異世界に落とされた兄弟は幸せになりたい

セイ

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帰り道

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ギルドを出て街を案内されながら屋敷へ帰ることになった。
見慣れない風景に弟たちも興奮しっぱなしだ。
俺もちょっと楽しみではある。屋台が沢山あってお腹を刺激するいい匂いがそこら中に漂っている。

「らいしゃ!あっち!」
「らいしゃん!こっちぃ!」
「はいはい。順番ね!」

弟たちのお腹も刺激しているようでライさんをあっちこっちと連れ回しているみたい。
俺も食べてみたい屋台を見つけた。

「あの…テオ?あそこの串焼き?食べてみたいんだけどお金持ってなくて…」
「俺が買ってあげるから欲しいものを言うといい」
「わあ~ありがとテオ!」

思わずテオに抱きついてしまったけど、しっかりと受け止めてくれてテオも嬉しそうにしてる。

「コハクは気にせず好きなだけ買い物していいよ。君が喜ぶ姿が見れて俺は幸せだ」
「…我儘だ…とか思ってない?」
「こんな可愛い我儘なら大歓迎だよ」
「甘やかしすぎないでね?俺は傲慢な奴にはなりたくないから。ダメな時はちゃんと叱ってね?」
「ん~…甘やかすのは俺達の愛情表現だから思う存分甘やかされてくれていいんだけどね…」
「駄目人間になりそうで怖いもん。適度にね!」
「ふふっ…俺なしで生きていけないようになっていいんだよ?俺はそんなコハクを愛でる生活も大歓迎なんだが…」
「ダメダメ!!俺は自立した立派な大人になりたいの!!テオにはそうなるようにお手伝いして欲しい!こっちの常識とかもまだ全然わからないし…」
「勿論コハクのお願いは何でも叶えよう」

…これがスパダリってヤツなんだろうか…本当に自分が駄目人間になりそうで怖い…。

そんなやり取りをしていると服を引っ張られた。
そこには小さな男の子が泣きながら俺の服の裾を引っ張っていた。

「…君迷子かな?お母さんたちとはぐれたのかな?」

周りにこの子の親らしき人は居ないようだった。

「コハク…この子はたぶん孤児だ…。親はいないだろう…」

孤児…こっちで言う施設の子みたいな感じかな?

「…どうしたの?俺に何か用かな?」

男の子の手は震えていて何か言いたいようだけど何も話さない。と、急に俺の手を引っ張って走り出した。

「コハク!!」
「うぇ…!?ちょ…君!!待って!!」

引っ張られた瞬間テオの手を離してしまい俺は男の子に引っ張られて知らない路地裏まで来てしまった…。
マズい!!テオから離れちゃった!!帰り道わからないよ~!!
テオがこちらに向かおうとしているのは見えたけど人混みに阻まれているようでこちらに来るのが困難になっているようだった。

「君…急に走り出したら危ない…よ…」
「ごめんなさい…ごめんなさい…」

泣きながら謝る男の子の後ろから数人の男たちが現れた。

「ははっ簡単だったな…。ガキ…良くやった。これ持って帰りな。誰にも言うんじゃねぇぞ…じゃねぇとお前の兄弟がどうなっても知らねぇからな…」

誰か人質を取って男の子を使ったようだ…。

「子供になんてことさせてるんですか?」
「ここではこれが普通だぜ坊ちゃん。ガキどもは食物と金さえ与えれば何でもやるぜ?お前あのテオの番だって?あの男を殺れるなら何でも使うぜ俺達は。お前を犯してからあの男に返してやるよ…」
「!!やだ!!!近づかないで!!」
「ここは叫んでも誰も助けない。思う存分叫べばいいさ。その方が俺達も楽しいからな」

男の子に気が逸れていたとしても迂闊だった…。

複数人相手にどこまで逃げられるか…。
テオが助けにくるまでどうにかしなくちゃ…!!





「くそっ!!油断した!!最初からコハク狙いだったか…!!」
「テオ様今護衛に周辺を探させています!!」
「さっさと番っておくべきだった…まだ匂いが着いてないから辿れもしない…!!」

獣人など番を持つものにとって相手と番う事は己の匂いを番相手に付けるマーキングの意味もある。自分の匂いを付けて周りのオスに威嚇をする意味合いがある。自分より強い物の匂いがあれば近寄ることもない。
龍人は獣人の最上位なので誰も逆らいはしない。

「「…にーにあっち」」
「…え?」
「「にーにあっちいりゅって」」
「ルイルカ…誰から聞いたんだい?」
「ちっちゃいひと…」
「ここにもいりゅよ?」

精霊か!?
マズいすでに精霊が見えているとは…しかも言葉もわかるのか!?

「ルイルカ…ちっちゃいひととお話できるのは誰にも言っちゃだめだよ?しーだ。わかった?」
「「しー!!わかっちゃ!!」」
「いい子だ」

頭を撫でるとむふふと笑う双子に癒されるところだがコハクの行方を追わなくては。

コハク…待っていろ!!すぐに助けに行くからな!!

「ルイルカ!!精霊にコハクの位置を教えて貰っていいかな?」
「「あいっ!あっちー!!」」
「よし!」

双子に案内されながら俺たちは路地裏へ向かった。





はぁ…はぁ…遊ばれてる…。

「もう逃げるのは諦めたのか?子猫ちゃん?」

ぐ…地理が分からなさすぎて行き止まりに着いてしまった…。

「そろそろ楽しませてもらってもいいかな?ぐふふ…」

キモい!!こんな奴らに触られたくないのに!!逃げ道がもうない…!!
複数の手が俺の服を脱がしにかかる。

「やー!!触ら…ないでっ!!やぁ!!」 ガッ!!
「大人しくしろ」

顔を殴られ頭がクラクラして抵抗する力もなくなってきてしまった…。その間にも服の下に手が伸びてきて肌を手が這いずり回る感触が気持ち悪く最後の足掻きに手足をジタバタさせる。

「…っ!!ひっ…やだ…やだやだ!!触るな!!テオーーーっ!!」
「大人しくしろって!!気持ちよくしてやるからよ…」
「簡単に俺を好き勝手させるわけ…ないでしょ!!」

男の股間を思い切り蹴り上げる。
何か…何か逃げる方法!!
結界とか作れないかな?魔法習ってないけど…どうにか…発動してーーーー!!




路地裏を探しているとふと大きな魔力を感じた。
この魔力を辿ってそちらに向かうと壁際で結界の中に縮こまって身体を守っているコハクがいた…。
服はボロボロ、綺麗な肌が処々見えていて、頬は赤く腫れ上がり、泣きじゃくっている姿に俺は沸々と沸き上がる怒りに結界の周りを囲む男たちに殺気を放つと一瞬のうちに全員気絶してしまった。
そいつらを蹴り上げコハクから離す。
まだ警戒心が解けないのか結界が解除される気配がない。

「コハク…遅くなって悪い…もう大丈夫だ…この結界を消せるか?」

俺の魔力と相殺してもいいが、フィードバッグが凄そうだ。

「…っう…うぇ…て…お…ごめ…なさ…」
「コハクが謝る事はない。もう男たちも襲って来ないから…ほら…おいで…」
「ふぇ…テオぉ~…怖かっ…てお…てお…!!」

結界の外で手を広げてコハクが結界から出てくるのを待つ。
抱きついてきた身体は震えており俺の名前を叫びながら泣きじゃくるコハクをぎゅっと抱きしめる。安心させるために顔中にキスを落とす。それと同時にヒールで頬の腫れを治す。

「すまない…怖い目に合わせてしまった…コハク…よく頑張ったな…」
「う…ひっく…うぅ~…」

コハクに自分の上着を被せ抱き上げる。

「見つかって良かった…」
「…っ…触られるの気持ち悪すぎて…頑張って逃げた…んだけど…ひっく…から…身体触られて…て…てお…だけに触って…ほしかったのに…」

俺だけに身体を許すと言ってくれる可愛い番の有様に自分がいかに油断して危ない目に合わせてしまったのか…後悔しかない。
側近のカインを呼ぶ。
「カイン後は任せたぞ。男共は屋敷に連れてこい。こいつらにはたっぷり罪を償ってもらわんとな…」
「御意」
「チビちゃん!!待って…!!」
「「にーに!!ふぇ…にーに…うわーん!!」」
「…あ…」

兄の痛々しい姿に泣き出してしまった双子に申し訳なさを感じた。

「すまない…軽率だった。だが、コハクを見つけ出したのは二人のお陰だったので連れてきていたのを忘れていた」
「二人のお陰?」
「二人はすでに精霊たちと意思疎通が可能のようでな…精霊からコハクの居場所を教えてもらったのだ…」
「そうなんですね…2人に感謝しないと…。そのお陰でテオに見つけてもらったのだし…」
「瑠衣、瑠華…探してくれてありがとね…にーには大丈夫だから泣き止んで?」
「にーにいたいない?」
「にーにらいじょうぶ?」
「ん…大丈夫だから2人も泣き止んで…ね?」
「「…ぅん…」」

「チビちゃんたち寝ちゃいそうだな…たぶん精霊と繋がって魔力を使い過ぎたのと泣き疲れかな?」

そう言って2人を抱えたライさんにお礼を言う。

「ライさんもありがとうございました」
「俺は何もしてないよ~。それより立派な結界張れてたね。身体は大丈夫かな?結構魔力使ったんじゃない?」
「初めて魔力を使ったのだろう?身体がダルいとかはないか?」
「今の所は大丈夫」
「ふむ…魔力量もあるみたいだねぇ~…自分を守るためにも早めに魔法を覚えたほうがいいかもね…今回のような事がまたあってもいけないし」
「今回のような事を2度も許す俺だと思うか?コハクは俺が守る」
「テオを悲しませない為にも俺も充分気を付けるよ…」
「さぁ、屋敷へ戻ろうか」

この事件の後フィンレー家の地下牢から夜な夜なあの男たちの叫び声が上がっていた事は俺には秘密にされていたらしい。

それよりも!帰ってからが大変だった!!
テオとあんな事するとは夢にも思わなかった。
まだ先の事だと思ってたよ…。










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