73 / 181
第3部 天然女子高生のための超そーかつ
第65話 不正指令電磁的記録供用罪
しおりを挟む
東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生には(後略)
「これがパケモン大投票のページなのですよ。野掘さんもぜひステントンに一票をお願いします」
「へえー、国靖さんはこのキャラクターが好きなんだ。ちょっと変わったデザインだけど」
ある日の放課後、私は同じクラスの女友達であり柔道部員の国靖まひるさんに連れられてパソコン室に来ていた。
この高校はセキュリティが甘いのでパソコン室に並んでいる旧型のデスクトップパソコンはインターネットに常時接続されており、生徒なら授業時間外はいつでも利用できるようになっていた。
「パケモンにはペケチューとかヨンチャマとか人気キャラクターが多くて、ステントンは10位以内に入れるかも分からないのです。ちょっとした対策は行っているのですが……」
「確かに、普通は主人公のキャラクターとかに人気が集まりそうだよね。でも現在16位って結構健闘してない?」
国靖さんは激しい性格の一方で以前からマスコット的なかわいいキャラクターを愛好しており、現在私に見せてくれているのは国民的キャラクター作品「パケットモンスター」のインターネット人気投票ページだった。
このウェブサイトでは新作映画の公開を記念して全パケモンの人気投票が行われていて、メールアドレスを登録すれば1人につき1日1回好きなキャラクターに投票できるようになっていた。
国靖さんはステントンという金属の筒のようなキャラクターを応援しているらしく、奇抜すぎるデザインにも関わらず600種類以上いるパケモンの中で16位とかなり健闘しているようだった。
「ええ、実はプログラミングを少し勉強しまして、自動投票プログラムを作ってインターネット上で公開しているのです。このプログラムは名目上あらゆるパケモンに投票できるのですが、実はどのパケモンを選んでもステントンに投票されるようになっています。これはオフレコでお願いしますね」
「は、ははは……」
国靖さんは無駄に高度かつ危険なやり方でステントンを応援していたが、単なるキャラクターの人気投票なので許される範囲内だろうと思った。
「でも、そこまでして16位となるとグランプリは難しそうだよね。いっそのこと、この高校の全生徒が毎日投票してくれればいいんだけど……」
「そうですね……あっ、それなら何とかなりそうです! このパソコンを通じて全生徒のメールアドレスを……おっと、野掘さんはもうお帰り頂いて大丈夫ですよ。時間もかかりますので」
国靖さんはそう言うとパソコンでプログラミングの画面を立ち上げ始め、私は一体何をするつもりなのだろうと思いながらパソコン室を後にした。
その翌週……
『本日未明、警視庁は不正指令電磁的記録供用罪の疑いで千代田区在住の女子高校生を逮捕しました。この女子生徒は高校のパソコンを通じて全生徒のメールアドレスを不正に入手し、それらのアドレスに偽メールを送りつけてコンピュータウイルスを使用させたとみられています。取り調べに対し、女子生徒はステントンを1位にしてあげたかったと泣きながら供述しており……』
「マナちゃん、今回の事件の影響でステントンは投票対象外になるんだって! 私も投票してあげてたからちょっと残念かも」
「は、ははは……」
友達が逮捕されたにも関わらずけろりとしている新聞部員の朝日千春さんに、私は自分が余計な提案をしなければよかったのかなあと思った。
(続く)
「これがパケモン大投票のページなのですよ。野掘さんもぜひステントンに一票をお願いします」
「へえー、国靖さんはこのキャラクターが好きなんだ。ちょっと変わったデザインだけど」
ある日の放課後、私は同じクラスの女友達であり柔道部員の国靖まひるさんに連れられてパソコン室に来ていた。
この高校はセキュリティが甘いのでパソコン室に並んでいる旧型のデスクトップパソコンはインターネットに常時接続されており、生徒なら授業時間外はいつでも利用できるようになっていた。
「パケモンにはペケチューとかヨンチャマとか人気キャラクターが多くて、ステントンは10位以内に入れるかも分からないのです。ちょっとした対策は行っているのですが……」
「確かに、普通は主人公のキャラクターとかに人気が集まりそうだよね。でも現在16位って結構健闘してない?」
国靖さんは激しい性格の一方で以前からマスコット的なかわいいキャラクターを愛好しており、現在私に見せてくれているのは国民的キャラクター作品「パケットモンスター」のインターネット人気投票ページだった。
このウェブサイトでは新作映画の公開を記念して全パケモンの人気投票が行われていて、メールアドレスを登録すれば1人につき1日1回好きなキャラクターに投票できるようになっていた。
国靖さんはステントンという金属の筒のようなキャラクターを応援しているらしく、奇抜すぎるデザインにも関わらず600種類以上いるパケモンの中で16位とかなり健闘しているようだった。
「ええ、実はプログラミングを少し勉強しまして、自動投票プログラムを作ってインターネット上で公開しているのです。このプログラムは名目上あらゆるパケモンに投票できるのですが、実はどのパケモンを選んでもステントンに投票されるようになっています。これはオフレコでお願いしますね」
「は、ははは……」
国靖さんは無駄に高度かつ危険なやり方でステントンを応援していたが、単なるキャラクターの人気投票なので許される範囲内だろうと思った。
「でも、そこまでして16位となるとグランプリは難しそうだよね。いっそのこと、この高校の全生徒が毎日投票してくれればいいんだけど……」
「そうですね……あっ、それなら何とかなりそうです! このパソコンを通じて全生徒のメールアドレスを……おっと、野掘さんはもうお帰り頂いて大丈夫ですよ。時間もかかりますので」
国靖さんはそう言うとパソコンでプログラミングの画面を立ち上げ始め、私は一体何をするつもりなのだろうと思いながらパソコン室を後にした。
その翌週……
『本日未明、警視庁は不正指令電磁的記録供用罪の疑いで千代田区在住の女子高校生を逮捕しました。この女子生徒は高校のパソコンを通じて全生徒のメールアドレスを不正に入手し、それらのアドレスに偽メールを送りつけてコンピュータウイルスを使用させたとみられています。取り調べに対し、女子生徒はステントンを1位にしてあげたかったと泣きながら供述しており……』
「マナちゃん、今回の事件の影響でステントンは投票対象外になるんだって! 私も投票してあげてたからちょっと残念かも」
「は、ははは……」
友達が逮捕されたにも関わらずけろりとしている新聞部員の朝日千春さんに、私は自分が余計な提案をしなければよかったのかなあと思った。
(続く)
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる