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第3部 天然女子高生のための超そーかつ
第64話 転売屋
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東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生にはリベラルアーツ精神と左派系の思想が叩き込まれている。
「あちゃー、やっぱり品切れかあ。Jungleのはプレミア価格になっちゃってるし……」
ある日曜日の昼。私、野掘真奈は自室のノートパソコンで複数のショッピングサイトにアクセスしていた。
飼っているハムスターの回し車が古びてきたので新しく有名デザイナーが手がけた高級品を注文しようとしたものの、出荷数が少なかったこともあって回し車は既に買い占められており、巨大通販サイトのJungleでは高額で転売されていた。
「ごめんねハムリン。流石に回し車に6000円は払えないから、もうちょっと古いので我慢してね」
『元気がないようだな、地球人の少女よ!』
「ひえー助けてーー」
ケージの中でリラックスしているハムリンに呼びかけると、換気のため開けていた窓から大きめの蜂が飛んできた。
刺されると痛そうなのですぐに部屋から逃げ出そうとしたが、蜂はその場に滞空すると私にテレパシーで呼びかけ始めた。
『待て、逃げないでくれ。私だ、君には何度も世話になっているブラッキ星人だ』
「何だ宇宙人さんですか。もうちょっと平和的な虫に憑依してくださいよ……」
目の前の蜂に憑依していたのは外宇宙の恒星系から地球を訪れたブラッキ星人で、彼らは同じ恒星系のローキ星人と延々戦争を続けているのだった。
「それで、今回は何の用ですか? というかまだ戦争やってるんですか?」
『まだと言われても、君と初めて会ってから大して時間は経っていないぞ。それはともかく、私の母星では最近闇市が問題となっていてな。一部の市民が配給された食料品を余分に入手して、闇市を開催しては高額で売っているというのだ。闇市自体は好きにやってくれてよいのだが、食料品を不正に入手されるのは困るという訳だ』
「何だかんだで戦時下なんですね……」
目の前にいる宇宙人は母星では体制側の人物らしく、配給される食料品を不正な手段で余分に入手する一部の市民に頭を悩ませているようだった。
『私の母星と異なり戦時下ではないが、この惑星の日本という国では転売屋と呼ばれる悪徳商法が問題となっているとの情報を得た。君には何か有効な解決案はないだろうか』
「そうですねー。抽選販売とか個数制限での転売対策はよく聞きますけど、食料品の配給だと使えなさそうですね」
『中々難しいのだな。ところで、その画面に映っているのは何だ?』
宇宙人(が憑依した蜂)は滞空したまま机上にあるノートパソコンの画面を見て質問し、そこには先ほどの高級回し車の購入ページが表示されていた。
「飼っているハムスターに新しい回し車を買おうと思ったんですけど、有名デザイナーが手がけた高級品なので転売屋に買い占められちゃってるんです。そのせいで価格がつり上がっちゃって……」
『なるほど。……そうか、高級品はすぐさま買い占められるのだから、転売を防ぐにはその逆をやればいいんだ。早速母星で試してみよう』
宇宙人はそう言うと蜂に憑依したまま窓から外へと飛んでいき、私はまた入ってこないようにと窓を閉めて鍵をかけた。
その1か月後……
『地球人の少女よ、配給する食料品を闇市で転売されないよう粟や稗や脱脂粉乳に変更したのだが、あまりにもまずくて市民が暴動を起こしてしまったんだ。どうか他の転売対策を教えてうわなにをするやめくぁwせdrftgyふじこlp;@:』
「知らんっ!!」
再び蜂に憑依して助けを求めてきた宇宙人に、私は容赦なく殺虫スプレーを吹きかけたのだった。
(続く)
「あちゃー、やっぱり品切れかあ。Jungleのはプレミア価格になっちゃってるし……」
ある日曜日の昼。私、野掘真奈は自室のノートパソコンで複数のショッピングサイトにアクセスしていた。
飼っているハムスターの回し車が古びてきたので新しく有名デザイナーが手がけた高級品を注文しようとしたものの、出荷数が少なかったこともあって回し車は既に買い占められており、巨大通販サイトのJungleでは高額で転売されていた。
「ごめんねハムリン。流石に回し車に6000円は払えないから、もうちょっと古いので我慢してね」
『元気がないようだな、地球人の少女よ!』
「ひえー助けてーー」
ケージの中でリラックスしているハムリンに呼びかけると、換気のため開けていた窓から大きめの蜂が飛んできた。
刺されると痛そうなのですぐに部屋から逃げ出そうとしたが、蜂はその場に滞空すると私にテレパシーで呼びかけ始めた。
『待て、逃げないでくれ。私だ、君には何度も世話になっているブラッキ星人だ』
「何だ宇宙人さんですか。もうちょっと平和的な虫に憑依してくださいよ……」
目の前の蜂に憑依していたのは外宇宙の恒星系から地球を訪れたブラッキ星人で、彼らは同じ恒星系のローキ星人と延々戦争を続けているのだった。
「それで、今回は何の用ですか? というかまだ戦争やってるんですか?」
『まだと言われても、君と初めて会ってから大して時間は経っていないぞ。それはともかく、私の母星では最近闇市が問題となっていてな。一部の市民が配給された食料品を余分に入手して、闇市を開催しては高額で売っているというのだ。闇市自体は好きにやってくれてよいのだが、食料品を不正に入手されるのは困るという訳だ』
「何だかんだで戦時下なんですね……」
目の前にいる宇宙人は母星では体制側の人物らしく、配給される食料品を不正な手段で余分に入手する一部の市民に頭を悩ませているようだった。
『私の母星と異なり戦時下ではないが、この惑星の日本という国では転売屋と呼ばれる悪徳商法が問題となっているとの情報を得た。君には何か有効な解決案はないだろうか』
「そうですねー。抽選販売とか個数制限での転売対策はよく聞きますけど、食料品の配給だと使えなさそうですね」
『中々難しいのだな。ところで、その画面に映っているのは何だ?』
宇宙人(が憑依した蜂)は滞空したまま机上にあるノートパソコンの画面を見て質問し、そこには先ほどの高級回し車の購入ページが表示されていた。
「飼っているハムスターに新しい回し車を買おうと思ったんですけど、有名デザイナーが手がけた高級品なので転売屋に買い占められちゃってるんです。そのせいで価格がつり上がっちゃって……」
『なるほど。……そうか、高級品はすぐさま買い占められるのだから、転売を防ぐにはその逆をやればいいんだ。早速母星で試してみよう』
宇宙人はそう言うと蜂に憑依したまま窓から外へと飛んでいき、私はまた入ってこないようにと窓を閉めて鍵をかけた。
その1か月後……
『地球人の少女よ、配給する食料品を闇市で転売されないよう粟や稗や脱脂粉乳に変更したのだが、あまりにもまずくて市民が暴動を起こしてしまったんだ。どうか他の転売対策を教えてうわなにをするやめくぁwせdrftgyふじこlp;@:』
「知らんっ!!」
再び蜂に憑依して助けを求めてきた宇宙人に、私は容赦なく殺虫スプレーを吹きかけたのだった。
(続く)
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