異世界に落とされた兄弟は幸せになりたい

セイ

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深い森

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柊琥珀、18歳。
気付いたら迷子。この歳にして迷子。両手に弟。
洒落にならない…。

いつもの買物帰り、重い荷物を肩にかけ、両手にはもうすぐ3歳になる双子の弟たちと手を繋いで家に向かって歩いていたはず。

だが、目を開けるとそこは今までいた住宅街ではなく木々が生い茂る森の中だった。

自分が住んでいたのは東京のど真ん中、こんな森なんかあるわけはなく、突然の事で頭が混乱していた。

「…へ?は?え…何で……?!」

前後左右見回しても木しかない森の中。パニックになりそうなのを何とか落ち着かせようとするが頭が働かない。

そんな中手を繋いでいた弟たちが走り出した。

「「ぅきゃー!にーに!ここどこ?あしょぶぅー!」」

双子たちは都会にはあまりない自然に興味を持ったのか遊ぶと言って走り出してしまった。

「ちょ……っ…待ちなさい!瑠衣!瑠華!」

すぐに捕まえて2人と目線を合わせて叱る。

「いつも言ってるでしょ?お外ではにーにがいいって言うまで手を離しちゃいけませんって」

「「はぁーい……」」

しょげながらもちゃんと返事をしてくれるいい子たちだ。

両親が事故で亡くなって1年。高校卒業間近に親を亡くし、幼い双子と3人になった俺は大学進学を諦め、親の保険金があるあるとはいえ、この先の事を考えてアルバイトをしながら双子を育てる生活になった。

俺のバイトの間は近所の老夫婦のご厚意で面倒を見てもらっていたが、外で遊ぶにも限度がある。庭で遊んでもやはり広い場所を走り回る方が楽しいらしい。

久々にこうも広い場所に来たらわくわくするのは当然と言っちゃ当然なのだろうが、ただ今は勘弁して欲しい。何処ともわからない森の中で迷子になられたら困る。

というかそこそこ薄暗いこんな森で楽しげな声上げる双子の元気な姿を見て、不安な気持ちが少し浮上する。

「とりあえずちょっと休憩して水分取るか。ちょっと休んだらこの森から抜けよう。2人ともこっちの木の下に座ろうか。」
「「あーい」」

二人を座らせると、バッグに入ってた麦茶を二人に飲ませる。やっぱり喉が渇いていたのだろう、二人でペットボトル半分飲んでしまった。残りは俺が飲んで少し休んだ。


ワォォォォーーーン


座って休んでいると突如大きな雄叫びが響いた。

「っ!な…何?!」
「にーに……」
「こ……こぁいよにーに…」
「「ふ…ふぇええええ~ん……!!」」

初めて聞く雄叫びに二人が泣き出してしまった。
俺も初めて聞いて体を縮こませてしまったがそれどころではない。何かが近づいているなら隠れなければ……。

「二人ともごめんね、怖いけどちょっとだけ声しぃーしようか?にーにに捕まって」

口元に人差し指を置きながらしぃーっと声を出さないポーズをすると二人も真似して大人しくなってくれた。いつもこれで大人しくなってくれるから今はとても有り難い。

二人を抱えて草むらに隠れる。音を立てないように周りを確認しているとすぐ近くに足音が聞こえてきた。
そっと目線を向けるとそこには今までに見たこともないような大きな獣がいた。

な…何あれデカすぎなんだけど…?!狼?にしてはデカすぎでしょ?!俺だって170cmあるのにそれよりデカいとか……。それに角とか牙とか…こんなのファンタジーにしか……。

そこで俺はハッとした。

「ここってまさか異世界とか…?ラノベあるあるな異世界転移してきちゃってる…とか…?」

絶体絶命。こんな知り合いもいない…というかこんな森に知り合いもクソもないけども、助けが来るとは思えない。異世界物語が好きで体験したぁーい!とか言ってた過去の自分を殴りたい。いざその状況になったら死しかありえない。

どうするどうするどうする……?!このまま歩き去ってくれることを願うしかない。俺にはこんな獣と戦う力なんてないんだから。見つからないように隠れるしかない。

抱える二人の体は震えている。怖いのに声を出さずにじっとしてくれている。

それでも危機は去ってくれなかった。
さっきまで俺達が座ってたところを嗅いだ瞬間こちらに顔を振り向かせた。

匂いでばれた?!
「…っくそ!!」

二人を抱えて走り出した。
少しでも遠くへ……!!

あの獣は遊んでいるんだろう。走らず歩きながら俺達を追ってくる。それでもあの巨体だ。デカい歩幅で近づいてくる。

「なんとか二人だけでも……!!」

走った先に大きな木の根元に小さな穴。これなら二人だけなら入れるかも?!急いで二人を降ろし穴に入れる。

「二人ともなにがあってもここから出ちゃ駄目だからね?いい?しーだよ?」
「「ふぇ…にーに……っ…」」

二人の安全を確保して気が緩んだ瞬間背中に大きな衝撃が走った。いつの間にか追いついていた獣の鋭い爪で引っかかれた。

「ゔあああああああっっっ!!」

あまりの痛みに立っていられずその場に倒れてしまった。

痛い痛い痛い……っ!!
背中が焼けるように熱くて痛い…っ!!
子供たちからコイツを引き離したいのに動けない。
こんな所子供に見せたらいけないのに動けない。

「…ふっ……これ死ぬかな……。」

目の前には鋭い牙を見せる大きな口が迫っていた。

あぁ……俺が死んだら二人は助かるのかな……?
ここが異世界ならきっと神様いるよね?
神様…いるなら二人だけはどうか…助けて下さい。

お願いします……。

朦朧とした頭で祈った瞬間俺の側に獣の頭が落ちてきた。

「大丈夫かっ?!おい!!しっかりしろ!!」

人…?助かった…?
あぁ…これで二人は助かる…。

霞んだ視界の先に銀色に光る何かが見えたが力尽きてそのままブラックアウトした。









※双子の名前間違っていたので修正いたしました。

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