを挟む
 セイラン様について僕は知らないことがたくさんあった。
 セイラン様のお口が思っていたよりもずっと大きいこと。体格がよくて体が大きいので当然顎も大きいのだが、驚くほど大きく口が開くのだ。
 口の中には尖った牙が何本も生えていて、僕とは違う生き物なのだとよく分かる。

 その大きな口で、僕は肩から鎖骨までを噛まれた。
 噛まれた傷跡はアンナマリ姉さんの診療所に行っても治すことができず、土地神様の無意識のマーキングがされていることが分かって、セイラン様自身に治してもらった。
 セイラン様が舐めたら治るだなんて、僕は心臓がドキドキしてしまった。

 セイラン様は舌も大きくて長い。
 虎の姿のときには僕のことを舐めると、僕の皮くらいべろりと剥がれてしまう凶器のような舌を持っているので絶対に舐めないが、人間の姿だと舌は凶器ではない。
 大きな舌に口の中を蹂躙されて、舐め尽くされて、舌を引っ張り出されて吸われて舌を絡めるのがどれだけ気持ちいいか、僕は知ってしまった。
 セイラン様も相当気持ちよかったのだろう。我を忘れて僕の肩に噛み付いてしまった。

 あれ以来キスもしていないし、噛み付かれてもいないのだが、僕は期待してしまっていた。

 リラとレイリ様にはセイラン様と僕の関係は筒抜けだ。
 一緒にお風呂に入っていることもバレている。

 一緒にお風呂に入ってくれるようになってから、僕はセイラン様の白い肌が妙に眩しく感じられていた。その肌に触れたいし、唇を寄せたい。舌を這わせたい。
 特に丸い大殿筋の発達したお尻なんて、触れたくてたまらない。

 温泉でお風呂に入るときに知っていたが、セイラン様は中心もとても大きい。体格に見合っているというのだろう。
 セイラン様の中心を見ていると、そわそわしてしまう。

 理性を失って噛み付くことが怖くて、セイラン様は僕に抱かれることを選んだけれど、逆だったら、あの大きな中心が僕に入っていたのだ。それを考えるととても無理だと思う。

「ラーイ、じっと私を見て、どうした?」

 湯船の中で向き合ってセイラン様の足の間に座っている僕に、セイラン様が解いた僕の黒髪を指に絡めながら問いかける。僕の髪はストレートで、母やリラの癖のある髪とは全く違う。
 スリーズちゃんはお父さんに似ているので髪の毛は真っすぐだ。
 セイラン様も髪の毛は真っすぐだが、レイリ様は若干癖があるので、セイラン様と僕との間の赤ちゃんが生まれたら、髪の毛がどうなるかは分からない。

 赤ちゃん。

 考えると顔が熱くなってくる。

「顔が真っ赤だぞ? 逆上せたか?」
「そ、そうかもしれません。僕、出ますね」
「私も出よう」

 湯船から立ち上がって用意しておいたバスタオルで洗い場で体を拭いて、セイラン様はいつもの着物を、僕はパジャマを着てお風呂から出た。
 季節は秋になっているので、日に日に涼しくなってきているが、まだ暑さは残っている。
 セイラン様の部屋に連れて行ってもらって、僕は風の術で髪を乾かしてもらった。セイラン様の長い髪も風の術で乾かされている。

「気持ちいいです」
「ラーイの髪はさらさらで手触りがいい」
「セイラン様の髪もさらさらですよ」

 お互いに髪を梳くのは、僕とセイラン様の日課のようなものだ。毎朝と毎晩、僕とセイラン様はお互いの髪を梳いている。

「セイラン様……いいでしょう?」
「もう乳は必要ないはずだ。だから出なくなって来ておるのだと思うぞ」
「触るだけでも」
「ラーイ、私が抱かれる方なら、私が生むのだから、いつまでも乳に執着しておっては父親になれぬぞ?」

 痛いところを突かれてしまった。
 僕はセイラン様の胸に触れたくてたまらないのに、セイラン様はなかなか許してくれない。一緒にお風呂に入るようになってから、ガードが固くなった気がしている。

「それなら、キスしてください」
「また噛んでしまうかもしれぬ」
「噛まれても、対処法は分かったでしょう?」

 目を瞑って唇を突き出すようにすると、セイラン様が柔く唇に触れるだけのキスをする。それでは足りなくてセイラン様の唇を追い駆けて行くと、大きな手で僕の口を押えられてしまった。

「もがっ!」
「ラーイに深い口付けはまだ早かった」
「いいではないですか! 僕はもう十五です!」
「まだ十五だ!」
「セイラン様! キス! したいんです!」

 僕の口を押える手をどけて迫っていくとセイラン様が困ったように目を伏せている。目元が赤いのが色っぽくて僕は止められない。
 目元にキスをすると、セイラン様が目を閉じる。
 後頭部の髪に手を差し込んで唇を重ねると、セイラン様の口がくわっと開いた。

 セイラン様の口が僕の口を全部食べてしまうような形で口付けて、セイラン様の口の中で僕が口を開けば遠慮なく舌が入って来る。太くて長い舌は僕の舌を絡め取り、喉奥まで犯しそうになっていた。
 白虎の本性を持つセイラン様を本気にさせてしまったのだというちょっとした後悔と、セイラン様とキスができているという喜びが同時に胸にわいてくる。

 息もできないような激しい口付けに、僕がセイラン様の胸を押すと、セイラン様が僕の首筋に口を移した。

「ひぁっ!?」

 噛まれた。
 そこそこの痛みはあったが、それ以上にじんじんと痺れるような快感がそこから広がっていく。
 僕の声に我に返ったセイラン様は、弾かれたように体を離していた。

 セイラン様という支えを失って、僕は床の上に転がる。
 セイラン様は虎の姿になって部屋の隅に逃げてしまった。

「セイラン様?」
「やはり、また噛んでしまった……。私はラーイを大事に思っておるのに」
「痛くなかったです。平気ですよ」
「ラーイ、すまなかった」
「大丈夫です」

 部屋の隅まで歩いて行って、手を伸ばしてセイラン様の毛皮を撫でると、水色の目が潤んでいるのが分かる。泣くほど僕を傷付けたくなかったのだと分かると、セイラン様が愛しくて胸が苦しくなってくる。

「セイラン様、大好きです。キスしてくれて嬉しかった」
「ラーイにはまだ早いのに、私の方が我慢できなかった」
「僕が煽ったんですよ。セイラン様のせいじゃないです」

 それにしても、首筋にくっきりと残る噛み痕はさすがに困る。これは襟のあるシャツを着ても誤魔化せないだろう。

「セイラン様、首の傷を消してくれますか?」
「そうであったな」

 人間の姿に戻ったセイラン様が僕のパジャマのボタンを外した。パジャマを貫通する勢いで噛まれた痕ははっきりと残っていて、セイラン様がそこに丁寧に舌を這わせる。
 舐められると消えていくのは白虎族の傷の治癒の仕方が舐めるということだからだろう。

 すっかりと消えてしまった傷に安堵して、僕はセイラン様と一緒に風呂場に向かった。
 体を軽く流しておきたいと思ったのだが、風呂場ではリラとレイリ様が揉めていた。

「レイリ様も一緒に入るのよー!」
「いけません、リラ! 年頃の女の子が僕とお風呂に入るなど!」
「お兄ちゃんはセイラン様と入ってるじゃない! 私だけなんでダメなのよー!」
「ラーイは男の子です! リラは女の子です!」
「そういうのを差別って言うのよ!」
「差別ではなく、区別です!」

 レイリ様の着物を引っぺがしてお風呂に引きずり込もうとするリラと、着物を押さえて脱げないようにして抵抗するレイリ様の姿に、僕とセイラン様は顔を見合わせる。

「これは見なかったことにした方がいいですね」
「そうだな。ラーイの体は濡れた手拭いで拭こう」

 僕とセイラン様は手拭いを濡らして、部屋に戻ることにした。

「一緒に入ってくれないと嫌ー!」
「嫌でもなんでも、ダメなものはダメですー!」
「レイリ様の意地悪ー!」
「なんとでも言ってください」

 リラとレイリ様の攻防戦は続いていた。

「ラーイ、あまり私を煽らないでくれ」
「セイラン様とキスがしたかったんです」
「自分を理性的だと思ってきたが、違うようで最近怖いのだ」

 部屋で二人きりになって、セイラン様に体を拭いてもらいながら、僕は目を閉じてセイラン様とのキスを思い出していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

処理中です...