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第6部 天然女子高生のための重そーかつ
第154話 昆虫飼料
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東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生にはリベラルアーツ精神と左派系の思想が叩き込まれている。
「うーん、流石に捨てたら蓮くんに悪いよね……ハムリンの餌にする訳にもいかないし……」
ある日曜日の昼、私、野掘真奈は自室の机の上に置いたコンビニスナックを見て悩んでいた。
お隣さんの6歳児である村田蓮くんがコンビニで見つけて買ってみたというお菓子「コオロギクッキー」を私にプレゼントしてくれたのだが、袋に印刷された説明によると大量のコオロギを粉末にして練り込んであるクッキーらしくどうにも食べる勇気が出なかったのだった。
『やはり昆虫を食べる勇気はないようだな、地球人の少女よ!』
「うわっお菓子が喋った!? 私ストレスでおかしくなったの!?」
『落ち着いてくれ、私だ、君にはいつも世話になっているブラッキ星人だ。私の母星に棲息している昆虫コーロギーによく似たこの惑星の昆虫に憑依したかったのだが、誤って食品化された状態の昆虫に憑依してしまったのだ』
「ああ、そういうことでしたか……」
私にテレパシーで話しかけていたのは例によって外宇宙の恒星系から地球を訪れたブラッキ星人らしく、生きているコオロギに憑依するつもりが粉末にされてクッキーに練り込まれたコオロギに憑依してしまったらしかった。
『この地球という惑星では近年環境保護の観点から昆虫食の導入が推進されているらしいが、私の母星でも長引く戦争による食糧不足を解決するために昆虫食の導入を計画していてな。だが君がこの菓子を食べたくないように昆虫を食すという行為には抵抗がある人民も多く、今日はどうすれば昆虫食を普及させられるか地球人の意見を聞かせて欲しいのだ』
「宇宙人さんもその辺の感性は私たちと変わらないんですね……」
ブラッキ星人は彼らの恒星系では地球人と同じような姿で生活しているらしく、昆虫食を忌避する感性にも大差ないようだった。
「そうですね、ちょっと前にネットニュースで読んだんですけど、昆虫食って実は虫をそのまま食べなくてもいいやり方があるらしいんですよ。具体的にはコオロギみたいな昆虫を加工して動物の飼料にして、それを牛とか豚みたいな家畜に食べさせて育てるんです。そしてその家畜を食肉にして人間が食べれば、直接的に虫を食べなくていい上に飼料のコストダウンにもつながって一石二鳥らしくて。私もそういうやり方なら昆虫食の導入に賛成できるので、そちらの恒星系でも昆虫飼料を採用してみてはどうですか?」
『なるほど、それはいい話を聞いた。建造中の工場を転用すればすぐにでも実現できるから、今すぐ母星に戻って計画を修正するとしよう。今回も世話になった』
ブラッキ星人はそう言うとコオロギクッキーへの憑依を解いて母星に戻り、私はコオロギクッキーの袋を手に取ると弟の正輝の部屋に持っていってこっそり勉強机に置いておいた。
その1か月後……
『地球人の少女よ、昆虫飼料の材料としてコーロギーよりも繁殖させやすい昆虫イナーゴを採用してみたのだが、繁殖しすぎて集団で工場から脱走してしまったんだ。どうかこの日本という国で製造されている殺虫剤について教えてうわなにをするやめくぁwせdrftgyふじこlp;@:』
「知らんっ!!」
今度は生きているコオロギに憑依して庭先で助けを求めてきた宇宙人に、私は朝刊の新聞紙を丸めて叩きつけたのだった。
(続く)
「うーん、流石に捨てたら蓮くんに悪いよね……ハムリンの餌にする訳にもいかないし……」
ある日曜日の昼、私、野掘真奈は自室の机の上に置いたコンビニスナックを見て悩んでいた。
お隣さんの6歳児である村田蓮くんがコンビニで見つけて買ってみたというお菓子「コオロギクッキー」を私にプレゼントしてくれたのだが、袋に印刷された説明によると大量のコオロギを粉末にして練り込んであるクッキーらしくどうにも食べる勇気が出なかったのだった。
『やはり昆虫を食べる勇気はないようだな、地球人の少女よ!』
「うわっお菓子が喋った!? 私ストレスでおかしくなったの!?」
『落ち着いてくれ、私だ、君にはいつも世話になっているブラッキ星人だ。私の母星に棲息している昆虫コーロギーによく似たこの惑星の昆虫に憑依したかったのだが、誤って食品化された状態の昆虫に憑依してしまったのだ』
「ああ、そういうことでしたか……」
私にテレパシーで話しかけていたのは例によって外宇宙の恒星系から地球を訪れたブラッキ星人らしく、生きているコオロギに憑依するつもりが粉末にされてクッキーに練り込まれたコオロギに憑依してしまったらしかった。
『この地球という惑星では近年環境保護の観点から昆虫食の導入が推進されているらしいが、私の母星でも長引く戦争による食糧不足を解決するために昆虫食の導入を計画していてな。だが君がこの菓子を食べたくないように昆虫を食すという行為には抵抗がある人民も多く、今日はどうすれば昆虫食を普及させられるか地球人の意見を聞かせて欲しいのだ』
「宇宙人さんもその辺の感性は私たちと変わらないんですね……」
ブラッキ星人は彼らの恒星系では地球人と同じような姿で生活しているらしく、昆虫食を忌避する感性にも大差ないようだった。
「そうですね、ちょっと前にネットニュースで読んだんですけど、昆虫食って実は虫をそのまま食べなくてもいいやり方があるらしいんですよ。具体的にはコオロギみたいな昆虫を加工して動物の飼料にして、それを牛とか豚みたいな家畜に食べさせて育てるんです。そしてその家畜を食肉にして人間が食べれば、直接的に虫を食べなくていい上に飼料のコストダウンにもつながって一石二鳥らしくて。私もそういうやり方なら昆虫食の導入に賛成できるので、そちらの恒星系でも昆虫飼料を採用してみてはどうですか?」
『なるほど、それはいい話を聞いた。建造中の工場を転用すればすぐにでも実現できるから、今すぐ母星に戻って計画を修正するとしよう。今回も世話になった』
ブラッキ星人はそう言うとコオロギクッキーへの憑依を解いて母星に戻り、私はコオロギクッキーの袋を手に取ると弟の正輝の部屋に持っていってこっそり勉強机に置いておいた。
その1か月後……
『地球人の少女よ、昆虫飼料の材料としてコーロギーよりも繁殖させやすい昆虫イナーゴを採用してみたのだが、繁殖しすぎて集団で工場から脱走してしまったんだ。どうかこの日本という国で製造されている殺虫剤について教えてうわなにをするやめくぁwせdrftgyふじこlp;@:』
「知らんっ!!」
今度は生きているコオロギに憑依して庭先で助けを求めてきた宇宙人に、私は朝刊の新聞紙を丸めて叩きつけたのだった。
(続く)
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