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第2章 魔術学院受験専門塾
24 数術講師
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異世界エデュケイオンは一つの大陸がそのまま世界となっており、有史以来その大部分は人間族の勢力圏である。
その一方で山岳地帯に住む山人族、森林や未開の平原に住む森人族をはじめとする独自の文化と文明を持った少数種族も大陸の各地に共同体を築いて暮らしており、彼らは亜人族と総称されていた。
エデュケイオンの長い歴史では人間族による一部の亜人族に対する弾圧や虐殺、亜人族同士の戦争、亜人族のならず者による人間族の共同体への襲撃といった悲惨な事件が無数に生じてきたが、文明の成熟と人間族社会の経済発展に伴って現在ではそれぞれの種族間で不可侵条約が締結されていた。
現在では人間族の共同体と各種の亜人族の共同体とは完全に独立しており、互いの貿易や文化交流は積極的に行われているが相互の攻撃はもちろんのこと、それぞれの種族内でのもめ事や紛争に他の種族が干渉することは厳禁とされていた。
そして魔術師ノールズの故郷であり彼が大陸初の魔術学院受験専門塾を開設しようとしているこの地域、中央ヤイラムは人間族が築いた都市であるオイコットの郊外にあった。
オイコットはエデュケイオンで最も歴史の古い都市の一つであり、長い歴史の中で人間族の経済・文化の中心地として発展してきたことからすべての都市の中で唯一「地方都市」と呼称されず中央都市オイコットと呼ばれていた。
そのためオイコットには大陸全体に影響する政治的決定を行う大陸議会が存在し、大陸中に支店を置く企業の本店や魔術師ギルドの本部もここに設置されている。
学舎、幼年学校、尋常学校、高等学校、そして各種の上級学校の数もすべての都市の中で最も多く、魔術学院の設置数が10を超える都市は大陸中でもオイコットのみであった。
「はじめまして、僕は『修練の台地』で数術科の講師を務めているヨハランといいます。ノールズさんから引き抜きのお誘いを受け、『修練の台地』の人事部に話を通した上で2つの塾・予備校で講師を兼任させて頂くことになりました」
「なるほど、両者で数術科の講師をお務めになるということですね。私はこの度この世界に転生致しましたユキナガと申します。よろしくお願いします」
中央ヤイラムの東部にある3階建ての建物はノールズが魔術学院専門塾「中央ヤイラム魔進館」の本校とするために購入した物件で、開校準備が進められているその建物の1階でユキナガは講師と初の対面を果たしていた。
ヨハランと名乗った男性は二大予備校の一角「修練の台地」で生徒から人気の高い数術科講師であり、ノールズに高額な報酬を約束されて「魔進館」の数術科の主任講師として着任することになっていた。
「ヨハラン先生には改めての説明となるが、このユキナガは何らかの科目の授業を受け持たせるためではなく受験勉強のやり方の指導や校舎運営の補助をさせるために俺が転生させた人間だ。高等学校のあらゆる科目の知識は持っているらしいから話が通じないことはないと思うし、もし生徒指導で悩むことがあればどんどんこいつに聞いてくれ」
「分かりました。僕自身も魔術学院受験を専門に教育をしたいという意欲はありますが、どのような方策を取ればよいかはまだ分かっていないのでユキナガさんのことは頼りにしています」
「ええ、お力になれるかは分かりませんが、全力を尽くして参りたいと思います。ところで、ヨハランさんがこの塾で講師として働きたいと思われた理由をお聞かせ頂けませんか? よろしければ、大手予備校での魔術学院受験指導の現状についても……」
ノールズの仲介を受けてお互いに自己紹介を済ませると、ユキナガは「修練の台地」で長期間勤務していたらしいヨハランに気になっていたことを尋ねた。
ヨハランはユキナガの意図を理解し、頷いてからゆっくりと説明を始めた。
その一方で山岳地帯に住む山人族、森林や未開の平原に住む森人族をはじめとする独自の文化と文明を持った少数種族も大陸の各地に共同体を築いて暮らしており、彼らは亜人族と総称されていた。
エデュケイオンの長い歴史では人間族による一部の亜人族に対する弾圧や虐殺、亜人族同士の戦争、亜人族のならず者による人間族の共同体への襲撃といった悲惨な事件が無数に生じてきたが、文明の成熟と人間族社会の経済発展に伴って現在ではそれぞれの種族間で不可侵条約が締結されていた。
現在では人間族の共同体と各種の亜人族の共同体とは完全に独立しており、互いの貿易や文化交流は積極的に行われているが相互の攻撃はもちろんのこと、それぞれの種族内でのもめ事や紛争に他の種族が干渉することは厳禁とされていた。
そして魔術師ノールズの故郷であり彼が大陸初の魔術学院受験専門塾を開設しようとしているこの地域、中央ヤイラムは人間族が築いた都市であるオイコットの郊外にあった。
オイコットはエデュケイオンで最も歴史の古い都市の一つであり、長い歴史の中で人間族の経済・文化の中心地として発展してきたことからすべての都市の中で唯一「地方都市」と呼称されず中央都市オイコットと呼ばれていた。
そのためオイコットには大陸全体に影響する政治的決定を行う大陸議会が存在し、大陸中に支店を置く企業の本店や魔術師ギルドの本部もここに設置されている。
学舎、幼年学校、尋常学校、高等学校、そして各種の上級学校の数もすべての都市の中で最も多く、魔術学院の設置数が10を超える都市は大陸中でもオイコットのみであった。
「はじめまして、僕は『修練の台地』で数術科の講師を務めているヨハランといいます。ノールズさんから引き抜きのお誘いを受け、『修練の台地』の人事部に話を通した上で2つの塾・予備校で講師を兼任させて頂くことになりました」
「なるほど、両者で数術科の講師をお務めになるということですね。私はこの度この世界に転生致しましたユキナガと申します。よろしくお願いします」
中央ヤイラムの東部にある3階建ての建物はノールズが魔術学院専門塾「中央ヤイラム魔進館」の本校とするために購入した物件で、開校準備が進められているその建物の1階でユキナガは講師と初の対面を果たしていた。
ヨハランと名乗った男性は二大予備校の一角「修練の台地」で生徒から人気の高い数術科講師であり、ノールズに高額な報酬を約束されて「魔進館」の数術科の主任講師として着任することになっていた。
「ヨハラン先生には改めての説明となるが、このユキナガは何らかの科目の授業を受け持たせるためではなく受験勉強のやり方の指導や校舎運営の補助をさせるために俺が転生させた人間だ。高等学校のあらゆる科目の知識は持っているらしいから話が通じないことはないと思うし、もし生徒指導で悩むことがあればどんどんこいつに聞いてくれ」
「分かりました。僕自身も魔術学院受験を専門に教育をしたいという意欲はありますが、どのような方策を取ればよいかはまだ分かっていないのでユキナガさんのことは頼りにしています」
「ええ、お力になれるかは分かりませんが、全力を尽くして参りたいと思います。ところで、ヨハランさんがこの塾で講師として働きたいと思われた理由をお聞かせ頂けませんか? よろしければ、大手予備校での魔術学院受験指導の現状についても……」
ノールズの仲介を受けてお互いに自己紹介を済ませると、ユキナガは「修練の台地」で長期間勤務していたらしいヨハランに気になっていたことを尋ねた。
ヨハランはユキナガの意図を理解し、頷いてからゆっくりと説明を始めた。
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