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卒業試験第1回:インプット式の学習には無料学習ツール「Anki」が有用

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 無料学習ツール「Anki」はオープンソースのソフトウェアで、Wikipediaを見るとその成り立ちに関する詳しい説明がありますが本稿では省略します。

 私は友人に紹介されたこのツールをまず自分用のパソコンにインストールし、手持ちの端末であるiPhoneとiPadにもインストールしました。(Ankiのパソコン版は無料ですがiPhoneおよびiPad版のアプリは買い切り型の有料でした)

 Ankiには様々な使い方がありますが、基本的には「穴埋め問題を自分で作る」機能がメインとなります。

 文章のみで使い方を説明するのは難しいですが、例として私が過去に作ったAnkiのデータ(一つの文章データは「カード」、カードをまとめたデータは「デッキ」と呼称される)を以下に示します。


>網膜中心{{c1::静}}脈閉塞症は放射状火炎状出血をきたすが、網膜中心{{c1::動}}脈閉塞症では出血はみられず虚血によるcherry red spotを認める。

>クレブシエラ〈肺炎桿菌〉はグラム{{c1::陰性桿}}菌であり、口腔、上気道、腸管の常在菌である。中高年の男性で{{c1::大酒家}}や糖尿病患者に感染しやすい。尿路感染の原因ともなるが、{{c1::大葉}}性肺炎の病態を取ることが多く、劇症化しやすい。抗菌薬は{{c1::セフェム}}系が第一選択であり、ペニシリン、ニューキノロン、カルバペネムも使用可能である。

>生化学検査において総コレステロール(TC)の基準値は{{c1::220}}mg/dL以下、トリグリセリド(TG)の基準値は{{c1::30~135}}mg/dL、HDLコレステロールの基準値は{{c1::40}}mg/dL以上、LDLコレステロールの基準値は{{c1::30~139}}mg/dLである。


 Ankiのカード作成画面にまず文章を入力し、穴埋めにしたい部分を選んでボタンを押すとその部分が{{c1::○○}}という記号で囲まれます。

 この記号で囲まれた文字はAnkiの演習モードでは空欄となりますが、その空欄を思い出せるかどうかを繰り返し演習してチェックするうちに自然と文章全てを暗記できるというのがAnkiの基本的な利用法です。

 上で例に上げた「網膜中心静脈閉塞症と網膜中心動脈閉塞症との区別」「ややマイナーな細菌の特徴」「生化学検査の基準値」といった項目はただ単に映像授業を見たり問題演習をしたりするだけでは忘れがちですが卒業試験や国試では当たり前のように出題され、インプット式の学習が不足していた私はこのような問題で次々に失点していました。

 Ankiの有用性を知った私はそれからの勉強ではひとまずQBオンラインでの国試過去問演習を控えて最初の卒業試験や模試で見た知らない事項を次々にAnkiのカードとして追加し、過去に受講したmedu4のテキストの内容も時間を見つけてはAnkiに追加していきました。

 最初の卒業試験の数週間後に行われた初期臨床研修マッチングの志望病院の筆記試験が終了してから2回目・3回目・4回目の卒業試験が終わるまではほとんどQBオンラインを利用せずひたすらAnkiを回しながら知らない事項を追加していく日々が続きましたが、私はその間アウトプット式の学習をほとんどしなかったにも関わらず卒業試験の成績を飛躍的に向上させることができました。

 第1回の卒業試験で60%程度だった正答率は第2回では70%程度、第3回では80%程度、そして第4回では85%程度(学年上位20名に入る)となり、最終的に私は卒業試験の総合得点率79%程度(学年上位50名程度の成績)で無事に卒業を認められました。

 あの時友人からの紹介でAnkiに出会わなければ卒業できていたとしてもかなりギリギリの成績になっていたことは間違いなく、アウトプット式の学習はある程度行ってきているもののインプット式の学習が不足している医学生に対してはAnkiの導入を積極的にお勧めしたいと思います。
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