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第5部 天然女子高生のための真そーかつ
第138話 大翻訳運動
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東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は(後略)
「今日は生きた英語を学ぶため、英語圏のSNSを見てみましょう。中国では現在政権批判の文脈から、中国国内のSNSに投稿された好戦的・排外的な書き込みを英語に翻訳して英語圏のSNSに投稿する社会運動が生じており、これは大翻訳運動と呼ばれています。このような感じですね」
ある日の英語の授業で、英語科の竹岡先生は持参したノートパソコンをインターネットにつないで画面をプロジェクターで黒板上に投影し、英語版のツィターを見せてくれていた。
そこには中国の人が自国のSNSの書き込みを英語に翻訳して投稿した文章が表示されており、人民解放軍による南西諸島での武力誇示や少数民族への弾圧を支持する内容の英文を見て、私はこれは確かに生きた英語だと思った。
「オーウ、何とワンダフルなのデショウ! ワタシもこんな風にジャパニーズのセンテンスをイングリッシュに翻訳してみたいデス」
「はははは、日本国内に他国のSNSに翻訳して投稿するほどの言説があるとは思えませんが、英作文の練習にはいいかも知れませんね。皆さんも公序良俗に反しない範囲で英語圏のSNSに書き込んでみるといいですよ」
英語科AET(英語指導助手)のガラー・スノハート先生も竹岡先生が見せてくれた「大翻訳運動」の英文に感銘を受けたらしく、私はスノハート先生はむしろ英語の書き込みを日本語に翻訳して日本版のツィターに投稿した方がいいのではと思った。
その翌日、用事で職員室を訪れていた私は自分の座席にいたスノハート先生に話しかけられた。
「ミズ野掘、ミスター竹岡が仰っていたグレートトランスレーションムーヴメントをワタシもやってみたいのデスが、ジャパニーズの細かいニュアンスをアンダースタンドできないのデス。アドバイスを頂けマセンか?」
「全然いいですよ。えーと、まず何を翻訳したいのか教えて頂けますか?」
「OK、これはワタシが好きなウェスタン・プロジェクトの同人アニメーションデス。これを英語にトランスレートしたいのデス」
スノハート先生はそう言うと、机上に置いてあったスマホで動画投稿サイトを開いた。
『お客様~! サラダをもっと美味しく簡単に、新食感の千切りができるサラダおろしのご紹介です!』
『ただただひたすらに、上下に上下に、しこしこ……しこしこ……』
『あの沖縄料理で有名なにんじんしりしりが、何とご家庭でこのサラダおろしがあれば簡単に作ることができちゃうんです!』
「いや多分これ西方プロジェクトじゃないですよ!? 同じ見た目で無関係な何かですよ!?」
「そうなのデスか? でもワンダフルなのでイングリッシュ字幕を付けて投稿したいデス。『しこしこ』はどうトランスレートすればよいのデショウか?」
「ええ……」
スノハート先生は人気シューティングゲーム『西方プロジェクト』の二次創作アニメ動画を英語に翻訳しようとしていたが、元の動画自体が原作のキャラクターがハイテンションで調理器具を紹介するという意味不明なものなのでこれを翻訳して何の意味があるのかと思った。
「翻訳自体はアドバイスできますけど、このアニメにも著作権者の人がいるはずなので勝手に海外のSNSに投稿するのはよくないと思いますよ。念のため作者さんに確認してみてはどうですか?」
「タシカにそれはその通りデス。クリエイターとジャパニーズでコミュニケートするコンフィデンスがないので、チョト工夫してみマス。ひとまずトランスレーションのアドバイスをよろしくお願いしマス」
著作権の話題を持ち出してやんわり断ろうとしたがスノハート先生はにんじんしりしりのアニメ動画を翻訳したくて仕方がないらしく、私は諦めて日本語のニュアンスについて先生に解説した。
その翌週……
『Hello, Everyone! I'm pleased to introduce to you all today a salad slicer. This will make your salads tastier and easier to make and slice for fresher texture!』
『Just keep moving it up and down, up and down, shikoshiko... shikoshiko...』
『With this salad slicer, you can easily make the famous Okinawan dish "Ninjin shirishiri" at home!』
『KON NA MONO!!』
「Hey, Ms. Nobori! The video I posted was reported in a US newspaper!!」
「校内では日本語で喋ってください!!」
スノハート先生はアニメ動画を自らが実写で再現したものをYoutubeに投稿して話題になり、「こんなもの!」という締めの台詞はアメリカ国内で大流行したらしい。
(続く)
「今日は生きた英語を学ぶため、英語圏のSNSを見てみましょう。中国では現在政権批判の文脈から、中国国内のSNSに投稿された好戦的・排外的な書き込みを英語に翻訳して英語圏のSNSに投稿する社会運動が生じており、これは大翻訳運動と呼ばれています。このような感じですね」
ある日の英語の授業で、英語科の竹岡先生は持参したノートパソコンをインターネットにつないで画面をプロジェクターで黒板上に投影し、英語版のツィターを見せてくれていた。
そこには中国の人が自国のSNSの書き込みを英語に翻訳して投稿した文章が表示されており、人民解放軍による南西諸島での武力誇示や少数民族への弾圧を支持する内容の英文を見て、私はこれは確かに生きた英語だと思った。
「オーウ、何とワンダフルなのデショウ! ワタシもこんな風にジャパニーズのセンテンスをイングリッシュに翻訳してみたいデス」
「はははは、日本国内に他国のSNSに翻訳して投稿するほどの言説があるとは思えませんが、英作文の練習にはいいかも知れませんね。皆さんも公序良俗に反しない範囲で英語圏のSNSに書き込んでみるといいですよ」
英語科AET(英語指導助手)のガラー・スノハート先生も竹岡先生が見せてくれた「大翻訳運動」の英文に感銘を受けたらしく、私はスノハート先生はむしろ英語の書き込みを日本語に翻訳して日本版のツィターに投稿した方がいいのではと思った。
その翌日、用事で職員室を訪れていた私は自分の座席にいたスノハート先生に話しかけられた。
「ミズ野掘、ミスター竹岡が仰っていたグレートトランスレーションムーヴメントをワタシもやってみたいのデスが、ジャパニーズの細かいニュアンスをアンダースタンドできないのデス。アドバイスを頂けマセンか?」
「全然いいですよ。えーと、まず何を翻訳したいのか教えて頂けますか?」
「OK、これはワタシが好きなウェスタン・プロジェクトの同人アニメーションデス。これを英語にトランスレートしたいのデス」
スノハート先生はそう言うと、机上に置いてあったスマホで動画投稿サイトを開いた。
『お客様~! サラダをもっと美味しく簡単に、新食感の千切りができるサラダおろしのご紹介です!』
『ただただひたすらに、上下に上下に、しこしこ……しこしこ……』
『あの沖縄料理で有名なにんじんしりしりが、何とご家庭でこのサラダおろしがあれば簡単に作ることができちゃうんです!』
「いや多分これ西方プロジェクトじゃないですよ!? 同じ見た目で無関係な何かですよ!?」
「そうなのデスか? でもワンダフルなのでイングリッシュ字幕を付けて投稿したいデス。『しこしこ』はどうトランスレートすればよいのデショウか?」
「ええ……」
スノハート先生は人気シューティングゲーム『西方プロジェクト』の二次創作アニメ動画を英語に翻訳しようとしていたが、元の動画自体が原作のキャラクターがハイテンションで調理器具を紹介するという意味不明なものなのでこれを翻訳して何の意味があるのかと思った。
「翻訳自体はアドバイスできますけど、このアニメにも著作権者の人がいるはずなので勝手に海外のSNSに投稿するのはよくないと思いますよ。念のため作者さんに確認してみてはどうですか?」
「タシカにそれはその通りデス。クリエイターとジャパニーズでコミュニケートするコンフィデンスがないので、チョト工夫してみマス。ひとまずトランスレーションのアドバイスをよろしくお願いしマス」
著作権の話題を持ち出してやんわり断ろうとしたがスノハート先生はにんじんしりしりのアニメ動画を翻訳したくて仕方がないらしく、私は諦めて日本語のニュアンスについて先生に解説した。
その翌週……
『Hello, Everyone! I'm pleased to introduce to you all today a salad slicer. This will make your salads tastier and easier to make and slice for fresher texture!』
『Just keep moving it up and down, up and down, shikoshiko... shikoshiko...』
『With this salad slicer, you can easily make the famous Okinawan dish "Ninjin shirishiri" at home!』
『KON NA MONO!!』
「Hey, Ms. Nobori! The video I posted was reported in a US newspaper!!」
「校内では日本語で喋ってください!!」
スノハート先生はアニメ動画を自らが実写で再現したものをYoutubeに投稿して話題になり、「こんなもの!」という締めの台詞はアメリカ国内で大流行したらしい。
(続く)
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