夜、子猫泣く

oruka

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6 私

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 公園にある、ただ一つの街灯の下で私はほとんど焼けてしまった手帳を開いた。残った部分には彼の字で詩が書かれてあった。

「やっぱり君の詩は素敵なんだね……」

 私は一人呟いた。気持ちはもう落ち着いた。もしかしたら彼がいなくなってから一番落ち着いてるかもしれない。彼の詩を読んでると彼がすぐそばにいるような、そんな感じがするからだろうか。焼けてしまった部分は読めない。だけど、それでもいい。私は今にも崩れてしまいそうなページを大事にめくっていく。そのページはいつまでも続いているように思えた。

「あっ」
 
 ページをめくるとそこは何も書かれていない白紙のページになった。彼の詩は終わりを告げた。これからこの続きのページに詩が書かれることはないのだ。その現実を私はしっかりと受け止めないといけない。

「……」

 だけど私はペラリペラリとページをめくっていった。もしかしたらもしかするかもしれない。彼の性格的に途中に書かれているなんてことはないのは分かっていたけど、私は彼を探した。白紙が続く。白紙、白紙、白紙……。

「これ、って」

 最後のページだった。そこにはたしかに彼の字で文章が書かれてあった。それはさっきまであった詩とは違う。誰かへと宛てたメッセージのようだった。私はそれを読んだ。ゆっくりと噛み締めるように。涙が頬をつたっていく。でもその涙は少し温かい。

「君はをかし、って…………、ばか」

 最後のページだけは焼けずに、彼の言葉は残っていた。私は上を向いて溢れだしそうな涙をこらえた。静かな夜に、どこかで子猫が寂しさに鳴いているかもしれない。きっとどこかで泣いている。

「私も、君のことが、好きだったよ……」


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