冷遇された公爵子息に代わって自由に生きる

セイ

文字の大きさ
21 / 23

21.冒険者になる

しおりを挟む
ファイたちに案内され、ギルドの建物まで来た。
中へ入ると視線が一気に集中して俺は思わずファイの背に隠れた。

「散れ!!」

ファイの一言で視線は散らばったが、気になるようでチラチラと見てくる人はいる。

ファイたちはやっぱりここで有名だから皆もファイたちの動向が気になるらしい…。
たぶんファイにくっついてる俺が気になるんだろうけど…。

「ナルこっちだ」
「あ、うん」
「この受付で登録出来る」

受付には綺麗なお姉さんが愛想良く立っているけど…俺にはわかるぞ。目がお前はファイの何なんだって言ってるのが。

「冒険者登録の手続きを行います。まずこちらの紙に必要事項をお書きください」
「はい…」

受付嬢の視線はさておき、大人しく記入する。

「ファイ…俺住所…どうしたらいい?」
「俺のとこでいいだろ?一緒に住むんだから。教えるから覚えとけな」
「うん。わかった」

そんなやり取りを受付嬢は遮ってきた。

「あ…あの!!ファイさんはその子と…どういう関係ですか!?」

その一言で周りは静まり返った。
ファイの視線は冷たかった。ちょっとキレてる…。

「……それは君に関係あるか…?」
「あ…皆気になってる事と思いますが…」
「…はっきり言っておく!!この子は俺の番だ!!何かしようものなら俺達は容赦しない!!」
「番…!?こんな子が…?」
「俺が番だと困りますか?」
「…っ!!いえ…すみません…」

やっぱりファイに気がある女だった…。
はっきり言ったからたぶん大丈夫だと思うけど…。

「わかったならさっさと手続きを進めて貰えるか?」
「はいっ!!申し訳ありません!!書類を確認しましたので次はレベルの確認をさせて頂きます」

レベルは上げといたけど…大丈夫かな?師匠が大丈夫って言ってたから平気かな…?

「ご自身のレベルによって最初に与えられるランクが変わります。1~30レベルがEランク、31~50レベルがDランク、51~70レベルがCランク、71~100レベルがBランク、101~150レベルがAランク、151レベル以上がSランクとなっております。Dランクまでは必要レベルと任務実績で昇格できますが、Cランクはそれに加えてギルマスとの模擬戦、Bランク以上は模擬戦の変わりにそのランクに応じた魔獣討伐で昇格致します。任務実績はギルドカードに魔力によって自動的に記録されますので虚偽報告は出来ません」
「結構細かく決まりがあるんだねぇ…」
「まぁ、嘘言って高ランクになってもどうせ死ぬだけだしな。そんなバカは碌な事になりゃしないよ。ナルはもうすでに実力はそこらの冒険者にも劣らないくらいだから大丈夫だろ」
「ん、俺頑張るね!!」
「では、この板に手を置いて頂けますか?」
「はい」
「魔力を少し吸い取らせて頂きます。終わるまでは手を動かさないようお願いします」
「わかりました」

板に置いた瞬間スルスルと魔力が出ていく感じがわかった。
最初に魔力循環をしたときみたい…。

「測り終わりました。手を離して頂いてよろしいですよ。ナルさんのレベルは…63レベル!?た…高い……」
「またちょっと上がってたね」
「まぁ…あんだけ魔獣狩ってりゃなぁ…俺の分まで取りやがって…」
「ナル君俺が教えたのすぐ出来ちゃうんだもん。このレベルは当たり前だよねぇ」
「順調順調!ナル君頑張ってて良い子!!そこらの奴らも見習ってほしいくらいだねっ♪」

皆から褒められるの凄く照れるけど嬉しい。

「ナルさんのランクはCランクからです…がギルマスとの模擬戦も必要になりますが…」
「ん、やります!!」

俺のランクを聞いて周りがざわめいた。
そんな珍しいのかな…?
子供じゃないんだしそのくらいレベルあげるの当たり前じゃない?低レベルなんて子供のお使いくらいしか出来なくない?

「登録初回でこんな高ランクで始まるのはルトラさん以来ですね…」
「ルトラも凄いんだねぇ…!!」
「…ナル君よりは低いレベルだったよ?一応僕もCランクからだったけどね…」

ファイたちまでにはまだまだ届かないけど一応ランクは高めで始められるし良かった良かった。

「じゃあパーティー登録もついでによろしく」

パーティー登録をしようとしたら、やっぱり文句を言う奴が出てきた。師匠の思った通りだった。

「ファイさん!!そのランクで貴方のパーティーに入れるなら何故俺を入れてくれないんすか!?俺の方が強いと思いますっ!!」
「…強さで入れてるわけじゃないけど…?自分の番をパーティーに入れるのがダメなのか?パーティーメンバーを決めるのは俺達だ。お前に文句言われる筋合いはねぇぞ?」
「そいつがパーティーの弱点になってもですか?」
「弱点にはならんな。ナルはお前より強いし。ランクが低いから弱いってのはお前の価値観たろ?」
「事実です!レベルが全てです!」
「ナルは一ヶ月かからずにこのレベルまで上げたんだぞ?」
「!?い…一ヶ月…!?」
「…ファイ…文句言う奴集めてくれていいよ?全員相手してあげる。俺自身で認めさせる」
「…お前がそんな事する必要はねぇんだぞ…?」
「こうするのが一番早い…」

文句言う奴はいつまで経っても文句言ってくるんだから力で認めさせるのが手っ取り早い。
これで勝てば俺の強さも証明できて襲ってくるような奴も少なくなるだろう。

「ナルよく言った!師匠としてお前を舐めるやつはいらん!!全力でやってこい!!」
「うん!俺やってくる!!」
「ナル…気をつけろよ?」

ギルドに入ってから殺気ダダ漏れな奴数人いたからなぁ。
ファイが何も言わないのを良いことに、全く馬鹿な奴ら。

「なにを騒いでる!!」

この騒ぎを聞きつけてやってきたのはコーガさんくらい体格が大きい熊のおっさんだった。きっとあの人がギルマス…かな?

「ギルマス騒いで悪いな…」
「おぉ…ファイお帰り!!無事任務終わったようで何よりだ。で?この騒ぎの中心はお前か?」
「ん~俺…よりもコイツかな。俺の番のナルだ。よろしく頼む」
「ふぅ~ん…お前の番ね…。番のパーティー加入に文句が入ったってところか?」
「よくお分かりで。だから文句言う奴をナルが相手するとこだったんだ」
「…はぁ…こんな狭いとこでやるのは勘弁してくれ。やるなら地下訓練場貸してやるから。そこなら魔法もどんだけぶっ放しても文句は言わん」

へぇ!!そんな便利な場所あるんだ?
魔法の威力どうやって抑えようか考えてたけど、気にしないでいい場所あるならいいね!

「じゃ、さっさとそこ行こ!!さっさと片付けてファイとゆっくりのんびり休みたいから!!」
「終わったら俺の家に案内しよう。近くに俺達のアジトもあるからそこで皆で加入祝いしようか」
「ふふっ…俺すぐ終わらせるね!」
「クソガキ…舐めた事言いやがって…!ぜってぇ潰してやる…!!」

…この人ファイの番の俺潰したら次は自分が潰されるって思わないのかな?番に手ぇ出された人の怒りを買うことの怖さを知らないのかなぁ?
まぁ、俺は潰されないけどね!!

何だか凄く大事になっちゃったけど、それも楽しい。
ファイにくっついてルンルン気分で地下へと向かった。




「ナル君とても楽しそうだねぇ…」
「今まで魔獣相手だったし、人相手にするのは滅多になかったから色々試したいんじゃない?」
「ナルの魔法えげつねぇからなぁ」
「ナル君を傷つけた奴、ファイが全員殺しそう…」


しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【第一部・完結】毒を飲んだマリス~冷徹なふりして溺愛したい皇帝陛下と毒親育ちの転生人質王子が恋をした~

蛮野晩
BL
マリスは前世で毒親育ちなうえに不遇の最期を迎えた。 転生したらヘデルマリア王国の第一王子だったが、祖国は帝国に侵略されてしまう。 戦火のなかで帝国の皇帝陛下ヴェルハルトに出会う。 マリスは人質として帝国に赴いたが、そこで皇帝の弟(エヴァン・八歳)の世話役をすることになった。 皇帝ヴェルハルトは噂どおりの冷徹な男でマリスは人質として不遇な扱いを受けたが、――――じつは皇帝ヴェルハルトは戦火で出会ったマリスにすでにひと目惚れしていた! しかもマリスが帝国に来てくれて内心大喜びだった! ほんとうは溺愛したいが、溺愛しすぎはかっこよくない……。苦悩する皇帝ヴェルハルト。 皇帝陛下のラブコメと人質王子のシリアスがぶつかりあう。ラブコメvsシリアスのハッピーエンドです。

平民男子と騎士団長の行く末

きわ
BL
 平民のエリオットは貴族で騎士団長でもあるジェラルドと体だけの関係を持っていた。  ある日ジェラルドの見合い話を聞き、彼のためにも離れたほうがいいと決意する。  好きだという気持ちを隠したまま。  過去の出来事から貴族などの権力者が実は嫌いなエリオットと、エリオットのことが好きすぎて表からでは分からないように手を回す隠れ執着ジェラルドのお話です。  第十一回BL大賞参加作品です。

婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。

零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。 鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。 ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。 「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、 「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。 互いを想い合う二人が紡ぐ、恋と成長の物語。 他にも幼馴染み達の一抹の寂寥を切り取った短篇や、 両想いなのに攻めの鈍感さで拗れる二人の恋を含む全四篇。 フッと笑えて、ギュッと胸が詰まる。 丁寧に読みたい、大人のためのファンタジーBL。 他サイトでも公開しております。

悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?

水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。 断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。 しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。 これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る

黒木  鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。完結しました!

処理中です...