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第2節 呪いの棺
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大型艦だけあり、戦艦ウォークルの格納庫は広い。
戦闘時には出撃用カタパルトの射出口を兼ねるため、友軍機3体が同時に発進できる横幅と、艦の左右で合計30体は収容できるスペースを備えている。
壁際にはキャットウォークが巡らされ、そこから伸びる可動式のアーム型装置は機体の整備に用いられる。
アームの先端に設けられたコップのような座席の内部に立ち、命綱を身に着けた整備員が働いている。
重力を切れればこのような心配は要らないのだが、重力発生装置の性質上、艦の一部に重力を集中させることは不可能であるためにこういう仕組みになっていた。
「艦長!」
「アティグス大尉!」
メテオ合金製のシャッターを開いて入ってきた俺とナヴィを見て、整備班の面々は一様に敬礼する。
ジャック・アティグスというのは俺の名前だ。
階級は大尉。
正確にはリーザス宇宙軍所属の特務大尉で、これは大尉をやや上回る権能を持つ別階級だ。
周囲から見れば、俺は戦果を上げ、順当に昇進を重ねたエースパイロットということになっている。
だが、その階級は俺を祭り上げる世論を考慮し、軍がやむなく与えたものに過ぎない。
そして、俺がこれから撃墜数をいくら稼ごうと、佐官以上になれることは未来永劫ない。
「貴様らに敬礼される必要性は感じておらん。それより、例の機体の整備は終わっているか。聞きたいことはそれだけだ」
「は、はい。既に終了しております」
ナヴィがああいった態度を取るのは、俺に対してだけではない。奴は敬礼というものをとかく嫌う男だ。
軍隊の上下関係に毅然と立ち向かう正義漢という訳ではない。単に、こんな艦の艦長に据えられている現状が気に入らないだけだ。
いつだったか、ナヴィはそう漏らしていた。
「だったらすぐに見せろ。第一、味方の勢力圏内とはいえ、一機もスタンバイさせていないとはどういうことだ? 今の宇宙に安全な場所があるとでも思っているのか?」
「はっ、申し訳ありません! 今すぐ出しておきます!」
「まったく……私が見ていないだけでこうも醜態を晒すか。これで何がエース部隊だ。上層部の気が知れん」
好き勝手に当たり散らしているように見えて、ナヴィの指摘はもっともだった。
限りなく可能性が低いとはいえ、敵や宇宙海賊の奇襲を受けた際、すぐに発進できる機体が一つも無ければ対応は後手に回る。
周囲の軍人を見下しているかのようなナヴィが、部下からそれなりの信頼を寄せられているのは、その軍事的才能によるものが大きい。
今は補給のために近くの宇宙要塞に立ち寄った帰りだが、平生、この艦は最前線で戦っている。
実際、ナヴィの指揮がなければ艦が沈められていた事態はこれまでに何度もあった。
そういう意味で、俺は決してナヴィを嫌悪してはいなかった。
「一番・二番シャッター、開きます」
携帯拡声器を使い、キャットウォークに上っている整備員の一人が伝達する。
上下に据え付けられた操作機械のボタンを押すと、巨大なメテオ合金製シャッターが自動的に四方へと広がりつつ開き、奥に安置されている機体が見えてくる。
一見面倒だが、このシャッターが無いと艦が大きく揺れた際に機体が転倒したり、カタパルト発進口の隔壁が破壊された際、内部に真空が浸透してしまったりといった問題が生じる。
ある程度以上の規模を持つ宇宙戦艦には必要不可欠の装置だ。
まず、外側から数えて一番目のシャッターが開く。
そこに置かれていたものは、もはや見慣れた姿をしていた。
メテオムーバー〈エレクトラ〉。
俺の愛機にして、死ぬまでコクピットを離れられない呪いの棺。
9メートルはあろうかという強化メテオ合金製の巨体。
基本的には人型だが、胸部が異様に肥大化していて、三角錐から手足が生えていると言っても過言ではないその体型。
しかし、その手足は決して貧弱なものではない。
筋骨隆々の大男を思わせる太く逞しい腕。
地面をしっかりと支え、隕石にも着地できる安定性の高い大足。
肩部には複合装甲が備え付けられていて、膝部もそれは同様。
巨大な胸部を備えながら、防備は手足に重点を置かれている。
背部には体積を最小限に抑えた推進剤入りのバックパックが装備されており、手足の推進器と連動することで、宇宙空間でのスピーディな戦闘を可能としていた。
この奇妙な機械は、現代の戦場を支配している戦闘兵器の一つだった。
メテオ機関搭載型汎用作業機械。通称メテオムーバー。
この人型が開発されたのは、大戦勃発からさらに数十年前にさかのぼる。
メテオ砕石の利用により生み出される高効率エネルギー「メテオエナジー」。
人類の希望とも言える新たな動力源は、人々の生活様式を一変させた。
そして、過去の時代における石炭や石油、あるいは核技術と同様に。
その莫大な力は、宇宙全体における戦争の新たな形を作り上げた。
メテオエナジー研究の初頭、メテオ砕石をエネルギーに変換するメテオ機関の周囲には、人為的に出力を調節できる、不可視の防御壁が発生することが明らかになった。
後の時代で呼ばれるところの、メテオフィールドバリアである。
戦艦の対空機銃程度の威力であれば完全にブロックし、ある程度拡散したレーザーを完全に弾き、大口径砲弾の爆風を防ぎ、角度によっては30ミリ機関砲弾の直撃にも耐えうる強力なバリア。
それを兵器として用いられると考えない科学者は、少なくともその当時においては、誰一人存在しなかった。
かくしてメテオ機関搭載兵器の研究は始まった。
宇宙空間に揚力は必要ない。戦闘機は戦車と同様、既に惑星の表面でのみ用いられる局地兵器と化していた。
これまでは宇宙空間と大気圏内の両方を飛行できる戦闘機の発展系「汎用機」、あるいは純粋に火力とスピードのみを追求した宇宙戦闘用の「宙闘機」が用いられていたが、それらにただメテオ機関を搭載するのでは、バリアの効果を存分に発揮できるとは言えない。
当初は単なる球体に武装を取り付ける案も考えられたが、その場合はパイロットの搭乗機構が複雑になるし、宇宙空間でドッグファイトができない都合上、背面の防備はそれほど考慮する必要もない。
そこで、大まかな形状は三角錐型と決まった。
無論、単なる三角錐に戦闘はできない。
まずは戦闘機系列に倣ってミサイルやレーザー砲が取り付けられたが、ミサイルは爆発する寸前にバリアに弾かれ、レーザーも角度が決まっていては容易に避けられてしまう。
これを受け、それまで無重力空間での作業機器として用いられていたレーザーカッターを武装として転用することとなった。
新たにレーザーソードと名付けられたその武装は、三角錐から伸びるアームに支えられ、横を通り過ぎる敵機を斬り付けるものであった。
至近距離で高出力レーザーを浴びせられれば、流石のバリアも破られるからだ。
しかし、敵とすれ違わねば攻撃できないということは、攻撃する度に敵からのレーザーソードによる反撃の危険に晒されることを意味する。
ここにおいて、初めてメテオ機関搭載兵器には高い――人間的な――旋回性能が必要とされることが明らかになった。
最後のアプローチは意外な所から発せられた。
軍が血眼になってメテオ機関の軍事利用を研究している間に、民間では宇宙空間で働く作業機械にメテオ機関を搭載する研究が進められ、既に実用化の域に達していた。
その名は「メテオムーバー」。
その姿は奇しくも、軍が秘密裏に開発していた兵器と酷似するものであった。
中心には大きな三角錐があり、その中にメテオ機関が搭載されている。
三角錐のフォルムを取っている理由は、作業中に前面から飛来する小隕石に対応してのことである。
軍による設計案との最大の違いは、その三角錐から生えている巨大な手足にあった。
メテオムーバーはその手足により作業用機械としての運用が可能となるばかりか、手足のブースターによって汎用機および宙闘機では考えられないほどの旋回性能を発揮することができ、このことは人間を模した姿を取る最大のメリットだった。
フィールドバリアは胸部周辺にしか及ばないため、手足は厚い装甲を施された太く頑強なものとなり、そのことによっても作業用機械としての運用性はさらに向上していた。
軍が旧時代の戦闘機のフォルムに固執する中、民間ではいわゆる人型ロボットの概念を取り入れることで、旋回性能の問題をクリアしていたのだ。
新機軸の人型機械に関する報告を受け、軍は民間に追従する形でメテオムーバーを兵器として正式採用した。
ここに軍用機としてのメテオムーバーは誕生し、大戦の流れを受けてそのバリエーションも飛躍的に増大している。
現場の声をフィードバックして機能を進化させながら、メテオムーバーは運用され続けている。
それが、俺がかつて学んだメテオムーバー開発の歴史だった。
俺もよく覚えていたものだ。
次のシャッターが開くまでの間に、俺の脳裏には幼少の頃の記憶が浮かんでいた。
あの頃は大戦も始まったばかりで、正規のパイロットであってもメテオムーバーによる実戦経験が豊富な者は皆無に近かった。
その一方でメテオフィールドバリアの高い防御性能は当時から健在で、出撃した双方のメテオムーバーが敵を一機も撃墜できずに帰還することもしばしばだった。
それでも戦意高揚のために軍は星間放送を駆使し、自軍のメテオムーバーの無双の活躍を報じ続けた。
幼い俺はそれにすっかりはまり込み、毎日のように下手なメテオムーバーの絵を描いては親や友人に見せ、将来はメテオムーバーのパイロットになると公言していた。
ハイスクールを卒業する頃には既に宇宙軍の士官学校に入る腹を決めており、入学後は血のにじむような軍事教練の日々に身を投じた。
少尉として任官した後もエースパイロットになるという目標は一切捨てず、周囲のどの軍人にも負けない志を持って、必死で生きてきた。
そして、その末路が、この地獄だった。
俺の生き様は、天国を目指して、地獄に辿り着く人生だった。
今はそんなこともどうでもよくなった。
俺がこの世で生きられる場所は戦場しかなく、俺が死ぬ場所も戦場なのだ。
そういった思いを巡らせていると、いつしかシャッターは開き切っていた。
黙って歩き始めるナヴィに追従して、開いたシャッターの奥へと進む。
そこに、俺が見たものは。
戦闘時には出撃用カタパルトの射出口を兼ねるため、友軍機3体が同時に発進できる横幅と、艦の左右で合計30体は収容できるスペースを備えている。
壁際にはキャットウォークが巡らされ、そこから伸びる可動式のアーム型装置は機体の整備に用いられる。
アームの先端に設けられたコップのような座席の内部に立ち、命綱を身に着けた整備員が働いている。
重力を切れればこのような心配は要らないのだが、重力発生装置の性質上、艦の一部に重力を集中させることは不可能であるためにこういう仕組みになっていた。
「艦長!」
「アティグス大尉!」
メテオ合金製のシャッターを開いて入ってきた俺とナヴィを見て、整備班の面々は一様に敬礼する。
ジャック・アティグスというのは俺の名前だ。
階級は大尉。
正確にはリーザス宇宙軍所属の特務大尉で、これは大尉をやや上回る権能を持つ別階級だ。
周囲から見れば、俺は戦果を上げ、順当に昇進を重ねたエースパイロットということになっている。
だが、その階級は俺を祭り上げる世論を考慮し、軍がやむなく与えたものに過ぎない。
そして、俺がこれから撃墜数をいくら稼ごうと、佐官以上になれることは未来永劫ない。
「貴様らに敬礼される必要性は感じておらん。それより、例の機体の整備は終わっているか。聞きたいことはそれだけだ」
「は、はい。既に終了しております」
ナヴィがああいった態度を取るのは、俺に対してだけではない。奴は敬礼というものをとかく嫌う男だ。
軍隊の上下関係に毅然と立ち向かう正義漢という訳ではない。単に、こんな艦の艦長に据えられている現状が気に入らないだけだ。
いつだったか、ナヴィはそう漏らしていた。
「だったらすぐに見せろ。第一、味方の勢力圏内とはいえ、一機もスタンバイさせていないとはどういうことだ? 今の宇宙に安全な場所があるとでも思っているのか?」
「はっ、申し訳ありません! 今すぐ出しておきます!」
「まったく……私が見ていないだけでこうも醜態を晒すか。これで何がエース部隊だ。上層部の気が知れん」
好き勝手に当たり散らしているように見えて、ナヴィの指摘はもっともだった。
限りなく可能性が低いとはいえ、敵や宇宙海賊の奇襲を受けた際、すぐに発進できる機体が一つも無ければ対応は後手に回る。
周囲の軍人を見下しているかのようなナヴィが、部下からそれなりの信頼を寄せられているのは、その軍事的才能によるものが大きい。
今は補給のために近くの宇宙要塞に立ち寄った帰りだが、平生、この艦は最前線で戦っている。
実際、ナヴィの指揮がなければ艦が沈められていた事態はこれまでに何度もあった。
そういう意味で、俺は決してナヴィを嫌悪してはいなかった。
「一番・二番シャッター、開きます」
携帯拡声器を使い、キャットウォークに上っている整備員の一人が伝達する。
上下に据え付けられた操作機械のボタンを押すと、巨大なメテオ合金製シャッターが自動的に四方へと広がりつつ開き、奥に安置されている機体が見えてくる。
一見面倒だが、このシャッターが無いと艦が大きく揺れた際に機体が転倒したり、カタパルト発進口の隔壁が破壊された際、内部に真空が浸透してしまったりといった問題が生じる。
ある程度以上の規模を持つ宇宙戦艦には必要不可欠の装置だ。
まず、外側から数えて一番目のシャッターが開く。
そこに置かれていたものは、もはや見慣れた姿をしていた。
メテオムーバー〈エレクトラ〉。
俺の愛機にして、死ぬまでコクピットを離れられない呪いの棺。
9メートルはあろうかという強化メテオ合金製の巨体。
基本的には人型だが、胸部が異様に肥大化していて、三角錐から手足が生えていると言っても過言ではないその体型。
しかし、その手足は決して貧弱なものではない。
筋骨隆々の大男を思わせる太く逞しい腕。
地面をしっかりと支え、隕石にも着地できる安定性の高い大足。
肩部には複合装甲が備え付けられていて、膝部もそれは同様。
巨大な胸部を備えながら、防備は手足に重点を置かれている。
背部には体積を最小限に抑えた推進剤入りのバックパックが装備されており、手足の推進器と連動することで、宇宙空間でのスピーディな戦闘を可能としていた。
この奇妙な機械は、現代の戦場を支配している戦闘兵器の一つだった。
メテオ機関搭載型汎用作業機械。通称メテオムーバー。
この人型が開発されたのは、大戦勃発からさらに数十年前にさかのぼる。
メテオ砕石の利用により生み出される高効率エネルギー「メテオエナジー」。
人類の希望とも言える新たな動力源は、人々の生活様式を一変させた。
そして、過去の時代における石炭や石油、あるいは核技術と同様に。
その莫大な力は、宇宙全体における戦争の新たな形を作り上げた。
メテオエナジー研究の初頭、メテオ砕石をエネルギーに変換するメテオ機関の周囲には、人為的に出力を調節できる、不可視の防御壁が発生することが明らかになった。
後の時代で呼ばれるところの、メテオフィールドバリアである。
戦艦の対空機銃程度の威力であれば完全にブロックし、ある程度拡散したレーザーを完全に弾き、大口径砲弾の爆風を防ぎ、角度によっては30ミリ機関砲弾の直撃にも耐えうる強力なバリア。
それを兵器として用いられると考えない科学者は、少なくともその当時においては、誰一人存在しなかった。
かくしてメテオ機関搭載兵器の研究は始まった。
宇宙空間に揚力は必要ない。戦闘機は戦車と同様、既に惑星の表面でのみ用いられる局地兵器と化していた。
これまでは宇宙空間と大気圏内の両方を飛行できる戦闘機の発展系「汎用機」、あるいは純粋に火力とスピードのみを追求した宇宙戦闘用の「宙闘機」が用いられていたが、それらにただメテオ機関を搭載するのでは、バリアの効果を存分に発揮できるとは言えない。
当初は単なる球体に武装を取り付ける案も考えられたが、その場合はパイロットの搭乗機構が複雑になるし、宇宙空間でドッグファイトができない都合上、背面の防備はそれほど考慮する必要もない。
そこで、大まかな形状は三角錐型と決まった。
無論、単なる三角錐に戦闘はできない。
まずは戦闘機系列に倣ってミサイルやレーザー砲が取り付けられたが、ミサイルは爆発する寸前にバリアに弾かれ、レーザーも角度が決まっていては容易に避けられてしまう。
これを受け、それまで無重力空間での作業機器として用いられていたレーザーカッターを武装として転用することとなった。
新たにレーザーソードと名付けられたその武装は、三角錐から伸びるアームに支えられ、横を通り過ぎる敵機を斬り付けるものであった。
至近距離で高出力レーザーを浴びせられれば、流石のバリアも破られるからだ。
しかし、敵とすれ違わねば攻撃できないということは、攻撃する度に敵からのレーザーソードによる反撃の危険に晒されることを意味する。
ここにおいて、初めてメテオ機関搭載兵器には高い――人間的な――旋回性能が必要とされることが明らかになった。
最後のアプローチは意外な所から発せられた。
軍が血眼になってメテオ機関の軍事利用を研究している間に、民間では宇宙空間で働く作業機械にメテオ機関を搭載する研究が進められ、既に実用化の域に達していた。
その名は「メテオムーバー」。
その姿は奇しくも、軍が秘密裏に開発していた兵器と酷似するものであった。
中心には大きな三角錐があり、その中にメテオ機関が搭載されている。
三角錐のフォルムを取っている理由は、作業中に前面から飛来する小隕石に対応してのことである。
軍による設計案との最大の違いは、その三角錐から生えている巨大な手足にあった。
メテオムーバーはその手足により作業用機械としての運用が可能となるばかりか、手足のブースターによって汎用機および宙闘機では考えられないほどの旋回性能を発揮することができ、このことは人間を模した姿を取る最大のメリットだった。
フィールドバリアは胸部周辺にしか及ばないため、手足は厚い装甲を施された太く頑強なものとなり、そのことによっても作業用機械としての運用性はさらに向上していた。
軍が旧時代の戦闘機のフォルムに固執する中、民間ではいわゆる人型ロボットの概念を取り入れることで、旋回性能の問題をクリアしていたのだ。
新機軸の人型機械に関する報告を受け、軍は民間に追従する形でメテオムーバーを兵器として正式採用した。
ここに軍用機としてのメテオムーバーは誕生し、大戦の流れを受けてそのバリエーションも飛躍的に増大している。
現場の声をフィードバックして機能を進化させながら、メテオムーバーは運用され続けている。
それが、俺がかつて学んだメテオムーバー開発の歴史だった。
俺もよく覚えていたものだ。
次のシャッターが開くまでの間に、俺の脳裏には幼少の頃の記憶が浮かんでいた。
あの頃は大戦も始まったばかりで、正規のパイロットであってもメテオムーバーによる実戦経験が豊富な者は皆無に近かった。
その一方でメテオフィールドバリアの高い防御性能は当時から健在で、出撃した双方のメテオムーバーが敵を一機も撃墜できずに帰還することもしばしばだった。
それでも戦意高揚のために軍は星間放送を駆使し、自軍のメテオムーバーの無双の活躍を報じ続けた。
幼い俺はそれにすっかりはまり込み、毎日のように下手なメテオムーバーの絵を描いては親や友人に見せ、将来はメテオムーバーのパイロットになると公言していた。
ハイスクールを卒業する頃には既に宇宙軍の士官学校に入る腹を決めており、入学後は血のにじむような軍事教練の日々に身を投じた。
少尉として任官した後もエースパイロットになるという目標は一切捨てず、周囲のどの軍人にも負けない志を持って、必死で生きてきた。
そして、その末路が、この地獄だった。
俺の生き様は、天国を目指して、地獄に辿り着く人生だった。
今はそんなこともどうでもよくなった。
俺がこの世で生きられる場所は戦場しかなく、俺が死ぬ場所も戦場なのだ。
そういった思いを巡らせていると、いつしかシャッターは開き切っていた。
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