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第5部 天然女子高生のための真そーかつ

第137話 植林活動

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 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生には(後略)


「植林にご協力をお願いしまーす! あっ、ありがとうございます」

 ある日の放課後、硬式テニス部の先輩方と近くの専門店までテニス用品を買いに行こうとした私はケインズ女子高校硬式テニス部員の灰田はいだ菜々ななさんが校門前でチラシを配っている姿を見かけた。

「灰田さん、うちの高校の前で何か配ってるの? 植林って園芸部関連?」
「お疲れ様です。今度近くの山で植林活動のボランティアがあって、園芸部も参加する予定なんです。校長先生のご厚意でマルクス中高でもチラシを配らせて頂けることになって、放課後すぐに駆けつけたんです」
「植林はSDGs的やしええ取り組みなんとちゃうん? 結構受け取って貰えとったやん」

 2年生の平塚ひらつか鳴海なるみ先輩は1枚貰ったチラシをペラペラ言わせながらそう言い、灰田さんは小柄な美少女なので男子生徒を中心にチラシを受け取っている人は多いようだった。

「ええ、チラシ自体は順調に配れてるんですけど、その中で実際に来てくれそうな人はあんまりいないんです。植林活動って大変な割に成果が目で見て分かるまで時間がかかりますし、お礼も1日たった1000円しか出せないので。参加者を沢山集める方法があればいいんですけど……」
「それはライバル校として見過ごせないよ! そうだ、ゆきが当日薄着で参加してあげれば男の子が沢山集まるよ!!」
「死んでも行きたくありませんわ」
「そんなはっきり拒絶しなくても……」

 赤城あかぎ旗子はたこ先輩に植林活動への参加を推薦された堀江ほりえ有紀ゆき先輩はあっさりと断ったが、いつも仲良くして貰っている身として私も何か灰田さんの力になってあげたいと思った。

 その時、道路の向こう側から和服を来た男性が歩いてきて灰田さんに話しかけた。

「灰田さん、話は右子から聞いたよ。植林活動のボランティアに人を集めるため、私の人脈からとある有名人を当日招致しようじゃないか。どうです、そちらの皆さんもおいでになりませんか?」
「植林で有名人っちゅうともしかしてロイヤルなファミリーの方々ちゃうん!? 行く行く、皆で絶対行くわ!!」
行成ゆきなりさん、テニス部の皆さん、本当にありがとうございます! それでは当日はよろしくお願いします」

 後で灰田さんに聞いたところによると和服の男性はケインズ女子高校硬式テニス部員の三島みしま右子ゆうこさんのお父さんだったらしく、確か民族派団体の会長だったはずなので本当に皇族の人でも呼んでくるのではと思った。


 そして植林活動の当日……

「みっなさーん! 今日は事務所のお仕事でぇ、この私、グラビアアイドルの三基みきぷるんが植林に参加することになりましたぁ! 一緒に植林を頑張ってくれた人には私とのチェキ写真をプレゼントしまーす!!」
「「よっしゃー!!」」
「ありがとー! これ何だと思いますぅ? 三基ぷるんの苗木! なんちゃってー!!」

「キィー! お色気でわたくしより人気を博すなんて許せませんわ!! 旗子、鳴海、今日はあのアイドルに負けないよう頑張りますわよ!!」
「「がってんだー!!」」

 三島さんのお父さんが連れてきたグラビアアイドルに対抗心を燃やしているゆき先輩を見て、私はやる気を出してくれたようで何よりと思った。


 (続く)
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