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第3部 天然女子高生のための超そーかつ
第80話 キャンセルカルチャー
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東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生には(後略)
「うーん……借りたはいいもののこれを見てもいいんでしょうか……」
「宝来さん、それアニメのDVD? 誰かに借りたの?」
ある朝登校した私は、同じクラスの漫研部員である宝来遵さんが机の上にあるアニメのDVDソフトを前に悩んでいる姿を目にした。
「おはようです、真奈さん。別のクラスの友達にBL以外でオススメのアニメを聞いたらこのDVDを貸してくれて、私も名前は知ってるアニメだったんです。『キチクーベイエー』っていう隠れた人気作なんですけど、放映後にメインキャラクターのハガクレちゃんの声優が大麻で捕まってるんですよ」
「へ、へえー、そうなんだ。声優さんが逮捕されたのは驚くけど、何か問題があるの?」
「もちろん問題です! 人気アニメの声優という社会的責任のある立場でありながら麻薬を乱用するような人の出演作は見たくありません! 法令遵守の見地から許せないのであります!!」
「ええ……」
そもそも友達間でのDVDの貸し借り自体が法的にグレーゾーンなのはともかく、声優が不祥事を起こしたからといって友達から借りたDVDを見ないのはやりすぎに感じた。
「あまり肯定的に思えないのは分かるけど、そんなキャンセルカルチャーみたいなこと言ってたら他にも色んな作品を見られなくなっちゃうよ。殺人とか放火をした訳じゃないし、それはそれと割り切ってアニメを見たらいいんじゃない?」
「真奈さんの言うことにも一理ありますね。その声優さんは既に芸能界を引退されてますし、私もこのDVDはちゃんと見てみようと思います」
宝来さんはそう言うとDVDソフトを制カバンに片づけ、後で読むつもりなのかライトノベルの文庫本を取り出して机の上に置いた。
そうこうしている内に1限目が始まる時間になり、国語科の金坂先生が廊下を歩いてくるのが見えたので私は自分の席に戻った。
「あら、それは漫画の本……じゃなくてライトノベルみたいだから校則的にはOKね。でも今は読んじゃ駄目よ?」
「ごめんなさい、授業中はしまっておきます」
宝来さんの座席は一番前の列なので、金坂先生は彼女の机の上にあるライトノベルに気づいたようだった。
「それにしても、ツノカワも立派な出版社になったものよねえ。昔は社長がコカインを密輸して逮捕されたりしてたのに」
「こんな本もう読まないでありますー!!」
いきなり叫ぶと文庫本を教室前方のごみ箱に投げ捨てた宝来さんを見て、クラス全員が唖然としていた。
(続く)
「うーん……借りたはいいもののこれを見てもいいんでしょうか……」
「宝来さん、それアニメのDVD? 誰かに借りたの?」
ある朝登校した私は、同じクラスの漫研部員である宝来遵さんが机の上にあるアニメのDVDソフトを前に悩んでいる姿を目にした。
「おはようです、真奈さん。別のクラスの友達にBL以外でオススメのアニメを聞いたらこのDVDを貸してくれて、私も名前は知ってるアニメだったんです。『キチクーベイエー』っていう隠れた人気作なんですけど、放映後にメインキャラクターのハガクレちゃんの声優が大麻で捕まってるんですよ」
「へ、へえー、そうなんだ。声優さんが逮捕されたのは驚くけど、何か問題があるの?」
「もちろん問題です! 人気アニメの声優という社会的責任のある立場でありながら麻薬を乱用するような人の出演作は見たくありません! 法令遵守の見地から許せないのであります!!」
「ええ……」
そもそも友達間でのDVDの貸し借り自体が法的にグレーゾーンなのはともかく、声優が不祥事を起こしたからといって友達から借りたDVDを見ないのはやりすぎに感じた。
「あまり肯定的に思えないのは分かるけど、そんなキャンセルカルチャーみたいなこと言ってたら他にも色んな作品を見られなくなっちゃうよ。殺人とか放火をした訳じゃないし、それはそれと割り切ってアニメを見たらいいんじゃない?」
「真奈さんの言うことにも一理ありますね。その声優さんは既に芸能界を引退されてますし、私もこのDVDはちゃんと見てみようと思います」
宝来さんはそう言うとDVDソフトを制カバンに片づけ、後で読むつもりなのかライトノベルの文庫本を取り出して机の上に置いた。
そうこうしている内に1限目が始まる時間になり、国語科の金坂先生が廊下を歩いてくるのが見えたので私は自分の席に戻った。
「あら、それは漫画の本……じゃなくてライトノベルみたいだから校則的にはOKね。でも今は読んじゃ駄目よ?」
「ごめんなさい、授業中はしまっておきます」
宝来さんの座席は一番前の列なので、金坂先生は彼女の机の上にあるライトノベルに気づいたようだった。
「それにしても、ツノカワも立派な出版社になったものよねえ。昔は社長がコカインを密輸して逮捕されたりしてたのに」
「こんな本もう読まないでありますー!!」
いきなり叫ぶと文庫本を教室前方のごみ箱に投げ捨てた宝来さんを見て、クラス全員が唖然としていた。
(続く)
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