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第1部 天然女子高生のためのそーかつ
第29話 専守防衛
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東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生には(後略)
「うわっ、どうしたの梅畑君。誰かに殴られたの?」
「実は昨日の夜にゲーセンで……」
ある朝登校した私は、高校生プロゲーマーとして有名な同級生の梅畑伝治君が左頬を真っ赤に腫らしているのを見て驚いた。
彼の話によると昨日の夜にゲーセンで格闘ゲームを遊んでいた時、対戦相手だった怖そうなお兄さんを人前でコテンパンに叩きのめしたせいで怒りを買って殴られたらしい。
「こんなんじゃ怖くてもうゲーセンに行けないよ。家庭用機で遊ぶしかないのかな……」
「ちょっと待ってよ梅畑君。理不尽に殴られたのに怯えて逃げたままなんて、男の子として恥ずかしくないの? 私、梅畑君がそんな弱虫だなんて思わなかった」
近くの席から声をかけてきたのは梅畑君の思い人であるところの朝日千春さんで、彼女が自分から話しかけてきたことに梅畑君は驚いていた。
「朝日さんの言う通りだと思うけど、俺、人生で喧嘩とかしたことないし……」
「梅畑君が平和主義者なのはいいことだと思うけど、専守防衛でも反撃は絶対にするべきなんだから、このまま逃げてちゃ駄目だよ」
「専守防衛ですか。それなら、私めに妙案があります」
教室前方から会話に加わってきたのは同級生で住職見習いの円城寺網人君で、とんちに定評のある彼には梅畑君を救うアイディアがあるらしかった。
「……という作戦なのですが、いかがでしょう?」
「いいと思う。私の身内にちょうどいい人がいるから、呼んでくるね。皆で夜のゲーセンに行きましょ!」
「ありがとう朝日さん!」
いつの間にか私も含めた4人で夜のゲーセンに行ってリベンジをすることになったが、人数が多い方が安全ではあるので私はしぶしぶ付いていくことにした。
その翌日の夜、梅畑君はまたしても格闘ゲームで別の怖そうなお兄さんを叩きのめした。
「何だあお前、ちょっと上手いからって調子に乗ってんじゃねえぞ!」
「おおっと、そちらのお方、暴力を振るわれるおつもりなのですか」
梅畑君に喧嘩を売った怖いお兄さんに、近くで様子を見ていた円城寺君が話しかけた。
「んだよ、分かってんじゃねえか。ムカついたから一発殴らせろってことだよ」
「なるほど。ここで儒教の話ですが、『論語』に、己の欲せざる所は人に施すなかれという教えがあります。この青年に暴力を振るいたいということは、あなたは殴られたいということですね」
「ああ!?」
「お兄ちゃーん、ちょっと来てー!」
激昂する怖いお兄さんを尻目に、朝日さんは大声で助っ人を呼んだ。
「どうもこんばんは、妹のお友達がお世話になったようで」
「あ、あんた、プロボクサーの!?」
やって来たのは朝日さんのお兄さんである朝日潮さんで、新人プロボクサーとして格闘技マニアの間では有名な人らしかった。
「孔子の教えに基づき、今から闘魂注入パンチをお見舞いしますよ。さあ、舌を噛まないように気を付けて」
「ひいっ、すいませんでしたあ~~!!」
満面の笑みで拳を握りしめた潮さんに、怖いお兄さんは恐怖で震えながら逃げ出していった。
「朝日さん、君のおかげで俺はこれからもゲーセンに通えるよ。本当にありがとう!」
「そんな、友達のためならこれぐらい平気だよ」
梅畑君は感涙にむせびながら朝日さんの手を握り、恐縮する朝日さんの後方から潮さんが近寄ってきた。
「今日は大変だったね。ところで、君はどこの馬の骨なのかな? 僕の目の前で妹の手を握るとは、怖いもの知らずだねえ」
「ひいっ!?」
「全く、お後がよろしいようで!!」
潮さんに笑顔で圧力をかけられている梅畑君と一件落着といった表情をしている円城寺君を交互に眺めながら、私は梅畑君の恋路は大変そうだなあと思った。
(続く)
「うわっ、どうしたの梅畑君。誰かに殴られたの?」
「実は昨日の夜にゲーセンで……」
ある朝登校した私は、高校生プロゲーマーとして有名な同級生の梅畑伝治君が左頬を真っ赤に腫らしているのを見て驚いた。
彼の話によると昨日の夜にゲーセンで格闘ゲームを遊んでいた時、対戦相手だった怖そうなお兄さんを人前でコテンパンに叩きのめしたせいで怒りを買って殴られたらしい。
「こんなんじゃ怖くてもうゲーセンに行けないよ。家庭用機で遊ぶしかないのかな……」
「ちょっと待ってよ梅畑君。理不尽に殴られたのに怯えて逃げたままなんて、男の子として恥ずかしくないの? 私、梅畑君がそんな弱虫だなんて思わなかった」
近くの席から声をかけてきたのは梅畑君の思い人であるところの朝日千春さんで、彼女が自分から話しかけてきたことに梅畑君は驚いていた。
「朝日さんの言う通りだと思うけど、俺、人生で喧嘩とかしたことないし……」
「梅畑君が平和主義者なのはいいことだと思うけど、専守防衛でも反撃は絶対にするべきなんだから、このまま逃げてちゃ駄目だよ」
「専守防衛ですか。それなら、私めに妙案があります」
教室前方から会話に加わってきたのは同級生で住職見習いの円城寺網人君で、とんちに定評のある彼には梅畑君を救うアイディアがあるらしかった。
「……という作戦なのですが、いかがでしょう?」
「いいと思う。私の身内にちょうどいい人がいるから、呼んでくるね。皆で夜のゲーセンに行きましょ!」
「ありがとう朝日さん!」
いつの間にか私も含めた4人で夜のゲーセンに行ってリベンジをすることになったが、人数が多い方が安全ではあるので私はしぶしぶ付いていくことにした。
その翌日の夜、梅畑君はまたしても格闘ゲームで別の怖そうなお兄さんを叩きのめした。
「何だあお前、ちょっと上手いからって調子に乗ってんじゃねえぞ!」
「おおっと、そちらのお方、暴力を振るわれるおつもりなのですか」
梅畑君に喧嘩を売った怖いお兄さんに、近くで様子を見ていた円城寺君が話しかけた。
「んだよ、分かってんじゃねえか。ムカついたから一発殴らせろってことだよ」
「なるほど。ここで儒教の話ですが、『論語』に、己の欲せざる所は人に施すなかれという教えがあります。この青年に暴力を振るいたいということは、あなたは殴られたいということですね」
「ああ!?」
「お兄ちゃーん、ちょっと来てー!」
激昂する怖いお兄さんを尻目に、朝日さんは大声で助っ人を呼んだ。
「どうもこんばんは、妹のお友達がお世話になったようで」
「あ、あんた、プロボクサーの!?」
やって来たのは朝日さんのお兄さんである朝日潮さんで、新人プロボクサーとして格闘技マニアの間では有名な人らしかった。
「孔子の教えに基づき、今から闘魂注入パンチをお見舞いしますよ。さあ、舌を噛まないように気を付けて」
「ひいっ、すいませんでしたあ~~!!」
満面の笑みで拳を握りしめた潮さんに、怖いお兄さんは恐怖で震えながら逃げ出していった。
「朝日さん、君のおかげで俺はこれからもゲーセンに通えるよ。本当にありがとう!」
「そんな、友達のためならこれぐらい平気だよ」
梅畑君は感涙にむせびながら朝日さんの手を握り、恐縮する朝日さんの後方から潮さんが近寄ってきた。
「今日は大変だったね。ところで、君はどこの馬の骨なのかな? 僕の目の前で妹の手を握るとは、怖いもの知らずだねえ」
「ひいっ!?」
「全く、お後がよろしいようで!!」
潮さんに笑顔で圧力をかけられている梅畑君と一件落着といった表情をしている円城寺君を交互に眺めながら、私は梅畑君の恋路は大変そうだなあと思った。
(続く)
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